5人で作り上げる歌へのこだわりと更なる飛躍に向けた2023年の意気込みを聞く。
MADKIDが新曲“Paranoid”をドロップ。アニメ「伊藤潤二『マニアック』」のために書き下ろされたという今作は、これまでのMADKIDの楽曲とは一線を画した、洗練されたクールな楽曲となっている。メンバー同士で切磋琢磨しながら柔軟な姿勢で活動しているMADKID。歌に対する取り組み方の変化やプリプロでの発見といった制作のこだわりから、普段の音楽への触れ方、改めておすすめしたい過去の楽曲まで、YOU-TA、YUKI、KAZUKI、LIN、SHINの5人に幅広く語ってもらった。
■「マニアック」のオープニングテーマ、“Paranoid”はどんな流れで作られたんですか?
LIN 一昨年、“Gold Medal”を出した頃にお話をいただいて。
■だいぶ前の曲なんですね。
LIN そうなんですよね。なので今頑張って思い出しています。(笑)
■“Paranoid”を聴いていて、また新しい引き出しを開けた感じがしたので、最近作られた曲かと思いました。この曲は原作を読みながら作っていったんですか?
LIN なんだろう……伊藤潤二先生の作品はお話をいただく前から知っていたんですよ。でも制作サイドからは「関連するワードを使わないでください」っていうオーダーがあって。伊藤潤二先生の作品を知っていたから逆にそれが難しかったですね。やっぱり出てきちゃうじゃないですか。それを全部排除して作ったので、作品にぴったりとかではない気がします。
■あえて寄せすぎないようにっていう。曲調的にも普通の歌モノとはまた違った曲調になっていますよね。
LIN その頃3曲作っていたんですけど、気に入っていた曲が1曲あって。それは結構綺麗な感じの歌モノだったんですよ。それを1回提出してみたんですけど、「さらに違う方向でトライしてみてください」みたいな反応をいただいて。「全編ラップでもいいですよ」みたいにも言ってもらえたので、じゃあそういう感じにしようかと。
■YUKIさんは今回もリリックで入っていますが、これはどんなアプローチで?
YUKI もうLINのラップに乗せさせてもらったっていう感じですね。本当に僕のやるべき事はこの曲の雰囲気を壊さずに作っていくっていう感じで。“Interstella Luv”の時よりも更に難しいというか……。僕のラップに関しては普通でしたけど、それ以外のところを歌う時がめちゃめちゃ難しかったです。あとは1AのLINのラップがスムーズで、Bメロまでの流れがめちゃめちゃ綺麗だったので、僕はどういう風にやっていこうかなっていうのを結構考えて。今思えばもうちょっと淡々とやってみてもよかったかな?と思いつつっていう感じです。
■ボーカルのみなさんも、今までとは雰囲気が違う曲で苦戦した部分もあったんじゃないでしょうか?
YOU-TA そうですね。ボーカルに関してはLINのプリプロに近いような声質とか表現で歌っていった感じでした。
SHIN 僕はLINのディレクションのおかげで良いテイクが録れました。ラスサビの前にすごくいい歌割りをYOU-TAとLINからいただいて……。
LIN 「いただいて」って。(笑) 申し訳なくなる言い方。(笑)
SHIN いや、嬉しいよ。(笑) 表現の部分ですごく難しい部分もあったんですけど、LINのプリプロだったりディレクションをもとに、最終的にはいいものを一緒に作っていけたのでよかったと思います。
KAZUKI 僕もとにかく世界観を壊さないように。他の曲では自分で解釈した上で自分の色を見せていくとしたら、今回はどっちかというと染まりきった感じですかね。それこそLINのプリプロに今までの曲以上に歌い方を寄せました。
■LINさんはプリプロはどんな雰囲気で録ったんですか?
LIN 「もし自分が1人でやるなら」っていう感じでプリプロは録っています。別に自分が歌っているものが正解とかじゃないので、各々の思うルートで到着地点につければルートは何でもいいと思っていて。
SHIN でも“Paranoid”の話からは逸れるんですけど、自分でプリプロを録るようになってから、歌に時間をかけられるようになったというか、自分の歌と向き合うことができているなっていう感覚があって。
■というと?
SHIN 今までLINとかYOU-TAが録ってくれたやつを元に練習して、レコーディングスタジオで自分の声を録るっていう形を取っていて。それは“Paranoid”もそうだったんですけど、それ以降くらいから「自分でマイクを買って自分でプリプロを録ろう」っていうことにみんなでなったんです。そこからは家でプリプロを録る段階で「こうすればこういう声が出るんだ」とか、すごく気づきがあったので、プリプロは自分にとってすごく大事だったんだなっていうのは思いました。表現の幅も広がっている感じがするので、それはもっと追求していきたいなって思います。
■自分の声に向き合う時間が長くなったのはすごくいいことですね。
SHIN そうですね。もっと早くやっとけばよかったなっていう後悔はあるんですけど、それはもう過去のことなので。(笑) しっかり気付けて今はちゃんとやれているので、もっともっと成長できると思います。
■自分でプリプロをするようになったきっかけはなにかあったんですか?
YOU-TA 前にLINと話していた時かな?「自分でプリプロ録った方がいいよね」っていう話になったので、「じゃあこれからはそうしよう」っていうシンプルな流れでしたね。「自分のパートだけじゃなく、全体をつるっと通して歌おう」みたいな。それは“Critical Point”の時くらいからやっているかな。表現に関してはレコーディングよりもプリプロでほぼ決まると思うので、プリプロはすごく大事だと思っていて。KAZUKIもSHINも自分でプリプロするようになってからはすごく歌の表情を出せるようになったし、僕自身もそういうのが結構増えてきたと思います。人に言われて気づくことと自分で気づくことの違いがすごく大事だなと思いました。
LIN やっぱり自分のパートだけを歌うっていうのは歌としては不自然なので、つるっと全部歌うっていうのは絶対に大事なことで。あとは自分の歌と向き合う、その曲の歌と向き合うっていうのは自分だけの時間でやらないとできないことだと思うんです。例えばレコーディングに行ったらいろんな人が意見を出すし、そうなったら人間はキャパシティがあるので、自分がやりたいことと人が言ってきた要望を一緒にやるっていうのはすごく難しいことだと思うんですよ。だから、せめて自分がやりたいことをしっかり固めてからレコーディングに持ってくるというのはやらなきゃいけないことだなと。なので、それをメンバーたちがみんなやってくれるようになったのはすごく大きいことだと思います。
■KAZUKIさんは自分でプリプロをやるようになって、どんな発見がありましたか?
KAZUKI 単純に自分の歌を俯瞰して聴けるようになったというか。今までは自分で「これが正解でしょ」みたいな感じでレコーディングに挑んでたのが、一旦自分の中で「ちょっと違うかもな」って思えるようになった。それは自分でプリプロしてみて気が付いたことですね。
■今まで何回かお話を聞いていても、みなさんはかなりのペースで曲を制作しているなと思うんですが、曲のアイディアやインスピレーションなどはどんな時に湧き出てくるものなんですか?
LIN 自分は作詞に携わる時も曲を作っている時も、仕事をしようと思ってパソコンの前に座ってから考えるので、日常的にやるタイプじゃないんですよね。その時々によるんですけど、今回の“Paranoid”はちょっとアジアっぽいテイストが感じられるようなトラックにしたかったので、メロディーとかをアジアっぽいものにするっていうのは、座って向き合った時に結構早めに思い浮かんだことでした。
YUKI 僕もパソコンの前に座らないとダメかもしれないです。電車とかでワードが出てきた時とか、ふとした時にメモはするようにはしているんですけど、どちらかというとちゃんとパソコンの前に座って曲を聴いてからですね。それでその雰囲気に合うような「昔こんな曲聴いていたな」っていうのをディグったりとか、他のアーティストの曲に触れてみて、その上でもう一回チャレンジするとかが多いですね。
YOU-TA 僕も自分と向き合ってしか出てこないですね。プリプロの時は本当に何百テイクも録って、何百回もいろんな歌い方をするんです。インスピレーションとは違うかもしれないですけど、僕はそういうスタイルですね。何百回も録っていると「今の声の出し方めっちゃいい」とか、「ここを響かせたらこんな声になるんだ」っていう発見があるので。そこからちょっとずつ自分のものにしていくっていうことが多いです。
■めちゃくちゃ時間がかかりそうですね……。
YOU-TA だからプリプロが一番嫌いです。(笑)
■普段インプットするものなんかもそれぞれ違うと思いますが、「普段からいろんな音楽を聴くようにしている」とか、意識していることなどはありますか?
LIN 結構僕は嫌いなものが多くて、創作物って好きなものしか見たくないんですよ。なので、その点では全部ちゃんとなにか吸収しているとは思っていて。よく創作するために散歩している人とかいると思うんですけど、そういうタイプじゃないのはだからかもしれないです。もう頭にあるというか。ただ作ると時には他の音楽を聴いてるとそれに似ちゃうので、それはしないようにしています。
KAZUKI 僕はいろんなジャンルで気に入った曲をどんどん追加して聴いていますね。昔はCDショップに行って試聴機で聴いてみたら1曲だけ気に入ったりして、その1曲のためにアルバム買ってたりとかしていたんですけど。そう思ったら今のサブスクってすごいなって思いますね。(笑)