Wienners『BATTLE AND UNITY TOUR 2023』ライブレポート@渋谷CLUB QUATTRO

水曜日のカンパネラと作り上げた熱い夜。

3月7日(火)、Wiennersの対バンツアー『BATTLE AND UNITY TOUR 2023』の東京公演が渋谷CLUB QUATTROにて行われた。2019年に行われた『BATTLE AND UNITY TOUR 2019』より、定期的に対バンツアーを行っているWienners。気鋭のアーティストによる本気のステージはもちろん、相手へのリスペクトが存分に感じられるWiennersの熱いステージやMC、セットリストは、ツーマンライブの魅力を最大限に引き出してくれる。そんな『BATTLE AND UNITY TOUR』の2023年編となる『BATTLE AND UNITY TOUR 2023』の東京公演、その相手として登場したのは、水曜日のカンパネラだ。

定刻を過ぎた頃、「こんにちは、こっちだよ」とどこからか水曜日のカンパネラのボーカル、詩羽の声がする。オーディエンスが出入りする扉から登場するという彼女のサプライズに、会場は一気に驚きと高揚に包まれた。重い低音が身体を震わせるバックトラックに乗せ、ディープなボーカルを披露する“ティンカーベル”を入場曲に、詩羽はオーディエンスと限りなく近い距離で笑顔でリリックを紡いでいく。ステージに辿り着くと、オーディエンスの注目を集めたまま“アリス”へ。シンプルに気持ちよく響くトラックとユーモラスなリリック、自由に身体を動かしてリズムを感じる詩羽の存在感に、会場は熱を帯びていく。

挨拶の後には「聞いた話によると、Wiennersのファンのみんなはノリがいい人が多いそうですね」とオーディエンスを沸かせ、「あと偏見だけど、タバコ吸う人が多そう。タバコ吸う人?意外と少ない!バンド好きなのに!?みんなライブの途中でタバコ吸いに行かないでね!」と、オーディエンスとの交流を楽しむ。そのフランクなMCと、その場にいる人を巻き込み盛り上げるあまりの上手さに、MCが終わる頃には会場の全員が彼女のことを好きになっているであろう雰囲気だ。そんな圧倒的な魅力でステージを包み込んだ後には“ディアブロ”、“バッキングガム”を披露し、再びステージを離れる詩羽。するとフロアの中央に置かれた脚立に跨り、360度のオーディエンスを見下ろす形で“モヤイ”を披露。脚立に跨ったまま「今まで一度もやったことないことをやりたくて。みんなのノリと勢いを試す」と話して、次の“鍋奉行”で行ったのは、サビで彼女がタオルを回すのに合わせてオーディエンスもタオルを回す……のではなく、詩羽が跨る脚立の周りをぐるぐると回転する。その中心では詩羽が満足げな表情を浮かべながらユニークなリリックとフロウで圧倒しているのだから、すっかり会場を自身の魅力で染め上げている。再度ステージに立った時の息を飲むような存在感も圧巻で、最後にはアカペラから代表曲“エジソン”を披露し、“招き猫”へ。ダンスミュージックの持つ高揚感と彼女自身の人柄で会場中を虜にした。

詩羽のステージングの余韻が残る会場であったが、Wiennersのステージが始まれば一気にライブハウスらしい熱さを取り戻す。メンバーが歓声に迎えられて登場し、「手加減しないけど、一発目から上がっていけんの?」と玉屋2060%(Vo&Gt)がフロアを煽ると、会場が既に熱くなっていることを見越してか、1曲目から“SOLAR KIDS”をトップスピードで演奏。和風かつキャッチーな“SHINOBI TOP SECRET”へ続ける。力強い演奏に負けじとついていくオーディエンスの熱量を受け取ったメンバーはどこか清々しい表情を浮かべながら、積極的にフロアとアイコンタクトを取っているようだ。

MCでは玉屋が「大丈夫?タバコ吸いに行ってる奴いない?」と、詩羽のMCを拾うことも忘れない。「ガンガン騒いで帰ってね、よろしく!」と“MONSTER”を賑やかに披露し、「一緒に世界の果てまでぶっ飛びましょー!」とのアサミサエ(Vo&Key&Sampler)の言葉から“カンフーモンキー”、“YA!YA!YA!”へとフルスロットルでなだれ込んでいく。パワフルでハイスピードな演奏でありながら、KOZO(Dr)と∴560∵(Ba)が紡ぐ安定感のあるリズム、玉屋とアサミサエの2ボーカルの彩り、目まぐるしい楽曲の構成がもたらす満足感は、Wiennersのステージのなによりの魅力だ。

「水カンのステージヤバかったね!脚立ってどこで貸してもらえるの?」と、玉屋が再び水曜日のカンパネラに触れると、その流れから“エジソン”のカバーを披露。アサミサエの歌うサビが爽やかに印象を変え、間奏で玉屋のギターが加わると、途端にWiennersのサウンドにバランスが傾くさまも面白い。“エジソン”の後にはWienners屈指のダンスミュージックである“BIG BANG”と続け、ディープな世界を構築する流れも粋だ。“ANIMALS”でギラギラとした熱さで魅了したあとには“FACTION”に続き、サイケデリックな音色とスピード感のある楽曲で振り落とさんばかりに熱量を増していく。

「エンターテインメントでどこまだって旅に行けると思うんだ、インドにだって行けるんじゃないの?」と“恋のバングラビート”を演奏。続く“TRADITIONAL”で更にギアを一段上げるような高揚と熱狂に包まれる。“FAR EAST DISCO”の後には「こんなもんじゃ終わりたくないんだけど、ラストスパートいける?」「音楽の神様、今日はこいつらがでかい声を出すのをお許しください!」と“GOD SAVE THE MUSIC”を弾けんばかりに演奏。“蒼天ディライト”でこの日何度目かのクライマックスを迎えると、「終わりたくないよ、全然終わりたくない!」と名残惜しそうな玉屋が「やるつもりなかったけど!」と叫び、力強く“よろこびのうた”をかき鳴らす。

アンコールでは詩羽を呼びよせ、“UNITY”でコラボレーション。各々のステージをたたえ合うように熱い演奏を繰り広げた。ダンスミュージックの上でクールにリリックを紡ぐ水曜日のカンパネラと、熱いパンキッシュなサウンドを繰り広げるWienners。鳴り止まない拍手の中、ラストは“Cult pop suicide”で幕を閉じた。サウンドこそ違えど、ユーモラスな楽曲と人柄の魅力という共通点が呼応し、大きな力を発揮したこの日。最高のコラボレーションが作り上げた、あまりにも熱い夜だった。

Text:村上麗奈
Photo:かい

『BATTLE AND UNITY TOUR 2023』@渋谷CLUB QUATTRO セットリスト
水曜日のカンパネラ
01. ティンカーベル
02. アリス
03. ディアブロ
04. バッキンガム
05. モヤイ
06. 鍋奉行
07. 卑弥呼
08. 赤ずきん
09. エジソン
10. 招き猫

Wienners
01. SOLAR KIDS
02. SHINOBI TOP SECRET
03. MONSTER
04. カンフーモンキー
05. YA! YA! YA!
06. エジソン (カバー)
07. BIG BANG
08. ANIMALS
09. FACTION
10. 恋のバングラビート
11. TRADITIONAL
12. FAR EAST DISCO
13. GOD SAVE THE MUSIC
14. 蒼天ディライト
15. よろこびのうた

ENCORE
01. UNITY with 詩羽 (水曜日のカンパネラ)
02. Cult pop suicide