阿部真央、自身の現在地とありのままの姿を歌うアコースティックライブ。
阿部真央が10月27日(金)に東京・Spotify O-EASTで、『阿部真央 Acoustic Live Tour “I’ve Got the Power”』の東京公演を開催した。今回のライブは10月から11月にかけて全国10箇所を巡るアコースティックライブツアーの6公演目。開演時間を過ぎ、ミトカツユキ(Key)と和田建一郎(Gt)を連れて手を振りながらステージに現れた阿部は、出迎える拍手が期待に鳴り止んだのを受け、「静かになるの早くない?」と笑う。久々のスタンディングとなる今公演。会場には7台のカメラが入っているという。緩やかに温かい雰囲気で始まったライブだが、ギターを抱えた阿部が軽くコードを鳴らし、“じゃあ、何故”を歌い始めると空気は一変。マゼンタのスポットライトを浴びた切ない恋の歌は、続く“貴方の恋人になりたいのです”の泡のように揺蕩うサウンドへと流れ込んでいく。淡い想いに微睡む歌声が一気に熱を帯びるサビに息を呑めば、「ちょっと元気な曲やっていいですか?!」と歌い出された“どうしますか、あなたなら”の心躍るメロディに手拍子を誘われる。晴れやかな空気のままに歌われる“Believe in yourself”は、仕事に疲れた金曜の夜へ深く沁みた。
MCでは静かに聞き入る観客に向けて「すごい静かじゃない?みんないる?!」と呼びかけた阿部。「ツアーの各地で貰ったパワーを贈ります」と言った際には、観客席から「パワー!」のコールが上がり、それに「ヤー!なかやまきんに君です!」と返して笑わせる。また、ツアー中に肩の上あたりまで伸びた髪に触れ「今日のヘアセット、『千と千尋の神隠し』のハク様っぽい」とおどける場面もあった。ステージから眺めた観客たちの様子を気遣いつつ、5曲目には“boyfriend”が選ばれる。ギターを降ろした“15の言葉”では、マイクスタンドを握る指が祈るように組まれ、オルゴールめいたサウンドに転がるメロディを甘やかに歌う。ふと観客へ背を向けてステージの上へ長い影が伸びた“未だ”では、激しく熱を帯びるサビに一瞬だけ訪れる静寂を歌声が高らかに切り裂いた。真っ直ぐな願いを切々と語る“コトバ”は溢れ出る思いが指を震わせ、悲しい恋を独白する“嘘つき”は次第に嵐の如き激情を帯びる。横広がりのO-EASTではマイクから唇が遠ざかった時の阿部の息遣いまで聴こえ、声を張り上げればマイクを通さないありのままの歌声が2階席にも届く。
ここで椅子が運び込まれ、「僭越ながらわたくし、座らせていただきます」と、それに腰かけた阿部は東京公演のSOLD OUTを改めて喜び、デビュー当時から幾度も披露してきた“いつの日も”を夕陽色のライトの中で歌う。「作曲した高校生当時にはレゲエ風になると思っていたんだけど、ならなかったです」という“Don’t leave me”を披露。“Don’t leave me”に続いて“Sailing”を歌い終えた阿部は、長年所属していた所属事務所から、2023年4月に独立したことを振り返り、その際に悔しいことや悲しいことがあったと明かす。「本当に全てが変わるんだと覚悟して、今年はみんなに会えないだろうと覚悟しました。4月で一度(プロから)アマチュアに戻るんだと覚悟しました」そんな「終わりの狭間」で全ての変化を受け入れ、歌声を届け続けることを星に誓うと、不思議に縁が舞い込んできたという。「私が歌手であり続けられるのは、ファンの方やスタッフ、周りのミュージシャンたちのおかげです。だから私はずっと言っているんです。ありがとうございます、今日は来てくれて」そうして阿部は新たな旅立ちを歌う“I’ve Got the Power”をその唇に乗せる。歌うこと、その幸せの全てが踊る身体から湧き上がり、莫大なエネルギーを解き放ちながら躍動して。ライブハウスいっぱいに満ち溢れるその歌は、阿部真央というアーティストの姿そのものだ。
“傘”、“I Never Knew”を終え、ここで観客席から公演当日10月27日に誕生日を迎えるファンを探した阿部は、手を挙げた数人へ観客とともにハッピーバースデーソングをプレゼント。「あと2曲やって帰ります!」と言うと、「朝までやって!」の声が飛ぶ。ステージと観客席とで歌声を贈り合う“I wanna see you”を終えて、本編のラストに選ばれたのはJ-POPの王道を貫く“ロンリー”だ。満員の観客を前にギターをかき鳴らして歌う阿部の姿はスターそのものでありながら、その立ち姿にはどこか路上ライブの幻影を感じた。
「あ・べ・ま!」「おー!」のコールに呼ばれてスキップしながらステージへと戻った阿部は、初めて作った曲だという“MY BABY”をメルティな歌声で披露。間奏ではこの曲がまだ作曲に慣れていない頃に作られたものであることに触れ、「だからちょっと尺が長いんですよ、もうちょっと頑張ってください!」と観客を応援する。ここでミトカツユキと和田建一郎をステージから送り出し、ひとりになった阿部。「今回のツアーの19曲目としては初めて歌う曲です」と歌い出された1stアルバム収録曲“デッドライン”は、冒頭のコードが爪弾かれた途端に歓声が上がる。爆発的な歌声が朗々と響いた会場。観客から上がった「歌い続けてくれてありがとう!」の声に「ありがとう、こちらこそ」と返す阿部は、2024年に活動15周年を迎えること、セルフカバーアルバム収録曲選びやツアーのセットリスト作成の際に「たくさん曲を作ってきたな」と思ったことに触れる。「その(作って来た曲の)中には、黒歴史とか、恥ずかしいなと思う曲も混ざってたりします……次の曲はそういう曲です」そう紹介されたのは“ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~”。可愛らしく爽やかなメロディラインに過激な行為へ走る恋心を乗せたこの曲に、観客は指を3本立てて「3丁目」を表現する。「何度も繰り返しになりますが、皆様本当に今日はありがとうございます。これからも歌い続けますので、阿部真央をどうぞよろしくお願いします」
ライブの中で数え切れないほど口にした感謝の言葉を再び観客へ贈った阿部は、最後にライブでしか披露していない“母の唄”をその声と指先に乗せる。これまで「表現者」として色とりどりの楽曲で様々な恋や愛の形、そしてたくさんの想いを歌って来た阿部だが、ラストソングで見せつけるのは、ひとりの人間としての「阿部真央」の生々しい姿と叫びだった。ステージを後にするその瞬間まで感謝の想いを語り続け、今日このひとときのために集まった観客たちへ手を振っていた。
Text:安藤さやか
Photo:森好弘・百恵
『阿部真央 Acoustic Live Tour “I’ve Got the Power”』@Spotify O-EAST セットリスト
01. じゃあ、何故
02. 貴方の恋人になりたいのです
03. どうしますか、あなたなら
04. Believe in yourself
05. boyfriend
06. 15の言葉
07. 未だ
08. コトバ
09. 嘘つき
10. いつの日も
11. Don’t leave me
12. Sailing
13. I’ve Got the Power
14. 傘
15. I Never Knew
16. I wanna see you
17. ロンリー
ENCORE
01. MY BABY
02. デッドライン
03. ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~
04. 母の唄
LIVE
東阪ビルボードライブワンマンライブ
15th Anniversary
Abe Mao Billboard Live Tour 2024
・ビルボードライブ東京(1日2回公演)
2024年1月24日(水)
1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
・ビルボードライブ大阪(1日2回公演)
2024年1月28日(日)
1stステージ 開場14:30 開演15:30 / 2ndステージ 開場17:30 開演18:30
◇チケット情報
サービスエリア¥7,500-
カジュアルエリア¥7,000-(1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
ABEMANIA FC1次先行※応募者同行者ともに年額会員 = 2023/11/23(木祝)21:00より
https://tixplus.jp/feature/abemao_billboard/
ABEMANIA FC2次先行※応募者年額会員もしくは月額会員、同行者は非会員OK = 2023/12/4(月)18:00より
https://tixplus.jp/feature/abemao_billboard2/
Club BBL会員先行=2023/12/16(土)12:00正午より
一般予約受付開始=2023/12/23(土)12:00正午より
公演に関するお問い合わせ:
・ビルボードライブ大阪
TEL 06-6342-7722
〒530-0001大阪府大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
・ビルボードライブ東京
TEL 03-3405-1133
〒107-0052東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F