足立佳奈 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

もうすぐ離れ離れになる友達へ綴った新曲が、前向きだけど切ない理由

前作“ノーメイク”では初のドラマタイアップを務めるなど、精力的な活動を続けている足立佳奈が、今年4枚目の配信シングル“Film”を完成させた。高校生でのデビューから4周年を迎える8月30日にリリースとなる本作は、来春に大学卒業を控え、もうすぐ離れ離れになるというルームメイトに向けて書かれた楽曲。前向きな別れでありながらも、不安や寂しさも混じった複雑な感情は、リアルな出来事が基になっているからこそ。そこから生まれた切なくも温かい歌声は心を揺さぶり、「大切な人と一緒にいる」ということについて、しみじみと考えさせられる作品になっている。同時にリリースされるカップリングの2曲も含め、本作に込めた気持ちを語ってもらった。

■今年4作目のリリースで、モチベーションも高い状態なのかなと感じているんですけど、今の制作意欲はいかがですか?

足立 今回の“Film”とつながるところもあるんですけど、もうすぐ(来春)大学卒業を控えたタイミングで、就職で同じ地域にいられなくなる子もたくさんいて、そろそろ友達との別れを意識しなければならない時期になってきたなと感じているんです。それで制作するにあたっても、友達との曲を書けたら、今いちばん自分が表現したいところにつながってくるなと思って。

■自分に起きているリアルなことを曲にしたいというか。

足立 そうですね。いつも曲を作る上で、実体験だったり、今の自分の気持ちだったりを大事にしているので。

■それでできあがった“Film”は、同棲していた友達に向けた歌なんですよね?

足立 はい。今もまだ一緒に住んでいるんですけど、もうすぐ彼女も家を出るタイミングになってきて、私ひとりになるんだなというところで、ちょっと寂しい気持ちになったり、昔の写真を見て懐かしいなと感じたり、そういう日常が今回の楽曲には描かれています。

■彼女は足立さんにとってどんな存在なんですか?

足立 もともとは高校からの友達なんですけど、もうひとりの私になれるんじゃないかと思うくらい、私のことを全部知り尽くしていて。もう家族みたいな存在ですね。

■大学を卒業するから、別々に住むことにしたんですか?

足立 彼女は大学生ではないんですけど、私自身が大学を卒業する年ということで、一旦お互いにリセットして、しっかりひとりで歩んでいけるようになれたらいいねということで、別々に住むことになりました。

■僕は“Film”を聴いて、とても切ない曲調だったので、本当はもっと一緒にいたいのかなと思ったんです。

足立 もちろん一緒に住みたいとも思いますし、お互い気持ち的にはハーフ&ハーフなところがあって。この一緒に住んでいる時間があった上で、ひとりの時間も経験することは、得るものがたくさんあるんじゃないかなっていう話もよくするんです。お互いの大切さに改めて気づくとか、今までできなかったことをひとりでできるようになったとか。家族と離れる時に思うことと同じかもしれないですけど、そういうことをふたりで話しながら、ずっと一緒にいてもいいけど、一緒にいない時期もあっていいんじゃないかなって。

■すごく前向きな理由だとは思うんですけど、なんで曲調は切なくなったんですか?

足立 やっぱり気持ちの強さで言ったら、別れることへの寂しさとか、別々に行くことへの不安とかが8割なんです。でも、誰しも不安の中にも、どこかで楽しみを感じながら過ごしていると思うんですよね。それで自分のいちばん強く表現したいことが、彼女と別れるということへの寂しさだったり、今までの思い出の暖かさだったりしたので、こういう曲調になったんだと思います。

■この曲を本人には聴かせたんですか?

足立 デモ段階の時に聴いてもらいました。私の作った歌は日常的に聴いてもらっていて、逆に彼女が作った歌も聴かせてもらっていて。普段からお互いにお手紙というか、「今日は早めに行ってくるから、ゆっくり寝てね」みたいな書き置きをしていたり、そういう文字でのやり取り、歌でのやり取りは、日常的にしています。

■彼女も曲を作る人なんですね。実際に“Film”を聴かせた感想はどうだったんですか?

足立 うーん、何かを言われるっていう感じでもなく、それは彼女のシャイなところでもあるんですけど、「ありがとう」とは言われました。でも、そこから彼女が曲を作って返してくれたんです。それに私は号泣しました。(笑)

■その曲も聴いてみたいですね!

足立 そうですよね。(笑)

■僕は家族以外と一緒に住んだことがないんですけど、友達と一緒に住んでよかったなと思うのは、どんなところですか?

足立 今日あった出来事を共有できるところかな。話を聞いてもらえたり、逆に話を聞けたり。私たちは共感しあうことが多いというか、「わかる!」とか、「それは嫌やね」とか、そういう感じなんですけど、「自分を理解してくれる人がここにいるんだな」って思えることが、いちばん大きいかなと思います。

■僕はお泊りとかも苦手なタイプなんですけど、この曲を聴いて誰かと住んでみるのもいいのかなと思いました。

足立 ありがとうございます。ウソなく、すべてを話していたら上手くいくんじゃないかと思います。それは家族でも、恋人でも、みんな同じなのかもしれないですけど。

■レコーディングの方は、いつもと違いはありましたか?

足立 彼女のことを常に思いながらっていうところもありつつ、技術的なところで新しい発見があって。今回は「こんなに小さい声でいいんですか?」っていうくらいの囁きボイスで歌っているんです。でも、力を抜いて歌っているように聞こえるけど、ちゃんと情景も浮かぶし、彼女のことも浮かび上がるし。いつもよりマイクとの距離も近づけて、1対1の空間を意識して歌ったんですけど、こういうやり方もあったんだなと勉強になりました。

■この曲を聴いて大切な人を思い出す人も多いと思うんですけど、足立さん的には聴いた人にどんなことを感じて欲しいですか?

足立 この曲は本当に私が彼女に向けて作った曲ではあるんですけど、たとえば遠距離恋愛をしているカップルの方にも同じように共感してもらえたらいいし、家族との思い出を浮かべてもらってもいいし。それぞれの立場で相手の方を想像してもらって、「ずっと一緒にいる」ということを前向きに考えてもらえたら嬉しいです。

■カップリングの2曲についてもお聞きしたいんですけど、『ドデスカ!』(名古屋テレビで放送されている情報番組)のテーマソングになっている“すばらしい日”も友達の話ですよね。これも実話なんですか?

足立 実話です。“Film”で題材になった彼女と共通の友達というか、高校から3人で仲良くしていた友達のことで。私は岐阜県出身で、『ドデスカ!』は東海地方で放送される情報番組なので、私が地元にいた時に濃い思い出のある彼女のことを書けたらいいなと思ったんです。

■彼女と久々に再会した日のことが描かれていますけど、そういう友達と会って昔話をして笑うことが、足立さんにとっての素晴らしい日ということなんですか?

足立 昔話をするというよりかは、彼女がいたら素晴らしい日になるということですね。

■好きな人と一緒にいることが素晴らしい?

足立 そうですね。この歌詞の中でいちばん大事にしたいワードが、1番にある「変わらない私の太陽」で、彼女は本当に太陽みたいに、どこにいても、いつ話しても、私を照らしてくれるんです。笑顔も、会話も、彼女が作ってくれる空気も、全部があったかくて、眩しくて、いつも憧れちゃう存在というか。

■友達でもあり、憧れでもある?

足立 はい。私がギターを始めたのも彼女の影響で、彼女と出会っていなかったら、きっと今の私はないなと思うくらい、本当に特別な存在です。