■“この雨がやんだら”の歌詞は、主人公の目線になって考えたとのことですが、彼らのどんな心情を入れ込みましたか?
足立 まずは「お互いに好きな気持ちがあるんだけど、素直に好きと言えない」という、学生ならではの悩みを歌詞にしようと思いました。もちろん大人になってからも、より素直に好きと言えなくなるかもしれないんですけど。(笑) でも学生時代は周りに友達もいたり、意外と二人きりの時間がなかったりして、言えないことも多いと思うんです。その感じを入れたいなと思いながら歌詞を書き始めました。「アオハライド」の作品は、主人公の二人が一度離れて、別の地域で暮らした後に、もう一度巡り合うというお話なんです。2番ではもう一度巡り合った時に、変わってしまったあなたの変わらないところを探したり、変わらない君に素直になれなかったりする、お互いのもどかしい気持ちを描けたらいいなと思って作りました。
■今回はそのもどかしい気持ちがどちらか一方ではなく、男女それぞれの目線から描かれています。男女が交互に登場する歌詞の書き方はこれまであまりなかったかと思いますが、書いてみていかがでしたか?
足立 すごくテンポ感がリアルじゃないですか。例えば普通に話している時も、1番の歌詞の量だけを先に私が話すね、みたいなことってないじゃないですか。なので、話す分量もちょうどよくて、お互いが少しずつ気持ちを伝えていくっていうテンポ感が心地良くて、話し言葉で書くことができたなと思います。
■少しずつ気持ちを伝えていく歌詞の構成もあって、1曲の中で二人の関係性が少しずつ変化していくのも面白いと感じました。コメントには、「曲の中では二人の未来を描いていないので、みなさんの中で想像して欲しい」といった言葉もあります。
足立 そうですね。やっぱりどの方にも楽しんでもらいたいと思ったので、音楽を聴いて自分と同じだと共感して楽しむ人もいれば、こういう経験はないけど歌詞を読みながら楽しんでくださる方もいていいと思っていて。聴きながら「この先の二人はこんな感じなのかな」と考えてもらえたら、ひとつの作品としてすごく嬉しいことだなと思ったので、そういう形を取りました。
■楽曲の構成も、2サビが終わってラスサビにいくのかと思いきや、そのまま曲が終わっていくんですよね。歌詞で未来が明示されないのと同じように、完結しない印象があると感じました。
足立 そうなんです。Dメロが終わった後、結局サビにはいかないんですよね。この構成であることで、もう一度この曲を聴きたくなると思いますし、どこか心地いい物足りなさがあるなと思います。いろんな曲の長さで悩んだんですけど、未来を想像してもらうにはこの形がぴったりなんじゃないかと思って、この長さにしました。そういった意味でも、どんなシチュエーションで恋をしている人にも響く曲になれるのかなと思います。今すごく幸せなカップルが聴いたら「ずっと君のとなりで離れたくないね」と思い合える曲になると思いますし、まだ片思い中の人たちは「あなたのことが好きだから離れないようにいたい」と願うような曲にもなりますし。どんな恋をしている方にも伝わる楽曲になったかなと思います。
■曲調はしっとりとしているので、曲だけを聴くと寂しい歌という印象があったのですが、歌詞は前向きに進んでいくニュアンスで、ギャップを感じました。
足立 寂しい曲なのかなと思った方に是非聴いて欲しい部分があるんです。2番の「あーこんなに好きだよが」の、「好きだよが」のフレーズ。唯人くんにも意識してもらいましたし、私も意識した部分なんですけど、この「好きだよ」は、「本当に心がこもっている『好きだよ』をください」と唯人くんにリクエストした部分なんです。唯人くんは普段は落ち着いていて冷静に歌うことが多いと思うんですけど、今回は演じてもらいました。メロディから切なさを感じた人は、2番の「こんなに好きだよが」の部分にぜひ注目して聴いて欲しいです。切ない成分を感じられる曲だからこそ、温かい言葉を歌う良さがより際立ったと思います。
■今までドラマや恋愛リアリティーショーなどへの書き下ろしも多く経験している足立さんですが、そういった書き下ろし曲を書く際に意識していることや、気を付けていることはありますか?
足立 やっぱり作品に寄り添うことですね。学生さんが主人公の作品だったら、「自分が学生の時はこうだったな」というのをちゃんと思い出して書きますし、はたまた30代の女性が主人公だったら、自分にはまだ経験はないけれども、周りの大人の方たちに聞いたりして、学ばせてもらうと思います。
■例えば、今回のような高校生の恋愛を題材にした作品のタイアップを2019年くらいに、つまり足立さんが今より高校生に近い時期に書くとしたら、書く歌詞は今とは変わっていたと思いますか?
足立 それで言うと、多分変わっていないと思います。今回はその当時に寄せている節があるので、過去の引き出しを開けて曲を作っているという感覚で。なので、数年前に作っていたとしても、あまり変わっていないと思います。
■なるほど。今のご自身から見た高校生というよりは、ご自身がその当時に戻るような感覚だったんですね。
足立 そうですね。
■10月からはアコースティックツアーが始まりますが、どんなライブになりそうですか?
足立 アコースティックということでいつもより近い距離で、みんなと同じ空間を過ごすことができるんじゃないかなと思っています。あとは、ちょうど24歳になるタイミングのツアーでもあるので、新しい挑戦もしていきたいと思っていて。それが何かはまだ言いませんけど、ぜひ観に来てくれたら嬉しいです。
Interview & Text:村上麗奈
PROFILE
岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。2014年、LINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月メジャーデビュー。Twitter・Instagram・TikTok・LINEなどのSNSフォロワーが計130万を超え、リリースした楽曲のストリーミング総再生数は1億4500万再生を突破するなど、若者から幅広い支持を得ている。5周年を記念して、2022年4月より連続配信リリースを敢行。2023年2月15日には自身4枚目となるオリジナルアルバム『Seeker』をリリース。9月23日にWOWOW 連続ドラマW-30「アオハライド Season1」主題歌の新曲『この雨がやんだら』を、竹内唯人をフィーチャリングに迎え配信リリース。
オフィシャルホームページ:www.adachikana.com/
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RELEASE
『この雨がやんだら』
SME RECORDS
9月23日 ON SALE
LIVE
『ADACHI KANA Acoustic Tour “23-24″』
・10月13日(金) 東京・下北沢ADRIFT
・10月19日(木) 大阪・BERONICA
・10月20日(金) 愛知・BL café
・10月26日(木) 岐阜・岐阜club-G