King & Prince 7th Album『STARRING』先行視聴会レポート!

ネタバレ注意!「映画」がコンセプトのニューアルバム、ティザームービーをレビューする。

King & Princeが12月24日(水)にリリースするニューアルバム『STARRING』の試聴会が行われた。「主演・主役」を意味するタイトルを持つ、“映画”がコンセプトの今作。各曲は「架空の映画の主題歌」という設定になっており、ポスター、あらすじ、そして有名クリエイターによるティザームービーまで制作されている。その全てはKing & Princeのふたりが企画書から手がけており、曰く「本人たちが目を通していないものは無い」そうだ。試聴会当日、集まった記者たちには「映画館」をイメージして、コーヒーとポップコーン(塩キャラメル味)が振る舞われる。ファンも招かれていないマスコミだけのイベントにもかかわらず、そこまでやる気合の入れように、まず驚かされた。

イベントではまず“Theater”のMVフルバージョンが本邦初公開。ネタバレになるのであまり多くは語らないが、後半では様々な名作映画のパロディや、今作を彩る『映画』たちのティザームービーが垣間見えるので、公開をお楽しみに。YouTubeでも公開されている全曲クロスフェードが流れた後は、アルバムの『STARRING盤』に収められる「架空の映画のティザームービー」が全編上映された。ここからはネタバレが多く含まれるため、ご注意を。髙橋海人が作詞・作曲を手がけた楽曲“Sunset”を主題歌とする『君が誰で、僕が誰でも』は、雪山密室系サスペンス映画。冒頭でポットからお茶が注がれるその「音」は、完璧に映画館で聴くそれである。青暗い画面がかもす寒々とした空気感、鮮やかな血の色に、ミステリアスな美青年と、真実の鍵を握るビデオカメラ──このティザーからは、上質なサスペンス映画の予感がした。

“Stereo Love”が主題歌の『Home, Stupid Home』は、近未来を舞台としたサイバーパンク・SF・バディムービー。そう聞けば大作の予感がするも、映像はサイケデリックな照明に彩られた、ちょっとチープなB級映画の様相だ。大気汚染によって青空が失われた世界、「あの工場を壊せば空を取り戻せる!」と奔走する凸凹コンビ。ハンバーガーを齧るふたりの姿が何度も映し出されるのには、どんな意味があるのだろう。最後のセリフにもご注目。映画『Frankly, My Dear』は、ジャズバーを舞台とした奇妙で可笑しな物語。髙橋のソロ曲“this time”が流れる中、無声映画を思わせる世界で見えない幽霊と戯れる髙橋に、突如響き渡る不協和音。クラシカルな糸釣りとストップモーション的なポルターガイストの演出が楽しく、短編映画の雰囲気がある。

映画『The feel of Summer』は、余命宣告を受けた親友と「死ぬ前にやっておきたいこと」を叶えていく、最後の夏を楽しむ切ない青春ムービー。だが親友の願いは「中華料理店の全メニュー制覇」「スケボーをマスターする」「アラームをかけずに寝る」などくだらないものばかりで……まぶしい夏の空気と、小原綾斗(Tempalay)が手掛ける主題歌“だんだん”の優しい切なさとが混じり合う。eillが提供する永瀬廉のソロ曲“Darling”は、映画『HARUKA 記憶の中のあなたへ』の主題歌に。眼鏡をかけた今を生きる椅子職人の永瀬と、髪を下ろした過去のひとの永瀬との姿が交錯する淡く白い世界は、単館系映画館で上映される通好みな映画に感じられる。

映画『4月1日』は平凡な1日のループから抜け出すために、主人公の大学生と喫茶店員があの手この手を尽くすコミカルなストーリー。水野良樹(いきものがかり)による明るく元気な主題歌の雰囲気も相まって、演劇チックなワンシチュエーション・コメディ映画を思わせるが、ラストには意味深な台詞が……思わず「続きを見せて!」と叫んでしまいそうなムービーだった。衝撃的だったのは映画『雷藤兄弟』のティザー。物語は父の死をきっかけに再会した正反対な双子の兄弟が、父の夢を叶えようと、ぶつかり合いながらも少しずつ家族の絆を取り戻していく──といった内容だが、それらの映像を、50TAこと狩野英孝による主題歌“希望の丘”のインパクトが上回っているのである。シネコン系の温かな空気感とトンチキソングの絶妙な相性。ぜひ楽しみにしてほしい。差し上げます、頂きます。

映画『MODERN LOVE』の舞台は、青い空と白い雲、陽射しの眩しいプールサイド。ハワイアンカラーに彩られた予告編で描かれる甘酸っぱい恋模様に、主題歌“HEART”が乗る。配信系の恋愛ドキュメンタリー風映画……といった雰囲気だが、恋の結末がどう転ぶかよりも、King & Princeのふたりの関係がストーリー上でどうなっていくのかが気になってしまった。映画『The DOOMER』のティザーは、大都会の夜景を俯瞰する空撮に始まる。怪しげな研究施設から発生するバイオハザード。それに立ち向かい、手を取り合って背中を預け、銃を構えるふたり。次々と切り替わる断片的で意味深なショットにあわせて流れる主題歌“I Know”は、年末年始の大作映画の予告編そのものだ。

映画『What We Got ~奇跡はきみと~』では、King & Princeのふたりとミッキーマウス、そしてその愉快な仲間たちが無人の渋谷で遊び回る。見慣れた景色から人が消えた違和感と、その寂しさを拭い去るワクワクした気持ち。同名の主題歌と共に、「本当にこんな映画があったらいいのにな」という気持ちを楽しんでほしい。収録曲ラスト、“MEET CUTE”が主題歌の『ROOFTOP PICNICS』では、屋上に楽器を持ち寄って、演奏を始めるふたり。夕焼けにも朝焼けにも見える空の下で音を重ねる様子はとても楽しそうだ。あらすじを見るとここから一波乱ありそうだが、ティザーは良質な自主制作短編映画のそれに感じられた。とてつもない時間をかけて制作された今作は、King & Princeの現時点での最高到達点かつ、進化し歩み続けることへの意思表示でもある。King & Princeによる不思議な映画館『STARRING』の開館は、12月24日(水)だ。

Text:安藤さやか

https://www.universal-music.co.jp/king-and-prince/

RELEASE
『STARRING』

通常版(CD)
UPCJ-9071
¥3,520(tax in)

ユニバーサルミュージック
12月24日 ON SALE