LACCO TOWER VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■今回のベスト盤には、“藍染”、“斜陽”、“後夜”、“未来”と、4曲をRe-Recordingしていますが、この4曲を選んだ理由を聞かせてください。

細川 インディーズ時代の作品は、いろんな異なるレーベルからリリースされていたこともあり、いわゆる権利関係の所在も複雑だったこともあって、バンドとしても「大切な楽曲たちを収録するなら、改めてレコーディングし直そう」という話になりました。そういう曲たちの多くが活動初期の、自分がまだLACCO TOWERに加入する前の時代の曲たちだったこともあって、メンバーからも「大介のギターでこの曲たちを残したい」と言われたこともあり、Re-Recordingした4曲は、僕が加入する以前の楽曲から選びました。

松川 Re-Recordingした曲たちは、ボーカルはどれもほぼ一発録りで収録しています。僕らのようなライブバンドの場合、どの曲もそうですが、ライブを通して楽曲がブラッシュアップされていくので。もちろん大介が弾くことでどう変わったのかを提示するという面もありましたけど、今のライブで見せている姿をそこに詰め込みたかったのもあって、一発録りという形を取りました。

■細川さんはこれらの曲は、どの曲も左手で演奏したのでしょうか?

細川 左手で演奏したのは、新曲として収録した“棘”だけになります。他はまだ右手で弾いています。というのも、僕が左手にスイッチしてからは、数えてまだ1、2年のことで、右手では今まで25年間も弾いてきましたからね。もちろん左手でも弾くことだけだったら出来ますが、それではただの音の羅列になってしまう。LACCO TOWERとして演奏する以上は、そこへ感情や気持ちを込めて弾くべきだし、それがあるからこそLACCO TOWERはこうやって一線でやり続けてきたわけじゃないですか。それもあって右手で弾いていますけど、ただ“棘”に関しては、ベースの(塩﨑)啓示から「新曲は絶対に左手で演奏すべきだ」、「左手で演奏してくれ」と強い要望を受けたこともあり、収録した新曲3曲の中でも一番新しい曲として生まれた“棘”は、右手と左手、両方で演奏をしました。

■それは今後のLACCO TOWERの活動も見据えてのことでしょうか?

細川 そうです。啓示は僕に「下手でもいいから、今の大介の気持ちを曲に込めて左手で演奏して欲しい」と伝えてきました。彼は人一倍LACCO TOWERの歴史の歩みや、その時の思いを大切にしている人なので。それは今後のLACCO TOWERの歴史を作りあげていく上でもそうで。だからこそ、「今の左手で演奏した楽曲も歩みの中へ刻んでいくのが大事」という思いから、そう依頼してきたんだと思います。

■細川さん自身、いずれは左手へ完全移行しようという気持ちもあるわけですよね?

細川 最終的には全曲左手で演奏したいなと思っています。ただ、そうそう簡単に25年間演奏してきた右手が、左手に譲ろうとしないので。(笑) そこは兼ね合いの比重を徐々に変えていこうかなと思っています。実際に今も、例えばワンマンライブで20曲演奏するなら、そのうちの5曲を左手で演奏するなど、少しずつですが左手で弾く曲への比重を高めていっています。そうすることで、右手への負担も実際に軽減していけますから。あとは時間かけてその比重を少しずつ変えていくだけだと思います。

■アルバムには新曲を3曲収録していますが、やはり新曲も必要だという考えだったのでしょうか?

松川 オールタイム・ベストアルバムと銘打っている以上、過去をただ振り返るだけのアルバムにはしたくなかったんですよね。もちろん過去の歩みや積み重ねがあって、今があるんですけど、道ってもっと先まで続いていくものじゃないですか。だから、ベスト盤も過去だけで終わらせるのではなく、現在や未来も見据え、1本の道として見えるものにしたかった。その道をベスト盤を通して示すことで、「聴いてくれる人たちもLACCO TOWERの未来に期待してくれるんじゃないか」という思いから、メンバーみんなで「新曲も絶対に入れよう」と最初から決めていました。

■収録した新曲たちのことについても聞かせてください。“魔法”は、いつ頃に生まれた曲ですか?

松川 “魔法”は昨年12月に発売した最新アルバム『青春』の制作時の最後の方に生まれた楽曲でした。とてもいい手応えの曲でしたけど、『青春』に入れるとアルバムとしての色に異なる変化が出るなという理由と、その頃から「次はベスト盤かな」という構想を持っていたことから、「バンドとしての自信作となるこの曲を、ベスト盤のタイミングで活かそう」という話をメンバーでした上で、その時点ではストックして、このタイミングで形にしました。

■“魔法”は、LACCO TOWERでいう「白曲」ですよね?

細川 そうですね。楽曲を作った時点から、かなりポップス寄りの曲として作りあげていました。“魔法”はとても聴きやすくて綺麗な楽曲で。ただ、それを普通のポップソングにすることなく、個性の強い色に染め上げたのは、まさにケイスケの非凡なセンスを持った歌詞がそこに乗っかったおかげなのは間違いないです。

松川 出来上がった“魔法”のトラックを聴いた時、「これはドンズバでわかりやすい曲にしてくれたんだな」というのは、しっかりと伝わってきました。だからこそ、歌詞は大胆に崩していけるなと思いました。“魔法”の歌詞の特徴としては、いわゆる白曲の中に、黒曲の歌詞の要素を組み入れたことなんです。それによってだいぶ面白い曲になったと思います。

■歌詞で注目して欲しいポイントも、良ければ教えてください。

松川 僕が作詞をしていく上で、「ここが出来たから、この曲は大丈夫。あとはこの一節から広げていけばいい」となるポイントが、どの曲にも必ずあります。“魔法”でいうなら、「熱を食うだけの電池 そんな風な 二人だわ」と、「ちちんぷいなんて指をまわし」の部分。そこからこの曲でも印象深い「解けていった魔法なら 山ほど溢れてるわ 解けなかった魔法なら 山ほど溢れてるわ」という言葉へ繋がりました。僕はどの楽曲でも、聴いたその人なりに感じた思いが正解だからこそ、あまり自分なりの思いを語ることは控えています。“魔法”だって、例えば付き合い立ての人が聴くのと、3年間付き合っていく中で、関係が上手くいっていないなと感じる人が聴くのとでは、聴こえ方も、歌詞を受け止める意味も違ってくると思うんです。だからこそ音楽って面白いなと僕は思っていて。そうやって気持ちを掻き立てる歌たちを“魔法”を筆頭に並べているので、そこは聴いた方たちがそれぞれに解釈を楽しんでもらえたらと思っています。

■“棘”は、この中でも最新の楽曲になるわけですね。

細川 “魔法”、“非公認”と生まれた次に出来たのが、“棘”でした。“魔法”が白曲に、“非公認”が白曲でも黒曲でもない、また新しい灰色の曲になったことから、「やはり黒曲も新曲として入れたい」という思いから作ったのが“棘”になります。あえてハードな曲調を意識しながら、その中に真一ジェットのピアノを活かした、LACCO TOWERらしい要素を組み入れた形で仕上げました。

松川 歌詞も楽器陣が思いきり大胆に攻めてくれたからこそ、こっちもそこに乗っかって攻めきった形で歌詞を書けました。

■それでは“非公認”は、灰色の曲として捉えて良いのでしょうか?

松川 この曲の誕生の経緯自体が、これまでのLACCO TOWERの曲たちとは少し異なるというか。この楽曲は「ザスパクサツ群馬」というJリーグチームの応援歌として作りました。僕ら自身、これまで長く「ザスパクサツ群馬」さんとは親しくさせていただいている関係で、その為に作った応援歌ですけど、公認ソングとして作ったわけではなく、僕らが応援したくて勝手に作った曲で。誰かや何かを応援するのに公認も非公認も関係ない。ただ純粋に応援したいから応援するわけじゃないですか。その気持ちと一緒で、純粋に応援したいという思いで生まれたのが“非公認”です。タイトルの“非公認”というのも、公式ではなく非公式という意味と、誰に公認されなくとも、それが好きだったら「自由に好きなだけ応援してやろう」そういう思いから誕生しています。

■そういうことだったんですね。

松川 ただ、それは僕らのストーリーであって、聴いてくれる人たちには、もちろん自由に受け止めてもらえたらなと思います。たとえばSNSのことなど、いろんな要素に変換出来る言葉もいろいろ並べているから、そこは自由に思いを膨らませてもらえたらいいなと思います。どの曲も解釈は自由ですから。

細川 “非公認”が灰色の曲と言ったのも、自分たちのためだけに作る歌ではなく、いろんな人に向けて作った曲であり、応援ソングというのが大きな特徴になっているからです。これまでLACCO TOWERは、応援ソングという形で曲を作ってこなかったけど、“非公認”を含むザスパクサツ群馬の応援ソングを通してそれをやったことで、結果的にもアルバムの中に、白曲、黒曲、灰色の曲という、「らしさと新しさ」を並べることが出来ました。 こうやって新しい武器を手に出来たのは、僕らにとっても大きな強みになると同時に、この先を見据えた時も、これからのLACCO TOWERに期待をしてもらえるという面でも、上手く新たな道を示せたなと思っています。

松川 21年目のLACCO TOWERが楽しみになるようなね。

細川 ベスト盤に今後のLACCO TOWERが見える新曲たちを入れたことで、進化し続けるLACCO TOWERという姿、LACCO TOWERの未来もベスト盤の中に示すことが出来ました。今回はベスト盤とはいえ、とんでもないボリュームの作品を作り上げたこともあるので、21年目、2023年のLACCO TOWERとして進み続けるためにも、今はそうとう気合を込めて曲作りをしています。ぜひ今後のLACCO TOWERにも期待していただきつつ、まずは20年間のLACCO TOWERの歴史を、ベスト盤を通して味わってみてください。

Interview & Text:長澤智典

PROFILE
松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(Ba)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(Gt)からなる5人組ロックバンド。2002年バンド結成。2013年、塩﨑が代表となり、メンバーで株式会社アイロックスを設立。2014年より6年連続で自身主催ロックフェス「I ROCKS」を地元・群馬音楽センターにて開催。2015年6月に日本コロムビア / TRIADレーベルよりメジャーデビュー。2016年と2017年には 2度にわたりフジテレビ系 TV アニメ「ドラゴンボール超」のエンディング主題歌に抜擢。2017年より5年連続で地元群馬のプロサッカーチーム、ザスパクサツ群馬の公式応援ソングを担当。現在までにアルバムをインディーズにて4枚、メジャーにて最新作『青春』を含め6枚をリリース。2022年バンド結成20周年を迎え、対バンツアー、20周年記念ワンマンツアーを経て、12月7日、オールタイム・ベストアルバム(4枚組)『絶好(ぜっこう)』をリリース。
https://laccotower.com
オフィシャルファンクラブ『猟虎塔』:https://lacco-to.bitfan.id/

RELEASE
『絶好(ぜっこう)』

COCP-41841/4
¥6,050(tax in)

日本コロムビア
12月7日 ON SALE