ラストアルバムに込めたこだわりと解散ライブへの思いを語る。
BMKがベストアルバム『Big Monster Kite』をリリース。体制の変化や翌年の解散ライブの発表など、怒涛の2024年を過ごしたBMK。そんな変化の中作り上げたベストアルバムには、これまでBMK名義で発表された楽曲全曲に加え、新曲3曲も収録。それぞれ異なった趣向の3曲で、3通りのエンディングソングを作り上げた。
今回は、BMKのメンバー、米谷恭輔、三隅一輝、松岡拳紀介、佐藤匠の4人にインタビューを決行。解散を控えた率直な思いや新曲に対するこだわり、4人体制になってからの苦労などをいつも通り明るく和気あいあいと語ってくれた。
■VANITYMIXでの取材は『NANAKORO!』リリース以来、約1年ぶりとなりますが、この1年でメンバー体制の変化や解散ライブの発表など、大きな出来事がたくさんあったかと思います。あらためて振り返ってみてどんな1年でしたか?
三隅 本当に当たり前ってないんだなというのを実感した1年でした。中原が今年の4月に卒業して、9月に解散発表をさせていただいて、本当に激動の1年で。『NANAKORO!』をリリースしたタイミングは、まさか1年後にこうなっているとは思ってもいなかったので、本当に何があるか分からないからこそ、1日、1日、1回、1回を大事にしなきゃいけないなと痛感させられる1年でした。今は毎回のライブが楽しいですし、こういった取材も本当にありがたいなと思います。ここに来て活動に対するありがたみが増したような気がします。
松岡 1年って本当にあっという間だなと思いましたね。イベントをやったり、配信限定で5人最後の曲や、4人での最初の曲を出させてもらったりと、目まぐるしい日々ではあったなと思います。でも楽しかったという良い印象のあった1年でもありました。
米谷 自分たちも変わりましたし、僕たちの周りも変わっていった1年だったと思います。共演させてもらったことのあるメンズグループの人たちも違う選択に行ったり、新しいグループがたくさん出てきたりしていたように感じて。自分たちがそういう状況だからこそ敏感に感じているだけかもしれないですけど、周りもすごく変化しているんだなと強く感じた1年だったと思います。あとはいろいろな発表やミーティングを重ねていく中で、今までやってきたことがすごくありがたかったんだなというのも同時に感じました。素敵な方々に囲まれて作品を作り出してもらったり、いろいろなイベントに出させてもらったので、愛をいつも以上に感じた1年間だったなと思います。
佐藤 この1年はほとんど活動のフィナーレに向けた話を言えなかったし、我慢していた時期だったので、それが結構苦しくて。いろいろと動いてはいたんですけど、それをみなさんには言えずにやっていくのが僕はすごく苦しかったので、それが言えてから今までのこの3ヶ月ちょっとくらいが逆に楽しくて仕方ないです。
■そうですよね。伝える前は、ずっと続いていくと思っているファンの言葉が嬉しくも苦しいといったこともあったでしょうし。
佐藤 うちのグループは向上心があるグループなので、「次はこれだ!」という風にたくさん目標を掲げていたんです。それがぱったり言えなくなってしまって。言ってもいいんですけど、それは嘘になっちゃう。なのに解散のことはまだ言えずというのがしんどかったです。
■他のみなさんは、解散を発表する前後での気持ちの変化はありましたか?
三隅 僕は解散を言う瞬間が一番苦しくて。発表の1週間前は本当に死んだように落ち込んでいました。とうとう口にしなきゃいけないんだ……みたいな。もちろん黙ってなきゃいけない時間も苦しかったんですよ。夏にツアーや合同イベントをやらせていただいていたので、新しく「好きになりました」と言ってもらえるのは嬉しいんですけど、「あと半年後にはなくなっちゃうんだよね」というのが言えない苦しさもあって。でも何より解散発表をするという事実から目を背けたい自分もいたんです。どうしたって寂しいじゃないですか。でも言えてからは、ファンのみなさんがすごく悲しんでいたので、自分まで一緒に悲しむわけにはいかないなと思って、楽しむようになりました。それからはマインドも前向きに変わってきた気がしています。
米谷 特にこの夏は結構お客さんの前に立つことが多かったので、言えないもどかしい時間もありました。それと同時に自分たちの夏ツアーも行っていたので、楽しいのは間違いないんですけど、ちょっと複雑な気持ちも抱えた夏だったと思います。言う瞬間は緊張もしましたし、不安もあったんですけど、言った後は「ようやく言えた」と心が軽くなったところはあります。勝手かもしれないですけど、ちゃんとご報告できたっていうのは大事なことなので、伝えることができてちょっと安心しました。
■ではみなさんの空気感で言うと、今は今年の中でも一番楽なタイミングというか、抱えていたものがファンの方々と共有できて、発散できているタイミングかもしれないですね。一方でリミットも近づいてきてはいますが、少しずつ実感も湧いていますか?
佐藤 今はまだ全然実感が湧いてなくて。僕は自分のことを結構感傷に浸るタイプだと思っているんです。何でもエモーショナルになるし、過ぎていったものはノスタルジーになるという。典型的な詩人タイプでもあるというか。
松岡 詩人タイプだとしたら、あんまり自分で言わないと思うよ。(笑)
佐藤 でもその自分ですら、あんまり悲しさや寂しさみたいなのがまだ浮かんでいないんですよね。多分もっとキャリアが短いものの方がノスタルジーになれるんですけど、衣食住と一緒でこれが普通の生活だから、これがなくなることが自分の中でまだ想像がつかないんだと思います。なくなった後のことも含めて、本当に想像がつかなくて。だから今、人体の不思議を実感しています。ここまで定着したものはこんなに悲しくならないんだなというか。今後段々悲しくなっていくとは思うんですけどね。
松岡 僕も正直全然実感は湧かないです。「本当に終わるのかい?」みたいな気持ちです。いや、僕たちが話し合って僕たちが決めた話ではあるんですけど、「ドッキリかい?本当はまだあるでしょ?」みたいな。お客さんのリアクションとかを見ると終わるのかなとは思うんですけど、他人ごとみたいな感じがあります。自分が当事者で解散するという感覚はないですね。
三隅 自分も現状が楽しすぎるがゆえに、BMKが解散するという実感が湧いていないんですけど、「今後の人生どうしよう?」という、ちょっと別角度から湧いているところもあって。ずいぶん前から、今後どうしようかと考えてはいたんですけど、いよいよ時間がなくなってきて。その焦りから、もう時間がないなというのは感じます。
米谷 個人的には徐々に湧きつつあるかなと思います。少しずつ最後になるイベント会場があったり、最後に会う人がいたりするんですよね。少し前も新宿のマルイさんでリリースイベントをやった時に、研究生の頃からお世話になっていたおなじみの音響さんの方と、「多分これが最後の担当になるね」という話をして。周りで支えてくださった人たちと会えなくなるということで実感が湧いてきました。あとはイベントで共演した後輩グループとも、「次はいつ会えるかね?」という話を自然としたりするんですけど、「それは分かんないね」という話にもなったりして。なので、なるべくやり残すことがないように、やりたいと思ったことはなるだけ早く動いてやろうかなとは思います。
■そんなみなさんのラストアルバムでもあるベストアルバム『Big Monster Kite』についてもお伺いできればと思います。今回は20曲が選曲されたベスト盤と、BMK名義の楽曲全曲に加え、研究生時代の楽曲も含めたCD3枚組のコンプリート盤に分かれています。ベスト盤の楽曲の選定はどのように行われたのでしょうか?
佐藤 僕がベースとなって楽曲を考えて、それをみんなでブラッシュアップした形でした。僕は結構不安だったんですよ。各々ライブのセットリストを作ったりもするんですけど、それぞれに癖があるんです。この人はこの楽曲入れがちだなとか、この楽曲で締めがちだなとか。今回はだいぶ客観的に見ようと努力はしていたんですけど、僕も多分自分の癖があるんだろうなと思うので、不安がありました。
松岡 でも“B GATE”が入るのは初めてだよね。
佐藤 そうだね。“B GATE”は、僕たちのライブの登場SEなんです。グループって各々が登場SEを持っていることが多くて、対バンだとSEが流れて「さあ、うちのグループ見せてやりましょうか!」となるので、今回入れられて良かったなと思います。
松岡 “B GATE”が入っていることによって、頭から聴いてもらうと、僕らが解散した後もライブを思い出してもらえるというか、その場に立っているような感覚になれるんじゃないかなと思います。
三隅 個人的には“おばけ ばけばけ ばけがっちゃ!”が入っているのが、BMKらしいなと思います。アルバムの曲を決める際に、「この時間内に収めてください」という指定だけが来たんですけど、この曲は1分23秒なんですよ。この短い尺まで余すことなくBMKとしての思い出を残したい、楽しんでほしいというのが伝わるようになっているんじゃないかと思います。
■佐藤さんは収録曲をセレクトしていくにあたって、ベスト盤というのはもちろんですが、その他に意識したこと、決めていたテーマのようなものはありますか?
佐藤 僕たちはコロナ禍からここまで、本当にいろんな形態でいろんな催し物をやってきたんです。コロナ禍の時は、オンラインでデビューしてライブをやったり、少しずつお客さんを入れてできるようになってからも歓声がなかった時もあって、少しずつ歓声が戻ってきて。いろんな時代の変わり目を通ってきたからこそ、その順番で収録したいと思っていました。ただ、表題曲は記憶としても濃いと思うので、順番通りに入れるにしても、それらを繋げる他の曲をどうするかが悩みどころでした。ライブでたくさんやっている曲はこれだけど、そうするとこの系統の曲が足りなくなるな、とか。でも曲のバランスを考えるよりも、たくさん歌ってきたものの方がいいかなとか、取捨選択が大変でした。「これは自分の好みじゃない?」「本当にみんなの総意?」という考えがずっとあったので、それが難しかったです。
■中には、5人体制ラストの楽曲“FLY & GO NOW”、4人体制最初の楽曲“Move!”も並びで収録されています。メンバーが変化する前後ということで、この2曲にも思い入れは大きいのではないでしょうか?
佐藤 この期間くらいから、これまでやったことのない曲をたくさんやってみようというのをテーマにしていった気がします。コンペの時から曲を聴かせていただいて、選ばせていただくのはこの時期からスタートしたんですけど、僕たちが歌いやすい歌ってもっとたくさんあったんですよ。でもこれから終わりに向けて自分たちらしさに磨きをかける時間になっていくので、歌いやすい曲ではなく、歌ったことのない曲をテーマにと考えていました。なので歌い方も挑戦していると思います。洋楽のような楽曲でもありますし。この2曲は特にそうでしたね。
三隅 あと、この2曲は歌割りがすごく細かいんですよ。研究生時代って、Aメロ、Bメロを一人ずつ、サビで何人かで歌うみたいな感じがほとんどだったんですけど、この2曲は本当に細かく分かれていて。「自分のパートをちゃんと意識しなきゃいけない」と思いながらレコーディングした曲でもありました。 “FLY & GO NOW”は5人体制で、1、2ヶ月くらい歌って、すぐに4人編成バージョンを作らないといけなかったんですけど、その時に抜けたパートが結構多いことに気付いて、「メンバー1人でこんなにたくさん歌っていたんだ」と思ったんです。それからは自分のパートの重要さを改めて実感しました。
■5人から4人になることで歌割りも振りも1人分なくなるので、そういったところで4人編成になったことを実感するんですね。
三隅 あと、「この曲はどうやって4人でやるんだ?」みたいな曲もあって。立ち位置を細かく作っていただいたからこそ、自分たちだけで直すのが難しい振りや、立ち位置の構成も現状あって。残りの時間で余すことなく披露したいなとは思っていますが。
■そういったパフォーマンスでの違いも含め、メンバー体制が変わった際に感じた思いなどはありましたか?
佐藤 すごく臨機応変な対応をできているし、していただいているなという気持ちです。ちょうど4人体制になってから、松岡が舞台で抜けている期間があったり、僕が舞台で抜けている時間があって、4人でずっとやっていくという感じではなかったんです。その間は3人でやったり、ラジオ番組を1ヶ月間2人で続けてくれたりもして。そういう期間だったので、臨機応変に対応した、してくれたという気持ちが大きいですね。今までだったらまとめ役はこの人、MCはこの人が得意という役割があったんですけど、人数が少なかったらそうも言っていられないので。ありがとうございますという感じです。
■4人になるよりも、もっと大変かもしれないくらいですね。
佐藤 そうですね。3.5人くらいで。(笑)
米谷 今まで自分がどれだけ甘えていたのかという発見にはなりましたね。
三隅 5月から今日に至るまで、ライブをたくさんやらせてもらいましたけど、全部新曲に感じるくらい、毎回ライブ形式が違うんですよ。歌っているパートも違うし、昨日歌っていたパートを今日は別の人が歌っているみたいなこともあるし。すごく脳が鍛えられて若返った気がします。(笑)
■昨日歌っていたところが今日は違う人で、明日は4人で、その次は3人で、といった対応はどのようにこなしていくんですか?
三隅 パート割はじゃんけんで決めていました。歌割りが増えるのは本当にありがたいことなのは大前提なんですけど、直前の変更は極力増やしたくないじゃないですか。なので、じゃんけんをして負けた人が歌うということになりました。
松岡 「あくまで平等に」みたいなところは心がけていましたね。ファンのみなさんも、それぞれのメンバーのファンがいるわけなので、それぞれの歌声が聴きたいじゃないですか。そこはみなさんに喜んでもらえるようにやりました(早口)。さあ、次の質問はなんですか。
三隅 ちょっと待ってよ!(笑) ひどかったんですよ。匠が舞台で頑張っている期間、3人でライブをすることが何回かあったんですけど、立ち位置を作るために稽古場でみんなで集まって、家でも見返せるように動画を撮っていたんです。その動画を早送りで見返していたら、松岡が上手の2番から一歩も動いていないんですよ。(笑) 三隅と米谷だけ立ち位置をぐるぐるしていて。
松岡 僕は上手の1から3をずっと反復横跳びしていたね。(笑)
米谷 しかもそれを言わないんですよ、こいつ。(笑) 自分の立ち位置が変わっていないって分かっているのに。黙って楽をしているんです。
松岡 違う違う、楽じゃないよ。スムーズに進めるのも大事なことじゃないですか。
三隅 最近は僕らも学んだので、松岡と3人でやる時は松岡のパートもちゃんと増やすようにしています。(笑)