玉城ティナ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

玉城ティナ『惡の華』

絶望の青春、そしてそこからの未来

累計発行部数300万部を記録し、テレビアニメ化もされた押見修造の人気コミック『惡の華』が待望の実写映画化、9月27日より公開となる。閉塞感に満ちた地方都市で息苦しい毎日を過ごす中2の春日高男とクラスの問題児・仲村佐和。絶望の青春をただただ突き進むこの2人が必死に目指す〈向こう側〉とは――自身いわく「唯一無二のヒロイン像」である仲村を演じた玉城ティナに、この作品について、仲村について話してもらった。

■『惡の華』との出会いと、そのときの印象を教えてください。

玉城 16~17歳の頃、漫画の単行本と出会ったのが最初です。タイトルと表紙が目を引いて、こういう漫画は読んだことないなって、軽い気持ちで買って読みました。今までに読んだことのない感じで、当時、年齢が近いこともあって忘れられずにいました。なので、映画のお話をいただいたときすぐにピンときました。

■演じられた仲村に関しての印象はいかがでしたか?

玉城 こういう表現の仕方をする女性がいるんだということにまず驚きましたね。でも彼女にしかない言葉の選び方が面白かったし、場の空気を一気に変えてしまうあの感じとか、これは唯一無二のヒロイン像なんじゃないかって。

■言葉の選び方というところで、特に印象に残っている言葉はなんでしょうか?

玉城 やっぱり「クソムシが」っていうセリフが、まず「ん?」ってなるじゃないですか。(笑) 「ん?ちょっと意味がわからないぞ」って。そういう彼女独特の造語がたくさんあるんですけど、そこに悪意があるわけではないというか、悪意があるような言い方をするシーンもあるんですけど、彼女が言うと悪口なのかなんなのかわからないっていうところがすごく面白いんですよね。劇中でもそういうセリフが散りばめられていますけど、ここまでのセリフはなかなかないんじゃないかと。『惡の華』の世界観だからこそ、成立したセリフなんじゃないかなと思います。

■その仲村の役作りで意識された点は?

玉城 まずはビジュアルですね。私は普段ボブなんですけど、ちょっとショートな感じに切って、色もオレンジ赤っぽく染めて、アニメっぽい色にはしたくなかったので、実写でできるギリギリの感じを自分なりに考えて決めていきました。そこから内面の部分、「仲村らしさみたいなものはどこからくるんだろう?」といろいろ考えて、立ち方や声のトーン、背筋の感じなんかを細かく自分の中で設定していくことで作っていきました。感情の浮き沈みがすごく激しいタイプなので、シーン毎の浮き沈み方は現場の空気感によって変えたりして。例えば、笑顔になったかと思えば、いきなり突き放したり、そういうところは実際に動いてみてからじゃないと決められないなと思ったので、まずは本読みでセリフの感じをつかんで、そこから現場に入って、あとはどうなるかだなって。

■そのいろんな表現の中でも特に目の表現に圧倒されました。あれはご自身で意識されてのことですか?

玉城 自分の顔の中でいちばん目立つパーツでもあるし、漫画を読んでいても仲村の表情は目が第一にくるなと思っていたので、ああいうセリフを言いながら、どんどんあの目になっていったというか、ああいう見せ方になっていきましたね。

■演じていく上で仲村に入り込んでいった、仲村になっていったわけですか?

玉城 そうですね。大変なシーン、教室のシーンを天候の影響で2日目とかに早めに撮ることになったんです。それによって、仲村というキャラクター像が自分の中で早めに固まっていったのが、逆に良かったのかと思います。天候やいろんなことで撮影のスケジュールも変わったりするので、常にフラットにいることも大事だなと思いました。

■今お話に出た教室のシーンをはじめ、秘密基地や夏祭りのシーン、海のシーンと、印象に強く残るシーンが非常にたくさんあるのですが、ご自身でいちばん印象に残っているシーンはどこでしょうか?

玉城 本当にたくさんあって、今挙げていただいたシーンもすごく印象に残っているんですけど、もし他のシーンでひとつ挙げるとしたら、大雨の中、2人(仲村と春日)のところに佐伯さんが来るシーンですね。あそこでは3人の関係性がちょっとずつ変わってきているというか、春日の気持ちもどっちつかずで、仲村が好きなのかっていうとちょっと違うけど、惹かれているっていう感情を好きとしか表せられないのだとしたら、あれはあれで成り立つというか、その単純さみたいなものが観られるシーンなんですよね。あと、仲村が春日の服をうわーって脱がしていくところがあるんですけど、人のシャツを破り裂いて、ズボンを脱がすということなんてなかなかないから、あれはいい経験になりましたね。(笑) ブチブチブチッていくと、結構気持ちがいいんですよ。

■ふふふ、確かに気持ち良さそうです。(笑) 海のシーンの撮影はいつ頃だったんですか?

玉城 冬ですね。ラストの前の日ですごく寒かったんですけど、実際に冬服を着ている設定だったので良かったです。逆に中学生編は、真夏のシーンを冬に撮影していたので、寒いなって思いながらも震えないようにやっていました。海のシーンはラストの大事なシーンで、中学生のままで人生が終わるわけではなく、高校生になって、大学生になるかもしれないし、働くかもしれない、そういう将来とか未来への道みたいなものがあのシーンには詰まっているのかなと思っています。春日と仲村の関係性もそうですけど、そこに常磐さんが入ってきたことによっての距離感みたいなものが、観ている人にどういう風に映るのかなって。そこはすごく気になるところでもありますね。