足立佳奈 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

足立佳奈『まちぼうけ』

1番になれなくても一緒にいたい。切ない片想いソングに込めた気持ち

昨年は配信シングル『朝になったら削除します』が話題になるなど、コロナ禍でもSNSを中心に注目を集めている足立佳奈が、2021年初作品となる配信シングル『まちぼうけ』を完成させた。1番になれないとわかっていても片想いを続ける切ない気持ちを歌った本作は、同じような状況に置かれている人の心に寄り添い、今恋をしていない人にも胸を締め付けるような感情を思い出させてくれるドラマチックなバラードだ。息遣いにまでこだわり、曲の主人公になりきって歌ったという足立佳奈に、楽曲に込めた気持ちや「納得いくまで想い続けていい」という自身の恋愛観を語ってもらった。

足立佳奈『まちぼうけ』

■去年は2月にアルバムを出してから、コロナでツアーが中止になって、以降は目に見える活動が少なかったと思うんです。どんな感じで過ごされていたんですか?

足立 この状況で自分にできることはないかなということで、バンドメンバーとセッションしてみたり、楽曲制作したりして過ごしていました。どうしてもお家にいることが多かったので、お家で過ごしている自分に対しての曲とか、お家にある家具に対して「この子はこういう風に思っているのかな?」という曲とか。ちょっと不思議ちゃんに聞こえるかもしれないですけど、いつもは見てこなかったところに目を向けて作詞をがんばっていました。

■その中で夏に配信した“朝になったら削除します”が話題になりましたよね。

足立 やっぱり“朝になったら削除します”というワードが印象だったんじゃないかなと思うんですけど、「大丈夫?」「病んでない?」とか、優しい言葉をたくさんいただきました。(笑) 少し切ない片想いをしている楽曲だったんですけど、新しい私のラブソングの形を見出せたんじゃないかなと思います。

■その“朝になったら削除します”以来の新曲として、今回“まちぼうけ”がリリースされますけど、これも片想いの歌ですよね?

足立 はい。「1番にはなれないけど、それでもあなたといられるなら一緒にいたいよ」っていう気持ちをテーマに書いてみたいなと、ずっと思っていたんです。これからバレンタインの季節ですし、春が出会いなら冬は別れの季節でもあると思うので、その中でみなさんの心に寄り添える音楽ができたらなと思って、しっとりとした切ないラブソングを書きました。

■バレンタイン前に「1番になれなくてもいい」って、結構切ないですね……。

足立 そうですね。この曲には自分の経験も、お友達の話も入れていて。「付き合っているとは言ってもらえないけど、なんとなくずっとそばにいたり、連絡があったり、思わせぶりな態度をとってくるんだよね」っていう子が、自分の周りに多かったんです。世の中にはいろんな恋の形があると思うんですけど、こういう恋をしている人が、自分の周りだけでこんなにもいたので、多くの人に刺さればいいなと思って作りました。

■「なんとなく気付いてたよって/君の1番ではないなって」と歌っているのに、それでも好きなわけですよね?

足立 はい。サバサバしている方だったら、「じゃあ次いこう」と思うのかもしれないけど、1番になれなくても、そばにいたいと思う気持ちって、絶対どこかにあると思うんです。

■足立さん自身は「君の1番ではない」と気づいたら、どうしますか?

足立 本当に好きだったら、もっともっとがんばります。私は結構粘り強く、根気よく、振り向いてもらえるまでがんばっちゃうタイプだなと思うんです。なんとなくこの曲の主人公とも似ているのかなと思います。

■「勝手に耐えて 苦しんで」ということもあるんですか?

足立 そうですね。1番の「勝手に泣いて 溢れちゃって」も、2番の「勝手に耐えて 苦しんで」も、自分で気に入っているところで。本当に想いすぎて、自然とふわっと涙が出てくることもあると思うんです。振り向いて欲しいからがんばるけど、どこか無理していて、その無理している気持ちも押し殺して、耐えて、自分で自分を苦しめて、彼だったり彼女だったりの素敵だなと思うところを見て、またときめいて……。そのループをずっと繰り返して、変わらない関係が続いていくことってあるんじゃないかなと思います。

■実際こういう状況の人に相談されたら、なんてアドバイスしますか?

足立 「好きでいるうちは、ずっと追いかけてもいいと思うよ」って、私は言っちゃいますね。これは恋愛だけじゃないと思うんですけど、自分が納得いかないのに諦めようとしても、忘れようとしても、どこかで後悔として残ると思うんです。後悔も決して悪いことではないと思うんですけど、私だったら一度きりの人生、もったいないなと思ってしまうので、誰かがこの曲みたいな恋愛で悩んでいたとしても、納得いくまで好きを突き詰めていいと思うし、想いを伝えてもいいし、想い続けられるなら想い続けていいんじゃないかなと思います。

■カッコいいですね!「もっと欲張っていいなら奪いたいんだよ」という歌詞もありますけど、普段の足立さんは我慢するタイプなんですか?

足立 私は逆で、あんまり我慢をしないタイプだと思います。いい言い方をすれば、自分の気持ちに素直に生きているかなと思います。

■その部分は曲の主人公とは違う?

足立 そうですね。でも、これから環境が変わったり、自分の経験が増えたりすると、この曲みたいにグッと堪えて心の中で想うことも増えてくるのかなとは思います。私、まだお子様なんですよ。(笑)

■ちなみに足立さんはどんな男性がタイプなんですか?

足立 うーん……言葉遣いが丁寧な人が好きです。例えば、私は「お前」って言われるのが苦手なんですけど、親しき仲にも礼儀ありというか。家族でも友達でも、言っていいことと言っちゃいけないことがあると思うんです。そういうことを当たり前にできる人は素敵だなって。私もできないことがたくさんあるので、偉そうなことは言えないんですけど……。

■そうなんですね。ちょっと意外な回答でした。

足立 本当ですか?

■取材する為に過去の足立さんの動画をいろいろ見たんですけど、初対面の人にダジャレを連発していたので。(笑)

足立 ははははは!(笑) いろいろ経験する中で、好きな人のタイプや、自分がなりたい姿も変わってきたのかなと思います。

■デビューした時は高校生でしたしね。話を戻しますけど、レコーディングでこだわったポイントは?

足立 一番は冒頭の部分ですね。すーっと息を吸って、ピアノと歌で始まるんです。最近の私はピアノやギターのシンプルな音楽を好んで聴いているので、そういうものを作りたいなと思って。あとはお話口調というか、つぶやいているような、自分の心に言い聞かせているような歌い方にこだわりました。

■曲によって声色を使い分けている印象があるんですけど、今回はどんなことを意識されたんですか?

足立 自分が曲の主人公になりきって、相手のことを想い描きながら歌いました。ひとりの人を目の前に思い浮かべながら、淡々と自分の気持ちをつぶやいていくという意識でした。

■そうやって演技をするように歌うことは多いんですか?

足立 多いです。俯瞰して、第三者目線で歌っていくのも素敵だなと思うんですけど、今回の楽曲では心の叫びというか、特にサビの部分では、「うわー!」って泣き叫んでいるような感情のこもった歌い方をしたいなと思ったんです。

■個人的には4分間の恋愛ドラマを見ているようでした。この曲は同じ状況にある人にはもちろんですけど、どういう人に届いたら嬉しいですか?

足立 前を向かなきゃとか、もう終わらせなきゃとか、何かを諦めようと自分に言い聞かせている方に、「まだ想い続けてもいいんだな」って思ってもらえたら嬉しいです。隣で寄り添えるような、大丈夫だよって言ってあげられるような気持ちを代弁しているので。

■僕はこの曲みたいな状況になったことはないんですけど、この曲を聴いてこういう状況になりたいなと思いました。

足立 あー、恋はされているんですか?

■していないので、こういう恋をしたいなって。(笑)

足立 ははは!(笑) 嬉しいです。ありがとうございます。