足立佳奈 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

「自分の気持ちを大事にして、素直に表現できたら」季節を感じながら制作した『Seeker』を語る。

足立佳奈が4枚目のアルバム『Seeker』をリリース。昨年4月から行っていた連続リリースについて「季節を感じながら制作できた」と振り返る足立。本アルバムは連続リリースした楽曲9曲を含む全12曲が収録されるが、本作の新曲である “今が一番ここちいい”や“カンパイ”も含め、日常の空気や感情の機微が織り交ぜられた歌詞と歌声が気持ちよくマッチした作品になっている。
本稿では昨年5周年を迎えた足立にインタビューを実施。デビューしてからの5年を振り返ってもらいながら、連続リリースやアルバムの制作エピソードなど、たっぷりと話を訊いた。

■昨年の8月にデビュー5周年を迎えた足立さんですが、改めてこの5年間を振り返ってみてどんなことを感じますか?

足立 すごくあっという間だったなと思います。今回のアルバムの完全生産限定盤で改めて過去の曲が収録されたり、昔の思い出についてのブックレットを制作したりしているんですが、「こんなにも振り返れることがたくさんあるんだな」ということに気付いて。なので、あっという間でしたけど、しっかりとそこには思い出が詰まっていて、すごく充実していたなと思います。

■振り返ってみることで、改めて思い出がたくさんあったことに気付けたんですね。

足立 そうですね。やっぱりこの5年間の中でも、コロナの時期に入って自分でも活動できているのかできていないのかが分からなくなってしまったこともあったんです。そんな中でもちゃんと文字や写真で残っている思い出があるとちゃんと活動できていたんだなと思います。「いろんな人と出会ってきたんだな」と感じることができてよかったです。

■その中でも特に印象的だった出来事はなんですか?

足立 甲子園で始球式をさせてもらったことは、すごく自分の中では大きかったなと思います。歌の方では、デビューした時のリリースイベントで全国のみなさんに初めてお会いした時で、全国で待ってくれている人がたくさんいることにすごく驚いて嬉しかったですし、「もっと音楽をしたい」と改めて思うことができました。

■デビュー5周年を迎えるにあたって、昨年4月から毎月連続配信リリースを行っていましたよね。連続リリースの手応えはいかがでしたか?

足立 「人の心ってこんなにも変わっていくものなんだな」と思いました。私は歌を書く時に自分の実体験であったり、自分が描きたい思いを普段から意識して作詞・作曲をしているんですけど、例えば、4月は春の甘酸っぱいラブソングを歌っていて、5月になったら自分への応援ソングを歌っていたりとか、9月、10月になるとまた秋のラブソングが増えてきたり、「1年を通して書きたいことがこんなにも変わっていくんだな」というのを感じることができました。

■それは普段から意識してることというよりも、連続リリースをやってみて初めて気が付いた部分でもあったんですか?

足立 そうですね。「こんなに変わってしまっていいのだろうか……」と、ちょっと戸惑った瞬間もあって。歌詞だけじゃなく、音楽のサウンド感やジャンルもそうなんですけど、1年を通して様々なことをさせてもらったなと思いました。特に今回の連続リリースは、曲を作りためて徐々にリリースしていったというよりも、月ごとに季節を感じながら同時に制作をしていたんです。リアルタイムでやっていたからこそ、季節感も出ていたのかなと思います。

■その都度作ってリリースとなると、スケジュール的にもすごくタイトだったのでは?とも思うのですが、いかがでしたか?

足立 でもすごく楽しかったです。普段はなかなかリアルタイムで自分の気持ちをみなさんに届けられることもないので。もちろん曲は作りますけど、リリースするのは3ヶ月や半年に1回とかじゃないですか。そういう意味では自分の中では心もすっきりするし、嬉しかったです。

■連続して曲を作っていく中で、ご自身の成長を感じたこともありましたか?

足立 今回の連続リリースの中でも、本当にたくさんの方と楽曲を制作させてもらって、中村泰輔さんだったり、Shin Sakiuraさんだったり、みなさんのカラーやアイデア、アドバイスをしっかりと心に残すことができて、「自分の今にもこれからにもちゃんと繋がっているな」と感じました。成長というか、みなさんのおかげで気付けたことがたくさんありました。

■具体的にはどんな気付きがありましたか?

足立 8月にリリースした“4321”の中で、ラップ調で韻を踏んでいる歌詞に挑戦しているんです。それは「私ってこういうことにも挑戦できるんだ、実現できるんだ」と感じて、すごく嬉しかったですし、印象的でした。

■連続リリースの中で特に印象に残っている楽曲はありますか?

足立 連続リリースの中だと、シンガーソングライターのTaniYuukiくんとフィーチャリングした“ゆらりふたり”の制作は、すごく嬉しい経験になりました。Taniくんとは元々友人だったんですけど、友人だからこそ、一緒にお仕事で楽曲制作をすることができて、世の中の方たちに届けられたことが嬉しくて。制作中もずっとワクワクしていました。

■2人で曲を作って一緒に歌うという経験は、普段の感覚とは違う部分も多かったですか?

足立 私1人だとなかなか表現できない部分もあって。例えば今回だと、Taniくんが恋愛をしている男性の気持ちを書いてくれたんですが、そういう部分は自分では曲として落とし込むことができなかったりするので。本当にリアルな男女の恋愛を描いた楽曲になったなと思いました。

■制作はどのような順序で行われたんですか?

足立 曲の作り方としては、私が先に1人で歌う部分とサビを作らせてもらって、Taniくんに歌って欲しいBメロを穴あきの状態で渡して。そこからTaniくんが私の書いたことに対して答えてくれるような感じで書いてくれて。お手紙のやり取りをしているような感じでしたね。Taniくんの楽曲は、言葉の数や譜割りの仕方、韻の踏み方とかが特徴的だなといつも思っていて。そういうところが私にはなくて、すごく魅力的なところだなと思っていたので、私もそれに歩み寄るように作らせてもらいました。

■今作『Seeker』は4枚目のアルバムですが、作り始めるにあたってどんなビジョンがありましたか?

足立 連続リリースをさせてもらった4月から12月までの曲が入ることは決まっていたので、その中で書きたいことや、伝えたいことが変わっていく様子を「どうやってアルバムタイトルで表現していこう……」ということから考え始めました。そこでいろいろな言葉を考えていた時に、「Seeker」という言葉に出会ったんです。日本語で「探求者」という意味なんですけど、私は音楽を通して自分を探したり、愛を求めたり、あなたを求めたり、いろんなことを探求できるんだなと思えたんです。そう考えたらすごく「Seeker」という言葉がしっくりきて。このタイトルにして進めていこうと思いました。

■ジャケット写真は緑を基調としたものになっていますが、これにも何か理由があるんですか?

足立 私は緑色が大好きで、普段から緑をたくさん身につけているんですけど、『Seeker』というタイトルになった時に、楽曲では愛や自由を求めているけど、「私のプライベートでは何を求めていくんだろう?」と考えたんです。そうしたら、自分の好きな色である緑だなと思って。そこで自分らしさを表現したいと思って緑にしました。

■アルバムの1曲目に収録されているのはアルバムタイトルと同じ“Seeker”ですが、これはアルバムのコンセプトが決まってから作った曲だったんですか?

足立 コンセプトが決まってから作った曲です。実はこれは、アルバムコンセプトの「Seeker」の意味とは少し違っていて。1曲目の“Seeker”では、憧れの人のことを「Seeker」と言っているんです。自分の身近に憧れの人がいるんですけど、「自分もその子のようになりたいな」と思いながら、でも自分がなりきれていないっていうことに葛藤している様子や、そこから駆け上がっていく様子をこの曲で描きたいと思って、中村さんと一緒に作っていきました。

■普段歌詞を書く際は集中して一気に書き上げることが多いですか?それとも日常的に言葉を書き溜めていることが多いですか?

足立 「いいな」と思った言葉があったら日常的にメモしています。普段から友達や周りの人が言っていたことで「いいな」と思うことがあったらメモをしているし、自分の感情の変化をちゃんと文字にして書き残しておくということもしています。