コレサワ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

コレサワ『失恋スクラップ』

――いましか書けない、いましか作れない、2019年のコレサワがつまった1枚

シンガーソングライター・コレサワがミニアルバム『失恋スクラップ』をリリース。タイトル通り「失恋」をテーマに描かれた全7曲には、せつなくも愛おしい彼女の大切な想いがギュッギュッと込められ、それは「失恋=お別れ」と言えども、まるで宝物のような感触だ。好きなものは好き、悲しいときは悲しい――いつどんなときでも自分の心に正直にいられるよう、そしていつどんなときでもそんな自分でありたいと願うコレサワの2019年が詰まったこの1枚について、1曲1曲たどりながら話を訊かせてもらった。

■今回「失恋」をテーマにしようと思ったのは?

コレサワ 制作期間中、昨年の中盤くらいだったと思うんですけど、失恋がけっこう身近にあったって。いうのが正直なところなんですけど、じゃあどうせなら失恋で1枚分曲が書けるなって。(笑) それで、「全曲失恋でいこうと思うんですけど」って言ったら、みんな「いいじゃん!」って感じだったので、全曲「失恋」で作ってみました。

■今回はその身近にあったという失恋にしぼって書いていったんでしょうか?それともほかの恋愛や失恋なんかも含めて書いていったんでしょうか?

コレサワ 1曲目の“Day by Day”は4年前くらいからある曲だし、今回のテーマに合うなと思って書いた曲もあるし、“恋人失格”はみゆはんに作った曲でもあるので、全部が「いま」っていうわけではないけど、2019年のわたしがすごく詰まった曲ばかりではありますね。

■“恋人失格”のインタビューのときは、「わかる人にだけわかる曲ではなくて、もっと多くの人に届く曲を作りたい、その実験として“恋人失格”を作った」っておっしゃっていましたが、そこは今回も意識されましたか?

コレサワ わたしの曲はBGMにできないくらいひっかかりがある曲が多いかもしれないけど、今回はアレンジ的にBGMでも聴きやすいんじゃないかなって曲もあるし、いつもみたいな感じの曲もあって、自分的にはいままででいちばんバラエティに富んだ1枚になっていると思うんです。なので、いまはそれに対してのみんなの反応を楽しみに待っているといったところですね。

■本当にバラエティに富んだ1枚になりましたね。

コレサワ いろんなアレンジャーさんとタッグを組ませてもらったことが大きいかなって。いままではアルバムを出しても1~2曲くらいしかお願いしなかったんですけど、今回は7曲中半分以上おまかせしたので、刺激になった部分も大きいし、ずっとご一緒したかった方たちともできたので、すごく楽しかったです。

■特に印象に残っている曲やエピソードはありますか?

コレサワ 最後の“バカでしょ”のアレンジは渡辺シュンスケさんがしてくださったんですけど、シュンスケさんは“恋人失格”のときにピアノを弾いてくださっていて、本当に素敵なピアノだったから、いつかシュンスケさんに1曲まるまるアレンジをお願いしたいなと思っていたんですけど、今回それが叶って嬉しかったです。シュンスケさんって少年みたいな人で、思いついたらすぐカタチにしたい方というか、普通、打ち合わせをしてからアレンジを固めていくんですけど、打ち合わせのときに「昨日ちょっと作ってみたんだ」って、もうアレンジした楽曲を持ってきてくださって。しかもそれがすごくよかったから、「もうこの方向でお願いします!」って。その行動力の速さというか、思いついたらすぐやっちゃう感じが自分とも似ていたから、また一緒にやりたいなって思いましたね。

■そういう行動力の速さとかってまさに少年ですよね。(笑)

コレサワ そうなんですよ。ピアノを弾いている姿も、一緒にレコーディングしたときのたたずまいなんかも少年のようで、子供心を忘れていないんだなって。心の芯にはわくわくとか探究心とか好奇心とかがすごくある人に見えて、おもしろい人だなって思いました。

■コレワサさんもいつまでも少女というか、子供心を忘れていないなって思いますよ。

コレサワ えー、どうだろう?(笑) 子供心があるかどうかはわからないけど、子供って好きなことをすぐやっちゃったり、思いきりがいいじゃないですか。そういうところは大事にしたいなとは思いますね。例えば疑問に思ったこととか、なかなか言いにくかったりするじゃないですか。あと、バスを降りるときに「ありがとうございます」とか。でもやっぱりそういうことをちゃんと言える人でありたいから。感謝とか悪かったこととか疑問とかは、周りを気にせずに知らない人にも言えるような自分でありたいといつも思っています。

■そうありたいって大事なことだし、素敵なことだと思います。

コレサワ ありがとうございます。

■そんなコレサワさんがいっぱい詰まったこのアルバム、「失恋」がテーマではありますが、ただ悲しいだけじゃなくて、こんなにもいろんな想いがあるんだなってことに改めて気づかされたし、いろんな楽しみ方ができる1枚だなと思いました。

コレサワ ワード的にはちょっと重い1枚なのかもしれないので、なるべくじめじめしないように。(笑) そういうのもあって外身はポップにしたかったので、今回のジャケットはケイスケカンダさんに衣装を作ってもらってポップでかわいい感じにしたり、アー写はれ子ちゃんを粘土で作ってもらったりしたんです。

■このれ子ちゃんがまたかわいいですよね。

コレサワ そう、なるべく明るく。(笑) タイトルだけ見た人がどういうアルバムを想像するかを考えたとき、たぶん暗いほうを想像しちゃうんじゃないかって思ったので、目に見えるものはできるだけ明るく。曲は結構しっとりしたものが多いと思うので、そこでバランスが取れてたらいいなって。

■でも1曲目はいきなりポップに始まりますよね。

コレサワ そうですよね。(笑) 開き直っている曲だし、オープニングは絶対に明るいのがいいなと思って、元気のある曲で。

■内容的には、相手が思わせぶり、みたいな。

コレサワ 思わせぶりなことしてくる人っているじゃないですか。「わたしの気持ち知ってるでしょ?!」って人。でも自分からは離れられないっていう。(笑)

■はいはい。わかります。

コレサワ それでも自分の人生ってすごく尊くて、その尊い女の子としての人生を振りむいてくれない人に使うのはもったいないって思ったら、急にふっきれたときがあって、そのときの気持ちを書いてみました。

■そのふっきれるときって急にくるんですか?それとも泣いたり思い出をたどったりしながらちょっとずつ忘れていく、みたいな感じなんですか?

コレサワ 葛藤はありますよね。ここにもその葛藤は書いていて、「大嫌いになり損ねた」っていうワードが特にそれを物語っているんですけど。やっぱり好きだから、好きなところばっかり思い出しちゃうけど、自分の日々の人生を考えたらもったいない、「もっといいヤツ探そう!」ってふっきれるかな。でもまあ結局は強がっている女の子の歌なので、本当にふっきれたのかはわからないですけどね。

■これが4年前くらいに書いた曲ですか?

コレサワ 3~4年くらい前だったかな。1回ライブでやって、大阪のサーキットでなんですけど、だから誰も覚えていないと思うんですけど。忘れ去られた幻の曲がこうしてアルバムに入りました。(笑)

■じゃあアレンジもいまとは全然違って?

コレサワ 当時は自分でデモに入れたものをバンドメンバーに華やかに添えてもらったんですけど、やっぱりいつものコレサワになっちゃうというか、あんまりしっくりきていなかったんです。でもこの曲すごくお気に入りだったから、早く盤に入れたくて。Helsinki Lambda Clubが私大好きなんですけど、今回アルバムをつくることになったときに、このバンドのサウンド感とこの曲がすごく合うんじゃないかなってことでお願いしてみたら、OKしてくれたんですよ!

■めちゃめちゃかっこいいし、1曲目にふさわしい曲でもありますよね。

コレサワ 最初は1曲目じゃなくてもいいかなと思ったんですけど、ヘルシンキのアレンジが乗ってレコーディングしているとき、これは絶対1曲目だなって。1曲目ってみんなが絶対に聴く曲じゃないですか、視聴とかでも。だからこの曲は1曲目にしようって。もう彼らに感謝しています。