キム・ヒョンジュン VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

言葉の壁を超え、世界中の人たちが一緒に歌いながら、共に感動を分かち合える作品を僕はこれからも作り続けます。

7月に日本で発売した最新アルバム『LOVE UNIVERSE』でキム・ヒョンジュンは、自ら作詩・作曲をした曲を中心に、藤井フミヤ、ナオト・インティライミ、川嶋あいの手による楽曲も歌唱。ときには視点を地球や広大な宇宙にまで広げ、耳にした人たちの心を大きな愛で包み込んだ。そこには、いつも優しい笑みを浮かべ、ほっこりとする温かな思いを届けるキム・ヒョンジュンらしい姿が映し出されていた。対して、8月に韓国で配信リリースした『CAGE』では、クールな楽曲の上で、辛辣なメッセージを攻めるようにラップ。アルバムに描き出した音楽性とは異なる表情を見せてきた。
11月には、キム・ヒョンジュンが主演する日韓合作ドラマ『彼女のいない時間』が、4回に渡りメ~テレ(名古屋テレビ放送)で放送。さらに、Leminoで配信限定完全版の独占・同時配信も決定。11月9日(土)と10日(日)には、南海浪切ホール 大ホールで『2024 KIM HYUN JOONG CONCERT “THE LAST DANCE”』追加公演も控えている。アーティスト/アクター、2つのスタイルを持ってキム・ヒョンジュンは触れた人たちを魅了し続けている。今の彼の心模様を、主演ドラマを通した視点、そして、アーティストとしての側面から、本人の言葉を持って伝えたい。

■11月より全部で4回に渡り、ヒョンジュンさんが主役のウンテを演じた日韓合作ドラマ『彼女のいない時間』の放送が始まります。ウンテは、最愛の妻マイを亡くしたショックから彼女の記憶を失い、自宅で見つけた写真を手がかりに、記憶を取り戻す旅を始めます。その旅先で出会った一人の少女とウンテは数奇な運命の物語を綴り出す……。最初に台本をいただいた時、どんな思いを感じましたか?

キム・ヒョンジュン 何の知識も持たないまま最初に手にした台本を読んだ時には、「えっ?!高校生の女の子と恋をする物語?」と思いました。もちろん内容を理解していくと、決して危険な関係を描いた内容ではありませんし、むしろ心を揺さぶる素敵な物語だと感じました。ただ、中にキスシーンも出てきますし、僕自身が内容を深く理解して演じないと、観る人たちに「これはちょっと危険な関係の物語?」と思われてしまいそう?とも思いました。撮影に入る前や、もちろん撮影中も、相手役の天翔天音さんと場面ごとにいろんなお話をしながら、互いに見てくださる人たちに誤解の余地を与えないように表現していくことを心がけました。

■ドラマ『彼女のいない時間』の根底に流れているのは「純愛」ですが、ヒョンジュンさんは純愛という言葉をどのように受け止めていますか?

キム・ヒョンジュン 僕が10代や20代の頃にはよく耳にしていた言葉でしたが、最近の若者たちは自分の個性の見せ方が上手なのか、コミュニケーションの仕方にも多様性を感じているからなのか、近年、純愛という言葉に触れる機会が減ってきたなと感じています。その上での言葉になりますけど、僕が思っている純愛とは「無条件の愛情」です。親が子供に向ける愛情は、本当に無償で無限に広がる大きなもの。しかもその愛情は決して途絶えることのない永遠なるもの。僕はその気持ちを純愛にも感じています。先に、「近年、純愛という言葉を耳にしなくなった」と言いましたが、それは表層的なことであって、いつどんな時代でも、どれだけ時代が変わろうとも、人と人が愛を求める限りその人たちの愛情という心の土台になっているのは純愛だと僕は思っています。

■韓国と日本を舞台に撮影をしたドラマ『彼女のいない時間』ですが、ヒョンジュンさんの視点から、ぜひ見どころを語ってください。

キム・ヒョンジュン 一番は韓国と日本の制作チームが持っているお互いの良さや持ち味を遺憾なく発揮し、共に活かしあえた内容であること。物語は、韓国のチョンソンという街、そして日本では名古屋を主な舞台にしています。韓国を舞台に少女と初めて出会ったのが鉄道の駅でした。その少女との最後の物語を描く場所が、名古屋の海に近い河口にある葦の生い茂る原っぱ。そこへ至るまでにもいろんな風光明媚な場所で撮影を行いましたが、なぜ最後に日本へ辿りついたのかにも、ドラマを感じていただけると思います。謎めいた2人の関係が、どのように鮮明になっていくのか……その過程を背景を彩る景色と共に味わってください。

■ウンテの純愛な思いは、もしかして普段のヒョンジュンさん自身の心模様ですか?

キム・ヒョンジュン ウンテと僕には「同い年である」ことや、「守るべき人がいる」ことなど共通点は多いです。僕自身がウンテを演じながら改めて教わったのが、「大切な人を亡くしてから後悔する」のではなく、「一緒にいる時からしっかり守ってあげよう」と、常日頃から心がける気持ち。ウンテの姿を通して最愛の人を亡くした時の悲しさや、虚しさを味わってきたからこそ、僕はそう感じたんだと思います。ウンテの気持ちを今の僕に置き換えて考えてた時に思ったのが、僕自身を愛し、応援してくれるたくさんのファンのみなさんのことはもちろん、家族や友達、支えてくれるチームのみんなのことを、決して失わないように日頃から大切にしようと心がけることでした。それは普段から思っていましたが、改めてウンテからその気持ちを教わりました。

■ヒョンジュンさんは、ドラマ『彼女のいない時間』のエンディング主題歌を英詞で歌唱していますが、この曲に込めた思いを聞かせてください。

キム・ヒョンジュン なぜ歌詞を韓国語でも日本語でもなく英語にしたのかというと、日韓合作で作りあげたドラマであり、韓国と日本の視聴者の方々共に歌に込めた思いを感じてほしいと思った時、互いに共通して理解を深めていけるのは英語だと判断したからでした。歌詞は耳にした時点ですぐに理解していけるわかりやすい表現を心がけました。今は天国にいる最愛の妻マイのことを恋しく思うウンテの心情に、この曲を通して触れてほしいです」

■アコースティックな音を軸に、あえてシンプルで優しい曲調で表現していますが、その分ヒョンジュンさんの歌声から、揺れ動く感情も伝わってきました。そこは……?

キム・ヒョンジュン この楽曲に込めた感情を理解してほしいからこそ、少しでも気持ちが伝わるようにあえてシンプルなアレンジにしています。僕が歌に込めた想いが少しでも伝わったら嬉しいです。僕が『LOVE UNIVERSE』に詰め込んだのは、本当に「温かい愛情」。愛があるからこそ大切な人たちを守りたくなるし、その人たちのためにも生きていけます。

■ドラマの主題歌もそうですが、アルバム『LOVE UNIVERSE』でも、心温まる想いを曲たちに込めて伝えましたが、韓国で配信された『CAGE』では、世の中に対する辛辣なメッセージを力強いラップに乗せて表現されていました。あれは嬉しい驚きでした。今の世の中へメッセージしていく上で、それがヒョンジュンさんにとっては最も伝えやすいスタイルだったのでしょうか?

キム・ヒョンジュン そうです。『CAGE』には二つの意味があります。今も世界の至るところで戦争が起き、人々が争いを続けている。そんな世の中に向け、一つは「いくらジタバタしても、今の地球環境からは抜け出せない」という嘆き、そしてもう一つが「それでも僕たちは地球を形作る大切な一部だからこそ、自分たちの手でこの世界を(愛や平和に包まれた世の中に)変えていこう」という思いになります。人は昔から奪い奪われる争いを数多く繰り返してきました。争いに不安を感じているのは実際に紛争をしている人たちばかりではなく、それを見ている僕らの中にもあるんです。だからこそ争うのではなく、別の視点から生きることの意味や理由、大切さを捉え、自分たちなりに争いのない世界へ変えていこうとメッセージしています。

■多少視点が変わるとはいえ、その思いはアルバム『LOVE UNIVERSE』に収録した曲たちの根底にも据えられていた思いですよね?

キム・ヒョンジュン 僕が『LOVE UNIVERSE』に詰め込んだのは「温かい愛情」です。愛があるからこそ大切な人たちを守りたくなるし、その人たちのためにも生きていける。そうメッセージしています。対して『CAGE』では、世の中を批判していく視点で表現しています。確かにアルバム『LOVE UNIVERSE』と、シングルの『CAGE』では伝え方に違いはありますけど、根底にある僕自身の思いは同じです。

■今を変えたい願いを込めた『CAGE』を聴いたからこそ感じた思いでもありますが、アルバム『LOVE UNIVERSE』には、春を舞台にした卒業や旅立ちの楽曲も多く収録していました。そこにはヒョンジュンさん自身が次のステップへ踏み出す思いも込めていたのか、そこも気になります。

キム・ヒョンジュン 『LOVE UNIVERSE』というアルバムは、応援してくれる仲間たちと一緒に「この愛を育んでいこうよ」という、純粋な思いを持って作りあげたものでした。同時に、僕の活動の大切な場であるコンサートを通してファンのみんなと熱くなり、みんなで大合唱をしたくて作りあげた面もありました。音楽的なアプローチという面では、『CAGE』で見せた表現もそうですが、『LOVE UNIVERSE』の中でもいろんな曲調を通して、僕の音楽性の振り幅を示しました。過去の作品も加えるなら、ここへ至るまで本当に多種多様な音楽スタイルを手がけ、僕なりの色に置き換えて昇華し続けてきました。もちろんこれからだって、まだ挑戦していない音楽スタイルを見つけては挑み続けますし、僕の音楽の旅が終わることはありません。