TikTokで話題のラッパー、ピラフ星人とは何者か?
ピラフ星人がTVアニメ『夜桜さんちの大作戦』第2期エンディングテーマ“Shalala”でメジャーデビューした。主にTikTokなどのSNSで活動し、そのラップスキルや投稿で若年層から絶大な人気を誇るピラフ星人。2026年3月には日本武道館でワンマンライブを開催するなど、活動の幅を広げている彼に、今回のインタビューでは音楽性のルーツからラップに対する考え方、そして“Shalala”の作曲エピソードまでいろいろと話を訊いた。
■ピラフ星人さんは“高菜チャーハン”でデビューしたんですよね?まず「ピラフ星人」という名前のルーツはどこにあるんですか?
ピラフ星人 僕はラッパーでバーチャルYouTuberのピーナッツくんが大好きだったので、同じく「ピ」から始まる食べ物の名前で攻めてみようかなと思っていて、「ピーマン」とか、「ピザ」とか、いろいろと候補はあったんですが、語感も近いし、やっぱり「ピラフ」かなと思いました。それで「ピラフ星人」という名前になったという流れです。
■なるほど。ちなみに実際のピラフはお好きなんでしょうか?
ピラフ星人 微妙です。実はあんまり食べたことないです……。(笑)
■むしろ高菜チャーハンの方が食べたことありそうですよね。(笑) そしてピラフ星人さんはTikTokで大人気ということで……プロフィールは「職業:TikToker」になっていますが、何をすればTikTokerになれるのでしょうか?
ピラフ星人 TikTokに動画を出していたらTikTokerです。(笑) 最初の頃は顔出しもせず、いろんな有名なラッパーの方々の替え歌みたいなものを、すごく時間をかけて、深い完成度で、本当に身内ノリみたいな感じで出していたんです。そうしたら、ちょっとバズりまして。そこからいろんなラップバトルのオマージュみたいなものを出していくうちに、だんだんと再生数やフォロワーがついてきました。それで自分自身もラップ自体はやっていたので、「ちょっとラップバトルに出てみようかな?」みたいなノリで、初めてバトルの予選に出て。そこからは顔出しもしつつ、バトルの模様もあげつつ、いろんな人にラップバトルを仕掛けたりもして、徐々にこうなっていったという感じです。
■最初は顔出しをされていなかったんですね?顔出しをしようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
ピラフ星人 今もサングラスをかけているので、ちゃんと顔出ししているのか怪しいところですけどね。(笑) 初めてバトルに出た時に、オシャレだと思ってツノとサングラスをかけて出たんですが、そのバトル動画がちょっとだけ伸びたりしたんですよ。だから「これを脱いだら、逆に誰だかわかんなくなるだろうな……」と思って、外せなくなった形です。(笑)
■トレードマークになっちゃったんですね。(笑) でも素顔の動画も結構再生数があったりしますよね。
ピラフ星人 切り札です。(笑)
■切り札ですか。(笑) ご出身は北海道ということで、最初は北海道でMCバトルをやっていらっしゃったんですか?
ピラフ星人 実際にバトルに出たのは東京の予選からです。北海道では、人のバトルを見て「俺ならこうしたのにな……」などと考えていました。それで「音楽で売れたい」という気持ちがあったので、就職して上京することにして今に至ります。
■東京で就職する勇気はすごいですね……。ラップが好きになったきっかけはなんですか?
ピラフ星人 小学5年生ぐらいの時に、学校でブライアンというYouTuberが流行っていたんです。ブライアンは結構下ネタをラップしていて面白がられていたし、俺ももちろん面白がっていたんですが、それ以上にラップ自体がすごくカッコいいなと思ったんです。そこから高校生ラップ選手権とか、ラップバトルとかの動画を見たり、曲を聴いたりして、「ラップってジャンル、めっちゃカッコいいな!」と思い、好きすぎて「自分もやってみよう!」みたいな感じで始めました。
■それ以前に音楽は何かやっていらっしゃったのでしょうか?
ピラフ星人 いや、全然やっていないです。家族もやっていなくて、「車に乗ったらなんか海外の曲が流れているな~」程度でした。そんなに音楽好きな家庭ではありませんでしたね。
■それはちょっと珍しいですね。ブライアンさんのどんなところに影響を受けたのでしょうか?
ピラフ星人 どこに影響を受けたのかと言われると難しいんですけど、今思うとラップのハードルを下げてくれたな、という。内容的にはラップを知らない人でも、面白いこと言っていて、かつ一番わかりやすくカッコいいラップをしているんですよね。面白くて、音が気持ちよくて、みたいな。誰にでも刺さるラップをしてくれていたなと思います。
■だからちょっと批判されることもあるんですよね。ピラフ星人さんが「自分はラップの才能あるな」と思ったきっかけは?
ピラフ星人 今も才能があるとは思っていないのですが、バトルに関しては向いているなと思っています。別に悪い意味ではなく、いろんな人のラップバトルを見ていて感じたのですが、ラップバトルってわかりやすいラップよりも、音楽に詳しくないとわからないようなラップをする人が評価されがちという側面があるんですよ。でも俺はブライアンさんを見て「カッコいいな」と思ったこともあって、中学生くらいの頃から「俺ならもっとわかりやすくラップできるな」と考えていたんです。それで、ひとりで韻を考えたりしていたら、自分で言っていても笑えるくらいのものが出てきて。(笑) それでバトル経験も無いまま大会に出てみたら、優勝してしまったんですよ。2回出て、2回とも。(笑) 審査員ウケも異常に良くて、その時に「あ、俺が面白いって思っていたことは間違っていなかったんだな」となりました。そこからですね、「向いているな」と思ったのは。
■つまり、どちらかというと「いろんな人をリスペクトしていって……」というより、「既存のものに反感して……」みたいな方向性で上達していったんですか?
ピラフ星人 どっちもあります。「俺ならもっと上手くできるぞ!」みたいなのもあれば、「自分にできるやり方でやってみようか」みたいなものもあります。
■ちなみに、今まで「俺には絶対これはできない」と思ったアーティストはいますか?
ピラフ星人 バトルだったらいっぱいいますけど、アーティストさんではR-指定さんや、晋平太さんですね。「どういう頭しているだろう……?」と思います。
■確かに。そのお二方は本当にすごいですよね。それにしてもピラフ星人さんは、どうしてそんなにポンポン語彙が出てくるんですか?
ピラフ星人 いっぱい家で考えています。(笑) だから予想外の返しをされると、ちょっと詰まっちゃったりするんです。あと、綺麗にハマるように考えて持っていっているから、噛んだりすると終わるんですよね。1個でもズレちゃったりしたら、もうグダグダになっちゃう。そういうのって結構(SNSで)拡散されちゃうので、黒歴史として残るんですよ。なので、「1歩間違ったらオモチャにされる」という危機感と、実力を出しきれずに終わっちゃう怖さとで、バトルの時は意味わかんないくらい緊張します。
■あんなに堂々として見えるのに、やっぱり緊張はするんですね……。ラップにあまり理解が無い方から、「MCバトルってただの口喧嘩じゃん」と言われることもあると思いますが、それに対してはどう思いますか?
ピラフ星人 「全然違うだろ」とは思いますが、手が出てきたりもするので、そうなるとホント「それは口喧嘩だろ」と思われてもしょうがないですね。(笑)
■韻を踏んでいない時もたまにありますよね?
ピラフ星人 でも俺のバトルは口喧嘩じゃないように見えると思います。俺はやっぱり、「お客さんが笑ってくれたらいいな」と思いながら書いてます。カッコイイというよりかは、変な韻を踏みたいので、相手の特徴とか、過去に言ってきたことをイイ感じにイジれたらいいなとずっと考えていて。だから、語彙力自体はあんまり無いのかもしれません。でも、綺麗にラップしたいタイプなので、口癖みたいなものはなるべく作らないようにしていて、新鮮な言葉を使って、何回見ても面白いと思ってもらえるように意識はしています。
■だからいつも面白く聞こえるんですね。話は変わりますが、ピラフ星人さんはちびっ子層にも人気が高いですが、それについてはどう自己分析されていらっしゃいますか?
ピラフ星人 狙っていたわけじゃなかったので、俺もびっくりしたんですけど、TikTok自体の年齢層が低いからというのがあると思います。そこをメインにやっているのと、ブライアンさんなどに影響を受けている部分があるので、「わかりやすくラップしよう」とか、「知らない人に届けよう」という気持ちがマッチして、TikTokにいるラップを知らない子たちにも広まったんだと分析しています。「ピラフ星人を聴いてラップを初めた」という子がいたら聴いてみたいですね。
■男女人気もほぼ半々ですよね。
ピラフ星人 そうですね。イケメンを売りにしているわけでもないですし、俺的には男の子人気の方が高くなると思っていたんですけどね。(笑) 俺は男の子に、俺の彼女は女の子に人気がありますけど。子どもたちにとって、男女差ってそんなに無いんじゃないかな?
■ちょっと大人へ憧れがあるという面もあるかもしれませんね。(笑) 順調に進んできているアーティスト活動ですが、今までにぶち当たった壁はあるのでしょうか?
ピラフ星人 日本武道館公演の集客は、結構ぶち当たった壁でした。最終的に満員にはならなかったのですが、たくさんのお客さんが来てくれて、ほっとした部分もあります。最初のアルバムを出してから1年経たないぐらいで武道館公演を決めちゃったので、やっぱりすごい叩かれましたし、「無理だろ!」みたいなこともたくさん言われたんです。日本武道館はやっぱり特別な場所じゃないですか。だから、「お前なんかが立つな!」みたいな意見には、結構ダメージを食らいました。
■それは辛かったですね……。
ピラフ星人 なんなら武道館公演を終えた今が、一番壁にぶち当たっているかもしれないですね……。「日本武道館に立つのが夢です!」と言いながらやってきたので、それを早々に叶えてしまうと、ファンの熱というのもやっぱりそこで一回冷めてしまうじゃないですか。だから、これから先というのが壁ですかね……。
■確かに。なかなかの壁ですよね。
ピラフ星人 今後はむしろ、ちょっと「地道にコツコツとやっていきたい」みたいな気持ちです。俺は今までフォロワー数も再生数も飛び級みたいにバーンと増えていったタイプだったので、順番は逆になっちゃうんですが、会場のキャパを下げて、地方を巡ったりもして、地道にコツコツやっていこうかなと思います。
■ちなみに、武道館公演のタイトルが『卒業式 at武道館』になったのはどうしてですか?
ピラフ星人 マジで武道館公演が終わったら活動を辞めようと思っていたんです。(笑) 活動して2年経たないぐらいなんですが、日本武道館が夢だったので。それにヒップホップの男性アーティストというくくりにしたら最年少公演だったこともあり、その後のビジョンがあまり見えてこなかったんです。だから、「ここで綺麗に辞めるか」って、結構本気で思っていたんです。でも、それからアニメのタイアップが決まったり、メジャーデビューが決まったりもあったので……。今までみたいにトントン拍子でバズるんじゃなくて、バズらなくても、10年経ってもまだ30歳くらいじゃないですか。だから、目先の目標じゃなくて、地道に頑張っていこうというスタンスに変えたんです。でも、『卒業式』という名前をつけたのは本気でした。
■なんだか「10年経ってもまだ30歳」って、いい言葉ですね。(笑)
ピラフ星人 自分に言い聞かせています。焦らないように。






