Hakubi『one-man tour 2023 -Eye to Eye-』ライブレポート@LINE CUBE SHIBUYA

「あなたのおかげで強くなったことを知りました」2度目のホール公演で見せた新境地。

4月30日(日)、Hakubiが『one-man tour 2023 -Eye to Eye-』東京公演をLINE CUBE SHIBUYAにて行った。青色のバックライトに照らされる中、静かにステージに現れたメンバー。ライブは柔らかくも力強い“Rewrite”で開幕した。「ここに最高の時間を残しに来ました。最高の一日にしましょう!」と片桐(Vo&Gt)が語りかけ、自分らしく生きるようにと背中を押すようなアンセム“ハジマリ”では、早速オーディエンスの手拍子を煽っていく。“Rewrite”をはじめ、多くの楽曲で感じられた片桐の息遣いや繊細なニュアンスの歌声は、この日の舞台であるホールとの相性は抜群。一方で、片桐の口からは何度も目の前にいるオーディエンスへの熱いメッセージも送られた。そういった前のめりな姿勢やアッパーな楽曲でほとばしる熱量からは、Hakubiがライブハウスで鍛えられてきたバンドであるという矜持も感じられた。

“夢の続き”では、マツイユウキ(Dr)によるドラム、ヤスカワアル(Ba)による力強いベースの音色とともに、もどかしさを抱える気持ちを吐露する歌詞が歌われるが、そこには数年前に感じられた鋭さや鬼気迫る様子は感じられない。片桐も後のMCにてライブに向き合う気持ちの変化について語っていたが、この日の片桐のボーカルは、目の前にいるオーディエンスにしっかりとメッセージが届いていることを確認するような、優しさのある振る舞いが印象的であった。

「来てくれて本当にありがとうございます。今日が一旦のツアーファイナル、とってもとっても楽しみにしてきました。どうぞよろしく」と、片桐によるMCを挟んで披露した“ゆれて”は、じっくりと聴かせるミディアムバラード。サポートキーボードを迎えて演奏した“あいたがい”では、楽器隊の柔らかいタッチの演奏、息遣いまで丁寧に豊かに響かせる片桐の歌声、そしてサビで一気に盛り上がるダイナミクスと、ドラマチックな曲調を最大限美しく響かせる。呟くように歌った“サイレンと東京”では、ドラムパッドを使った演奏がミニマムな印象で、バラード調の楽曲が続くセクションの中で更に雰囲気を変化させる。幻想的なサウンドスケープにオーディエンスも拍手を忘れて聴き入った後には、“Twilight”へ。サビに向かうまでの高揚感を誘う構成と力強く届けられるサビが多幸感を演出し、早くもクライマックスの熱量だ。

ここで、小休憩的にヤスカワアルによるコール&レスポンスや、マツイによる軽妙なトークなど、3人による和やかなMCを挟む。以前はアンコールに組みこまれていたことが多かったマツイとヤスカワを中心にした漫才のようなMC。今回はライブ中盤のタイミングに入っていたことによって、Hakubiのフランクな姿を垣間見せ、会場の空気を緩めるのに一役買っていたようにも思えた。MCで存分に盛り上がった流れから、片桐が一段とオーディエンスを煽り“辿る”、“Eye”とアッパーチューンが続く。どこか初期衝動を感じさせる、軽やかでエネルギッシュな演奏だ。今のHakubiの勢いを反映するような“どこにも行けない僕たちは”に続くと、オーディエンスも拳を突き上げてぐんぐんと熱量をあげていった。

「前は感情を吐き出してぶつけるようなライブをしていたし、感情をぶつけることで精一杯だったから、みんなに分かってもらえていないのかもしれないと思ったこともあったし、きっと味方だろうと思っていても怖くなる瞬間もありました。でもここ2、3年、あなたがここにいてくれたことの大切さを感じて、あなたのおかげで強くなったことを知りました。そこにいてくれて、本当にありがとう」静かに、ゆっくりと噛みしめるように話す片桐。そんな思いを丁寧に伝えるように演奏したのは“夢が夢であるうちに”。“光芒”、“mirror”と続け、曲の間には「ありのままでいい」、「生きていけ、誰でもないあなたとして」と切実な思いを力強く伝えていく。「少しでもいい、力になりたいと心から思っています」最後にそう告げて、ライブは“君が言うようにこの世界は”、“悲しいほどに毎日は”で大合唱のフィナーレ。今のHakubiの持ち味を詰め込んだ、「全員に言葉と音楽を伝える」という意思を強く感じさせたツアーファイナルであった。

Text:村上麗奈
Photo:翼

https://hakubikyoto.com/

『one-man tour 2023 -Eye to Eye-』@LINE CUBE SHIBUYA セットリスト
01. Rewrite
02. ハジマリ
03. 夢の続き
04. 天才にも秀才にもなれなかった僕は
05. ゆれて
06. あいたがい
07. 32等星の夜
08. サイレンと東京
09. Twilight
10. 辿る
11. Eye
12. どこにも行けない僕たちは
13. 夢が夢であるうちに
14. 光芒
15. mirror
16. 君が言うようにこの世界は
17. 悲しいほどに毎日は