マツムラユウスケ(Gt&Cho)、黒野滉大(Ba)、安田吉希(Dr&Cho)
※樋口侑希(Vo&Gt)は体調不良のため欠席
作り込み過ぎずに、自然に出てきたものをやろうと
WOMCADOLEが変化の季節を迎えている。ノベル・コンセプトアルバムと銘打った前作『共鳴howRING』。マツムラユウスケ(G&Cho)が加入し、新4人体制で作り上げた作品を経て、今作『旅鴉の鳴き声』は前作と同じテーマ(ノベル・コンセプトアルバム)を掲げた6曲入り。前作でメンバー内の理解を深めたバンドサウンドは気張らず、スッと体に入ってくるメロディの美しさや郷愁に心奪われる味わい深い一枚に仕上がっている。マツムラ、黒野、安田のメンバー3人に今作の魅力について、語ってもらった。
■今作は前作から約半年ぶりのリリースになりますね。
安田 前作(『共鳴howRING』)がノベル・コンセプトアルバムで、その次に繋がるものだから、なるべく早く出そうと。だから、前作を作ってすぐに今作の制作を進めました。前作から地続きの作品です。
■今作を聴き、前作とはまた作風がガラッと変わりましたよね?
安田 だいぶ。(笑) アートワークやアーティスト写真もそうですからね。前作はパンチ強めで、(マツムラ)ユウスケが入り、「これから行くぜ!」という部分も反映されていたけど、今回は等身大というか、いい意味で肩の力が入り過ぎていないんじゃないかと。それは前作を作って、4人の意識も深まったところが大きいですね。
■前作で4人の意識が深まったというと?
安田 ユウスケが入って、ウチらはこういう曲も作れるんだって、音楽性の幅が広がりましたから。以前よりも音楽的にもメンタル的にも仲良くなったし、意見もスムーズに交わせるようになったんです。
■“kate”、“またね”とか、従来のサウンドとはまた違う曲調もありましたが、その辺の楽曲がヒントになったんですか?
安田 全曲という感じはします。ただ、確かに“kate”でコーラスをたくさん重ねたり、“またね”では初めてスライドギターを取り入れましたからね。あと、“Noah’s”の冒頭ではツインギターでハモッたりしたし…全曲通してこういうこともできるんやなと。前作のすべてがヒントになり、それが引き継がれたところはあります。
■とはいえ、前作の幅広い曲調をさらに押し広げるというより、どこか統一感のある楽曲が揃っていますよね。
マツムラ 特に“ペングイン”は、樋口からデモが送られてきた時に青さみたいなものを感じたんですよ。コード進行もシンプルで、メロディも着飾らないポップさを感じて…樋口の中から自然とそういう曲が出てきたのかなと。前作がコテコテに各パートもいろんな奏法を盛り込んでいたけど、“ペングイン”ができた時に結果的にそういうまとまりのある作風になったんだと思います。
■“ペングイン”が今作のキーワード的な楽曲になったと?
マツムラ そうですね。曲調も意外やけど、そういう路線もありやなと刺激を受けましたから。
安田 若さもあるけど、新しいなと思いました。インディーズ時代の1、2枚目の頃の飾っていない雰囲気も感じましたから。
黒野 今作の歌詞も全部インディーズっぽい感じがする。そういう意味では前作と比べても変わりましたね。
■その着飾らない佇まいは、今回のアーティスト写真でも打ち出していますよね。
安田 そうですね。それも“ペングイン”ができ時に、肩の力が抜けた感じでやりたいという話が出たんですよ。「今はこういう肩を力を抜いた方向性じゃない?」って。
マツムラ それは“ラブレター”の存在も大きいですね。
安田 ああ、青春の初々しい感じもありますからね。「じゃあ、学校で撮ろうか」と。
■これはどこで撮影したんですか?
安田 神奈川県三浦市やったかな?マグロが有名みたいで、海がめちゃくちゃ近いんですよ。今は市役所として使われているみたいなんですけどね。
■しかし、メンバー4人とも格好はバラバラですよね。
マツムラ 特に相談しなかったんですよ。(笑)
安田 「メンタル的にラフに行こう!」って感じです。
黒野 このアー写も決めて撮ったというより、いろんな場所で記念撮影っぽく撮った中の一枚なんです。
安田 一人ボンタン履いている人もいますからね。(笑)
マツムラ これは完全に“ラブレター”に引っ張られて、学ラン着るなら、このタイミングやなと。樋口が私服っぽい感じでいきたいと言っていたから、気づいたら短ランでした。
安田 誰も反対せんかったもんな。
黒野 短ランの裏に何て書いてあったんやっけ?
マツムラ 天下無敵。(笑)
■裏ボタンは流行っていましたからね。他のお二人は?
黒野 僕は古着屋で買った私服です。樋口も私服ですからね。
安田 僕も古着屋でどうしようかなと思い、髪色に合う服装を選びました。この“ラブレター”もフレーズはそんなにカチカチに決めず、難しいテクニックを詰め込まずにやったんですよ。
■今作は樋口さんの歌声と歌詞がより耳に入ってくるし、演奏は楽曲を盛り上げることに徹した必要最小限のプレイだなと。
安田 それも歌に引っ張られたところが大きいですね。作り込み過ぎずに、自然に出てきたものをやろうと思って。
■全曲アコースティックでも成り立つメロディの強度を感じます。
安田 確かに。エンジニアさんにも「どれがリード曲になってもおかしくない」と言われましたから。
マツムラ 前作はいろんなコードやスケールを使ったけど、今回はペンタトニックや味があるソロというか、僕はもともとブルースやペンタトニックが好きなので、それがちゃんとハマる曲が多いんです。“ペングイン”、“ラブレター”、“hey my friend”のアウトロもそうですね。
■黒野さんはいかがですか?
黒野 前作から薄々気付いていたんですけど、ベースの1、2弦を使ったフレーズがあまり好きじゃないんですよ。低いところで動いているフレーズの方が好きなことに気づいたんです。今回のアルバムはそれを意図的に使うようにしました。“ラブレター”は特にハイフレーズは全く使ってないんです。“ペングイン”もほぼ4弦で弾きましたから。
安田 俺らも「“ペングイン”は絶対ピックのダウンで弾いて!」とお願いしましたから。
黒野 ダウンピッキングはやってこなかったので、レコーディングで腕がはち切れそうになりました。(笑)