NakamuraEmi VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

今と過去を歌い上げるNakamuraEmiのパッチワークなニューアルバム。

NakamuraEmiが10月7日にメジャー8thアルバム『PATCHWORK LIFE』をリリース。様々なアーティストとの対バン企画『背負い投げ』を経て作られた今作。収録曲では彼女が様々な時に起こったこと、感じたことが生々しい言葉で綴られ、力強く歌われている。インタビューではそんな今作について、一曲ずつ紐解いていく。

■本媒体で最後に観させていただいたのはUVERworldさんとの対バンでした。あの日はいかがでしたか?

NakamuraEmi あの日がなかったら多分このアルバムは完成していないので、本当にあの日が来るまでのある意味の怖さと、あの日をUVERworldさんにプレゼントしてもらったという感覚があります。UVERworldさんは本当にすごい人たちだっていうのを心と身体で体感しました。熱かったし、この方たちが長く音楽をやっているバンドの意味というか、そういうものもすごく感じて。これはもう自分もこの恩をいただいてずっと長くやっていけるようにと、すごく思わせてもらった一日でした。

■素敵ですね。そして早速、今作の『PATCHWORK LIFE』なのですが、今はあんまり“東京タワー”みたいな「豪快に歌い上げる」という感じのモードではないのでしょうか?

NakamuraEmi そうですね。“東京タワー”以降に自分のすごく好きなボイストレーナーさんに出会って、そこから自分が歌を歌う楽しさみたいなものを、また新しく感じるようになってきました。それから表現の形が自分でもわかるくらい少しずつ変わっていって、キー自体も自分に合う部分がどんどん変わってきていて。少しずつ歌自体が変化しているなと思っています。

■変化の時期なんですね。ちなみにEmiさんは、歌詞の主人公=自分なのでしょうか?

NakamuraEmi そうです。基本は本当にあった出来事ばっかりです。誰かのために書いた曲も何曲かはあるんですけど、基本は=自分として考えてください。

■わかりました。それでは改めて今作の“幕開け”から。密度が高くて2分半の曲とは思えなかったです。最初のところで英語っぽいのを喋っているのは何を話されているのでしょうか?

NakamuraEmi この曲は何十年もライブをやっていく中で、SEみたいな感覚で作った曲なんです。やっぱり1番最初の曲ってすごく自分にもパワーが必要で。そういう時にこの曲が作られていって。なので、最初にはお客さんに対する「ありがとう」という想いと、このライブが私にとって、「とてもハッピーです、そして来てくれてありがとう」と、あんまり聞こえないような感じで伝えています。(笑)

■なるほど。この曲は本当に、それこそライブの幕開けっぽく感じたんです。セットリストを意識されている部分もあるのかなと。

NakamuraEmi そうですね。(笑) この“幕開け”に関しては特に。SEは今まで無かったので、この曲で何回かライブをスタートさせているんですが、すごく自分の中でもしっくりきています。

■この曲はすごくEmiさんの音楽性を短くまとめて、吐き出したような曲に聴こえました。

NakamuraEmi 嬉しいですね。そう、この歌詞たちがすごく自分にとっても力が入るというか、本当に自分は緊張しいなので、ライブ前ってめちゃくちゃビビっているんですよ。(笑) なので、「そんなこと言っている場合じゃないぞ!」と喝を入れる曲になったなと思っています。

■ところで私、Emiさんの音楽ってすごく「赤」のイメージがあるんです。この曲でも「燃やして」とか、「真っ赤な」とか、「赤」が出て来ますよね?

NakamuraEmi 確かに赤は好きです。車も赤だし……派手な色がすごく好きなんですよ。(笑) それに血液が流れている感じをこのアルバムでも出したかったので、その部分ではリンクするかもしれないですね。

■そして次の“今夜cruise”ですが、本当にラブソングのようでラブソングではないようで……面白いですね。それこそ湾岸をドライブしている時に、ラジオで流れているようなタイプのポップスという感じで。「人は10代の頃に聴いた音楽の影響を一生受ける」という言葉を思い出したんです。

NakamuraEmi 確かにそうですね。最近はギタリストでプロデューサーのカワムラヒロシさんと一緒に詞と曲を作ることが多いのですが、この曲は久しぶりに自分ひとりで作ったので、100%自分っぽいものができたなと感じています。

■黄金時代のポップス感がありつつも、でも歌詞は恋愛体質じゃなくて現代的というか。

NakamuraEmi 私自身は恋愛体質じゃないので。(笑) FMヨコハマでラジオをやらせて貰っているんですが、メッセージを寄せてくださる方たちのお母さんがちょうど私と同い年みたいな感じの、22、23歳くらいの子たちなので、恋愛話が新鮮すぎて。(笑) だからすごく面白くて。それで40代の自分だったら、「今こんなことが起こったらどうするかな?」とか思いながら書いたんです。でもやっぱり、最近たくさんの人の別れを経験するようになったので、大事な人とか、好きな人がいて、例えばその人がもう一緒になることが絶対不可能な人だったとして、でもその人が生きていてくれて、ハッピーならそれってめっちゃ嬉しいじゃん!というところに辿り着いて。ちょっと想像と違う恋愛曲になりました。

■でも、恋愛の曲ではあるんですね?

NakamuraEmi そうですね。恋愛としても受け取れるし、家族愛や仕事仲間の曲でもいいのかなと思っています。

■そして“呼吸”は、実体を伴ったというか、フィクションではない曲だなと感じました。

NakamuraEmi 最近、自分の周りで大事な人たちが亡くなったり、余命を宣告されたりすることが多くて。「あと半年とか、あと1ヶ月でも、もうちょっと伸びたよ。よかった……」というやり取りが頻繁にある状態で書いた曲だったんです。この曲ができた前日に親戚の御夫婦の奥さんが亡くなってしまって。すごくラブラブな夫婦だったからこそ、その旦那さんがどんな気持ちでいるかとか、看護されている姿とかをいろいろ見てきた中で、亡くなる方の側にいる人の気持ちというのが、自分もわかる部分がたくさんあるからこそ、自分にはその方の気持ち全部はわからないけど、少しでも長く生きてほしいと思う気持ちはわかるから、そういう方の話し相手になれるような曲になったらいいなと思いました。

■Emiさんはパワフルで、歌っている姿が「生」のイメージがすごく強くあったんです。そんな中で、このアルバムは「死」がテーマのアルバムかな?と感じたんです。この曲で「終わりがあるから美しいだなんて」というところで、曲調が一気に変わるのがステキだなって。

NakamuraEmi そうですね。病気を抱えている人が、もうこんなに苦しい状態で、「終わってほしくない」と思っているのはこっちだけかもな?と思うこともあって。本人は辛くて、もう……と思っているかもしれないけど、周りは生きてほしいし、終わってほしくないし、だけど、この人が終わりたいんだったら終わらせてあげたいし……という。生きていくことと、死ぬこととのなんとも言えないせめぎ合いの、言葉にならない部分です。それがこの言葉かなと思っています。

■この曲はこれまでのシングル曲やリード曲に比べて、インパクトのあるメロディというよりも、くるくる踊り回っている感じがする印象なんです。

NakamuraEmi この曲はプロデューサーのカワムラさんが、5曲ぐらいトラックをポンと作ってくれて、「Emiちゃん、良かったらこれで曲作ってよ」と言ってくれた中に、このサウンドがあったんです。歌詞の原型みたいなものはざっくりあったんですけど、どう作り上げていくかを悩んでいて。この暗くもあり、明るくもあり、元はもうちょっと暗い歌詞だったんですけど、でも生命がずっと巡っていくものと、そしていつか終わるものという、それが繰り返されていく感じが、この曲に繋がっている気がして、このトラックを選ばせてもらいました。

■では、「くるくるしてるような気がする」というのも、あながち間違いではなかったんですね。

NakamuraEmi BPMも含めて、呼吸をしている感じというか、そういう神秘的なものを感じたりもしたので、この曲で作れたらいいなというところから、まさかリード曲みたいな形になっていくとは思っていなかったんですけど、この曲を作りました。今作は、作りたい曲を、胸の中にあるものを本当に出すという感じだったので、「出していったらこんな曲になったんです」みたいな感じです。今回はスタッフの中でも、リード曲が決まらなすぎて、みんなそれぞれに好きな曲が全然違ったので、2~3か月ぐらいみんなが悩んでいる中で決まったんですよ。(笑)

■このタイトルと内容だけに、最初のブレスはすごくこだわっていそうだなと思いました。

NakamuraEmi さすがです!それはもうカワムラさんもすごくこだわっていました。どのぐらいの大きさなのかとか、長さなのかとか、そういうのをすごく研究しました。

■次の“PATCHWORK LIFE”はタイトル曲になりましたね。

NakamuraEmi そうですね。手芸が得意な方が私の周囲に多いんです。私は全然やらないんですけどね。(笑) それこそカワムラさんのお母さんも裁縫の先生だったりするからこそ、「Emiちゃん、こんなこともできるんだよ!」と、いろんな作品を見せてくれるんです。カワムラさんは岐阜に実家があって、そこにもレコーディングできる場所があるんですが、そこにはすごい刺繍たちが飾ってあるんですよ。それを見ていると、「チクチク縫っている姿って美しいな」と思います。「いつか曲にしたいな」と思っていた歌詞がぽんぽん散りばめられています。

■本当にこのアルバムのタイトル曲にふさわしいというか、今のEmiさんにとって「きっと人生ってこういうものなんだろうな」という感じがしました。

NakamuraEmi ありがとうございます。本当はもうちょっと暗い曲で、歌詞も違ったんですけど、『背負い投げ』という自分が企画したツーマンライブで、いろんな人たちと演って、特にRHYMESTERさんとのライブの後に、ハッピーなものや、お客さんが嬉しそうに踊ったり、手拍子したりしている姿を見て、「こういう曲にしたいな」とすごく感化されて。そこでガラっと変わってこの曲が出来上がったので、RHYMESTERさんに一言書いた方がいいんじゃないかな?と思います。(笑)

■「Special Thanks:RHYMESTER」みたいな感じですね。(笑)

NakamuraEmi そうそう。(笑) それくらい『背負い投げ』に出演してくれたみなさんの成分が入っています。“UBU”には、UVERworldさんのパワーが入っているし、“エステみてぇだな”には、THA BLUE HERBさんの音の説得力が詰まっていたりして。本当にライブをやった方々のパワーがたくさん詰まっている、まさにパッチワークな作品になりました。

■意外とスムーズに出て来た言葉たちでもないんですか?

NakamuraEmi そうですね。今回の曲は全部パッとはできているんですけど、“PATCHWORK LIFE”も2年前に作った曲がどんどん変わっていって、今の形になったんです。歌詞が変わりまくって、いろいろと変化してここに辿り着いています。

■変化があるから素敵なんだと思います。そして“エステみてぇだな”ですが、「エステみてぇだな」って、いい言葉ですね。(笑) 実際に言われた言葉なんですか?

NakamuraEmi そうです。お風呂上りにお父さんの背中をマッサージしながら化粧水を塗るんですよ。そうすると必ず「エステみてぇだなぁ」と言うんです。それに対して「行ったことないでしょ!」って。(笑)

■いいお父様ですね。すごく生々しくて、昨日、今日書かれた日記みたいな曲ですが、実際はもう7年経っていらっしゃるんですよね。なぜこのタイミングでのリリースとなったのでしょうか?

NakamuraEmi いつも抱えているものは必ず曲にして前に進んできたんですけど、2019年に父が亡くなった時は、曲にできるような状態ではなく、そこから数年経てば書けると思っていたんですが、その時期に書いた歌詞のノートを見返すこともなかなかできなくて。曲作りをしていても、「ここの3ページはお父さんのところだ」と思って、飛ばしてきてしまっていました。でも、デビュー10周年に初めて地元の厚木文化会館で凱旋ライブをした時、自分の全部をさらけ出している曲ばっかりなので、今まで家族はあんまり招待してこなかったんですけど、本当にほとんどの家族、親戚中が見に来てくれたんです。それで、そこでもう隠すものがなくなったのがすごく大きかったみたいです。あと、UVERworldさんとの対バンという、大きなものを乗り越えた後に、「今かもしれない」と、やっと吐き出せました。

■熟成されましたね。

NakamuraEmi 確かに7年経たなかったら、この言葉たちは出てこなかったというのはたくさんあります。

■曲の中ではぼかされていますが、お父さまの最後には間に合ったのでしょうか?

NakamuraEmi 間に合いませんでした。不思議なもので、ライブ開始の10分前だったんです。10分前に電話がかかってきて、「ああ……今なのか……」と思って。でも、前からお父さんが「俺が死んでもライブは延期するな」と言っていたので、ライブはやり切りました。うちは葬儀屋さんで、そういうこともあり、ずっと「死に目には会わなくていい。おまえの職業はそれでいい」と言われていたんです。家で看取ったんですが、お母さんが「お父さん死んじゃった」と言っている背後で、お父さんがすっげえ叫んでいる声が聞こえた気がして、「えっ?生きてんじゃん?!」と思って。(笑) 母とも「生きてるかも……」みたいなやりとりをしました。でも、その時にはもう亡くなっていたみたいなんです。そういう不思議なことがあったからこそ、「音楽をやっていけ!」というメッセージを受け取れました。

■「電話越しの最後の叫び声は~」は、ノンフィクションなんですね。

NakamuraEmi そうですね。本当にびっくりしました。「なんで叫んだんだろう?」という感じなんですけどね。(笑) 亡くなる前にそういうことがあると言うのは聞いたことがあるんですが、お父さんはもともと歌う人だったので、声もでっかいし、腹から出た声だったので、今になって「良かったな」と思うところです。

■ここは歌じゃなくて言葉にしたんですね。

NakamuraEmi ここまで歌詞を書き終えて、メロディも大体作って、この言葉が最後に出てきました。

■最後に、もそもそっと何かつぶやいていませんか?

NakamuraEmi 英語で「ありがとうお父さん、愛してますお父さん」と言っています。

■ありがとうございます。そして“去年一番泣いた日”は、10年前に作ったものを今出したんですね。前の曲とは逆パターンというか。

NakamuraEmi アルバムに入れるタイミングは何回かあったんですけど、ずっと残っていたんです。この曲は『突然ワンマン』という、いろんな土地に行ってワンマンライブをする中で、最初はご当地カバー曲をやっていたんですが、去年あたりから未発表曲をやってみようという企画の中で掘り起こしてきた曲なんです。そうしたら今の自分たちなりの歌い方になったり、カワムラさんのアレンジが変わったり、カワムラさんの新たなアレンジでどんどん素敵になっていったりしました。そして「これが今このアルバムの中のとても優しい曲になるのかもね」という選び方で、仲間に入りました。

■作ったのは10年前で、つまり11年前の話……「チョコ」が引っかかるんですよ。

NakamuraEmi これとかも、もう今じゃ書けない歌詞だなと思います。(笑) こういう考え方をしていたのも、30代ちょっとの時だったからかなと思ったりもします。

■雰囲気も今とはちょっと違いますもんね。

NakamuraEmi そうなんですよ。今じゃ書けないなと思います。でもこうやって、あの時にこれを残したからこそ、今これを書かなくて済んでいる人間になったんだなと思っています。

■ちなみにこの時は、なぜ泣いてらっしゃったんでしょうか?

NakamuraEmi この日はですね、付き合いが長かった人たちとのお別れがあったんです。大好きな人たちだったので、ずっと泣いていました。

■そうだったんですね。結構時間が経った曲ですが、書き変えたところはあるんですか?

NakamuraEmi 全然書き変えていないです。そのまんまです。