■“Farfalla”は、イタリア語で「蝶」という意味なんですね。
ハナフサ そうなんです。元々は“ファンファーレ”という曲にしようと思っていたんですけど、「ファンファーレ」という言葉を過去の曲で使っていて。同じでもいいんですけど、「もう少し違う言葉がないかな?」と思っていた時に、“Farfalla”というのを見つけて。響きがいいなと思って調べてみたら、イタリア語で「蝶」という意味なのを知ったんです。応援歌にしようと思っていたので、応援する側は相手に蝶のように舞って欲しいと思うだろうし、ちょうどいいと思って、このタイトルにしました。
■蝶というモチーフがあるからか、応援歌は応援歌でも、ストレートすぎない歌詞になっていますよね。
ハナフサ 最初はシンプルに「頑張れ、頑張れ」みたいな歌にしようと思っていたんです。でも蝶というのが出てきてからは、推しがいる人をイメージして書こうと思って。推し活って今すごく流行っているじゃないですか。特定の人を盛り上げたいから頑張るみたいなのって、すごく素敵なことだなと思って。なので、途中からは推し活している人の気持ちを書いてみようと思って書きました。
■先程、この楽曲では歌詞を別の場所から持ってきたとおっしゃっていましたが、どの部分の歌詞なのでしょうか?
ハナフサ 最初のAメロの歌詞は違う曲から持ってきていて。「夕暮れの風 髪が揺れた帰り道 見つめた横顔」のところは、情景が浮かぶ歌詞にしたかったんです。元々あった歌詞はもう少しシンプルなものだったんですけど、夕暮れといった単語を出すことで、みなさんの頭になんとなく景色が浮かんだところからスタートできたらいいなと思って、違う曲の歌詞を持ってきました。
■“Farfalla”は「推し活している人の曲でもある」とおっしゃっていましたが、ハナフサさんさんご自身が推しているものとして、思い浮かぶものはありますか?
ハナフサ 私は普段ヨーグルトを食べて漫画を読んでいるだけなので……。(笑) 漫画にはいっぱい推し漫画があったり、ヨーグルトの中にもいろんな種類のものがあって、それを広めようとしているので、そういう意味では推しかもしれないですね。
■ちなみに今のハナフサさんの推しヨーグルトというと?
ハナフサ 難しいですね。(笑) 共進牧場さんの「リッチザヨーグルト」というのがあるんですけど、あれはあまり食べたことがない味です。なめらかで甘さもあって、ヨーグルトの中で本当にクイーンになって欲しいなと思う味。(笑) 中々売っているのを見かけないんですけど、もし見つけたら食べてみていただきたいです。
■それは是非食べてみたいです。“レター”はラスサビ前のテンポが揺れる部分など、ライブ感のある楽曲だと感じました。
ハナフサ “レター”はアレンジの打ち合わせをさせてもらった時に、多くの人に歌うというよりは、たった1人に向けて横でアコギを弾きながら歌っているくらいの距離感の曲にしたいというお話をさせてもらったんです。なので、それに基づいてアコースティックな感じの楽曲になっていて。転調前に少しテンポが変わるのは、私から何か言ったわけではなくて、アレンジャーさんが絶妙なアレンジをしてくださいました。最後に転調するのも提案いただいたので、最終的にこの形になっているんですけど、私は曲の中ですごく高い声を出すのは自分の魅力ではないと思っているので、いつもは転調もそこまで使わないんです。でもこの曲に関しては、もう一歩上がるのもいいなと思って、半音あげています。
■“レター”に限らず、今回の収録曲は全体的にシンプルな印象があると感じました。
ハナフサ そうですね。これまでいろんなことに挑戦させていただいたり、いろんなアレンジャーさんに関わっていただいたんですけど、今回はその全部を越えた先に行ったというか。演奏も、ずっとライブで弾いてくださっている方たちにお任せしているんです。なので、サウンドとしてもより生感が出たと思いますし、それもあって装飾みたいなものはつけていないかもしれないですね。
■そして“僕のストーリー”で前向きにアルバムが締めくくられます。
ハナフサ この曲は私がトマトジュースをシャツにこぼした実体験からできた曲なんです。(笑) 大きめのトマトジュースを雑に飲もうとしたらこぼしてしまって、殺人現場みたいになってしまって。(笑) 洗えばいいだけなんですけど、自分にとってはその日1日やる気がなくなるくらいのダメージがあったんです。その時にみんな自分の人生は自分のものだと思っていても、絶対に誰かと何かしらで比べたり比べられたりすることってあるんじゃないかなって思ったんです。「あの人はカッコいい」と思っていても、多分本人にはいろんな努力や苦労があるだろうし、見えないところでいろんな葛藤があるだろうというのを書きたいなと、トマトジュースをこぼした瞬間に思ったんですよね。(笑) 最終的には自分の人生だからと肯定できるような曲なんですけど、嫌なことがあるというのにも寄り添っている楽曲にできたのかなと思います。
■もしトマトジュースをこぼしていなかったら、できていなかったかもしれない曲なんですね?
ハナフサ そうですね。
■「主人公は僕だから」というフレーズが特に力強いなと感じます。
ハナフサ 最後、「主人公は僕だから」と2回続くんですけど、最初は「主人公は僕だ」で終わっていたんですよ。でも話し合いの中で「僕だから」というフレーズが、この曲ではすごく大事なのではないかという話をしてもらって、「僕だから」になっています。それが最後の最後まで貫き通す思いになってくれたんじゃないかなと思います。
■今回収録されている11曲の中で、歌の面で印象に残っている曲や苦労した曲はありますか?
ハナフサ “靴ずれ”はものすごく難しかったです。感情の起伏と、メロディーが下から上まで上がっていく感じがレコーディングで中々ついてこなくて。最終的にはマイクを変えて違う日に録りなおしたくらい苦戦した曲でした。“Farfalla”も難しかったですね。この曲に関してはちょっと油断していたんですよ。「この曲難しくない?」と言われていたんですけど、レコーディング前までは歌えるなと思っていて。でもレコーディング当日になったら、急にどうやって歌えばいいのか分からなくなってしまったんです……。あまり低い音域が鳴っていない、ふわふわと浮いているような曲なんですけど、その中で自分の声をどこに置くのかが分からなくなってしまって。途中、どうしてもお腹に力が入らなくなってしまったので、コンビニでチキンを買ってきてもらって、食べてからなんとか録りきった感じでした。
■“靴ずれ”の話でメロディーの話題も出ましたが、ハナフサさんは曲を作る段階で自分の歌いやすいメロディーを考慮して作っているんですか?それとも歌い手としての自分は置いておいて作りたいように作っていますか?
ハナフサ 最初の枠組みは作りたいように作ってしまうんですけど、その後でどう考えても無理な時があるので、そうなったらメロディーを変えるか、キーを変えるかして調整することが多いですね。でも“靴ずれ”に関しては、キーを下げると低すぎるし、上げるとサビが高すぎるみたいな絶妙なラインになっちゃって。自分がそうしたんですけど。(笑) すごく苦戦しましたね。
■作り手として生み出すのに苦労した楽曲はありますか?
ハナフサ 今回は全部時間がかかったような気がしていて。枠組みはあるけどブラッシュアップに時間がかかるみたいな曲が多かったですね。ただ“ボーイフレンド”はドラマの主題歌だったので、締め切りがちゃんとある中での制作だったんですけど、実は「ボーイフレンド」という言葉が最後まで湧いてこなくて。そこだけ、「何が当てはまるんだろう?」とずっと探していたんです。始まりの言葉なので、一度聞いたら忘れない言葉がいいけど、それが何かが出てこなかった。今となっては絶対最初に決めているのにと思うんですけど。深夜にカラオケに籠ってやっと行き着いたのが「ボーイフレンド」で、「身近なところにあったじゃん」みたいな。(笑) なので、このフレーズを出すのには結構時間がかかりました。
■そうだったんですね。11月にはリリースツアーが控えていますが、どんなツアーにしたいですか?
ハナフサ 声出しが解禁になってからのワンマンライブは初めてなので、みなさんの熱も感じられたらいいなと思います。大阪と東京はホールなんですけど、ホールワンマンが初めてなんです。ホールワンマンは夢でもあったので、今からすごく楽しみです。ライブだからこその臨場感を届けられたらいいなと思います。
Interview & Text:村上麗奈
PROFILE
大阪府高槻市出身在住のシンガーソングライター。自分の想いを言葉にして伝えることが苦手だった小学生の頃、映画『タイヨウのうた』に感銘を受け歌を作るようになる。その後、阿部真央に憧れ、関西大学在学中の2018年から本格的にライブ活動をスタート。2020年9月、ミニアルバム『call for love』でメジャーデビュー。2021年夏、“ハナフサマユ”としてイメージ一新。2021年10月に全国カラオケ事業者協会主催「カラオケ文化の日」事業における作詞作曲・歌唱に抜擢された『感謝の手紙』をDigital Singleとしてリリースし、同月には待望のメジャー1stフルアルバム『Blue×Yellow』を発売。更に、2022年3月に放送されたABCテレビ・スペシャルドラマ「今夜、わたしはカラダで恋をする。」の主題歌に大抜擢。Digital Single『アネモネの果て』としてリリース。同年10月19日にはメジャー2ndアルバム『結晶』をリリース。2023年2月にABCテレビ/ABEMAで放送されるスペシャルドラマ「今夜、わたしはカラダで恋をする。Seson2」主題歌を2話担当することが決定。そのドラマ主題歌2曲(“ボーイフレンド”、“プリンセスになって”)をデジタルシングルとしてリリース。5月31日には2023年第3弾デジタルシングル『あいたい』をリリース。各配信キャリアの公式プレイリスへ多数選定されるなど、今大注目の実力派シンガーソングライター。
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RELEASE
『バートレット』

TKCA-75167
¥2,600(tax in)
徳間ジャパンコミュニケーションズ
9月20日 ON SALE