このアルバムは僕自身、僕自身という人間がこのアルバムにつまっている
w-inds.のメンバー・橘慶太によるソロプロジェクトKEITAの約4年ぶりとなるソロアルバム『inK』(インク)がリリースとなる。2019年に12ヵ月連続で発表した配信限定シングル12曲に新曲2曲を加えた全14曲。その1曲1曲に音楽に対する細やかな彼のこだわりと、彼自身の人間性が凝縮された。常に新たな挑戦をするが故、常に新たな自分との出会いがある――音楽と、そして自分と向き合うことで完成したこのアルバムについて、KEITAに話を訊いた。
■4年ぶりのソロアルバム、大満足の1枚になったのではないでしょうか。
KEITA そうですね。でも、実際にはアルバムを出せたらいいなっていうくらいの気持ちがあっただけで、昨年12ヵ月連続で配信する段階では明確には何も決めていなかったんですよ。だからアルバムを出す体では曲を作っていなくて。
■純粋に1ヵ月1ヵ月シングルを出すということで?
KEITA はい。w-inds.の作品だと何ヵ月も前から、例えばダンスをつけるからこういう音を入れた方がいいとか結構緻密に考えるんですけど、今回は、じゃあ次の曲を作ります、ってなったとき、それは大体1ヵ月前くらいなんですけど、そのときにパソコンの前に座って、そこから出てきたものだけをカタチにして出そうと思っていたんです。そういうやり方で自分からにじみ出たものという意味で、今回『ink』ってタイトルにして。
■じゃあ本当にまっさらな状態から毎月曲を書いていたと?
KEITA そうです。だからすごく新鮮な気持ちもあったんですけど、4~5ヵ月目くらいにやんなきゃよかったなと思って…。(笑)
■あはははは。
KEITA さすがにこれは、って。(笑)
■1ヵ月に1曲って結構過酷かなって思います。
KEITA それと並行してw-inds.の活動もあったので、「w-inds.の方の曲をお願いします」とか言われたら、いや、いまちょっと違う曲を作っていまして…みたいな感じになるときもあって。(笑) でも終わってみたら達成感があったし、ずっと音楽だけに向き合えていたので、新たな発見であったり、成長できた部分であったり、いろいろなことが身になった2019年でもあったし、こうやってアルバムとして出せることはすごく嬉しいことなので、4ヵ月目辞めなくて良かったなって。(笑)
■本当に良かったです。(笑)
KEITA 今回あらためて自分のクセもわかったし、自分に足りないものももちろん出てきたし。詞の世界観もパーソナルな部分がめずらしく出たなって。しかもそういう曲が多くて、そういうことを歌った曲が何曲もあったりするんですよね。
■確かに。
KEITA いままであんまりなかったんですよね。なので、あらためて自分の人間性を知れたというか。基本的に僕は世の中にあまり不満なく生きてきたので、言いたいことってそんなにないと思っていたんですよ。だから強いメッセージ性みたいな歌詞があまり得意じゃないと思っていたんですけど、今回そういう曲が何曲か出てきたのは、また新たな自分との出会いっていう感じでしたね。
■それは今回作っていく中で自然に出てきた感じなんですか?
KEITA 作っていく中でって感じなんですけど、ずっと音楽と向き合っていると突然思うことがよくあって。例えば”Don’t Leave Me Alone”は、SNSやTVによって、本当の自分とは違う自分が勝手に印象として知れ渡っているっていうことが多くて、それに対して突然寂しい気持ちになったり。みんな応援してくれているんだけど、果たして本当の自分を応援してもらえているのか?って、突然ひとりの気分になったり。音楽や曲と向き合っていると、そういうことをふと思ったりすることがあって。それが突然歌になったりしたのは今回が初めてで、自分の人間性を見つめ直しました。
■あえて出そうとしたわけではなく、自然に出てきたと。
KEITA まったく何も考えていなかったです。何がそうさせたのかは自分でもわからないんですけど。
■毎月曲を書くときは、何かテーマを決めてというよりは、そのときに沸いてきたものをそのままカタチにする感じだったんですか?
KEITA そうですね。僕はトラックから作るので、トラックを打っていたら情景とか景色とかシーンみたいなものが浮かんできて、そこから自分の気持ちが反映されたり、逆にストーリーができあがったりするときもあるんですけど、そういう作り方でした。
■あわせて今回はすべて自分でやられたということですが。
KEITA 自分のパソコンの中からそのままアルバムになるっていう、そういうことを人生の中で一度やってみたいと思ってたので、その長年の夢が叶ったっていう達成感もありますね。
■一度カタチにしてしまったらこれからはもうずっと……。
KEITA それはもうやりたくないです!(笑)
■あはははは。でもできちゃうんだったらやっちゃいたくなりませんか?
KEITA いや、めちゃめちゃキツいんですよ!(笑) 作詞、作曲、アレンジまでは楽しいというか、やりがいがあるんですけど、そこからのミックス、マスタリングの整える作業は「なんで俺がやっているんだろ?」って思うことの方が多かったですね。(笑)
■でも、だからこそ自分のこだわる音が出せたっていうのは聴いていてすごく感じました。
KEITA そうですね、それは大きいです。
■それと同じくらい孤独な作業でもあったかと。
KEITA 基本、無言ですからね。10時間とか一言も発さないので。(笑) だからそれがキツかったし、寂しかったし、孤独でした。めちゃめちゃ寂しかったです。
■孤独だったからこそ、自分と向き合うこともできて、歌詞がパーソナルなものになっていったのかも?
KEITA 確かに。言葉を発してないにせよ、自分との対話は永遠としていたのかもしれないですね。というかしてましたね。(笑) それが自然と出てきたのかもしれないです。
■”I Gotta Feeling feat.ISH-ONE, GASHIMA”はTwitterでつぶやいたことから始まった曲ということですが?
KEITA 「トラックができたから、ラップやってくれる人いないかな?」ってつぶやいたら、GASHIMAとISH-ONEさんがめっちゃ早く返事をくれて。他にもいたんですけど、2人がめちゃくちゃ早かったので「よし、この2人にしよう」って。(笑) GASHIMAはもともと知り合いだったのですぐ連絡して、ISH-ONEさんは面識なかったので、GASHIMAに聞いたら「高校の先輩です!」って言うから繋げてもらって。
■そのフットワークの軽さ、すごいですね!
KEITA 僕、結構ノリでやっちゃうの好きなんですよね。Twitterでつぶやいてから1ヵ月もないくらいなんじゃないかな、きっと。すぐリリースってことになりました。
■一緒にやられてみてどうでしたか?
KEITA GASHIMAのラップはもともと好きだし、イメージもついていたんですけど、ISH-ONEさんは一緒にやったことがなくて、もう感動しました。あまりの技術の高さにびっくりで。歌詞を見るまで、ほとんど英語だと思っていたんですよ。(笑) 「やっぱりネイティブの人は違うなー」なんて思って歌詞を見たら、「まるでジェームスボンド2人」とか。もうめっちゃ日本語じゃん!って。(笑)
■あはははは。
KEITA だからもうめちゃくちゃラップの勉強になりましたね。ISH-ONEさんまじで上手い、上手くて感動したっていうね。GASHIMAは知的な感じがあるし、曲の理解度も高くて。僕がこういう曲をやりたいっていうテーマとサビを先に書いて持っていったら、理解度が高いから、それをがっつりしっくりハマる世界観に仕上げてくれて。もう本当に最高でしたね。これ早くライブでやりたいなって。
■あー、カッコいいでしょうね!
KEITA これは絶対カッコいいと思いますよ。