豪華な演出で怒涛の10年を振り返る周年ライブ。
11月17日(日)、大手町三井ホールにて『MADKID 10th ANNIVERSARY LIVE -DROPOUT HEROES-』が行われた。活動10周年を記念したライブである本公演。各メンバーのトピックやこれまでのタイアップ、コラボレーションにも焦点を当てながら、MADKIDの集大成を見せるような豪華な公演となった。オープニングムービーから始まった夜公演の1曲目は“Bring Back”。燃え滾るような切れのある5人の動きと猛々しいボーカル、ラップは威勢の良さを感じさせる一方で、明るくオーディエンスに声をかけたり煽ったりと、早速オーディエンスとコミュニケーションを図っていく。YOU-TAのボーカルがインパクトのあるスタートを切った“Chaser”や長年のライブ定番曲“Get Started”でも、積極的な煽りと丁寧かつダイナミックなパフォーマンスが同居する。序盤からオーディエンスを煽りながら巻き込み、かつ質の高いパフォーマンスを見せるライブの展開は、ここ数年のMADKIDが手に入れた魅せ方でもある。数年前はパフォーマンスを見せることに特化していた彼らだったが、「Animelo Summer Live(アニサマ)」をはじめとする大型フェスや海外での経験を積み、最近は特にライブでの盛り上げ方に重きを置いていたように思う。今回のライブはそんな近年の集大成とも言えるような、初っ端から一体感のあるライブとなっていた。
そんなセットリストとともに序盤から熱気は上昇。自己紹介のMCもくだけており、昼公演を経たこともあってかYOU-TAが「ファンミーティングじゃないんだから……」と思わずこぼすほどリラックスしている様子が感じられた。続いて披露された“ふたつのことば”では、爽やかな疾走感のある曲調がMADKIDのライブでは新鮮で、熱くなった空気を涼しく彩る。“ふたつのことば”から、一人ひとりスポットライトを浴びながら歌っていく“Be the light”や、その後の“Swell”まで、比較的じっくりと歌声を聴かせる楽曲が続いていく。このセクションでは各々のスキルアップを強く感じたのも印象的であった。語尾や細かなニュアンスまで表情豊かに歌っていることにより、楽曲の世界へと没入感を加速させていく。“Interstella Luv”のアレンジバージョンとともに夜空を映し出す映像が挟まれると、そのまま“Interstella Luv”へ。
それから“出ていってよ”、“OVERAGAIN”、“Unveil”と、ダンスミュージック調の3曲を巧みに繋げて披露する。続くアルバム収録の新曲“Swell”までの4曲はLINが作曲を担当している楽曲なだけに、親和性のある流れがオーディエンスの興奮を高めた。“Swell”にてテンポが変化する場面では会場のボルテージがみるみると上がっていったが、その際にLINが「みんな楽しんでるか!」と叫んだ瞬間、LINが主役になったかのように空気が変わったのも印象的だ。前述のKAZUKIメインボーカルの“ふたつのことば”含め、ライブ中、歌詞を書いたメンバーや曲を作ったメンバーなど、一人ひとりが主役になる瞬間が度々あったこともこのライブの特色であった。
更にこの日の公演は、楽曲のストーリーを感じさせる演出も多くあった。“Mirage”、“REBOOT”とYOU-TA作詞の楽曲を熱く届けると、“Stuck on U”を挟み、SHIN作詞の“Dream Journey”で雰囲気を一変させる。このあと挟まれたVTRでは、SHINが先日就任したみやざき大使の委嘱式の映像、そして5人が宮崎県のキャラクターであるみやざき犬のかぁくんとともに“FLY”を踊る映像が放映された。ライブ中盤、重いサウンドが響くロックチューンからジャジーな流れに変化したところで、ユーモアのある和やかな映像が流れることを一体誰が予想できただろうか。この日はVTRやSEの演出も度々あったが、そのひとつひとつが驚きをもたらしながらもセットリストの流れに沿って楽曲を惹き立てる材料になっており、公演全体が10年を振り返るひとつのダイジェスト作品のようにも感じられた。
映像の放映後、メンバーとともに袖から出てきたSHINが「みやざき大使になりました~!」と嬉しそうに言い、そのまま“FLY”へ。更に“One Room Adventure”を経て、爽やかながら熱く染め上がった会場に流れたVTRでは、FLOWからのコメントが寄せられた。「これからも一緒に音楽やっていきましょう!」と言葉をかけ、FLOWの曲振りから彼らの共作“Future Notes”に続く。その演出やオーディエンスの反応を受けて、パフォーマンスをするメンバーも心なしかより熱がこもっているように見えた。更に“Change The World”の後には、『盾の勇者の成り上がり』のPVが放映。映像に続くように主人公の尚文が「俺がここまで来られたのは、そばに仲間がいたからだ。お前たちもそうなんだろう?この先も、自分たちの信じた道を進め、MADKID!」とメッセージを送り、“SIN”へ。これまで関わった作品や人々に敬意を払いながらMADKIDの10年を辿る演出とセットリストであった。
アンコールでは5人それぞれが自身のパートの作詞を担当した“DROPOUT HEROES”、“Play”を披露。前者はQ-MHzとの共作でキャッチーな楽曲、後者はメンバー内で完結したラップ曲と曲調も正反対だが、全員のメッセージの詰まった2曲を連続で披露すると、会場はこの日一番の大熱狂となった。最後のMCにて一人ひとり感想を語る場面では、LINが「2、3年前、ここにいてもいいのかなと、MADKID辞めようかなと思ったこともあったんですけど」と涙ぐみながら話す場面も。「今この瞬間は今が一番若いので、これからも楽しいことをたくさんしていこうと思います」と前向きに締めくくったが、KAZUKI、YOU-TAがつられるように感涙。SHIN、YUKIの2人も含め、各々がこのライブを経て茨の道を突き進んできた日々を振り返り、強く噛み締めているように感じられた。
メジャーデビュー曲“Never going back”で締めくくったと思われたライブだったが、ダブルアンコールを経て“RISE”のシンガロングで一体感を作り、感謝を伝えながら公演は終了。終演後ステージ上スクリーンにて北米ツアー、国内ツアーの開催も発表し、これからもどんどん前に進んでいくことを示したMADKID。今まで関わってきた作品や人々へのリスペクトも感じさせながら楽曲の魅力を最大限引き出し、珠玉のパフォーマンスとともに届けた公演だったが、10周年を経た彼らがこれからどんな進化を遂げていくのか、楽しみでならない。
Text:村上麗奈
『MADKID 10th ANNIVERSARY LIVE -DROPOUT HEROES-』@大手町三井ホール セットリスト
01. Bring Back
02. Chaser
03. Get Started
04. ふたつのことば
05. Be the light
06. Interstella Luv
07. 出ていってよ〜OVERAGAIN〜Unveil
08. Swell
09. Paranoid
10. Last Climber〜Fight It Out
11. Mirage
12. REBOOT
13. Stuck on U
14. Dream Journey
15. FLY
16. One Room Adventure
17. Future Notes
18. Change The World
19. SIN
ENCORE
01. DROPOUT HEROES
02. Play
03. Never going back
W ENCORE
01. RISE