Anonymouz VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

「ここからはじまる」Anonymouz(アノニムーズ)が示した、その言葉の意味とは……。 

Anonymouzの1stアルバム『11:11』が、2月15日にリリース。アニメ「ヴィンランド・サガ」SEASON 2 オープニングテーマの“River”、アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマの“Ladder”、テレビ東京ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」主題歌の“カタシグレ”から、ソニーのXperia 5 II CMソングの“Eyes”など、数多くのタイアップ曲を収録し、他にも島田昌典プロデュース楽曲の“恋をして”、澤野弘之提供&プロデュース楽曲の“Silhouette”、内澤崇仁(androp)提供&プロデュース楽曲の“はじめのはじまり”など、人気クリエイター・人気アーティストからの楽曲も含め全18曲収録。同作品の魅力を本人に伺った。

■アルバムタイトルへ記した『11:11』。まずは、ここへ込めた思いから聞かせてください。

Anonymouz 「11:11」は、エンジェルナンバーと呼ばれていて「自分を正しい道へ導いてくれる数字」と言われています。「11時11分」の時間にも、「未来への発展」という意味があります。「未来へ向けたAnonymouzとしての活動が発展していけるように」「Anonymouzの活動を正しい道へ導いてもらえるように」という思いを込めて、まずはアルバムのタイトルに『11:11』と名付けました。

■そうなんですね。アルバムのタイトルから決めていったんですね。

Anonymouz このタイトルは早い時期から決めていました。アルバム制作は最初に軸となるテーマを決めて、その上で制作を始めました。今回のアルバムには2022年度に、アニメやドラマ、CMに起用されたタイアップ曲たちすべてを収録しようと決めていました。私はAnonymouz(名前のない女の子/匿名性)という名前で活動をしているように、私自身がそれぞれの楽曲に合わせて、いろんな主人公に成りきって歌っています。結果、それが一つの枠に収まることのない多様性を持ったキャラクターになっているわけですが、アルバムを作る以上は、今の私が表現できるキャラクターのすべてを形にして出し切りたいと思いました。その思いを軸にしながら、既存の曲たちに加える形で、足りない要素を新曲として描いて、『11:11』というアルバムの中にまとめあげました。

■中には “Eyes“や“Oxygen”のように、過去に発表した曲たちも収録していますよね?

Anonymouz “Eyes”は「ソニーXperia 5 Ⅱ」のCMソングとして、たくさんの人たちにAnonymouzを知ってもらえるきっかけになった楽曲だったので、今の自分を紹介するアルバムだからこそ必要だと思い収録しました。“Oxygen”は、ライブで歌うとそれまでの雰囲気をガラッと変えてくれる曲であり、私の声の強みを引き出す歌ということで入れました。新曲以外の未タイアップの曲を収録したのは“Oxygen”だけです。

■Anonymouzさんはタイアップ曲も多く手がけていますが、何かとコラボレーションした方が創作する上では表現しやすい面もあるのでしょうか?

Anonymouz 何の制約もない中で曲を書いていると、同じような引き出しから曲の要素をひっぱり出してしまうこともあります。だけどアニメやドラマなどとコラボレーションする際には、その主人公や物語の世界観と自分を重ね合わせ、「そういう時に自分はこういう気持ちになれるな」などと、いつもの自分にはない発想が出てきたりもします。私の中から新しい要素を引き出してくれるので、タイアップを通して曲を書き下ろすということも楽しんでいます。それはアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマ“Ladder”を作った時もそうでした。ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」主題歌の“カタシグレ”を作っている時は、主人公の気持ちのみならず、周りにいる人たちの気持ちも汲み取りながら、「もし、自分がここにいたらどう思うのか」と考えながら生み出しました。

■アニメやドラマは、ストーリーと主人公の存在にさまざまな要素を詰め込んでいるから、いろんな風に気持ちを導きやすいのかなと想像します。例えば「フェルメールと17世紀オランダ絵画展 テーマソング」の“Unbreak”の時は、どういう風に気持ちを広げたのでしょうか?

Anonymouz “Unbreak”は、先に1コーラスだけ楽曲が出来ていました。その曲を気に入ってもらい、テーマソングへというお話をいただいたことからフルサイズを作りました。その際に、絵画展の雰囲気に寄り添うことや、フェルメールの持つ美しく広がる世界観を曲の中にも表現したかったので、曲が進むにつれ、美しく広がりだすドラマチックな曲調に作りあげました。その上でアレンジャーさんにクラシックの要素を組み込んでいただくなど、より絵画的な音色を持った楽曲へと仕上げてもらいました。

■アルバムでは、澤野弘之さんや内澤崇仁(androp)さんにも曲を提供していただいていますよね。

Anonymouz いくら多彩な表現の扉を開いても、やはり同じ人から出てくる要素ですから、根底では繋がる部分が生まれます。でも他の方だったら、私にはまったくない要素で楽曲を提供してくださるし、それを歌うことでさらに新しい自分を引き出してくれると思い、今回は私以外の人たちにも楽曲を制作していただきました。澤野弘之さんが提供してくださった“Silhouette”は、とても複雑な曲展開の上にメロディーを乗せていくから、歌うのがすごく難しかったですけど、私からは出てこないメロディーや曲調の楽曲を提供してくださったので、すごく新鮮な気持ちでレコーディングに臨めました。

■他の方とのコラボレーションという面では、島田昌典さんが楽曲プロデュースをした“恋をして”は、華やかなポップソングですね。あの曲調や恋心を記した歌詞には嬉しい驚きがありました。

Anonymouz 実は先に島田昌典さんに楽曲プロデュースをしていただくことが決まり、その流れから「島田さんが最も魅力的にしてくれる曲調の歌を作りたい」と思って書き上げたのが、J-POP寄りの曲調を意識して書いた“恋をして”なんです。

■そういう流れがあったんですね。アルバム『11:11』は、いくつかのブロックを構築しながら作りあげていますよね?“Waterfall”、“Ladder”、“River”、“11:11”と続く冒頭4曲を通し、心地よくもスリリングな展開を描き出しています。アルバムが始まったとたん、一気にその世界へと引き込まれました。

Anonymouz このアルバムを通して、私は「もっと広い世界へ飛び込んでいきたいし、その思いを曲たちを通して示したい」と思っていました。それを歌詞の中で示した“Waterfall”を冒頭に持ってきました。アルバムの最後に収録した“はじめのはじまり”にも、同じ思いを詰め込んでいます。とくに“はじめのはじまり”では、「ここから始まるんだよ」と、アルバムに込めた思いを具体的に伝えています。それもあって、アルバムを構築していく上で、1曲目を“Waterfall”に、最後の曲は“はじめのはじまり”にしようと最初から決めていました。他にもアルバムには「ここから始まるんだよ」という思いを記した曲たちを幾つか収録しています。その辺も探っていただけたら、より曲の世界観を楽しめると思います。

■壮大な世界観を描き出す“Waterfall”から始まり、“Ladder”へと続く流れがめちゃめちゃカッコいいですね。

Anonymouz アルバム全体を通してもそうだし、一つ一つのブロックの中でも、次の曲を聴きたくなる流れを大切に構築しています。だから“Waterfall”の最後に、“Ladder”という声を入れ、そこから“Ladder”へと繋げてみたりとか、そういう細かい仕掛けをアルバムの随所でやっているので、いろいろと探ってみてください。

■アルバムタイトルにもなっている“11:11”は新曲になりますね。

Anonymouz この曲は不気味な始まり方をするインパクトの強い楽曲です。私は「チャレンジする価値のあるものは、失敗する価値もある」という言葉が好きなんです。その言葉をヒントに“11:11”は、「チャレンジすることへの恐怖も楽しく乗り越えよう」という思いを記しました。このアルバム自体が私にとって大きなチャレンジでした。まさにその思いに相応しい曲になりました。

■個人的には、 “River”が持つ荘厳でスケールあふれた世界観が大好きなんですよ。

Anonymouz 以前から“River”のような壮大な楽曲を作りたいという思いがありました。それで、アニメ「ヴィンランド・サガ」SEASON 2に携わることが決まり、それをきっかけにチャレンジが出来ればと「強く壮大な楽曲」として仕上げることにしました。“River”はまさに、求めていた理想を形にできた曲になりました。

■次のブロックの軸を担う“Underground”も新曲になります。

Anonymouz “Underground”はフッと力を抜いて聴ける歌。歌詞も張りつめていた気持ちをフッと抜いた時に生まれた言葉を元に書きました。結果、私の心情とすごく近い内容になったから、とてもお気に入りです。