■“東京”の制作は時間がかかったとおっしゃっていましたが、どれぐらいの期間で制作されたんでしょうか?
林 去年の9月から制作を始めて、出来上がったのが今年の始めです。歌詞が一行も思いつかないって時期もありました。
■先ほども歌詞を何度も書き直したとおっしゃっていましたが、どんなところに納得がいかなかったんでしょうか?
林 最初は後悔を歌ってしまっていたんです。でもよく考えてみたら、東京に来たことを自分は後悔はしていないので、作品と自分の気持ちに乖離があって、そこに違和感があって作り直すこともありました。上京したことは後悔していないし、地元の頃の思い出はいい思い出として大事にしていきたい、そういう思いを込めたかったんですよね。
■確かに一つの曲にするには難しいテーマだなと感じました。やっぱり上京した後、地元での思い出ってどっちが良くて、どっちが悪いみたいな対立構図になりやすいですよね。歌詞の制作に難航したのは、対立していない事実がまだ形になってなかったり、気持ちとして上手くまとまっていないところから制作がスタートしたからなんでしょうか?
林 そうですね。自分の中でのズレを自分の言葉の中に見つけることが難しかったですね。思っていることがあるけど、その気持ちと言葉のズレがどこにあるのか、違和感はあるんだけど、それがどこかがわからなかったんです。それを一つ一つクリアしていくのに時間がかかりました。
■ファーストシングルの限定盤には、特典としてジャケ写と一緒に撮影したフォトブックもついてくるそうですが、その撮影はいかがでしたか?
林 撮影した時期はとにかく死んでいましたね……。(笑) “東京”の制作が遅れていてスタッフの方にも迷惑をかけていて、その次の日にはDOBERMAN INFINITYの大阪でのライブが控えていたりして、飯を食う気力もなかったですし、めちゃくちゃしんどかったんです。なので、かなり不健康な画になったんじゃないかと思います。(笑)
■かなり精神的にも追い詰められていた時期だったんですね。
林 もう乗り越えられないんじゃないか……って思っていました。(笑)
■また、DVDには“東京”のMVも収録されていると伺いましたが、MVはどんな雰囲気になりますでしょうか?
林 “東京”のサウンドだけを聴くと、すごく柔らかい淡い画をイメージすると思うんですけど、MVはクラブの鏡ばりの部屋で撮影したりしていて、いい感じにギャップのある映像が出来上がっていると思います。これでMVも温かい映像にしていたら、あんまり自分は好きじゃないと思っていたので、洗練されたシーンを撮影してもらえてよかったなと思います。
■MV撮影で印象に残っている場面はありますか?
林 やっぱりクラブのシーンで、たくさんのエキストラさんがいらっしゃる中、その人混みをかき分けて帰っていくシーンがあるんです。僕が通る時に、どうしてもみんな気を使って僕を避けちゃうんですけど、それを避けないように、リアルなクラブのように肩がぶつかるくらいの自然な様子を撮るために何回も撮り直したのを覚えています。僕も気を使っちゃうんで、ぶつからないように、触らないようにって意識しちゃって。(笑)
■2月からはツアーもスタートされると伺いました。ツアーでの目標やテーマはありますか?
林 自分のやっている音楽の良さを伝えたいっていうのが一番ですね。今は移り変わりが早い時代だと思っています。流行りに乗って一瞬で世の中に広まっていくこともあるけど、同時に一瞬で無くなってしまうし、消えてしまうスピードも速いってことを意味していると思うんです。前回のソロアルバムに収録していた“I”もそうだったんですけど、色褪せないでほしい、残り続けてほしいっていう思いはいつでもあります。なので、クラシックな音楽の素晴らしさをみんなに伝えられたらいいなと思います。DOBERMAN INFINITYのライブでも良く言っているんですけど、ライブに来てくださるみなさんには、いろんな背景、ドラマがあると思っています。乗り越えられないって思うことがあっても、一生懸命生きてる人もたくさんいると思います。そんな人生の中でふと振り返って、参加したライブの景色や、聴いた音楽が背中を押してくれるような、そんなあったかいシーンになったらいいなと思っています。
■今回のセトリは今作の『東京』と、前作のアルバム『I』の収録曲が中心になりますか?
林 そうですね。それと「歌ってみた」からも何曲か選出すると思います。
■「歌ってみた」の反響も本当に大きいですもんね。ソロプロジェクトが始動したきっかけは「歌ってみた」にあるんでしょうか?
林 そうですね。ずっとソロ活動はしたいと思ってはいましたが、コロナ禍で始めた「歌ってみた」の活動がソロ活動のイメージを固めてくれた感じがします。「歌ってみた」の動画がみんなの心に届いたのも実感できて嬉しかったんですが、一方でみんなの心に届く音楽が自分の音楽でありたいなとより強く思った機会でもありました。
■最後に読者にメッセージをお願いします。
林 自分の音楽っていうものが背中を押せるかどうかはわからないけれど、聴いた時の景色を思い返してもらえるようなものにしたいと思っています。ツアーも思い出に残る一夜にできればと思っています。大事なものを忘れないでもらいたいですし、その大事なもののひとつに僕の音楽が入ってくれていたらとても嬉しいです。
Interview & Text:高橋未瑠来
PROFILE
2014年DOBERMAN INFINITYのKAZUKIとしてデビュー。唯一のヴォーカルとしてグループの多くの作品でサビを担当。トラック制作から作詞・作曲までを1人で完結出来る唯一のメンバーとして、グループの核となる存在として活動。2023年5月31日、ソロデビューアルバム『I』をリリース。林 和希として本格的にソロプロジェクトを始動した。奥深い甘い歌声で女性ファンを魅了している。
https://m.ldh-m.jp/artist/index/77
https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/25565/
RELEASE
『東京』

初回生産限定盤(CD+DVD)
XNLD-10200/B
¥2,750(tax in)

通常盤(CD)
XNLD-102001
¥1,320(tax in)

D6盤(CD+フォトブック)
XNLD-102002
¥5,500(tax in)
LDH Records
2月21日 ON SALE