Do As Infinity VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Do As Infinity

わたしたちの20年、そしてあなたたちの20年を楽しんでください

今年デビュー20周年を迎えるDo As Infinityが、数々のヒット曲の中から選りすぐりの楽曲をリアレンジしたアルバム『Lounge』をリリースする。ピアノを中心とした落ち着いたサウンドには、あの頃の思い出はもちろんDo As Infinityとわたしたちの20年という大切な歴史が刻まれている。この特別な空間でもある『Lounge』について、そしてこの20年を2人に訊いた。

■今回のアルバムの選曲はどのようにされたんですか?

伴 初期、中期、後期とその時々の代表曲を含め、やってみたい曲、どう変化するか興味がある曲を出し合ったり、提案してもらったりして、そこから10曲に絞っていきました。

■数ある曲の中から10曲を選ぶのは大変じゃなかったですか?

大渡 自他ともに認める代表曲が存在しているので、普段とはテイストの違うこういうアルバムを作るなら、それはやはり入れておいたほうがいいだろうというのがまず根底にあったうえで、歌ってみたい、リアレンジしてみたい曲を選んでいく作業だったので、そこまで大変ではなかったですね。大体みんなの中で「ですよねぇ~」という曲が選ばれたんじゃないかと。(笑)

■まさに自他ともに認める代表曲が集まりました。

大渡 こういう企画のアルバムを作るのであれば、やっぱり代表曲は入れないといけない。それはなぜかと言うと、Do As Infinityって昔いたよねっていう人たちがわかるような作品にしなくちゃいけないと思ったからなんです。ずっとついて来てくれているコアなお客さん目線で考え過ぎてはいけないなと。なので、人気が集中していた時代の曲を大半に配するということに意識がいって、「あれやりたい、これやりたい」というよりは、その時期の曲を入れつつ、最近の作品も入れるという、総体的な考え方で挑みました。

■やってみたかった曲というはどの曲ですか?

大渡 伴さんは“科学の夜”だよね。

伴 うん。わたしは“科学の夜”ですね。メッセージ性も強いし、ライブでは視覚的な演出もあって、濃厚で印象的な1曲で、ファンの間でも人気があるし。今回のピアノアレンジで、もう少しやわらかくなるといいなと思って、実際そうしていただけたので大満足でしたし、これはうれしい変化でした。

■どの曲にも言えることですが、こういうアレンジになることで新しい曲に生まれ変わった感じもあるし、深みが増して味わい深い感じにもなりましたね。

伴 それはありますね。まずアレンジがピアニストのSinさんから届いて、その時点でまったく違うサウンドになっていたので、新生という感じはあったし、「あ、ここはこういう意味もあったんだ」って、あらためて気付く点も多くて。深みが増す、味わい方が変わるというか、そう感じる部分はすごくありました。雰囲気が変わるとやはり気持ちも変わるので、こういうアレンジでまた楽曲に向き合えたのはいいきっかけでしたね。

大渡 僕の場合、いつも自分が携わるものとはちょっと違う異色なかたちだったんですね。最初、Sinさんに歌とピアノだけで成立するようなアレンジにしてほしいとオーダーして、必要あらばギターを乗せていく、極論言うと、ギターが入っていなくてもいいかなというところからスタートしているので、そういう意味でもいつもと違って、ちょっと異質な流れでしたね。そこから、これはやっぱりギター弾いたほうがさらに良くなるなとか、リズムが立つなって曲が多かったので、最終的に10曲中7曲はギターを弾いて。でも極力ギターでダビングすることはやめて、一筆書きじゃないけど、ワントラックだけギターを入れるみたいな感じにしたんですよ。そういう意味では曲を俯瞰して感じることができたというか、こういうアレンジになったこの曲を、じゃあ俺だったらどう弾くか、みたいなかたちで携われたんじゃないかと思います。

■歌とピアノだけでも成立できるもの、というところから始まったんですね。

大渡 最初のキーワードとして本格的なジャズというよりは、ジャズっぽくしようという案があって、でもその「ジャズっぽい」の概念が人それぞれ違うということがわかり、より明確に擦り合わせていく作業が必要になったんです。オリジナル曲を新たにリアレンジする場合、例えばオリジナルではドラムがガンガン入っていて、新しくアレンジしたものにもドラムがガンガン入っていたら、それはちょっと違うというかね。どちらかというとフォーキーな方向を望んでいたので、そういうところを軌道修正していくうちに、だったらいつもライブの中盤でやっているピアノと歌だけで演奏するスタイル、そういう作品がいちばんわかりやすくていいんじゃないかと。結果すごくわかりやすくそれを表現できたアルバムになったなと。なので、そういうディスカッションの中で見えてきたアルバムではありますね。

■『Lounge』というタイトル通り、特別な空間を味わえるというか、居心地、聴き心地が非常に良くて、大切な場所にいさせてもらっているような感覚でした。

大渡 これは作業がすべて終わったあとに伴ちゃんから提案があって。すごく象徴したタイトルだったので、僕も非常にいいと思いましたね。

伴 普段わたしたちがやっているメインの部屋があるとしたら、そことはちょっと違う空間ということで。ラウンジという言葉自体そういう意味があるし、空港にもラウンジがありますけど、そういう異空間というか、いつもと違う空間ということを表現できるタイトルがいいなと思って。ゆったり聴いてもらいたい気持ちもあったので、このタイトルにしました。

■ぴったりだと思います。ボーナストラック“小さなヒーロー”は、雰囲気がガラッと変わり、このギャップもすごくおもしろいです。

伴 いまわたしは熊本に住んでいるんですけど、地元のテレビ局の情報番組で子どもがチャレンジするコーナーがあるんです。そこでわたしたちの“ワンダフルライフ”という曲を使っていただいていたんですけど、4月からリニューアルするということで、そのタイミングでちょっと書き下ろしてみようかなと。

大渡 最初にひらめいたのは、保育園とか幼稚園で子どもたちが歌って踊る姿、それがなんとなくずっと頭にこびりついていて。そこからまずはおつかいに行くんだからテンポは行進かなっていうところからイメージを膨らませていって。もっとお遊戯感を出すために笛が欲しいな、大太鼓も欲しいな、鈴があったらいいなって感じで。

■聴いていてすごく楽しい曲ですけど、作る過程も楽しそうですね。(笑)

大渡 いつものDo As Infinityの作品を作るのとは違う考え方だから、すっとできたことはできたんですけど、Do As Infinityとしてリリースするのはちょっと違和感を感じるけど大丈夫かな?って気持ちは正直ありましたね。もちろん伴ちゃんが歌えばそれになるっていう意識はあったんだけど。でも番組ありきのものなので、それはあとで考えればいいやと開き直って。(笑)

■なるほど。

大渡 あとは、自分がいままで洋楽で培ってきたサザンロックやカントリーロックみたいなもの、簡単に言うとビートルズの“イエロー・サブマリン”とか、オールマン・ブラザーズ(バンド)とか、イーグルスみたいな、ああいう雰囲気を融合して作ろうってイメージで。結果たぶんそういうふうにはみんな思わないと思うんですけど、僕の中ではうまく俺なりの“イエロー・サブマリン”ができたかなって感じです。(笑)

■ちっちゃい子たちが歌ったらかわいいでしょうね。(笑)

大渡 それを考えていました!ずっと。

伴 うちの子は歌いますよ。家で流してたら。(笑)

大渡 いいねぇ。シンプルに子どもたちが歌うことを常に念頭に入れていましたからね。

伴 わたしは近年でいちばんのお気に入り曲です。

大渡 あ、そう?(笑) いま子育てで奮闘しているタイミングですからね。

伴 10年後くらいに聴いたら「あーっ」って思いますよ、きっと。

大渡 あー、そうだね。声のいちばんピークになるところでそういう言葉がきていたりして、涙腺にくるようになっているよね。

■大人は大人の視点で聴くことができる曲でもありますね。

大渡 この企画のアルバムに、しかもアルバムの最後に入れるのはちょっと懸念はしていたんですけど、現在進行形としてこういう曲を作っていましたっていうことを、ここで紹介するのもありなのかなって。

■それはあると思います。リアレンジといいつつ、新しいもの、いまのアルバムでもあるし、新鮮な気持ちで聴けるし。

大渡 そう。だからいいタイミングでいいカタチのアルバムになったのかなと思います。

■あらためて20年を振り返っていかがでしょうか?

伴 一度は解散したけど、デビューから20年経つんだなと思うと、いろんな人に助けてもらって、いろんな人が携わってくれて、いまのわたしたちがあるんだなとあらためて思いますね。いろんな経験もさせてもらいましたし、それはこれからもそうなんでしょうけど、それをこれからにつなげていきたいなと。なかなか20年ってね……20年続けてきたことってある?あ、ギター弾くことか。(笑)

大渡 ギター弾いてきましたよ。人生最長のアイテムというかね。伴ちゃんも僕も同じこと20年やってるっていうのはほんと充実感しかないですね。こんなに長くやれるものはないというか。20年続いて、まだ現在進行形ってところがまたいいなと思いますし。続けてればいろんなことやっていけるし、思いつきでまた新しいことにチャレンジすることもできるし、やっぱり足を止めないというか続けることが重要なんだとあらためて思いますよ。続けていったらそれが財産になってちゃんと残るっていう、もうラッキーでしかないでしょ。

■たしかに。お2人でそういうお話されたりするんですか?

伴 します、します。お酒を飲みながらね。(笑)

大渡 しみじみね…。伴ちゃん、でも20年ってのはそうそうできないんだから、続けていたという、そこに自尊心を持っていいのではないかとすごく思うわけですよ。

■それだけで誇らしいことだと思います。

大渡 ですよね。普通は続けたくてもなかなか続けられない人が多いわけで。僕らはラッキーなことに続けてこられたんで、そこにプライドを持ってもいいと僕は思っているんですよ。だから、いまはこういう音楽が売れていて、昔はこうだったけど、いまはこうだっていうことを卑下するのではなく、地に足をつけてやるっていうね。お互い生活の環境が違えど、こうしてやれていることがまた奇跡だったりもするし。だからビビらずに、でーんと立ってればいいんだって、そういう話はよくします。

■でーんとかまえながらも、今回のようなアルバムを作ったり、新しいことに取り組む姿勢もまた素晴らしいなと思います。

大渡 いい意味で僕はデビュー当時から他力本願のスペシャリストなんですよね。(笑)

■あはははは、そうなんですか?

伴 そのワードはこれまでの取材でもよく出てきたよね。(笑)

大渡 でも、僕なりにこのグループの活動が止まらないようにするにはどうしたらいいかと分析していて、メッセージ性がちょっと弱いときは、メッセージのほうに参加してみようと歌詞を書き始めたり、ライブでのスポークスマンを買って出たり、足を止めないために俺は何をするべきかと、給料泥棒にならないことをいつも考えていました。前作『ALIVE』のときも、澤野(弘之)さんがプロデューサーやってくれるならラッキーだと思って「ぜひお願いします」って感じだったし、うちらの血肉になって、ポジティブな作用になることであれば、なんでもOKなんです!

■それは素晴らしいです。特に活動が長ければ長くなるほど、自身のこだわりが強くなったり、固執してしまったりすることが多いかもしれないですし。

大渡 なのでDo As Infinityという存在を貸していただいているイメージが僕の中ではあるんです。

■なるほど。そういうことなんですね。

大渡 ただ自分も何かできることがいくつかあるから、それを投下するっていうね。例えば、いましゃべっていることもグループの何らかの一役になっていたりするわけで、パーツパーツで何箇所か自分の意識を織り込んで、みんなで盛り立てていければ、このグループはずっと続くんじゃないかって。そういつもポジティブに解釈はしていますね。そういうライトな考えが功を奏しているのか、いろいろな要素はあると思うんですけど、そうは言っても現実的にまだこのグループは残っていて、活動ができていて、新しいアイテムを世に出していられるっていうことは、もう充実感しかないですよ!

■素敵ですね。

伴 こういうキャラに救われているところもあるんですよね。

■すごくいいバランスなんですね。(笑)

伴 そうなんですよね。そうやってだいぶ心をラクにはしてもらっていますよ。

大渡 あんまり考えていないんですよ。考えても正解に近づけるとも、この20年やってきて思えないんで。考えれば考えるほど遠くなるような気がしていて。じゃあどうすんの?まぁやるけどねって、そうやって乗り越えてきたことが多かったんで。じゃあまずやる前提でどうすっかなって、そういう感じですね。

■ありがとうございます。(笑) 最後に聴きどころを含めメッセージをお願いします。

大渡 あのとき彼氏とケンカしてひとりで歩いて帰ったなとか、この曲を聴いていたときは何歳だったなとか、淡い思い出を振り返りつつ、いまわたしはこうしているんだってことを想うアイテムに使っていただければ幸いでございます。

伴 熟成された楽曲たちが入っています。豪華な1枚になっているので、それぞれの楽しみ方で聴いていただけたらうれしいです。わたしたちの20年、そしてあなたたちの20年を楽しんでください。

Interview & Text:藤坂綾

PROFILE
伴 都美子(Vo)、大渡 亮(Gt&Vo)からなるロックバンド。1999年結成。同年9月にシングル『Tangerine Dream』でavex traxよりデビュー。2017年には、澤野弘之をサウンドプロデューサーに迎え、12枚目となるオリジナルアルバム『ALIVE』をリリース。海外でのワンマンライブや大型フェス参加など、日本のみならずワールドワイドに活動。2019年は結成20周年を迎え、数々のリリース、ツアーを実施予定。精力的な活動を続けている。
https://d-a-i.com/

RELEASE
『Lounge』

『Lounge』

CD+DVD
AVCD-96293/B
¥4,860(tax in)

『Lounge』

CD+BD
AVCD-96294/B
¥5,400(tax in)

『Lounge』

CD only
AVCD-96295
¥3,024(tax in)

avex trax
6月5日 ON SALE