覚悟を決めて挑んだ1stフルアルバム
「ポジティブだけじゃないけど、明るいだけじゃないけど、前を向く、上を向く」
かめがい あやこ（Vo＆Key）、かわむら（Dr）の2人組バンド、ポップしなないでが初の1stフルアルバム『上々』をリリース。結成から5年、これまでの集大成的な1枚ともなるフルアルバムでは、今現在のバンドの姿と、さらにはここから広がっていく素晴らしき景色を見せてくれる。覚悟を決めて挑んだという今作について、結成から振り返りながら2人にたっぷり話してもらった。
■まずは結成の経緯を教えてください。
かわむら もともと大学のサークルで一緒に音楽をやっていて、卒業してから自分はTHIS IS JAPANというバンドを、かめがいさんは弾き語りでそれぞれ活動していたんです。それで、かめがいさんの弾き語りライブを観に行く機会があったんですけど、その時かめがいさんはアンダーグラウンドな空気の中で、ごく少数の方を相手に弾き語りをやっていて、でも曲はすごくポップで、あれはなんて言ったらいいんですかね……？
かめがい 最高だった。
かわむら そう。(笑) なんて言うか、すごく広がっていきそうなものを感じたので、「ちょっと一緒にやってみない？」って声をかけたのが始まりです。
■THIS IS JAPANとは別にかめがいさんともやってみたかったと？
かわむら THIS IS JAPANはいわゆるロックバンドで、作詞・作曲はギターボーカルがやっているので、自分でもちょっと作ってみたいなとか、女性ボーカルがいいなとか、ポップなものがやりたいなっていう気持ちがあって、すぐやろうと思って探していたわけではないんですけど、タイミング良くという感じだったので。
■かめがいさんは声をかけられた時のお気持ちは？
かめがい ずっとひとりでやっていて寂しかったので、バンドいいなって思っていたし、誰かとやりたい気持ちはあったので、「やったー、うれしー、やろう！やろう！」って感じでした。
■そこからすぐに動き始めたんですか？
かわむら 2人でスタジオ入ろうか、くらいの感じでしたけど。
■バンドのイメージは当時からあったんですか？
かわむら かめがいさんに話していたのは、MOROHAとかBeastie Boysとか、いわゆる声と楽器を使って言葉を伝える、そしてビートっぽいものというか、僕らはピアノとドラムでどちらも打楽器だし、そういうイメージで……って話したよね？
かめがい しばらくしてからそんな話をしたかもしれないけど、まず最初はスタジオに入って、私の作りかけの曲とか弾き語りでやっていた曲にドラムをつけてっていうところから始めて、そこから一緒に作り始めたっていう感じです。
■バンド名をポップしなないでにしたのは？
かわむら 2人でやることは決まっていたので、「○○ズ」みたいなバンド名はそぐわないから、日本語が好きということと、フックの効いた違和感のある名前をつけたいっていう話はしていましたね。
かめがい 私は英語の名前考えてたよ。
■あはははは。どんなのを考えていたんですか？
かめがい わたしポケモンがめっちゃ好きなので、略したらポケモンの名前になるバンド名をいっぱい考えていて、でもポップしなないでもいいと思いました。
かわむら そう、「いいじゃん」ってことになって、じゃあこれでいこうって。
■深い意味があるのかな？って考えちゃったりするんですけど。
かわむら 案外ないんですよ。今ポップスが死んでいるとかそういうメッセージというよりは、あくまでもポップしなないでという気持ちがあって、それが我々の中にすっと入ってくる言葉だった。なので、特に誰かを批判したり、傷つけたり、守ろうとしたりということはないんです。ただこういう言葉が出せるバンドになりたいなというイメージでつけました。
■結成が2015年で翌年には1stミニアルバム、2018年に2ndミニアルバム、2019年に3rdミニアルバム、そして2020年1stフルアルバムといいテンポできていると思うのですが、ご自身たちではどう感じていらっしゃいますか？
かわむら 1年後にCDを出そうと思って始めたわけではなかったですからね。
かめがい 何にも考えていなくて、とりあえずやってみようって感じだったもんね。
かわむら 当時はとりあえずSoundCloudに音源をあげようってね。
かめがい 結成2～3ヵ月でとりあえず2～3曲録って、ポンッてあげて、そうしたらそれを聴いてくれたLUCKという1枚目のネットレーベルの方から連絡がきたんだよね。
かわむら 自分が自主で何枚も出してきたようなバンドをやっているので、バンドを始めてすぐにレーベルから声がかかるというのはラッキーで、ありがたい話なんですけど、かめがいさんには「もしかしたら騙されている可能性もある」と。(笑) すごくおいしい話だけど、もしかしたら危ない話かもしれないから、いつでも俺たちだけでやれる準備をしてから話を聞きにいこうと言った覚えはありますね。(笑)
かめがい だからラッキーです、完全に。
かわむら 人には恵まれていて、今までトラブルは一切ないからね。自己中心的な音楽をやっているつもりなので、そこに共感してくれる人がいるということは嬉しいし、ありがたいです。
■今回のアルバムにはこれまでのミニアルバムの曲も入っていて、ベスト的な内容になっていますね。
かわむら このタイミングでフルアルバムを出すんだったら、今まで積み上げてきたものと、今現在のベストを絶対に見せたかったんです。
かめがい 宇宙ね。
かわむら 宇宙……ね。(笑) それこそ初めて作って、SoundCloudにあげた曲が入っているんですよ。
かめがい 1stミニアルバムにも入っている“エレ樫”です。
かわむら このアルバムでポップしなないでを初めて聴く人も多いと思ったので、今までのベストをつめ込みたいという心持ちで制作はしましたね。
■1曲目を“魔法使いのマキちゃん”にした理由は何かあるのでしょうか？
かわむら この曲はMVの再生回数もそうなんですけど、自分たちの想定以上にいろんな人が聴いてくれている曲なんです。MVの撮影も身内でやって、Maison book girlの和田輪ちゃんに出てもらって、やりたいことをやったら思った以上に広がっている。そこからさらにTikTokで若い子たちが使ってくれたり、川谷絵音さんが今年聴いた良かった曲みたいなので挙げてくれたり、多くの人に愛されていると実感する曲なんです。それでいて我々の音楽を表してくれる曲の最筆頭だと思うので、「1曲目に聴いてもらいたい曲ってなんだろう？」って考えた時、やっぱマキちゃんかなって。
■この“魔法使いのマキちゃん”から“Creation”までの4曲は、曲のパワーももちろんですが、かめがいさんの表現力が素晴らしくて、聴いていて一気に引き込まれました。
かわむら かめがいさんの魅力が詰まっているというのは、ポップしなないでの大前提としてあって、“Creation”までの4曲で特にそれが前に出ているっていうのはありますね。
かめがい 確かに自分でもよく歌えているなって思いました。
■曲毎の表現というのはどのようにされているんですか？
かめがい 感情ですね。しゃべっている時も感情によって声が変わるじゃないですか。それとほぼ同じで、感情によって低い声になったり、元気な声になったり、それをちょっと大きく表現する感じです。だから声質を変えるというよりは、中身が変わると外に出るものが変わるみたいな感じで、例えば歌を録っている時に、かわむらくんに「もうちょっとこういう風に歌える？」って言われたら、そういうアウトプットになるように、まず中身を変えて出すようにするんです。
■なるほど。中身から変えるわけですね。
かめがい そうです。なので、こういう声で歌おう、みたいなことは考えたことがないです。
