汐田泰輝(Vo&Gt)、岩橋茅津(Gt)、中村龍人(Ba&Cho)、塚川由祐(Dr)
飾らない言葉とビートに詰め込んだ新体制の「今」。
Bye-Bye-Handの方程式が6月24日にニューEP『僕らは涙を流さない-EP』をリリース。新たなドラマーに塚川由祐を迎え、新体制となったBye-Bye-Handの方程式。この4人での初のEPとなる今作には、彼らの「今」の嘘偽りない赤裸々な姿が詰め込まれている。今回のインタビューでは、今作の制作について深掘りしながら、バイハンの「今」を探る。
■新メンバーも入って心機一転ということもありますが、今作のEPのタイトルにちなみ「最近涙を流したこと」を教えてください。
岩橋 僕は5月9日に誕生日を迎えまして、何をしようかといろいろと考えたんですが、結局いろんな人たちと遊んだんです。その時に、旧友と言いますか、高校時代に一緒にコピーバンドをやっていた友達と再会したんです。その人はもう地元を離れていたんですけど、僕を祝いに帰って来てくれたので、涙しちゃいましたね。
汐田 僕はなかなか泣かない性質でして……。ただ、泣きそうになる瞬間はあります。ちょうどこのあいだ嵐のラストライブがあったじゃないですか。あれを配信で見ていたんですよね。僕は初めて音楽体験をしたのも嵐だったし、初めてライブを見に行ったのも、初めてCDを買ったのも嵐だったので、「こんなに素晴らしいグループっているのか」というか、「グループというものの素晴らしさ」をあらためて感じました。言ってみればね、年齢的にはおじさんですよ。でもこんなにカッコイイおじさんに僕もなりたいなと思って、涙が出る直前までいきました。
中村 僕もあんまり泣かないタイプなんですけど、深夜のわけわからん時間にひとり寂しくなって泣きそうになったことはあります。気付いたら朝になっていて、結局は泣かなかったんですけどね。(笑)
汐田 そういう時は連絡してよ!
岩橋 そうだよ。連絡して来いよ!
塚川 僕ももともと(中村)龍人みたいなタイプだったんですけど、ここ数年でポロポロ泣くようになりました。悔し泣き、嬉し泣き、悲し泣き、全泣きですね。僕は涙しか流さないです。(笑)
■なるほど。涙もろい人と涙を流さない人がいるんですね。(笑)
汐田 一応二人いるから「僕ら」ではあります。
中村 あっ、そうだ!僕、前のドラムが抜ける日のライブの時に泣きました。
汐田 これで「僕ら」じゃなくて『僕は涙を流さない』になっちゃいました。(笑)
■ちなみに今回のEPのタイトルが『僕らは涙を流さない』になったのはなぜですか?
汐田 さっきの話に戻るんですけど、もう本当、僕は日常生活において涙を流すことが無くて……。ある意味それがコンプレックスに近いというか、人が泣いている姿を見た時に、「なんで僕だけ泣いてないんやろ……」と、自分の感情を疑う瞬間があったんです。もちろん泣いた事はあるし、龍人みたいに「ほぼもう泣いてるに近いだろこれ」みたいな心境になる時はあるんですよ。でもある時、自分はこの感情を音楽に流し込んで消化して、みんなが涙を流しているようにデトックスしようと思ったんです。だから、今回は結構、自分の中の赤裸々でリアルな部分や、パーソナルな部分と向き合いました。悲しいことも辛かったことも、起こってしまったことも、全部消化してスッキリさせて、あらためて曲を作ることで、原点に立ち返る作品になったと思います。そういうことをまとめた時に、このタイトルがいいなと思って決めました。
■それにしてもアーティスト写真も随分と印象が変わりましたよね。ちょっとバンドのムードを変えていきたい感じなんですか?
汐田 そうですね。変えていきたいという気持ちは強くありましたけど、今回はちょっとカッコつけさせていただきました。(笑)
■ライブも何度も観させていただいたのですが、結構「聴き入る系」なんですかね?
汐田 どうなんですかね?日によります。僕らもいろんな曲を出してきた自負はありますし、それぞれその時の自分たちがやりたい音楽を正直に鳴らしてきた結果なんですけど、この4人になった時、「もうこれ以上、誰も減らしたくない」というか、「誰も欠けてほしくない」、「やっていくならこのメンバーでやっていく」と思ったんです。このバンドには激しさや衝動みたいなところが今一番合うんじゃないかみたいなところがあって。だから、多分最後にライブをご覧いただいた時からも、二転、三転、ライブは変化していると思います。毎回のライブの後の反省会は、よりディープに話し合うことが増えている実感があります。
■まだ探っている最中でもあるようですね。
汐田 そうですね。またあらためてこの4人でやるとなると、やっぱり別のものになるので、探しにいっている感じはめちゃくちゃあります。
■どうですか?サウンドの変化みたいなものは感じますか?
中村 めちゃめちゃ感じます。よりライブバンドになったというか。
岩橋 まずドラムの音は全然違いますね。個人的には攻撃的に、鋭利な感じになったのかなと思います。
■それは音源を聴いていても感じました。そして今作ですが、スローテンポな感じから始まるのが意外だったんですよ。
汐田 この“春窓”がEPを作る上でのキーになっているんです。初めに入れる予定だった残りの3曲はもっとポップで、それこそ最近出していた楽曲をブラッシュアップした傾向に寄っていたんですけど、この“春窓”は、身近な人の死が自分の中で立て続けに起きた時に、今までだったら、それを歌にすることへの抵抗があったんですが、ミュージシャンとして生きていくならば、そんなことに躊躇する自分は要らないなと思ったんです。それで、今は「身の回りのことは全て歌にする」という覚悟みたいなものがあります。この曲ができたことで、久々に着飾っていない素の自分が出た気がします。
■なるほど。
汐田 そうしたら、より他の3曲が嘘みたいに思えてきちゃって。だんだんなんか、こんなにリアリティがある曲が1曲あるのに、聴いていて情緒がおかしくなるって!みたいなことになって。(笑) それだったらこの曲に合わせて、もっと自分のリアルな部分を集めて曲に出したいなとなって、みんなで完全に舵を振り切りました。だから、もう制作の環境で言ったら一番ヤバいというか、本当にもうここまで切羽詰まったことはなかったです。(笑) 全セクションドタバタのドタバタで、「これは絶対に間に合わない!」みたいなスケジュールの中で、奇跡的に間に合ったEPなんです。ほんまに想像を絶するレベルで、「どっからどうしたらそこに仕上がるんや!」みたいなくらい。嵐のように過ぎ去った制作過程でした……。
■差支えなければ、どんなお別れがあったんですか?
汐田 地元のバンドの先輩が事故で亡くなってしまったんです。僕たちの最初期のロゴ制作だったり、アー写撮影だったりに密に関わってくれた先輩でした。その先輩が、対バンしたその次の週に亡くなったんです。未だに地元の空気が傷ついていている中で、それをちゃんと歌にして前に進んでいくというのが、今の自分たちの誠意かなという想いがあります。少しでもこれで気持ちが楽になる人がいたら、この曲にも意味があるなという気持ちで書きました。
■そうだったんですね。その割には歌詞がどこか抽象的にも感じたのですが、意図的なものなのでしょうか?
汐田 そうですね。僕は普段だったら抽象的な歌詞をあんまり書かないんです。それをあえてやったというか、漠然としていて、サビのフレーズも「春の窓にあとひとつだけ」という感じになっています。「春の窓」は、僕の中ではポジティブなものなんです。そこに普段だったらしないような抽象的なことを歌うことで、いろんな人が何かを当てはめられるんじゃないかなと思って。具体的に何かを言葉として入れると、イメージとして「それ」になりすぎる部分があるので、僕としては身近な何かを失ったり、悲しい気持ちになった人たちが、自分の何かをそこに入れられる余白を作るために、あえて抽象表現をやってみたという感じです。ただ、抽象をやるのには勇気がいったというか、やり方を間違えれば、「いったい何を歌っているんだろう?」になり得るのですが、今回は上手くできたので、この先もこういう曲をやっていいんやなと思えた1曲になりました。
■それとは裏腹に、途中からは全部のパートが暴れ回り始めますよね。今そのまとめ役になっているのは誰ですか?
汐田 それはベースの龍人がやってくれています。前のドラマーは、自分で自分のパートを作ることが多かったんですが、僕はクリエイターとプレイヤーとは全然違うものだと思っていて。新メンバーの塚川は割とプレイヤーとして輝いてきたタイプなんです。もちろんここからクリエイターの部分を伸ばしていくというところはあるんですけど、バイハン(Bye-Bye-Handの方程式)には、今まで別のドラマーでやってきた土台があるので、そこで今までのことを知っているヤツが調整を担うとしたら、龍人が一番厳しくなるんです。龍人の厳正なチェックが入って、ウイルスチェックみたいな感じに、制作の過程でいろいろと仕上げてくれました。
塚川 やとしたら俺はウイルスまみれやん!(笑)
汐田 でもね、やっぱりどうしてもやってきたバンドが違うので、バイハンの文脈としては、「ここは違うよね」というのが間違いなくあって。このバンドの土台がある上での正解があるから、前ドラマーが築いてきたものもあるし、それこそ龍人の前のベーシストのこともあるし、いろんな歴史の中にある「今」なので、それぞれが補い合うみたいな形で、今作の制作環境になったのかなと思います。
中村 確かに今回はデモが送られてきて、ドラムを手直しするのに1日、2日かけて、その中にベースを入れて返すということが2曲ぐらいあって。ビート自体を変えちゃうとか、フィルを全部変えちゃうとか、細かい所ではアクセントも変えちゃうとか、バスドラ1個抜くとかも変えちゃったりして、だいぶ困らせましたね。
■それに対しては甘んじて受け入れるんですか?
塚川 甘んじて受け入れるというか、やっぱり有難いんですよ。前にやっていたバンドはジャンルが全然違ったので、めっちゃ助かりました。もうハゲるんじゃないか?というくらい難しかったですけどね。(笑)
■そして“恋するemoji”ですが、ここまで早口の曲もなかなかないですよね?
汐田 まだライブではやっていないんですけど、スタジオでは毎回やっていて、でも成功率はまだ低めですね。(笑) 僕らの中では、“darling rolling”のいとこみたいな立ち位置で書いたつもりなんですけど、その分、難しくなったというか。“darling rolling”も自分の中ではいろいろと詰め込んだし、けど意外と歌ってもらったりしたから、この曲も「いけるかな?」みたいな感じで作ったんです。余白の中にめちゃくちゃ言葉を詰めるのが好きなので。でも、大体自分で自分の首を絞めることになるんです。レコーディングでもほんまに「誰やねんこの曲作ったの!」となって。(笑) エンジニアさんにも「そこ息継ぎできるの?」と言われて、「できません!」みたいな。(笑) そんな感じでしたね。ブレスとかを考えずに言葉だけ詰めて遊んじゃったんですよ。でも、この曲は今までのバイハンの応用編というか、番外編みたいな感じで楽しんでくれたらいいなと思って作りました。
■周り見ていていかがでしたか?(笑) ずいぶんあたふたしていたようですが。
岩橋 いや、大変そうでしたよ。
中村 マジで、まぁこちら側もあたふたしていましたけど。(笑)
汐田 全セクションあたふたしているなというのはありますね。
■確かに。特にこの曲はドラムが忙しそうでした。
塚川 もうこれ以上やったらあかんて。(笑) めっちゃバタバタなんですよね。展開が多いし、手も常にどこかしら動いているし、空白も無いし、本当に難しいです。みっちり詰まっていて、頭皮がヤバくなりました。
■歌詞の方はフィーリングが強いのかなという印象でしたが、いかがでしょうか?
汐田 これはフィーリングと、自分の過去の恋愛への皮肉みたいなものがあります。僕は自分のことを自分の視点ではなく、相手の視点で勝手に書くみたいなことをよくやりがちなんですよ。だから、意外に思われるかもしれないんですが、この曲にも自分の中では結構リアルが入っているんです。ただ、あまりにも軽快に進んでいくので、聴いている限りリアル感は少ないんじゃないかなと思います。
■確かに。ちょっと意外性がありました。個人的には“暗がりから笑え”のようなクラシカルなハードロック系が好きなんです。リフが特徴的ですが、そこからできていったのでしょうか?
中村 いや、なんなら一番最後ですね。僕が最後につけた気がします。
汐田 歌詞が先にあって、リファレンスが山ほどあり、それでどっちの方向性に持っていくかを協議して、一度は行き詰まりすぎて、ほんまに全員でぼーっと天井を見ていたこともありました。(笑) 一旦形みたいなものにはなったんですけど、元々自分が目指していた攻撃性のある部分になっていなかったり、なんかちょっと難しいインテリジェンスなロックになっちゃっていたりして。「もっと激しい、もっとトゲトゲしたものをやりたい」というのもあって、「どうにもこうにもならんかったわ」と、ベースに持ち込んで、ベース主体で方向性を見出してほしいということになり、そこから土台がだんだん出きてきて、結果ヘヴィな方向性が見えて急に進んでいきました。「それ」が見えた瞬間からは早かったです。
■確かにこの曲はベースがいいですよね。第一印象もそれでした。
中村 でも曲はマジでベースが本当に難易度高いんです。スラップも入っているし、指の動きも難しいし、サビではハンマリングもしていて。「間違ったな……」と思っています。(笑) 個人的なフレーズとしてはすごく満足しているんですが、練習していると、「これ、もうひとり俺が要るな」と思って。(笑) 本当になんとかしないといけないなと思います……。
■この短さの中に、ギターソロまで詰め込むのもすごいですよね……。
中村 そうですね。ベースの見せどころから、歌詞もバチバチに尖っている中でのギターソロなんで、めちゃくちゃ気持ちいいんですよ。「来るぞ来るぞ」感がたまらなく気持ちいいです。
■本当に最後まで詰め込んでいますよね。それで歌詞の方は……触れていいんでしょうか?(笑)
汐田 触れてください!リリースするんですから。これ以上のリアルはないんじゃないかというぐらい赤裸々に書きましたし、この曲を書いた時から、体から毒が抜けて健康になったような気がしたんです。やっぱり曲を作ることって、心の健康のために大事やねんなということを実感したというか。悪いことも歌詞として書いてしまえば、ひとつの音楽になって、曲として正当な評価を受けられるのが、一番いいことだと思うんです。だから、「なんだこの曲は」と言われる分には全然いいんですよ。今では人生すべてがネタなんだということを楽しめている自分がいます。
■なるほど、なるほど。
汐田 今までだったら、当てつけにキレ散らかしていたところを、今回はちゃんとみんなに聞きやすい部分も作りつつ、メンバーのカッコいい瞬間にもフォーカスしつつやれました。この曲ができて、「まだまだやれるな」と思えました。







