藍井エイル VANITYMIX 2019-2020 WINTER PICK UP INTERVIEW

藍井エイル『星が降るユメ』

■毎日そういう生活をしているわけではないですよね?

藍井 さすがに毎日これではないです。(笑) でも、「暗い部屋の方が画面が見やすくて/エイムがキマるから/だからいつだってこうやってカーテンが/閉じたままの空間を過ごしちゃう」は、実話です。(笑)

■ゲーマー丸出しですね。(笑)

藍井 はい。(苦笑) それで結果的に、夜やればいいじゃんって。昼夜逆転して夜型になってしまうという……。Aメロの「夜行性だから」も、そんな自分のことでもあります。

■大学生みたいなこと言っていますね。(笑)

藍井 あはははは!けっこう悪ふざけができた歌詞でした。篤志さんからは「またぶっ飛んだ歌詞書いたねぇ」と言われて。(笑) 褒められていたのかどうかわからないですけど、印象的な歌詞は書けたんじゃないかと思います。

■歌の結末としては前向きに終わるじゃないですか。そこはこだわった部分ですか?

藍井 皮肉な感じの主人公にしたかったので、この皮肉さがあるなかで超ハッピーで終わらせるのは、性格的に難しいよな、キャラが変わっちゃうなと思ったので、最後も皮肉っぽくしたままで終わらせようと思ったんです。そこはこだわりましたね。

■それで「文句が漏らせるのも 決断が出来たから」って。この流れで前向きに終わるのって、素直にすごいと思ったんですよ。「飛び出して 変わらなきゃ/このまま 暗い世界だ」とか、引きこもっている人の背中を押してあげられる曲じゃないですか。

藍井 みんな、それぞれ正義があると思うんですけど、私はゲームで心が浄化される人なので。ゲームは優先順位がかなり上なんですよ。でも、ゲームをやってない人からすると、「そうやって引きこもってるから風邪引くんだよ」とか、全然関係ないことを言ってきたりするじゃないですか。

■それが「あなたの物差しで/何もかも勝手に決めて/僕の居場所壊さないで!」の部分ですね。(笑)

藍井 あはははは!そうですね。(笑) そういう感じで、それぞれ自分の思う正義を貫けばいいんじゃないって。みんな得意不得意があるんだから、もう好きにさせといてよ、そっちも好きにしていいからっていう。自分も過去に感じたことがある気持ちだったので、実際にゲームをやっている人とか、こもるのが好きな人とかは、同じような気持ちを持っているかもなと思って。だから、自分だけのことじゃなくて、共感してもらえる内容かもしれないなと思って制作しました。

■悪ふざけ的な部分もありつつ、真面目な気持ちも混じって?

藍井 そうですね。わりと鬱々としている側の気持ちで書いているけど、ちょっとふざけてるような歌詞も見えるのが、自分のなかでは満足しているところで。曲調も相まって、ライブではかなり楽しい感じになるんじゃないかなと思っていますね。

■1番のサビ終わりの「嫌!!!」の部分とか、わかりやすく盛り上がりそうですよね。

藍井 ここも最初はどうしようかなって思ったところで。デモでは「あ〜あ〜」だったんですけど、なんかないかなと考えているうちに「いやぁ〜!」が浮かんで、「これだ!」みたいな感じで。(笑)

■「明るくて、聞き上手 あざといってことが正解?」のあとに「嫌!!!」と続いて、もう魂の叫びというか。(笑)

藍井 できないですよ。明るくて聞き上手であざといとか。世の中にはうまくできる子もいますけど、「いや、できない、できない!」って。(笑)

■そういう藍井エイルも見てみたいですけどね。いままで、あざとい曲ってないですか?

藍井 『FRAGMENT』に入っている“グローアップ”かな。あれも篤志さんの作曲、ディレクションで、「ここでセリフっぽく歌ってみてよ」と言われて、いい意味であざとく作れたんです。でも、自分ひとりで作っていたら恥ずかしすぎて無理ですね。(笑)

■誰かにディレクションしてもらうことで別人格が出せるっていう?

藍井 そうですね。ディレクションしてくれる人が、おもしろいことを考えてくれたからできたことであって。

■そういう幅は『FRAGMENT』から一気に広がった感があります。

藍井 歌詞でふざけることって、以前はあまりなかったんですけど、(今年2月の)復帰後は全然違う視点からの歌詞も書くようになりましたね。

■そのへんは復帰作となった“約束”を聴いたときに、人間臭さが強くなった気がしたんですよね。

藍井 前は自分で自分っていうものを決めていて、その枠から絶対に出ちゃいけないって、勝手に自分を閉じ込めていた部分があったんです。でも、みんな浮き沈みもあるんだから、無理やり「私はハッピーだ」って暗示をかけなくていいなと思って。無理やりハッピーだと思い込んで暗示をかけるのって、死ぬほどしんどいって思ったんですよ。それで「やめだ!やめだ!」と思って。そこからは別にマイナスなことを書いてもいいじゃんって。だから昔より人間らしいというか、等身大になってきているのかなと思います。

■その結果“インサイド・デジタリィ”みたいな曲ができたんですね。3曲目の“Story”は、どういう経緯で収録することに?

藍井 これはピコさんのカバーで、私がデビューするきっかけになった曲でもあるんです。歌手になりたいと思いつつも、なかなか夢が叶わず、どんどん大人になっていって、親からもそろそろ就職を考えないといけないんじゃないのって言われて、一回歌手の夢を諦めたんです。それは私にとって、かなり大きい挫折だったんですけど、それでも歌うことが好きで、この“Story”のカバーを動画サイトにアップしたことがきっかけで、デビューが決まったんです。

■藍井エイルの原点になった曲なんですね。

藍井 はい。今回の“星が降るユメ”は、出会いと別れをテーマにして、いままでを振り返って書いた歌詞でもあるし、藍井エイルとしてのスタートは『Fate/Zero』でもあるし、まさに原点回帰になる、自分にとって大きい1枚になると思っていたんです。さっきの“インサイド・デジタリィ”も、私がゲーマーで本当に引きこもっていたときは、1日21時間くらいゲームをやっていたこともあったので、ある意味では原点回帰だなと思っていて。

■それで“Story”を改めて歌おうと?

藍井 そうですね。いまピコさんは腎不全で闘病されているんですけど、私が藍井エイルとして生まれてこれたきっかけを作ってくださった方が、そんなふうに闘っているなら、何かできないかなと思って。それが正しいことなのかはわからなかったけど、原点回帰の1枚でもあるので、改めて感謝の気持ちをピコさんに伝えたいと思ったんです。