『金子みゆ 1st Oneman Live「Step up」』ライブレポート@SHIBUYA RING

初めてのソロライブで歌い上げ見せつけた最初の「Step up」

金子みゆが8月11日(月・祝)、東京・SHIBUYA RINGでソロ初となるワンマンライブ『金子みゆ 1st Oneman Live「Step up」』を開催した。九州・福岡を拠点とするアイドルグループ・LinQのメンバーとしてデビューし、2023年に同グループを卒業。上京してモデルや女優業を中心に活動している金子みゆ。2024年にはソロアーティスト活動も始め、新曲“絆創膏”はテレビアニメ『ブサメンガチファイター』のEDテーマにも選ばれている。小雨が降るライブ当日、開演時間となって、すり鉢状の会場に光の鼓動が満ちると、メジャーデビューシングル曲“アタシのハートに降参ね”のイントロと共に金子みゆが登場。緩やかなダメージジーンズにタイトなトップスをあわせ、身振り手振りの度に銀のアクセサリーが照明を反射して、ピースサインがきらりと光る。「さあこの曲はサビで一緒に手を振ってください!」最初は少し緊張気味だった金子も、2曲目の“おSUSHI”では表情をほころばせる。ユーモラスな歌詞に爪先を遊ばせた軽いステップ、観客の顔をひとりひとり覗き込む瞳。電子音のファンタジックな響きに透明な歌声が重なって、ステージはより広く感じられる。続く「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」のEDテーマ曲“ビリビリBe-lie-ving”では、身体をリズムに任せ、くるくると回る光に合わせて指先を回す彼女。1stライブはアーティストにとってもファンにとっても初めての経験だ。最初はノリ方を探っていたオーディエンスも、この頃には手拍子をしたり、身体を揺らしたりとリラックスしている。スポットを浴びて歌声を響かせる瞬間、厚底の靴で飛び跳ねる瞬間、このライブにはたくさんの印象的なシーンと仕草があった。「改めまして、本日は『金子みゆ 1st Oneman Live 「Step up」』にお越しくださりありがとうございます!お久しぶり~!」と話し3曲を続けて披露し、金子はホッとした様子で観客へ手を振る。この日は彼女にとって、グループ卒業後初のライブ。久しぶりのステージに緊張しているが、「『ゴジュウジャー』から私を知ってくれた人いますか~?」の問いに手を挙げる人がおらず、笑いながら「えっ、いない?!それならちょっとリラックスできるわ」、「よく見たら知ってる顔も……」と肩の力を抜き、冗談めかした。

挨拶と曲紹介を終えて、デビューしてからまだ日が浅い金子は、ここから幾つかカバー曲を披露する。まずはConton Candyの“ファジーネーブル”。虹色の光が降り注ぐ中、両手でスタンドマイクをそっと握り締めた金子は、飲み干したいほど甘い歌声で歌詞を噛み締めながら観客の瞳を覗き込む。続くカバー曲はいきものがかりの“気まぐれロマンティック”で、金子は腰に手を当て明るく歌う。「知っている方はサビで一緒に踊ってください!」の声につられ、ファンも振付を真似た。とろける歌声は原曲の「強さ」を違う色に変えながら、ますます広がっていく。2曲を終え、「いかがでしたか?」と問う金子に、大きな拍手が上がる。ここで金子は、あらかじめ予告していたシークレットゲストを紹介。「私が呼ぶシークレットゲストは『あの人』かな?ってみんな予想していると思いますけど、答え合わせもかねて……」の言葉と共に呼び込まれたのは、親友・水野舞菜だった。水野はライブ2日後に迫る金子の誕生日を祝い、ホールケーキを片手にバースデーソングを歌いながら登場。サプライズに驚く金子は、22歳の誓いとして「音楽に力を入れていく」と語った。ここからはファン参加型のミニコーナー。ふたりはファンからの質問が書かれた紙の入った箱に手を差し入れ、寄せられた質問に回答していく。最初に探り当てたのは「好きなアイスは?」。金子はビエネッタが大好きだったそうだが、同商品は終売してしまい、今はアイスの実のマンゴー味が「ぶっちぎりでおいしい」そうだ。なお、水野はもっぱらかき氷派と語る。気になる「次のライブ予定は?」という質問には「シークレットです!(笑)」と回答。「夏休みは何するの?」には「夏休みなんて無いよ〜!」、「それな〜、毎日が夏休みみたいなもんだし」などとおどけつつ、ふたりで自動車免許を取るため合宿に行くか、そのお金で旅行に行くかと相談していると明かす。また、「自炊する?」との素朴な質問に、金子は「するかしないかで言ったら、する。お米炊くとか……。(笑)」。それでも「やればできるタイプ」らしく、特に唐揚げは絶品とのことだ。水野は「自分のために頑張るのはやめた」と自炊をやめたそうだが、以前金子が水野宅で勝手に冷蔵庫を開けて食べた煮物はすごく美味しかったらしい。

5つ目の質問と9つ目の質問は、どちらもギターに関するもの。今回のライブのために、金子は1〜2ヶ月ほど独学でギターを練習していた。想像以上に難しかったというが、特に苦労したのはFのコードを押さえることだった。その他、金子は紙をめくっては、寄せられた質問に対し「アップテンポな曲よりバラードが緊張する」、「(水野と)ふたりでカラオケに行って、西野カナの“Best Friend”を歌って号泣した」、「東京の食べ物は申しわけないけど福岡には勝てん」、「1stライブに向けてワクワクより緊張が大きかったけど、今はほっこりしてる?……あ、ホッとしてる」など、次々に答えていく。最後には「憧れのアーティストは?」との問いに、「『この人』っていう目標は無くて、自分のやりたいことをやっていきたいです。というのも、誰かを目標にしてしまうと、その人を超えることはできないじゃないですか。むしろ憧れられるように、自分のやりたいことを貫きたいです」と話し、大きな拍手を受けた。質問コーナーを終え、水野とふたりであいみょんの“桜が降る夜は”を歌えば、ライブはもう残り2曲。「ワンマンライブ、そしてお誕生日おめでとう!これからも一緒にいろんな思い出を作ろうね!」と、手を振る水野を送り出し、金子は最新曲“絆創膏”について語る。同曲は放送中のアニメ「ブサメンガチファイター」のEDテーマであり、金子にとっては推しキャラ・聖華の心情と重なる部分もある曲とのことだ。そして歌い出された“絆創膏”は、日常風景を映すMVを背景に、柔らかく、優しく紡がれていく。吐息の多い歌声で、サビでは幸福そうに腕を広げ、白い光に包まれる姿。それは全ての痛みを癒す静かな歌だった。「それでは本日最後の曲です。みなさま今日は本当にありがとうございました」ラストナンバーは“ステンバイミー”。歌声は上下に遊ぶメロディラインを自由自在に踊り回り、一瞬一瞬に表情を輝かせて、身体をリズムに揺らす。初めてのソロライブとは思えない堂に入ったパフォーマンスで金子はファンを魅了する。「今回はセットリストやグッズのデザイン、すべての構成を自分でやり、緊張でドキドキしてたけど、無事に終えられて安心しました」8曲を歌い終えた。

「こうやってライブができるのもみなさんのおかげです。こうしていてもみなさんのエネルギーを感じます。これからもみなさんに素敵な曲を届けられるように頑張りますので、よろしくお願いします」そう話してステージを去って行った金子を、アンコールの声が呼び戻す。ここで金子はライブTシャツに着替えたラフなスタイルでアコースティックギターを抱え、練習の成果を披露した。「間違えたら間違えたで、それもステップアップということで……よし。じゃあ、聴いてください!」緊張と共に弾き語られたのは、いきものがかりの“コイスルオトメ”。ギターの方はたどたどしい部分が無いとはいえなくも、この短期間に独学でここまで仕上げたと思うと、無限の伸びしろを感じさせる。スポットライトを浴び、今はまだ少しぎこちなく弦に指を滑らせていた金子だが、ギターはいつか彼女の大きな武器になりそうだった。「みなさん見守ってくれてありがとうございます」挑戦の1曲を終えた金子は、最後に自身が作詞にも参加した未発表の新曲を紹介する。同曲は「女の子のこじらせソング」で、曰く「強がりな可愛い作品」。リリース日もまだ発表されていない同曲は、このアンコールが初披露となる。

「最後に聴いてください。“モバイルバッテリー”」タイトルコールと共にドロップされたのは、これまでのフューチャーポップな作風とは一転した、バンドサウンドが印象的で明るく爽やかな盛り上がる1曲。端々に零れる現代っ子の恋愛模様と愚痴がドラムとベースのリズムに紛れ、金子はスキップしながら軽快に歌う。「改めましてみなさん、本日は『金子みゆ 1st Oneman Live 「Step up」』にお越しいただきありがとうございました!これからもみなさんに素敵な曲を提供できるように頑張っていきますので、応援よろしくおねがいします。以上、金子みゆでした!ありがとうございました!」全10曲、約1時間に凝縮された、ミュージシャン・金子みゆとファンの第一歩。そこには確かな未来があった。彼女の新たな「Step up」は、今、ここから始まる。

Text:安藤さやか
Photo:岩倉紘太郎

https://columbia.jp/artist-info/kanekomiyu

『金子みゆ 1st Oneman Live 「Step up」』@SHIBUYA RING セットリスト
01.アタシのハートに降参ね
02.おSUSHI
03.ビリビリBe-lie-ving
04.ファジーネーブル/Conton Candy
05.気まぐれロマンティック/いきものがかり
06.桜が降る夜は/あいみょん
07.絆創膏
08.ステンバイミー

ENCORE
01.コイスルオトメ/いきものがかり
02.モバイルバッテリー(新曲)