lynch. VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

lynch.『ALLIVE』

葉月(Vo)、玲央(Gt)、晁直(Dr)、悠介(Gt)、明徳(Ba)

自分たちが正しいと思うことをやって、突き進んでいけば、いつか武道館に出会える

名古屋発の5人組バンド、lynch.が急遽デジタルシングル『ALLIVE』を配信リリース。これは2021年2月3日に行われるバンド初の日本武道館公演を見据え、これまで応援してくれたファンに対する気持ちがぎっしりと詰まった1曲に仕上がっている。今年4月にはライブハウス支援シングル『OVERCOME THE VIRUS』の売上利益を全国のライブハウスに分配したり、同年10月には有観客による日比谷野外大音楽堂公演も成功に収めた彼ら。今作に込めた思いや、来年の武道館に対する心構えを含めて、メンバー5人に話を聞いた。

■まず2020年はlynch.にとってどんな一年だったのか、お一人ずつ聞いてもいいですか?

玲央 今年はコロナ禍で自粛期間も長くあったので、自分を見つめ直す年でした。一番大きいのはライブに対する捉え方で…いかに大切で特別なものなのか、自分が生きていく上で欠かせないものだと改めて気付きました。ライブは僕らが生きている世界の中では絶対必要なものだなと。

葉月 そうですねぇ…やはり何も身動きができなかったので、ひたらす模索していました。ライブができないとファンの気持ちも離れていくと思ったし。まずはライブハウスがやばいということで、支援シングル(『OVERCOME THE VIRUS』)を作ったり、個人的には生の声を届けたくてYouTubeを始めたりして。あと、日比谷野外大音楽堂(10月25日)でやったワンマン・ライブは、まだ他のアーティストたちもみんな有観客ライブをやっていなかった頃なので、逸早くやれて良かったなと。結果、日本武道館公演もそこで発表できましたから。

■支援シングルの動きもとても早かったですよね。

葉月 別の取材で、支援シングルを出すことで「売名行為と誤解されることは恐れなかったんですか?」と聞かれて、「それは全然ないですね」と答えたんですよ。(笑) そう言われても、ライブハウスを助けたいと思う気持ちは事実なので、メンバー、スタッフを含めて決断は早かったですね。

■晁直さんと悠介さんは?

晁直 コロナが始まった頃はこんなに長引くとは思っていなくて。動けないなりに何かやれたらいいなと。その中で野音を有観客でやれて、武道館の発表ができたのは今年数少ない嬉しい報告になったなと。結果論だけど、他に何かやれたんじゃないかと思うことはありますけどね。

悠介 一言で言うと、今年は僕の中で諦めているというか、来年に期待するしかない。止まるわけにもいかないので、配信ライブ、野音で有観客もやったけど…どこか気持ちが落ちる部分もあったから、とにかく健康には気をつけよう、生き延びようと。

■明徳さんはいかがですか?

明徳 いつGOサインが出ても動ける準備をしなきゃなって。逆に自分の時間もできたので、いろんな音楽を聴いたり、映画を観たり、この1年はこの1年で意味があるものにしたくて。このフラストレーションをいつか爆発させたいなと。

■そして、今回のデジタル・シングル『ALLIVE』の制作はいつ頃に取りかかったんですか?

葉月 去年から、今年末か来年頭には武道館をやることは決まっていたので、今年の春頃に僕が曲を持っていったんですよ。ずっとファンと共有していた目標でしたからね、「いつか武道館でやろうぜ」って。だから、1曲くらい曲を書いてもいいかなと。この曲の仮タイトルも「BUDOKAN」でした。

■ストレートですね。(笑)

葉月 はい。そのために作った曲だし、歌詞もそういう内容ですからね。

■曲作りが4月というと、コロナでザワザワし始めた頃のタイミングですよね?

葉月 真っ只中ですね。ライブもないので時間もありましたから。(笑)

■武道館公演をやる上で、どうしても新曲を届けたかった?

葉月 ファンの方たちと共有してきた夢として、ひとつ形に残したくて。

■曲自体も武道館で響かせることを意識しましたか?

葉月 それもありますし、これぞlynch.いうものを自分から狙いにいきました。変化球ではなく、そのイメージに従って素直に作ろうと。

■確かにlynch.流の王道ヘヴィ・ロックを叩き付ける曲調に仕上がっていますよね。

玲央 自分たちも周りのみんなも「lynch.ってこうだよね」と思う、ど真ん中の曲が来ましたからね。今まで辿ってきた軌跡をそのまま詰め込んだ方がいいだろうと。

■ギターの音色もめちゃくちゃヘヴィですね。

玲央 チューニングはG#ですからね。ただ、武道館は特別なステージだと思うので、沈むというよりは放射線状に光が広がるイメージというか、昇っていく気持ちを入れたくて。相反するようだけど、それが上手く整合されているなと。

晁直 武道館に向けた曲というテーマだったので、lynch.の中でも大衆性のあるものかなと思っていましたからね。あと、作り手の葉月くんが中途半端なものを出すわけがないので、そこは信頼していました。

悠介 lynch.らしさがこの1曲に集約されているのかなと。これを聴いて、そんなにlynch.をかじってない人でも、武道館に行ってみようという気持ちにさせられる曲だなと。

明徳 わかりやすい曲だし、武道館でみんなで楽しめる曲だなと。仮タイトルが「BUDOKAN」じゃなくても、大勢の前でプレイすることが想像つく曲だったので、演奏やアレンジも付けやすかったです。

■ちなみに結成当初から武道館でやりたいという話は出ていたんですか?

玲央 具体的に武道館とは言ってなかったけど…いつぐらいからだろう?

葉月 僕は最初、目標はZeppTokyoと言っていましたもん。(笑)

玲央 多分、ZeppTokyoでのライブをやったぐらいに意識し始めたのかな。ひとつ夢が叶うとまた次の夢が出てきて、その繰り返しですからね。それがバンドを大きくする原動力になっていますから。だから、武道館を意識し始めたのは2012年頃からですかね。

■その頃からメンバー5人で自然と共有できるようになった?

玲央 みんな口には出していなかったですけどね。結成当初は長く続くバンドがやりたいと言っていたんですよ。瞬間的に頂点まで登り詰めて美しいまま散るよりも、泥臭くてもいいから、ずっと長く続けられるバンドでありたいと初期メンバーの3人(葉月、玲央、晁直)で言っていました。そうなると、武道館はマストで通過したい場所だったし、そこを通過しないことには長く続けることもできないから。そういう意味ではやっとそこに辿り着けたなと。

■辿り着きたい場所でもあり、通過したい場所でもあったと?

玲央 そうですね。そこをゴールにはしたくないので。

葉月 ライブのMCでも「いつか武道館でやりたい」と言っていたので、自然とそういう感じになっただけで、そこを目指して特にこれをやろうというような話はなかったんですよ。

玲央 自分たちが正しいと思うことをやって突き進んでいけば、いつか武道館に出会えるという。その感覚の方が近いかもしれない。