足立佳奈 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

足立佳奈『まちぼうけ』

■“まちぼうけ”と一緒に配信される“DRIVE”についても聞きたいんですけど、こちらは自動車(中部エリア ホンダカーズ)のCM曲ということで、その前提で作ったんですか?

足立 そうですね。ドライブしている時に、前向きな気持ちになってもらえるような、そういうイメージで作らせてもらいました。まず一緒に作らせてもらった中村泰輔さんからデモをいただいたんですけど、疾走感のある曲にしたかったので、どういう音色にするか相談させてもらって、それから歌詞も詰めて完成させました。

■「目指す目的地なんていらない/いろんな道を見つけたらいい」と、明確な目標が見えていなくても、前に進んでいればいいんじゃないかと背中を押すような曲ですよね。

足立 それはすべてのことに通ずるところがあると思うんです。例えば私のお兄ちゃんは、今社会人になって日々がんばっているんですけど、「夢ってなんだろう?」とか、「たどり着く場所はどこだろう?」とか、よく兄妹で話しているんです。でも、目的地を探すために悩むというよりは、いろんな道を経て、最後に何かしらの形で「あー、がんばってきたな」と思えることが、もしかしたら最後の目的地なのかもしれないなって。なので、この先何があるかは誰にもわからないから、遠回りだなと思うことも、ひとつずついろんな道をたどりながら進んでいったらいいんじゃないかなと思って、この歌詞を書きました。

■何がしたいのかわからないという人も多いですしね。

足立 そうですね。私は本当にありがたいことに、音楽と出会って、今この環境があって、大好きなことをさせてもらっていますけど、身近な自分の家族に、まだやりたいことが見つからないけど、生きていくために上を向いてがんばっている人がいるので、私のお兄ちゃんだけじゃなくて、同じように思っているすべてのみなさんを後押しできるような、肯定できるような楽曲にできたらいいなと思っていました。

■足立さん自身は、もともと男の子に混じって野球をやっていて、お母さんに反対されながら歌手を目指して、あえて困難な道を歩んできたように見えるんですけど、そこで悩んだことはないんですか?

足立 ありますけど、そうやって悩んだ時には、いつも友達が「佳奈のやりたいことをしたらいいよ」「佳奈が選んだ道には、いつも私たちがついているからね」と言ってくれたんです。そういう一番の味方でいてくれる仲間がいるので、困難なことがあったとしても、向かっていっていいんじゃないかと思わせてくれるんです。

■いい友達がいるんですね。今まで壁に当たったなと感じた経験はないんですか?

足立 うーん、2年くらい前ですかね。上手くできない自分に、もどかしい気持ちを感じて、落ち込んでしまって。その時は心を閉ざすというか、友達とも距離を置きたい、誰とも話したくないと思ってしまいました。

■それはどうやって乗り越えたんですか?

足立 やっぱり音楽のおかげだなと思っていて。私は感情が動いた時に曲を作ることが多いんです。そのときはズドーンって落ち込んではいたけど、いつもとは違う感情が動いていたので、曲作りに励むことで、「曲ができた!やった!」という喜びに変わりました。それで乗り越えられたなと思います。

■壁に当たったことを曲にしたんですか?

足立 はい。それは“私へ。”(2019年発表『little flower』収録)という曲なんですけど、その時の自分の状況を重ね合わせて作りました。それも“DRIVE”と同じく中村さんと一緒に作らせてもらったんですけど、その時に悩んだおかげで私はこの曲に出会えたので、今は悩んでよかったなと思えています。

■“DRIVE”には「ここしかない タイミングで/今しかない 夢をみよう」という歌詞がありますけど、今足立さんが見ている夢は?

足立 すごく当たり前のことかもしれないですけど、これからも、明日も明後日も、遠い先も、歌い続けることが夢になるのかなと思います。その歌い続ける過程のなかで、素敵な評価をいただいたり、素晴らしいステージに立てたりということがあるんじゃないかなと思うので、とにかく素直に自分の気持ちを歌詞にぶつけて、誰かに届けられたら、それは本当に幸せなことだなと思います。

■その時どきの年齢の自分をありのまま見せたいという感じなんですか?

足立 そうですね。常に等身大の自分を描けたらいいなと思っています。デビュー当時の楽曲を聴いてもらうと、歌い方も、曲調も、ビジュアルも、まったく違うと思うので、そういう私の成長もみなさんに見届けてもらえたら嬉しいですし、みなさんと一緒に成長していけたらいいなと思います。

■デビューした頃と比べて、自分自身で変化している自覚はあるんですか?

足立 あります。昔は「笑顔になって欲しい」「笑顔の輪を広げたい」と思って、“笑顔の作り方~キムチ~”という楽曲でデビューさせてもらったんですけど、だんだん笑顔だけじゃなくて、もっと人間らしいところを歌を通して表現したり、いろんな方の日々の場面で寄り添っていけるようになりたいなって、気持ちが変化していったんです。今も笑顔の輪を広げたい気持ちはあるんですけど、それだけじゃなくて、いろんな色に染まっているという感じですね。

■人間ですから、いろんな感情がありますしね。

足立 はい。最近ラブソングが増えているのも、やっぱり同世代の子たちが、たくさん恋をしているからということが大きくて。あとは、今の自分の毎日を楽しみたいという気持ちとか、大人に左右されずに自分の気持ちを貫いていきたいとか、二十歳だったからこそ言えることとか、その時どきに思ったことを等身大で伝えていけたらなと思っています。

■ちなみに曲を作る時は、同世代を意識している部分もあるんですか?

足立 意識しているというよりは、自分が経験したことを書くとなると、必然的に同世代の人に届きやすくなるのかなと思います。それに経験していないことを書こうとすると、自分でも薄く感じちゃうんです。どうせだったら自分が経験したことで、説得力がある歌を書きたくて。自分も痛みを感じたからこそ、その人に寄り添える曲が作れるのかなと思うので。

■そう言われると、もっと年を重ねた時の歌を聴くのも楽しみになります。

足立 私自身、本当に楽しみなんです。この先、何があるかわからないですけど、いい方に変わったとしても、悪い方に変わったとしても、私は歌い続けていたら毎日キラキラできるのかなと思うので、何歳になってもお手紙を書くように言葉を歌で伝えられたらなって。

■それこそ結婚したとか、子供を産んだとか、そうなったら新しい曲もできるでしょうし。

足立 そうですね。いろんな経験をしたいですね。

■まだまだコロナ禍は続きそうですけど、今年はどんなことに力を入れていこうと考えていますか?

足立 年が明ける前から、すごく準備をしてきたことが、今回の“まちぼうけ”だったので、まずはこのコロナ禍で、どうやってみなさんに届けていくか。それが自分が今やるべきことだと思うので、そこを見守っていただけたらなと思います。

■年末からYouTubeで「絵日記便」を始められましたけど、歌以外のこともやっていく感じですか?

足立 歌以外のことというよりかは、みなさんが使っているSNSが変化してきているので、少しでも多くの方に知ってもらえる場所ができたらいいなと思って。今までYouTubeでは、MVとかアーティストとしての姿しか見せてこなかったんですけど、みなさんの日常のなかにYouTubeがあるのなら、そこで私の素の部分とか、楽曲以外の私らしさも知ってもらえたらなと思って始めました。今は調べたらすぐに出てくる世の中だと思うので、「足立佳奈」って調べた時に、人柄はこんな感じで、歌はこんな感じでっていう風に、点と点がつながっていったらいいなと思います。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。2014年、LINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月メジャーデビュー。Twitter・Instagram・TikTokなどのSNSフォロワーが計130万を超えるなど若者から幅広い支持を得ており、2020年8月31日にリリースした配信シングル『朝になったら削除します』はTikTokのハッシュタグ視聴で760万を超え、SNSに投稿された動画の総累計再生数は1000万を超え話題に。2021年2月3日には配信シングル『まちぼうけ』をリリース。
https://www.adachikana.com/

RELEASE
『まちぼうけ』

足立佳奈『まちぼうけ』

配信シングル

SME Records
2月3日 ON SALE