フジムラ (Ba)、Yurin(Vo/Gt)、知(Gt)
やりたいことをつめ込むことができたし、今だからこそのものができた
ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』の主題歌“落陽”、TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』エンディング主題歌“ID”。どちらも書き下ろしとなるWタイアップ、両A面シングル『落陽/ID』をリリースするサイダーガール。原作の意思を汲み取り、丁寧に丁寧に作られたというこの2曲。タイアップとはいえ、自分たちの「やりたいこと」と「今」をつめ込むことができたという3人に、たっぷり話してもらった。
■こういう状況の中、両A面、Wタイアップというシングルが届けられてすごく嬉しいです。
Yurin 僕らにとってもありがたいことです。周りの人からもライブだけではなく、レコーディングができなくてリリースがなかなかできないって話は聞いていたので。そんな中で僕らは自粛明けてすぐくらいにこのシングルを録り始められたので、本当に良かったです。
フジムラ 配信だったら曲があればどのタイミングでも発表できるんですけど、ちゃんと盤になったもののリリースというのは、自分自身「発売するんだ」っていう実感があるので、こうやって少しずつでも前の状況に戻っていったらいいなと思うし、嬉しいですね。
知 僕はもともと作品を完成させることの方が好きなので、それだけで嬉しいと思うところもあるんですけど、こういう機会があるのはやっぱり嬉しいです。おまけに今年はアルバムを作ったからしばらくリリースはないかと思っていたので、タイアップでこういう機会ができて良かったです。
■“落陽”は『おじさんはカワイイものがお好き。』の主題歌ですが、どのように作っていかれたんですか?
知 プロデューサーの方と一度打ち合わせをさせてもらい、「こういう感じの曲にしていこう」ということで、そこから3人それぞれデモを作っていったんですけど、ディレクターさんに「こういう曲じゃないかも……」みたいなことを言われて。(笑) もうちょっと元気な曲が欲しいということで、そこからまた作り直したんです。
■最初に作られた曲はどういう感じだったんですか?
知 深夜のドラマだったので、ゆったりめというか、OLが仕事から帰ってテレビを観るときに聴けるような曲になったらいいなと思ったんですけど……。実際にできてみたら、ね。
Yurin エネルギッシュで、昼って感じだったよね。
知 ね。(笑) 歌詞に関してのオーダーもあったんですけど、曲を作り直した段階で歌詞のテーマみたいなものを変えちゃうと、結局その曲を作った意味がなかったことになっちゃうから、できればこの歌詞のこの雰囲気のままでいきたいって話はしてもらって。そういうやり取りをしながらできた曲です。
■原作のコミックは読まれたんですか?
知 ドラマの脚本をいただいて、そこからイメージを膨らませていきました。
■脚本を読んだときの印象はどうでしたか?
知 おじさんがカワイイものが好きっていう、タイトルのまんまだなって。(笑)
フジムラ でも単にコメディだけじゃなくて、グッとくるポイントもあるんですよね。
知 うんうん。あとは、好きなものを好きと言えないことがいちばんの大きなテーマで、それって誰にでも通ずるし、自分の中ではいちばん大事にしたかったポイントです。歳をとるたびに好きなものを好きと言いづらくなっている感覚は自分にもあるし、隠してしまう気持ちっていろんな人が持っているものかなと思うので。
■好きなものだから好きって言いたいはずなのに、なんで隠してしまうんでしょうね。
知 たぶんカッコつけちゃうのかな。世間体とかもあるだろうし。自分の好きなものって固まっていけばいくほど、自分っていうものを守ろうとして、どんどん言えなくなっていっちゃう気はします。僕は子どもの時セーラームーンが好きだったんですけど、周りのみんなは仮面ライダーが好きで、当時はセーラームーンが好きってあんまり言っていなかったです。今は全然言っていますけど。(笑)
■きっと今の方が言いやすいですよね。
知 でも確かに、なんで小学生の時は言えなかったんだろう……?やっぱり他の人と違うのがイヤな時期だったというか、それが大きかったんでしょうね。普通になろうとするというか、無個性というのとはちょっと違うけど、例えば電車とかでもみんなスーツ着て同じ格好して、そういうのって風景になるじゃないですか、自分も風景の一部になるというか。
■はい。
知 僕、今髪染めているんですけど、家の周りとか歩くのがすごく恥ずかしいんです。(笑) だからいつもコンビニに行く時とかも帽子をかぶって行くんですけど、恥ずかしいけどそういうことしたい、髪染めてみたい、みたいな。そういう不思議な感覚、そういうものなのかなって……なんなんでしょうね。(笑)
■ふふ、なんなんでしょうね。Yurinさんはいかがですか?
Yurin 好きなものを好きと言うことってすごく勇気がいることだと僕も常々思います。嫌いなものを嫌いって言うことは簡単というか、そういうイメージがあるので、ポジティブな方をどうして言えない風潮なのか、と。例えばSNSの盛り上がりとかに便乗するというか、声が大きい方がどんどん正義になっていく、正しくなっていくみたいなことあるじゃないですか。僕はそういうことには常に抗っていきたいし、自分の好きなものだったらちゃんと意思を表に出していった方がいいと思っています。好きなものに対して自分をごまかさず、変にひねくれずに。