「盾の勇者」と共に歩んだ成り上がり、振り返る原点と進む道。
MADKIDが11thシングル『Resolution』を8月20日にリリース。今作のタイトル曲は、7月より放送がスタートするTVアニメ「盾の勇者の成り上がり Season 4」のオープニングテーマ曲。2019年の放送開始以来、同アニメのオープニングを歌い続けているMADKIDだが、今回の楽曲は作品の内容に照らし合わせて、不屈の闘志と「決意」を表現したものになっているという。カップリング曲には“Resolution”の英語バージョンと、「迷宮」を意味するゴシックで壮大な楽曲“MAZE”が収められる。
インタビューでは楽曲制作の過程やその裏側に迫る。YOU-TA、YUKI、KAƵUKI、LIN、SHINの5人に話を訊いた。
■まずは2025年の頭に、ナノさんと一緒に巡ったアメリカ、カナダ、メキシコでのツアーのお話を伺いたく思います。面白かったことや事件などはありましたか?
YOU-TA もうね、事件しかないですよ。(笑)
KAƵUKI メキシコで僕は食中毒になっちゃいました。おそらく原因は「水」です。いろんな人に「メキシコに行ったら水に気をつけろ」と出発前から散々言われていたし、ガイドの人もそう言っていたから、歯を磨く時もペットボトルの水を使って、自分なりには気を付けていたんですよ。同じ部屋だったYUKIはシャワーの時もペットボトルの水を使っていたんですけど、「さすがにそこまでしなくて大丈夫だろう」と思っていて……そうしたら見事にやられました。(笑) シャワーの時に水が口に入っちゃったのかな?それで大変なことになりました。
■それはそれは大変でしたね……。他のメンバーは大丈夫だったんですか?
SHIN 僕はもうガブガブうがいしていましたよ。(笑) でも平気でしたね。
KAƵUKI 僕は別にお腹が弱いというわけじゃなくて、ノロウイルスみたいなものにも罹ったことも無かったんですよ。だからこんなことは初めての経験で、しかも人生で一番キツい食中毒でした。2公演休んでしまったのですが、最後の公演だけはなんとしても出たいと思い、キツかったですがやりきりました。
■本当に大変でしたね。予想不可能なことが起こるのも海外ツアーならではですが……。各地のお客様の反応はいかがでしたか?
SHIN 会場によってお客様の雰囲気というか、ノリ方が全然違ったので、それは現地に行ってみてわかったことでした。ライブの中でコミュニケーションを取りつつ、どう盛り上げるかをみんなで話し合って、ツアーが進むにつれて、どんどんと良いパフォーマンスができていったのかなと思います。
YOU-TA メキシコの人たちはバイブスがすごく高くて、たとえばライブ前にスタッフさんが水を置きに行っただけで盛り上がってたくらい、お祭り騒ぎでした。ライブが終わると、最後にみんなでメキシコの国歌を歌ってくれたんです。一緒に盛り上がってくれている感じがすごく楽しかったです。
■最後に国歌を歌うのって、日本ではなかなかわからないノリですし、興味深いですね。さて、ニューシングル『Resolution』は、アニメ「盾の勇者の成り上がり Season 4」のOPテーマとなりましたが、いかにもアニメのOPらしい曲でした。この“Resolution”というタイトルには、どのような意味が込められているのでしょうか?
LIN 今期ではアニメの主人公の尚文がたくさんの決断をするので、「Resolution(決断・解決・決意など)」というタイトルにさせてもらって、サビの強い場所でもこの単語を出しました。この曲はトラックを先に作っていただいて、それを聴きながら歌詞を作っていきました。
■作詞の際、トラックのイメージと「盾の勇者」の内容とでは、どちらの方が優位になりましたか?
LIN 作曲家さんもしっかりアニメの内容を汲み取ってくださっているので、同じぐらいの熱量だと思います。
YUKI 「盾の勇者」の曲は今回で5曲目になるのですが、僕は今回、LINが書いてくれた詞に乗っかる形で書きました。特別にこういう思いがあって……というよりは、いつも通りにやりながら、その先を見通して寄り添う感じでした。
■それが良い感じの「パーティー感」に繋がっているのかもしれませんね。「盾の勇者」のOPとして意識されたところは?
LIN Season 4は尚文の旅もどんどんと先に進み、いろんなキャラのいろんな素性や、なぜ今こうなっているかがわかってきて、Season 1から続いてきた様々なことを回収する内容になると思っています。なので、「改めて一番最初の時期を思い出す」ことを楽曲でもやりたくなり、サビにはこれまでのOP曲だった“RISE”や“FAITH”の歌詞を入れました。
■楽曲全体にも原点回帰的な雰囲気がありますよね。
LIN そうですね。今回は自分が書きたい歌詞と作曲家さんの楽曲がマッチして、すごく良かったです。
■LINさんは作詞する上で、作品をガッツリ読み込むタイプなんですね。
LIN もちろん。タイアップでお仕事をいただく時は、作品自体を楽しませてもらって、それから……という形でやっています。原作のアネコユサギ先生が連載していたWEB版も読みに行って「ここはこういう感じなんだな」と想像しながらでしたが、すごく楽しかったです。
■そうやって作られたと聞くと、オタク心が喜んでしまいます。(笑)
LIN 自分もオタクというか、アニメ好きだからこそ、「オタクがこれを聴いたら嬉しいだろうな」というものは、なんとなくわかっているつもりです。
■その手のひらの上で踊らされている感じがします。(笑) 今作の制作にあたり、壁はありましたか?
SHIN ラスサビ前のブレイクで、KAƵUKIが歌って、その流れで僕が歌う部分があるんですけど、この部分はレコーディングし終わるまで誰が歌うのかが決まっていなくて、その状態での挑戦でした。「僕が絶対に歌ってやろう」という気持ちでレコーディングしたので、勝ち取れて嬉しかったです。
YOU-TA そもそも曲のメッセージ性がものすごく強くて、曲に負けないようにと意識しました。「迷いや運命を超えて仲間と進んでいく」と解釈して、しっかり芯のある声を作りたいなと。今回はサビに僕が歌っている部分が多い構成になっていたので、覚悟や決意みたいなものを声に乗せられるように意識しました。
KAƵUKI 僕もサビについて、YOU-TAのヴォーカルからワンフレーズ僕が歌って、またYOU-TAに戻って……という所があるんですけど、長いフレーズを歌うよりも、ワンフレーズだけぴょこっと出てくる方が逆に難しかったりするんですよ。この曲調もそうなんですけど、YOU-TAの歌の強さに声質で負けないように、そして変に浮かないようにするのが難しかったです。
YUKI 個人的に壁という壁はあまり無かったのですが、前Seasonの曲と比べて、BPMが変わっているのが大きなポイントだと思っています。勢いだけではなく、リズム感をどれだけキャッチしてラップするかというのは考えました。
LIN ちょうど「カラオケで歌いやすいもの」みたいなことを考え始めた時期に作った曲なので、歌詞も伝えるところは伝えつつ、自分のスタイルから多少逸れたとしても、自分が納得できるものかつ、わかりやすいものを意識するのが壁だったかなと思っています。
■自分の担当しているところ以外で、「ここはカッコいいから聴いてほしい」というところはありますか?
YOU-TA 今回はYUKIの1番のラップが好きですね。タカタカ……と結構カタくラップしてるところがあって、それは今までの「盾の系譜」ではあんまりない、リズミカルなフロウだったので、聴いていて「おお……!」みたいになりました。YUKIはいろんな表現ができるタイプなんですけど、このサウンドのリズミカルなところに合わせて来たのがカッコいいなって。
SHIN 僕はYOU-TAのサビ終わりの部分が好きですね。あと「Yeah」の部分。(笑) めちゃめちゃYOU-TAらしい大事な部分で、すごくYOU-TAを感じられるので好きです。
KAƵUKI 僕はラスサビ前のちょっと静かになるところです。若干世界観が変わるみたいな感じの時に僕が歌って、その後をSHINちゃんが引き継ぐ部分が好きです。
YUKI 僕はサビの頭ですかね。覚えやすいメロディだから、のぺっと歌ったら、のぺっと聴こえちゃうと思うんですけど、そこがそう聴こえないのは、YOU-TAの実力なんじゃないかな。
LIN KAƵUKIが歌っているラスサビ前って、唯一「君」という二人称が出てきているんですよ。そこで空気感が変わるのは、KAƵUKIが歌ってくれたからだと思います。
■English ver.も収録されていますが、こちらは専門の方が訳詞を書かれたものとのことで、歌詞的に大きく変わったところはあるのでしょうか?
YUKI 韻に合わせてちょっと変えたりはしましたけど、基本的にはそのままです。今回はリダクションの勉強になったという感覚がめちゃめちゃあって、特に自分のラップの最後の方は日本語より英語の方がカッコいいかもしれません。
■そこも注目ポイントですね。ナノさんとの海外ツアーからの影響はありましたか?
YOU-TA めっちゃありました。3週間弱海外に行くと、やっぱり不意に英語が出てくるんですよ。もちろんメンバーによって差はあると思うんですけど、なんてことない返事が英語になったりとかね。(笑) よく「アメリカかぶれ」とか言いますけど、3週間でも自然にそうなっていく感じがあって、日本に帰ってきてもなかなかそれが抜けていない感じがします。
■それが歌にも良い感じに出ていると思います。
YOU-TA かもしれませんね。(笑) さっきもありましたけど、海外のライブで最初はあんまりノってきてくれない時もあったんですよ。でも、ライブを続けていく中で、海外ならではの盛り上げ方を肌で感じるところがあって。それを日本のライブにも落とし込めているのかなという感覚があるので、それも大きな収穫でした。ちなみにMCはKAƵUKIが一番得意なんですよ。(笑)
■KAƵUKIさんは英語がお得意なんですか?
KAƵUKI ぜんぜん喋れないです。ホントに喋れないんですけど、「ポッ」と出て来た単語を言ったらなぜかウケるんですよね。(笑)
■単語のチョイスが良いってことですね!(笑)
KAƵUKI そういうところはナノさんからもすごく褒められたんです。「Englishマジでイイよ!ああやってお客さんを任せられるのは強みだね」と言ってもらえたのが、すごく嬉しかったです。(笑)
■なるほど。ちなみに英語でラップするのは難しくないですか?
LIN そうでもないですよ。ラップは元々アメリカのカルチャーだから、向いているという部分がありますし。イントネーションみたいな部分には、言語による差がめちゃめちゃ出ると思うんです。たとえば日本の野菜でフランス料理を作るのって難しいけど、フランスの野菜で作ればそれっぽくできるじゃないですか。そういう感じですね。あと、日本語って主語が抜けていても意味が通じるけど、英語は必ず主語がないといけなくて、そのルールの上でバースを作っているからこそ出るグルーヴみたいなものがあります。それを日本語でやるのは難しいですけどね。自分的に何かを意識しておかないといけないので、ただ日本語を並べてリズムを作っただけだと、あんまり良くないと感じています。
YUKI そもそも日本語ラップと英語のラップの「カッコいい」という感覚は、それぞれちょっと違うと思っています。両方を取ろうとすればするほど難しいし、そこにアニソンというジャンルや、わかりやすさを意識すると、何をどれだけ取るかを考えないといけないし。今回はリズムを意識する方に寄せて、日本語を多めに使おうかなと思いつつ。そういうバランスはアーティストそれぞれのセンスかな。
■すごく興味深いですね。個人的に日本語ラップかつ、アニソンというと、SOUL’d OUTが真っ先に思い浮かぶので。
YUKI でも、Diggy-MO’さんが一番早かったんじゃないかな?そういうの。
LIN ね。やっぱDiggy-MO’さんの日本語って、日本語のイントネーションではないじゃないですか。(笑) 当時、世間はラップカルチャーに対してリスペクトや理解が浅かったので、「なんかおもろいアーティスト」みたいになっていましたけど、普通に考えたら、日本人で、特に東京の人って、普通に喋っているのをああいうイントネーションでやるのはすごく難しいですよね。
YUKI あと、母音を崩すところ。
LIN 当時はそういうアプローチがあんまりなかったからね。