須賀京介(Vo)、JOHN(Gt)、矢沢もとはる(Ba)、宮城紘大(Dr)
みなさんの心のヤスリで、僕らを100億カラットのダイヤにしてみませんか?!
4人組ロックバンドAm Ampが12月3日に最新シングル『ミス』をリリース。作品ごとにいろいろな音楽の顔を見せる彼らが、今回はどんな表情をそこへ隠してきたのか。その秘密にせまるべく、須賀京介、JOHN、矢沢もとはる、宮城紘大の4人に話を訊いた。
■これまでに何枚もミニアルバムや、EP、デジタルシングルを発表してきましたが、作品を出すたびに異 なる音楽性を見せていますよね?その表現の幅広さには、毎回嬉しい驚きを覚えます。
須賀 未だに方向性が定まっていないんですよ。(笑) でも、最新作に収録した“ミス”について語るなら、 一回りして辿りついた感があります。というのも、僕以外の3人がAm Ampに加入したのが2023年6月のことで、このメンバーで作り上げた最初の作品がEP『where (Am) we?』でした。その時にこのメンバーで最初に作った楽曲が、MVも制作した“罪綴り”でした。言ってしまえば、その曲を始まりにAm Ampは作品を出すごとにどころか、曲を発表する度、いろんな音楽性を見せてきました。そして辿りついたのが、“罪綴り”と同じ匂いを持った“ミス”です。つまり、ここにきて一回りして原点回帰をしたと言いますか、あの頃を想起させる楽曲に戻ってきたわけです。
■そこに至るまでに多種多様なことをやってきたからこそ、改めて原点に戻るというか、「始まった頃に作 りあげたような楽曲を再びやろう」となったわけですね?
須賀 そうです。このメンバーで動きだしてからの1年間、ミニアルバム『A Hard Day’s Nite』を通して、当時のヴィジュアルにも出していたスーツ姿の似合うスタイリッシュでポップな楽曲を描き、今年7月に出したミニアルバム『Catch me if you can?』のジャケットも含め、収録した“チャイラッテ”では、僕らが二次元の キャラクターになって、その姿でMVも制作しました。もちろん各作品の中でも様々な音楽性を示しなが ら、4人とも表現面にもいろいろと磨きをかけてきました。その成長を踏まえた上で、「“罪綴り”を作った時 のようなダークでマイナー調の曲世界を今の僕たちが新たに構築したらどうなるのか……?」という挑戦として、今作の“ミス”を手がけた面もありました。
■それだけ各メンバーが表現の振り幅を持っているということですよね?
宮城 自分たちで言うのもなんですが、4人とも本当に素材がいいので。(笑) 先日もFC(ファンクラブ)を通して、会員になってくれた方々に女装した姿もお披露目したんですけど、気がついたら音楽性の振り幅だけじゃなく、いろいろな面で表現の振り幅が広がってきていて、むしろもう「どこまで広げてやろうかな?」という感じです。僕ら自身、常にドラマチックさを追求して活動しているからこそ、幅広い音楽性を描きだしたのも、そのドラマチックさを描く上で必要だったから出してきたことでした。
■今のAm Ampは、音楽性のみならずいろんな面で表現の振り幅を広げている状態なんですね。
宮城 これからもそうしていきたいですし、みなさんにもそう思っていただけたら嬉しいです。ねぇ、JOHN?
JOHN そうですね。僕自身も女装に関しては「これまで知らなかった世界を見たな」、「そうか、これがエンタメをやるということなんだ」という意識でした。Am Amp自体が、須賀京介というコンポーザーがいた上での話にはなりますが、4人とも異なるエッセンスを持っていて、その要素を楽曲を通していろいろと絡み合わせることで成り立っているのが今のAm Ampなんです。自分自身も今までプロとして音楽に携わってきましたけど、Am Ampでの活動はその経験を持ってさえも、まだまだ知らないエンタメの世界があることをいろいろと教えてくれる場だし、本当にいいバンドだと思っています。
宮城 今回の“ミス”の衣装では初めてハット(帽子)をかぶったんでしょ?どうだった?ハットをかぶってギターを弾くというのは?
JOHN 最高ですよ。ハットをかぶるのはもちろん、着物、チャイナ服など、和洋中を折衷して作った今回の衣裳姿は初めての経験でした。アーティスト写真を見てもらえればわかるように、あえて目深にハットをかぶっています。その姿でライブをしていると、いい意味で視界が遮られて、見える範囲が狭まるから、逆に演奏に集中していけるんですよ。(笑)
■Am Ampの場合は、どんな曲調であろうとギターの音が強烈な印象を与えていますよね。むしろ、ギ ターの作りだす表情がその曲の色を形作っていると言いますか。
JOHN 正直、今までやったことがなかった音楽スタイルに挑戦することもあるので、新しいことを学べるという意味でも、すごく向上心を高めてくれる環境がこのバンドにはあるんです。そのおかげで、メンバーそれぞれが表現のレベルを上げてきたのも事実だから、すごくいい環境だと思います。3人とも、彼(須賀)が書いてくる曲を手に取る度、「おー!今回はこう来たか!」という嬉しい刺激を感じています。今回は初めて自分が作曲をした、“うらぎり”という曲が収録されていますが、この曲は自分の得意な分野であり、今までのAm Ampにはあまりなかったような、王道のギターロックナンバーになっています。でも「須賀京介が歌えば、どんなスタイルだろうとAm Ampになるんだな」と、あらためて感じさせられました。
■矢沢さんはAm Ampの持つ表現の幅広さ、多様性については、どんな印象を持っていますか?
矢沢 僕はずっとヴィジュアル系というシーンでバンド活動をやってきたのですが、もちろんそのシーンの 中にも幅広い音楽スタイルはありますけど、一つのバンドでここまで幅広く表現するバンドの存在は、Am Ampが初めてでしたね。ヴィジュアル面でも、爽やかなスーツ姿や、二次元の人になったり、今回の“ミス” では、僕自身が得意としているヴィジュアル系に近い姿と言いますか、メイクが濃く、衣裳も派手なスタイ ルを示しています。そうやって作品ごとに音楽性はもちろん、ヴィジュアル面でも装いを変えていく振り幅 も、やはりAm Ampらしさなんだなと捉えています。
■今回のシングル『ミス』を作るにあたっての狙いも教えてください。
須賀 今までは1曲1曲、いろんな表情を作りながらそれを1枚の作品としてまとめあげることが多かった けど、今回は4曲の流れを通して1枚の作品としての全体像を見据えた制作をしました。端的に説明をするなら、一番スリリングさを持った“ミス”で幕を開け、徐々に開放的になりながら、最後の“うらぎり”で華やいで終わるという。それをこの4曲を通してグラデーションのように描きました。
■“ミス”は女性目線で歌詞が書かれていますが、主人公の女性が振り回される男性は、もしや須賀さん 自身なのでしょうか?
須賀 その発言はここでは遠慮しておきます……。(笑)
宮城 よくお気づきになられましたね!そういうことです。
須賀 おい!せっかくそこはあえて含みを持たせるように言っているのに。(笑) でも“ミス”に出てくる男性は決して自分ではないです。そこはいろんな女性心理を研究した上で書きました。
■“ミス”では、「倦怠と春夏秋冬」を「献帯と春歌周到」と書いていたり、マイナー調の楽曲にあわせて「短調」という言葉を使っていて、その「短調」も「単調」とかけたりなど、いろんな言葉遊びをして書いていますよね?
須賀 言葉遊びというか、言葉の綾というか。そういうトンチキとも捉えられるような表現が好きなので、“ミス”に限らずいろんな曲の歌詞に投影しています。
宮城 そういうことだと思っていたよ。僕らはあえて京ちゃんから歌詞の説明を受けることなく、それぞれに解釈して演奏に向き合っていますけど、僕も「短調の言葉をマイナーコードとかけていたんだ」と感じてい たし、「ミスとミセスをかけているのかな?」とも想像していたからね。
須賀 Miss(女性)とMiss(失敗)はかけているけど、Miss(ミス)とMrs(ミセス)はかけていないね……。(笑)
宮城 あっ、かけていないそうです。(笑) でもAm Ampの歌詞は読む度に発見がある深い内容ばかりだ し、発見する度に驚きや楽しみを覚えるというか、オートマティックでドラスティックな歌詞全体を通してプリミティブだなと僕は思いました。
■すみません、ちょっと意味が……?(笑) “ミス”に綴った歌詞の内容は、公開したMVともリンクしているのでしょうか?
宮城 リンクしかしてないです!MVの中では能面の女性が踊っているじゃないですか。踊る時に彼女は 右肘から上げていくんです。左手でも両足を開くのでもなく、右肘から上げていく。そこに僕は強く意味を感じていました。しかも能面の女性は京ちゃんのお母さんなんです。
須賀 それも全然違うので、気にしないでください……。(笑)