藍井エイル VANITYMIX 2019-2020 WINTER PICK UP INTERVIEW

藍井エイル『星が降るユメ』

「自分にとって大きい1枚」と語った原点回帰のシングルとは?

藍井エイルがニューシングル『星が降るユメ』をリリースした。本作はアニメ「Fate/Grand Order –絶対魔獣戦線バビロニア-」のエンディング曲で、彼女が「Fate」シリーズの楽曲を手掛けるのは、アニメ「Fate/Zero」のエンディング曲だった『MEMORIA』でデビューして以来、実に8年ぶり。カップリング曲も含め原点回帰の作品となった本作について、そして1年以上に及ぶ活動休止から復帰を果たして以降の変化について、いまの気持ちをたっぷりと聞かせてもらった。

■「Fate」シリーズの楽曲を担当するのは、デビュー作の“MEMORIA”以来ですよね?

藍井 はい。8年ぶりになります。

■“星が降るユメ”はご自身で作詞をされていますけど、どんな形で作っていったんですか?

藍井 「Fate/Grand Order –絶対魔獣戦線バビロニア-」は「ギルガメッシュ叙事詩」(古代メソポタミアのギルガメッシュ王を巡る物語)が基になっていて、神々の者たちが出てくる壮大なストーリーなんです。もともと「Fate/Grand Order」はスマホゲームなんですけど、「ギルガメッシュ叙事詩」を勉強した後にゲームをプレイしていくと、ガツッと心に来るものがあるんですよ。個人的にも「Fate/Zero」のときに出てきたイスカンダルだったり、アーサー王だったり、懐かしい登場人物が出てきて、いろんな思い出が蘇ってきて。やっぱり藍井エイルが生まれたアニメでもあるので、そこを思い出しながらゲームをプレイすることから始めましたね。

■“星が降るユメ”は歌い出しの「時が流れるたび」から、過去への時間旅行をするアニメの内容を連想させるなと思いました。

藍井 寄っちゃいましたね。(笑) 歌詞のテーマとしては「出会いと別れのなかで気づいていく大切なこと、大切なもの、大切な人の存在」が大前提としてあったんですけど、ギルガメッシュを背景にいろんな情報を得ていくうちに、感銘を受けることが多くて、作品にのめり込んでいったんです。

■作品に触れているうちに、自然と歌詞の内容も寄っていった感じですか?

藍井 ただ、いつも思いついたことは全部メモするようにしていて、作詞をするときはそのメモをベースにしているんですよ。だから、作品を見たときに感じたことを、そのメモ帳のなかから引っ張ってきてテーマを作っているので、できあがった歌詞は作品に寄ったかもしれないけど、もともとは自分のなかから出てきた言葉で。作品に寄り添いつつ、自分のことも書いている、いいバランスでできたのかなとは思います。

■自分のなかから出てきた言葉というのは?

藍井 自分が生きていくなかで、いろんな出会いがあって、別れがあって。やっぱり私はデビューしてから、いろんな人たちに出会って、すごい幸せを感じたり、壁にぶつかったり、悔しい思いをしたり。それって全部大切なことだったなと思っているので、その大切さというものをテーマにできたらいいなと思って書きました。

■タイトルは“星が降るユメ”で、歌詞にも「星が降る日に」とか「星が降る夜」とか出てきますけど、これも作品と関係しているんですか?

藍井 「ギルガメッシュ叙事詩」にも載っていたんですけど、エンキドゥ(アニメではエルキドゥ)との出会いの前兆として、星の知らせが来るんです。だから、タイトルには「星」を入れたいなと思っていたのと、藍井エイル自身もデビュー前から「夜」がテーマになっていることが多かったので、自分のなかでも落ち着く世界観なんですよね。

■そういう意味では、作品と自身が結びつきやすい感じだったんですね。

藍井 そうですね。夜感があるとホッとするというか。(笑)

■作曲のTAMATE BOXさんは、今年リリースした“螺旋世界”(アルバム『FRAGMENT』収録)と“voyage”(シングル『月を追う真夜中』収録)も手がけられていたと思うんですけど、今回が3曲目ですか?

藍井 はい。もともと知り合いで、実は5〜6年前から「いつか一緒にできたらいいね」っていう話をしていたんですよ。それで一緒に作った“螺旋世界”が『FRAGMENT』に収録されることになって、「やったね!」みたいな感じで2人で喜んでいたんです。もともと作家として活躍されていて、素晴らしい才能を持たれているので、“voyage”も“星が降るユメ”も、いろいろ候補があるなかから決まって。今回も「Fate」にピッタリなメロディーラインやアレンジにしてくれました。

■“星が降るユメ”は「Fate」前提で作ってもらった曲なんですか?

藍井 もともとのデモは、いまのストリングスの部分が違う音だったんです。それが生音のストリングスにガッツリ変わって、繊細さが増したなと思いますね。“MEMORIA”のときも弦が豊富に使われていたので、個人的にはそこに安心感がありました。ディレクションもTAMATE BOXさんにやってもらったんですけど、作家さんがディレクションをしてくれると、「なんとなく藍井エイルが歌ったらこうなるんじゃないか」って自分の思い描いているものを、かなり明確に教えてくれるんです。それもあって、お互いの意思が寄り添ってできたなと感じています。

■もう3曲目になるので、そういうコンビネーションもどんどんいい感じに?

藍井 そうですね。あと、単純に付き合いもけっこう長いので、私っぽいものとか、私のよさとかも、わかったうえで作ってくれているなと思います。

■これからも楽しみですね。カップリング曲についても聞きたいんですけど、“インサイド・デジタリィ”は引きこもりで陰キャのゲーマーが、がんばって社会に出ようみたいな曲ですよね。

藍井 まさにそうなんです!伝わっていてうれしいです!引きこもりっていう意味でインサイドで、ゲーマーっていう意味でデジタリィっていう。私の一部分でもあるんですけど。

■これも藍井さんが作詞したんですか?

藍井 歌詞は私で、曲はバンドメンバーでもある篤志さんに書いていただきました。まず曲を聴いた時点でデジタル感が強かったので、デジタルデジタル……って思いつつ過ごしていたら、「待てよ、私いまデジタルにめちゃくちゃ囲まれているじゃん」と思ったんです。

■デジタルに囲まれているとは?

藍井 起きたらテレビのリモコンをいじってYouTubeをつけて、友達とボイスチャットしながらゲームをやって、一回も外に出ない日とかもあるんですよ。これ、もしかしたら曲のテーマになるんじゃないかと思って、書き始めたらわりとサクサクとできあがって。等身大の歌詞になったかなと思います。いいことか悪いことかわからないですけど。(笑)