Kitri VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Kitri『Secondo』

可能性の追求と新しい挑戦を経て、「連弾meets J-POP」の新フェイズ突入を告げるKitriのニューEP

今年1月にデビューをした、MonaとHinaによるピアノ連弾ボーカルユニットKitri。大橋トリオ・プロデュースによるそのデビュー作は、ピアノの連弾にJ-POPの解釈を交えたユニークな音楽性も話題となり、独特の柔らかく優しく、それでいてノスタルジック性を擁した歌声とメロディにて、新しいポピュラー音楽の出現を予感させた。
あれから半年。そんな彼女たちから、「連弾meets J-POP」の方法論を用いながらも、また新たなアプローチが施されたニューEP『Secondo』が届けられた。前作に於いてJ-POPの中での連弾の可能性の提示も記憶に残っているが、今作は新しいJ-POPの可能性を提示してくれたかのような作風も印象深い。「自分たちにとっても更なる音楽性の追求やチャレンジだった」と2人とも語る意欲作だ。そう、Kitri発の「連弾meets J-POP」は、今作のタイトル通り第二章に突入したと言える。

■今回の『Secondo』には正直意外さもありました。というのも、デビュー時に「今後もJ-POPと連弾の融合を目指す」的な発言をいただき、てっきりもっとJ-POP然とした方向に向かう予想をしていました。対して今作収録の“矛盾律”と“目醒”は、それとは対照的な方向性の楽曲に映ったんです。

Mona それこそ前作は「初めまして」の作品でもあったので、多くの方に聴いてもらいたく、そのためのメロディや歌詞、自分たちの決意を込めた作品でもあったんです。対して今回は「挑戦」というのを自分たちにも課したところがあって。「連弾とJ-POPの融合」と掲げつつ、やはり何にもとらわれずに連弾以外にも挑んだり、連弾にしても前回より少しでも先に進めたと実感できる作品にしたくて。その辺りが今作の色として現れたとは自分たちでも感じているんです。

Hina いろいろな意味で「挑戦」が込められたEPになったかなって。前作はみなさんに届けることを目標にしていたんですが、今回はそこを前提としつつ、更に先に進み、より新しい世界をみなさんにお見せしたかったんです。私たち的にもKitriとして、新しい世界を見てみたかったし。でも新しい世界を見る為には、やはり新しいことにも挑戦しなくてはならないわけで。その挑戦を作品面やライブでの魅せ方、歌唱方法や楽器の使い方等で新しく表してみたのが今作だったりするんです。

■サティや変拍子、現代音楽的な面も伺え、私も含め驚く方も多そうです。これらちょっとアカデミックな音楽ジャンルの取り入れに向かうに際して、これまでの自分たちの音楽性や雰囲気が好きだった方が離れていってしまう懸念や怖さはありませんでしたか?

Mona それが不思議となかったんです。それよりも、むしろ今作では新しい、これまで見せてこなかった一面を魅せたいとの想いが強くあって。一般的には、より知ってもらったり、広めていくためには、今作ではもっと分かりやすい作品を目指すのだと思いますが、ここで今、自分たちのやりたいことを曲げずにやり、それを聴いて面白いと感じて下さる方に出会いたい気持ちの方が自分たちには強くあったもので…。

■それは言い換えると、よりアーティストエゴが出てきたってことでしょうか?

Mona いや、それともまたちょっと違っていて。自分たちが「誰もやっていないことに挑戦してやるぞ!」というよりかは、その曲毎にやりたいことをやり切るというか。私たちはまだまだ存在的には全然世に知られてないでしょうから、その多くの、そして幅広い人に知っていただきたいとの気持ちは変わらず。だけど、それぞれの曲でやりたいことをやり切ってみる。その結果が今作のような個性がより表れた楽曲たちになったんです。

■ちなみに、今回の“矛盾律”や“目醒”に関しては、自分たちにとってどんな感じでのやりたいことだったんでしょう?

Mona 先入観や固定観念、既成概念に捕らわれずに音楽を楽しんで欲しい、そんなことでした。J-POPであれば普通はAメロがあってBメロがあってサビといったパターンが多いじゃないですか。「でも、それしか私たちなりのJ-POPのパターンってないのか?」と自分に問うてみたんです。半ば課題みたいな感じで。(笑) もっと違った形での融合で、且つ面白いことが出来るんじゃないかとの期待もあったし。それもあり、これまでのセオリーを一旦捨てて挑んだんです。

■確かに結果、これまでのセオリー通りからでは想像ができない楽曲たちが届けられましたね。

Mona でも逆にそれが今、他ではやっていない自分たちならではのJ-POPと連弾の融合が出来たとの自負もあって。かなり独特ですが。(笑) 今のタイミングで私たち自身に固定観念をつけずに、こういった面もあるよと幅や広さを表してもいいんじゃないかなって。

Hina 特に“矛盾律”が出来たのを初めて聴かせてもらった時には驚きました。この曲は姉(Mona)が作ったんですが、こんなタイプの曲を初めて聴いたもので。「新しい!!」って。決まりに囚われていないというか、自由に作っている感じがすごく伝わってきて。即、「これイイ!!」ってなりましたから。こういった曲が出来たことによって、より私たちなりの音楽の楽しさや楽しみ方、新鮮さを提供できると確信しました。