『fhána 5th Album Tour 2024-2025』ライブレポート@HULIC HALL TOKYO

重なる旅路と日々の暮らしを賛美した5thアルバムリリースツアー東京公演。

黄昏れたステージに、星のような光が点々と瞬く。その明かりが人々の騒めきに包まれれば、瞬間の静寂の後、白を基調とした衣装に身を包むfhánaのメンバーが登場。眩しいライトが照らす中に空色のワンピースを纏うtowana(Vo)が現れてマイクを取ると、“Beautiful Dreamer”の爽やかなギターリフが会場を揺らした。fhánaが1月13日(月・祝)に『fhána 5th Album Tour 2024-2025』東京公演を東京・HULIC HALL TOKYOで開催した。

2024年11月に5thアルバム『The Look of Life』をリリースしたfhána。それに伴う今回のツアーは、2024年秋から2025年にかけて大阪、名古屋、東京で3公演が行われている。なお、彼らがHULIC HALL TOKYOでライブを行うのは今回が初となる。疾走感あるオープニングで会場を温めるfhánaは、青く激しい点滅の中、“現在地”で残像と化す。柔らかな裾を摘まみ上げてステージを踏みしめ、人差し指を突き上げるtowana。“Runaway World”で観客が声を張り上げると、その熱量に応えて透明な歌声が降り注ぐ。「新年あけましておめでとうございます、fhánaです!」3曲を終えて、佐藤純一(Key&Cho)が少し遅めの新年のあいさつを観客へ贈る。5thアルバムのリリースツアーとしてはラストの本公演だが、fhánaとしては2025年の初ライブ。メンバーは本番前、舞台袖で「良い形でツアーを終えながら、今年を始めよう」と誓い合ったそうだ。ここでkevin mitsunaga(Sampler&etc.)が振り付けを説明し、ニューアルバムから“city dream city”をパフォーマンス。「深夜2~4時くらいのテンションで作った、やぶれかぶれな感じのある曲」だというが、サビの3拍で腕をくるくる回し、最後の1拍でクラップ、それを繰り返す単純な振りは楽しく、次々に言葉を繰り出す軽快な曲調と相まって、さっそくライブの定番曲となることを予感させた。

そこから雰囲気が一転した“Matching Error”はステージが都市的なネオンの煌めきに包まれ、towanaはサウンドとビートの絡み合いに身を預ける。佐藤から歌い出し、3人が歌声を重ねる“Spiral”では、夕暮れめいた優しい光の中、観客たちが掲げるフラッグが揺れた。MCではそれぞれの年末年始について問う佐藤。kevinとtowanaは「仕事してなくはない」と語りつつも寝正月だった様子だが、佐藤はこの冬、「凄い曲ができた」らしい。その言葉にオーディエンスは期待を高めるも、この「凄い曲」についてはまだ何も解禁できないそう。ただ、エンジニアに「またやっちゃいましたね!」と言われるほど良い曲とのことなので、続報を待ちたい。また、佐藤からはTVアニメ『義妹生活』のオープニングテーマ“天使たちの歌”が5thアルバム制作の柱になったことが語られる。TVアニメ『義妹生活』は登場人物の生活を丁寧に描いた作品であり、出口のない作品に対して、“天使たちの歌”は当初、監督から「明るすぎる」と言われていた。しかし最終話までのシナリオができあがってから同曲を聞き直した監督は「(主人公の)ふたりが失ったものを再生していく曲に感じられた」と涙したそうで、この曲をきっかけとして、日常的なテーマを歌う温かなアルバム『The Look of Life』ができあがっていった。その紹介のもとに歌われた“天使たちの歌”では、左右に広がるメンバーがtowanaの背に生えた白い翼のように錯覚させられる。バンドの巨大な音色を上昇気流として、どこまでも突き抜ける歌声。続く“Last Pages”で逆光の中に影となるメンバーが繰り出す音楽は、観客席の一番遠くまで疾走する。

「日常生活は、お祭りやライブといった非日常とは反対のものだけど、日常があるからこそ非日常が輝く。だから日々の生活を大切にしなきゃいけない。そんな日々の中でのきらめく瞬間を大切にしていきたい。そういう想いのもとで作られた5thアルバムのリード曲です」そう語られた“Look of Life”は、まさに人生を歩みながら見つけたときめきや美しいもの、夢と現実とを宝箱に閉じ込めたような1曲。続く“星屑のインターリュード”は宇宙を感じさせる壮大な楽曲ながら、なぜか「日常」の中に音楽として溶け込んでいく不思議さがあった。妖艶なピアノソロに踊るフロア。その余韻が冷めないうちに“GIVE ME LOVE”へ入ると、towanaとkevinが指さし合って互いを高め合う。曲中にはfhánaを支える目黒郁也(Ba)、北村望(Dr)、中西(Gt)、本多秀(Gt)が紹介される。前曲からそのまま流れ込んだ“Relief”では、音楽の酩酊の中に踊るメンバーたち。“光舞う冬の日に”は、めまぐるしく移り変わる複雑な拍子がパズルのごとく組み上がり、絶え間ない点滅の中、観客たちはtowanaに導かれて5拍子の指揮を振る。いよいよライブも終盤。佐藤は“Look of Life”の歌詞があがってきた時、「fhánaの曲にしては地に足がつきすぎている」と感じていたらしい。「fhánaのMCで生活の話をすると思っていなかった」とまで語った佐藤だが、結成から14年、デビューからも12年が経ち、最近は地に足つけて行こうと考え始めた。

「fhánaの音楽が、みんなの生活の中にあればいいなと思っています。今日は本当にありがとうございます」感謝と共に歌われるのは“風になって”。「私なりの“Look of Life”を詞にしてみました」とtowanaが話す通り、その歌詞はtowanaのささやかな日常を感じさせるものとなっていた。これまでfhánaが抱いていた幻想性の中にはない楽曲だが、その音楽は確かに「fhána」のもの。彼らのアイデンティティは、ひとつの壁を越えて、確かにそこに存在していた。まばらな星が散るステージで、ラストソングには“waltz for lily”が選ばれる。日々の幸福を噛み締めながら、3拍子のリズムに乗って歌われる祝福と祈り。毎日の暮らしを賛美して、fhánaは舞台を後にした。

アンコールに呼び戻されたfhánaは、荘厳なストリングスの音色とともに“World Atlas”をドロップ。色とりどりのフラッグが揺れる中、背番号「87(fhána)」をあしらったベースボールシャツを着たtowanaの笑顔が弾ける。今回のアンコールに“World Atlas”が選ばれたのは、佐藤曰く「5thアルバム『The Look of Life』は生活をテーマとしつつ、明るいアルバムにしたかった。これまでのfhánaで明るいアルバムといえば3rdアルバム『World Atlas』だから」。そのタイトル曲を演奏しながら、佐藤はfhánaの「みんながそれぞれの旅を続けている中、ライブで合流し、またそれぞれの旅に戻っていく」というスタイルが形作られたのが『World Atlas』の頃だったことを思い出していた。ここで「僕(佐藤)がなくしたデータも全部持っている人」だというマニピュレーター・沢田悠介や、「カッコ良さ重視なので舞台上では何も見えない」と評判の照明担当・小池恭平を含めた全メンバーとグッズを紹介し、「新年なので言えることを発表していこうと思います!」の嬉しい一言。3月27日(木)にはファンクラブイベント、そして5月2日(金)には神奈川・Billboard Live YOKOHAMAでライブを行うことが予告されたが、「今年は他にもいろいろある」そうなので、今後の発表をお楽しみに。「明るく爽やかなアルバムを作ったことで、楽しくも肩の力を抜いて歌うことができました」5thアルバムのリリースツアーもフィナーレを迎えようとしているこの時、towanaは今回のツアーをそう振り返る。そんな彼女の初夢は「シルバーのラメが入ったネイルを塗っているのに、いろんな人に話しかけられて上手く塗れなかった」なんて後味の悪いものになり、ツアーを締めくくるこの日のライブには、リベンジのためにシルバーのラメが入ったネイルを塗って臨んでいる。

夢のモヤモヤや日々の鬱憤を吹き払うように、アンコールは“愛のシュプリーム!”へ続く。「みなさんも一緒に踊ってほしいんですけど、いいですか~!?」の叫びに導かれた“青空のラプソディ”では、ステージいっぱいを駆けまわるkevinのダンスも軽やかだ。「fhánaは結成14周年を迎えます。結成した時はアニソンをやると思っていなかったのですが、アニメのおかげもあってたくさんの人に聴いていただいたり、日本以外の国でもライブをさせてもらったりして、音楽と物語の力は様々なものを超えて行くことを感じました」華やかなひとときが過ぎ、鍵盤に指を滑らせながら、佐藤が穏やかに語る。「fhánaが人生になるとは思っていませんでした。ここまで続けられたのはメンバーと、スタッフと、何よりここに来てくれるみなさまのおかげです。これからもfhánaの音楽が、みんなの人生の一部になればいいなと思います」語り終えて、静かに歌い出された“Outside of Melancholy~憂鬱の向こう側~”は、やがて巨大なサウンドに飲み込まれて、真っすぐな歌声に胸を貫かれる。このひとときが終わればそれぞれの旅路に帰って行く人々が、同じ舞台を見上げて手を振り、同じ音楽に耳を傾ける一瞬。それを積み重ねたfhánaの14年が、ステージに燦然と輝いている。そうして3公演を巡ったツアーのグランドフィナーレは、星の巡りの如く一瞬のうちに幕を下ろした。

Text:安藤さやか
Photo:笹原清明

『fhána 5th Album Tour 2024-2025』@HULIC HALL TOKYO セットリスト
01.Beautiful Dreamer
02.現在地
03.Runaway World
04.city dream city
05.Matching Error
06.Spiral
07.天使たちの歌
08.Last Pages
09.Look of Life
10.星屑のインターリュード
11.GIVE ME LOVE
12.Relief
13.光舞う冬の日に
14.風になって
15.waltz for lily

ENCORE
01.World Atlas
02.愛のシュプリーム!
03.青空のラプソディ
04.Outside of Melancholy~憂鬱の向こう側~

LIVE
■fhána 結成14周年記念ライブ「fhána Billboard Live 2025」
公演日:2025年5月2日(金)
1stステージ 開場 16:30 開演 17:30
2ndステージ 開場 19:30 開演 20:30
会場:Billboard Live YOKOHAMA
神奈川県横浜市中区北仲通5丁目57−2 1F KITANAKA BRICK&WHITE
チケット:
・DXシートカウンター¥9,900-
・S指定席¥9,900-
・R指定席¥8,800-
・カジュアルセンターシート¥9,400-(1ドリンク付)
・カジュアルサイドシート¥8,300-(1ドリンク付)
※座席はこちらをご覧ください。
https://admin.billboard-live.com/yokohama/info.html#floormap_link
お問い合せ:ビルボードライブ横浜
TEL:0570-05-6565
〒231-0003 横浜市中区北仲通5丁目57番地2 KITANAKA BRICK&WHITE 1F
公演詳細:https://www.billboard-live.com/yokohama/show?event_id=ev-20449

■「ふぁなみりーサミット 2025春ー桜舞い散る春の陣ー」
ファナメンによる、fhána Home住人の皆さまに送るトーク&カラオケ&アコースティックライブ
公演日:2025年3月27日(木)
開場 19:00 開演 19:30
会場:東京 LOFT9
東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス) 1F
会場チケット:
・自由席:¥4,000(税込)
※メンバーサイン特典付
※整理番号付・別途ドリンク代
配信チケット:
¥1,500(税込)
※4/2(水)23:59までアーカイブあり
※購入者の方にサイン入りイベントイラスト画像をプレゼントします。
公演詳細:https://fhana.jp/blog/?p=5745
公演に関するお問い合せ: LOFT9
TEL:03-5784-1239