清 竜人 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

清 竜人『REIWA』

■“あいつは死んであの子は産まれた”のほうは、「平成は死んで令和は産まれた」とも捉えられますよね。

清 何にでも置き換えられるようには考えて作りましたけどね。時代は変わっていくとか、人口構成が変わっていくとか。人間だけじゃなくて、時代、文化、経済、何にでも当てはめられるように。歌詞は人間的になっていると思いますけど。

■個人的感情を込めたわけではないと思うんですけど、「失ってから気付くことが我が人生に多過ぎて」という歌詞は、どんなことをイメージしたのかなって。

清 まぁ、「こういうことあるよね」っていう感じですよね。時代の変わり目に、やっぱりセンチメンタルになるというか。「そっか、平成が終わるんだ」っていうことで、ふと我に返るみたいな感覚って、ある人はあると思うんです。思っている以上に時が経つのは早いなと感じるなかで、ふとこの曲を聴いて、「あの人もいつまでもいるわけじゃないんだな」とか、そういうことを思ってもらって、日々がもう少し愛であふれたらいいなと思います。

■アルバムで初収録になった3曲も紹介してほしいんですけど、まず“TIME OVER”は不器用な男を歌った感じですか?

清 そうですね。言いたいことを口に出せなかったりする男というか。自分の感情を噛み殺して、好きな女性を見送るみたいな、男の独りよがりな美学みたいなものを描きました。いまの時代は、そういう美学もないんでしょうけど。SNSに彼女の悪口を書き込んじゃうみたいな感じなのかな?(笑)

■どうなんでしょう。(笑) そういう意味では、昔は吐き出す場所がなかったけど、いまはSNSに吐き出しちゃう。時代性を感じる曲だなと思います。

清 こういう価値観は減ってきてはいるものの、男性のなかでの理想の男性像みたいなものって、なんとなく根付いているような気はしてて。時代の進歩とともに、少しずつ薄れてきているけど、どの時代でも変わらない、男にしかない感情みたいなものって、普遍的なものがあるような気はしてるんです。それが“TIME OVER”と(シングルとしてもリリースされた)“平成の男”には、特に出ているなと思います。

■この作品で描かれている男性像と、令和が終わる頃に出てくる音楽の男性像は比べてみたいですね。あと30年くらいは待たないといけないですけど。

清 30年後に“令和の男”っていう曲を作りましょうかね。(笑) 価値観が180度変わっちゃってるみたいな。

■ぜひ聴きたいですね。(笑) そういう意味では“馬鹿真面目”も、いまは「真面目にやる人」よりも「うまくやる人」が成功する時代なのかなという印象があります。

清 コミュニティから抜け出そうと思うけど抜け出せないとか、ひとつ発言したいけどできないとか、真面目だからこそ損してるみたいな人って、たぶんどの時代にもいると思うんです。そういうところが人として素敵だよって言ってくれる女子もいてほしいよねって。(笑)

■女子にそう言ってほしい願望が?(笑)

清 そうですね。女子に代わって僕が言ってあげるという。(笑)

■いまの女子は言ってくれないですかねぇ。

清 いまはやっぱり、少し不真面目でも収入が高い人のほうがいいんじゃないですかね。馬鹿真面目に生きて年収300万円の人よりも。

■仮想通貨で儲けた男と、真面目に働いても貧乏なままの男の対比みたいなものが浮かびました。これも30年後の馬鹿真面目像と比べてみたいですね。“私は私と浮気をするのよ”は、失恋の歌ですか?

清 男にフラれたけど、フラれたわけじゃないと強がりたい女性の曲です。

■この価値観も30年後には変わっていそうです。

清 やっぱり男に振り回されない、自立した女性が少しずつ増えてきているのかなと思いますね。精神的にも、経済的にも。それこそ家制度みたいな価値観は、いまの若い世代にはないでしょうし。フラれたところで、次の出会いがあるわって、過去のことは人生のひとつの景色として、彼を忘れていくみたいな感じの人が増えている気がします。

■時代的に女性が強くなってきていることを意識して曲を作ったんですか?

清 強くなってきているというか、男女の関係性みたいなものが少しずつ変わってきているじゃないですか。そのうえで哀愁や郷愁を感じる歌詞にしたいなと思って、どの曲も書きましたね。

■そういう変化していく価値観が、アルバムの随所に出ているなと感じました。

清 音楽的に感じる切なさみたいなものは、たとえば1970〜80年代の歌謡曲と通じる部分はあっても、歌詞から匂う男女の価値観みたいなものは現代にチューニングしているので、そこはけっこう違うんじゃないかなと思います。

■平成のフィルターを通した歌謡曲ということですよね。サウンド的な部分で意識したことは?

清 どっちかというと、クラシカルな楽器が多いですかね。それは時代に逆行しているということではなく、時代と関係なく普遍的にいいよねと思える音使いをしてもらったつもりです。トレンドをうまく消化することも、クリエーターの腕が試されるところだとは思いますけど、いっときの流行り廃りに影響されすぎちゃうと、ヘタしたら半年後にはダサく聴こえるとか、出来の悪いものになっちゃうので、そういうのを避けようと思って今回は作りました。振り返って聴いてもいいと思えないような、時代に迎合しただけのアルバムになっちゃうのは、けっこうミュージシャンあるあるな気がしていて。別にトレンドを無視しろと言ってるわけじゃなくて、取り入れるならちゃんといい点数を取れるようにしないといけないなと思います。

■清竜人が作っていた音楽は普遍的だったなって、何年後かに聴いて採点したいですね。

清 もちろん今年評価してもらえたら、それはとてもうれしいことなんですけど、未来のリスナーにも評価してもらえたらうれしいですね。それこそ中島みゆきさんの“糸”とか、松田聖子さんの“Sweet Memories”とかって、もともとB面として発売された楽曲ですけど、後年タイアップで使われて、楽曲のよさが再評価されたじゃないですか。そういう流れは日本のポップスのメソッドとしてあると思うので、そういう感じになってもうれしいですね。

■個人的には“サン・フェルナンドまで連れていって”とか、そうなったらうれしいですね。去年の夏のライブで、ピアノだけのアレンジで歌ったときも、改めていい曲だなと思ったので。

 ありがとうございます。やっぱりメロディーも歌詞も普遍的なものを意識していたので、ピアノ一本でやっても成立させられるというか。音源ではアレンジを豪勢に作ってますけど、そこに依存しすぎてないところはあるかなと思います。

■弾き語りとか、シンプルな形でも聴くのも楽しみです。

清 今後そういう機会もあるかもしれないですね。今回のアルバムの曲は、みんな使い勝手がいいというか。もしアコースティックでやるとしたら、『MUSIC』(2012年発表の4thアルバム)の曲はできないし、『WORK』(2013年発表の6thアルバム)も“All My Life”くらいで、TOWNも25(一夫多妻制ユニットの清 竜人25)もできない。3rdアルバムくらいまでしか、しっかり使えるものがなかったんです。でも、このアルバムは使い勝手がいいですね。(笑)

■今後は5月4〜7日に東名阪ツアーがあって、5月25日に10周年と30歳記念の「清 竜人ハーレム♡フェスタ2019」がありますけど、どんな編成でライブするんですか?

清 東名阪ツアーはピアノ、ベース、ギターをサポートに迎えたアコースティック編成です。「ハーレム♡フェスタ」のほうは秘密ですね。(笑)

■発表では「清 竜人 10th ANNIVERSARY Special ver.」となってましたけど、何を企んでるんですか?

清 まぁ、ちょっと楽しいことを。つい先日、僕のステージで共演してくれる女の子たち4人は情報解禁になりましたけど。

■黒崎レイナさん、今野杏南さん、鎮西寿々歌さん、巴奎依(A応P)さんの4人ですよね。モデル、グラドル、女優、声優……なんの脈絡もなさそうな感じですけど。

 逆に言うとバラけさせてキャスティングしたので。何が行なわれるのかは、楽しみにしててください。喜んでもらえるとは思うので。でも、今回みたいなアコースティック編成も、バンド編成のツアーも、定期的にやってもいいかなとは思っていて。まだなんの予定もないですけど、息長くやりたいなとは思っているので、ぜひライブにも足を運んでもらえたらうれしいですね。

Interview&Text:タナカヒロシ

PROFILE
1989年5月27日生まれ、大阪府出身。19歳だった2009年にシングル『Morning Sun』でメジャーデビュー。大胆に音楽性を変遷させながら6枚のアルバムを発表する。2014年には自身がプロデューサー兼センターを務める一夫多妻制アイドルグループ「清 竜人25」を始動。2016年からはリスナーもバンドメンバーとしてライブに参加できる「清 竜人TOWN」でも並行して活動。2017年に両プロジェクトに終止符を打ち、ソロ活動を再開。令和初日となる2019年5月1日に、ソロとしては7枚目のアルバム『REIWA』をリリース。近年はプロデューサーとしても活躍しており、田村ゆかり、でんぱ組.inc、堀江由衣、ももいろクローバーZ、上坂すみれなどに楽曲提供を行なっている。
http://www.kiyoshiryujin.com/

RELEASE
『REIWA』

清 竜人『REIWA』

初回限定豪華盤(CD+DVD+フォトブック付きBOX仕様)
KICS-93791
¥7,560(tax in)

清 竜人『REIWA』

通常盤(CD)
KICS-3791
¥3,000(tax in)

EVIL LINE RECORDS
5月1日ON SALE

LIVE
KIYOSHI RYUJIN ALBUM TOUR 2019
5月4日(土)渋谷eplus LIVING ROOM CAFE&DINING(SOLDOUT)
5月6日(月・祝)大阪フラミンゴ・ジ・アルーシャ
5月7日(火)名古屋ブルーノート
清 竜人ハーレム♡フェスタ2019 10th ANNIVERSARY & 30th BIRTHDAY
5月25日(土)新木場STUDIO COAST
EVIL LINE RECORDS 5th Anniversary FES.“EVIL A LIVE” 2019
7月15日(月・祝)パシフィコ横浜 国立大ホール