恋バナも制作時間!?ドラマ「理想のオトコ」OP曲で描かれた大人の恋のリアル
この春はTikTok連動型MVが注目を集めたwacciとのコラボ曲“キミとなら”、東海地方屈指の情報番組「ドデスカ!」のテーマソング“すばらしい日”を発表するなど、立て続けに話題作を生み出している足立佳奈が、今度は自身初のドラマタイアップ曲となる配信シングル“ノーメイク”を完成させた。本作はアラサー女子の恋愛事情が描かれたテレビ東京系「理想のオトコ」のオープニングテーマで、足立が行く先々で恋バナを聞いて制作。大人になっても「小学生が悩むようなピュアな気持ちを持っているんだな」と感じたという彼女に、自身の恋愛エピソードも交えながら、楽曲に込めた想いを語ってもらった。
■2月からツアーを周られていましたけど、久しぶりに有観客でライブをしてみていかがでしたか?
足立 やっぱりみなさんと顔を合わせながらのライブは、生きた音楽をそのまま届けられる実感があって。たとえば何かアクシデントがあっても、それは一度しかないことですし、その空間を共有できていることがすごく嬉しかったです。もう何回泣いたんだろうっていうくらい、今回のツアーではいろんな感情が溢れてきました。
■やっぱりコロナ前とは感じることも違いましたか?
足立 違いましたね。久々にみんなに会えたということもあって、伝えたい想いがより強くなりました。
■そのツアーと並行して、2月に“まちぼうけ”、3月にwacciとのコラボ曲“キミとなら”、4月に“ノーメイク”とリリースが続いて、だいぶ忙しい日々を過ごされているんじゃないですか?
足立 はい。こうしてライブがあって、リリースも続いて、久々な感覚なんですけど、この忙しさがとても心地よくて安心します。(笑)
■忙しい方がいいんですね。(笑) 今日は最新作の“ノーメイク”についてお聞きしたいんですけど、ドラマ「理想のオトコ」のオープニング曲ということで、僕も1巻だけですけど原作のマンガを読んできました。
足立 どうでした?
■こんなこと実際にあるような、ないような……。でも「大人になってもドキドキすることはあるよな」と思いました。
足立 そうなんですよね。大人の恋がテーマになっていると思うんですけど、ヒロインの方は子供心を忘れていないというか。「どうしよう?どうしよう?」っていう学生のようなキャピキャピ感も兼ね備えているんです。だから大人な恋愛マンガを読んでいるという気持ちにはならなくて。でも、きっと大人ならではの悩みもたくさんあるんだろうなと思いながら、私も読ませていただきました。
■“ノーメイク”はオープニング曲になる前提で書き下ろしたんですか?
足立 そうですね。すべて原作に沿うように作ったわけではないんですけど、ヒロインは32歳の独身の方で、21歳の私とは少し年齢が離れているので、自分のイメージだけでは難しいところもあったんです。でも、ちょうど私のまわりのスタッフさんに30歳前後の方が多かったので、「こういう時はどう思うんですか?」とか、「大人のみなさんは手とかつなぐんですか?」とか、質問攻めをさせてもらって。(笑) この曲はCarlos K.さんのご自宅で一緒に作らせていただいたんですけど、音楽と向き合う時間はもちろんありつつ、恋バナをする時間もすごく多かったですね。
■その恋バナから生まれた歌詞もあるんですか?
足立 はい。Carlos K.さんやスタッフのみなさんと恋の話をして、「なるほど、なるほど」って私がメモしていくことが多かったです。あとは私の母とか、美容室の方とか、いろんな方からお話を聞いて。
■行く先々で恋の話を?(笑) 「理想のオトコ」のヒロインはまさに美容師ですけど、足立さんが話した美容師さんはどんなことを言っていました?
足立 最終的には「愛されたい」という話になったんですけど、愛は見えるようで見えないから、言葉にされないとわからないですよねって。大人になればなるほど、照れ臭くて言葉に出せないみたいで、お付き合いしている状態だと、本当はどう思われているのかわからないそうなんです。
■実際の体験談なだけにリアルですね。原作を読んだり、年上の人たちの話を聞いたりした中で、21歳の足立さんとしては、どういう部分に共感できましたか?
足立 大人の人でもいつだって手をつなぎたいし、好きと言われたいし、小学生が悩むようなピュアな気持ちを持っているんだなと思って、なんか安心したんです。
■大人になるとそういう気持ちはなくなると思っていたんですか?
足立 はい。好きとかどうこうよりも、お金の方が大事とか、もっと冷めているものだと思っていました。だけど、思っていた以上にキュンキュンしたい気持ちを持っていて、大人の人でも子供と同じような部分があるんだなと思ったんです。それで、ちょっと愛おしく感じることが増えたというか。どれだけ強く指導のために言ってくださっていても、きっとどこかでそういう部分もあるんだろうなと思ったら、なんか「ククク(笑)」ってなっちゃいますね。
■逆に理解できなかった部分もありましたか?
足立 理解できなかったというよりは、「そういうふうに思うんだ」という発見がありました。Dメロで「ああ 子どもたちが走ってく/背中見て なんだか今…」という歌詞があるんですけど、その聞き取り調査みたいなことをしていた時に、子供たちが走っている姿を見ていたら、自分の親が自分を育てていた年齢になっていることに気づいて、子供の見方が変わったと言われたんです。それで「あぁ、自分はまだ結婚できていないんだな」とか、そういうことを考えるんですよねって。
■言われてみるとそうですね。
足立 私は小さい子を見ても「かわいいねぇ、何してるの?」みたいな感じで、そこまで深く考えることはなかったんですけど、よくよく考えてみれば身近にあったことなんですよね。ただ、そこの歌詞を「…」で終わらせているのは、聴いている人に委ねたいなと思ったので、それぞれの状況で重ねて考えてもらえたら嬉しいです。
■この曲の歌詞はいろんな人の恋バナから生まれたとおっしゃっていましたけど、「強がってたって心は愛されたいの」は、足立さんにもある気持ちなんですか?
足立 ありますね。私は家族、特に母とケンカをすると、突き放すような言葉も言ってしまうんです。でも、母は私が怒っていても、泣いていても、グイグイ来るんですよ。それがいい塩梅になっているのかなと思うんですけど、私も縁を切られたいわけでもないし、かまって欲しくないわけでもなくて。だから何かツンとしていても、心のどこかでは誰かに愛されたいと思っているんだろうなって。
■それは恋愛においてもですか?
足立 そうですね。つい強く当たってしまうというか、わがままを言って愛想を尽かされることが多いです。(笑) かつては告白も歌でしたんですけど、それも重いと振られました。(笑) たくさん想いは伝えるんですけど、それが本当に重いって言われたりとか。
■個人的には歌で告白されたら、ちょっと引いちゃうかもしれないです。(笑)
足立 やっぱりそうなんだ……。
■そういうのが好きな人もいると思いますけど。足立さんは歌で告白されたら嬉しいわけですよね?
足立 嬉しいです。上手い下手とかじゃなくて、自分のために曲を作ってくれたんだ、練習してくれたんだとか、その気持ちが嬉しいです。
■嬉しいは嬉しいですけどね。その気持ちに応えられる自信がないだけで……。
足立 なんか私、告白もしていないのに振られた気分なんですけど……。(笑)
■失礼しました!(笑) あと、僕はこの曲を聴いて女性はどんな人になら本音を打ち明けられるのか気になったんです。
足立 私の場合は、話をただ聞いて欲しいだけで、解決して欲しいわけじゃなくて。「うんうん」「そうなんやね」「そっかそっか」って、それだけでよくて。そこで「こうした方がいいんじゃない?」とか言われたら、「私の何がわかるの?」ってなっちゃいます。(笑) だから、本音を言える相手っていうのは、右から左へ流れて、聞いているか聞いていないのかもわからないような人。でも、本当に聞いていないのは嫌だから、「そっかそっか、とりあえず美味しいものでも食べる?」くらいがいちばん嬉しいです。
■勉強になります。(笑) この曲は最後「きっとこれが私なりの思い描いてた理想よ/あなたといられる今が/幸せ」で終わりますけど、これはポジティブな意味なのか、それとも自分に言い聞かせているのか、どっちなんですか?
足立 どっちもあります。強さ的には言い聞かせている方ですね。これは恋愛は置いておいての話なんですけど、私が10歳の頃にイメージしていた二十歳のお姉さんって、外見で言ったら髪を巻いて、茶髪に染めて、いい香りを漂わせて、ヒールでカツカツ歩いているみたいな感じだったんです。だけど実際の自分は、ヒールは歩きにくいからスニーカーを履いているし、だいたいパンツスタイルだし、髪を巻くのも面倒くさくて、朝起きてそのままみたいな時も多くて。でも、これが自分の理想だったんじゃないかなと思ったんです。それが歌詞にも強く出たのかなと思います。