manacoがソロ活動で見せたのは、Q’ulleとは異なるチクッと胸刺すファンタジックワールド!!
Q’ulleの中心メンバーとして活動中のまなこ。Q’ulleは、2020年夏にメンバー全員の卒業が決まっている。そんな中、まなこがソロアーティストmanacoとしても活動をスタート。初のソロアルバム『オンブルー』を11月27日に発売する。すべての楽曲の作詞をmanaco みずから担当。作家陣には、有名ボカロPのDECO*27や八王子P、GARNiDELiAのtokuが。フューチャリングヴォーカリストとして、GARNiDELiAのメイリアとCOJIRASE THE TRIPの217が参加。manacoが、なぜソロ活動を始めたのか。アルバム『オンブルー』を通し、どんな物語を描きたかったのか。その想いを訊いた。
■manacoさんがソロ活動を始めた、その理由から教えてください。
manaco 今年3月に行ったバースデーイベントのときに「ソロデビューします」と発表して、そこからがmanacoとしてのスタートになります。じつは毎年恒例のバースデーイベントでは、前々からソロでも歌わせていただいてきました。その経験の積み重ねもあったので、Q’ulleでは表現できない音楽性にも挑戦したい想いが次第に心へ芽生えました。Q’ulleの軸にあるのはロックというスタイル。しかも、この5人でしか表現できない音楽を求め続けてきました。ならばその対極にある、1人だからこそ表現できる音楽もあると思い始めたことも、ソロ活動を始めるきっかけとして大きかったと思います。
■作品のリリースに先駆け、この夏にソロとしてワンマンツアーを行ないましたね。それはMCを一切排除、歌と芝居が交錯しながら進んでゆく舞台劇のようなライブでしたよね。
manaco 自分の頭の中に広がる物語を楽曲やライブへ落とし込んだように、やりたい放題やらせてもらいました。そのときに描き出した世界観を、アルバム『オンブルー』にも反映させています。
■ソロとして歌っている楽曲は、カバー曲以外はすべて自分で作詞をしていますが、そこはmanacoさんのこだわりですか?
manaco そこは、こだわっているところです。わたしの場合、自分の想いを投影していくのではなく、架空の主人公を設定したうえでの物語として、どの歌も書いています。そうしているのも、自分の気持ちを歌詞に書くことが、どうしても照れを覚えてしまうからなんです。以前、自分の気持ちを素直に歌詞へ書いたこともありました。だけど、書きながら自分で照れてしまい「駄目だぁ…」と放棄してしまったというか、そういう表現スタイルから逃げてしまいました。
■だったら、架空の物語として書こうと…?
manaco そうなんです。もちろんわたしが書いているので、わたし自身の想いも歌詞には反映されていますけど。それ以上に、出てくる人物が「どういう性格で」「これまでどういう風に生きてきて」「これからどう歩んで行きたいのか」というように、(架空の人物の)人生の一部分を切り取った歌詞にして書きたいし、そのほうが表現しやすいなと感じています。
■それを知らずに楽曲を聴いていたからか、manacoさんの過去の経験や想いを改めて振り返りながら書いているのかな?とか、自分の経験を、他の対象に置き換えて表現しているに違いない…と勝手に思い込んでいました。
manaco 経験談を反映することもあれば、自分とはまったく重ならない人物のこともあるように、そこはいろいろですけど。すべてファンタジックな空想物語として歌詞を書いています。
■そうなんですね。でも、どの歌の登場人物からも、実際に経験をしたようなリアルな心模様が見えてくるんですよね。
manaco そう感じていただけたことは、とても嬉しいです。実際に歌詞を書くときも、歌うときにも「この歌は男の子に成りきって」「この曲では小っちゃい女の子の気持ちで」と、曲ごとの主人公の性格を意識して歌うことを大切にしていましたから。
■アルバムの冒頭を飾った“向日葵”では、学生時代に亡くなった親友への想いを歌にしているのかな?と思ったのですが、その心模様がとてもリアルだったから、manacoさん自身そういう経験をしてきたのかな?と想像を巡らせ、聴いてしまいました。
manaco わたしの学生時代の友達はみんな元気ですから。(笑) “向日葵”は、わたしが完全に作りあげた物語です。これは先に楽曲を受け取り、その曲を通して感じた印象から物語を書きました。でも、アルバムに収録した大半の歌は、先に自分で作った物語を作家さんへ渡して、その物語を軸に作曲してもらう形を取っています。そのうえで、上がってきた曲にわたしが作詞をしながら完成させていきました。嬉しかったのが、わたしが想像した以上の楽曲を作曲家のみなさんが作ってくださったこと。DECO*27さんが作曲した“私を殺さないでよ”は、DECO*27さんと共同で作詞もしたんですけど、あのときは、物語の題材をわたしが出したとはいえ、曲が良すぎて、共作するのにプレッシャーを感じたくらいでした。
■この曲は「私を殺さないでよ」と、すごく感情的に歌うmanacoさんの歌声から幕を開けます。あれはとてもインパクトがありました。
manaco アルバムの中で一番激しい感情を詰め込んだ、とても強烈な歌になりました。(笑)
■ボカロPさんの作曲ナンバーと言えば、八王子Pさんが作った“タイムリミット”も聴いていて心が弾むようで、とても気に入っています。
manaco テーマとしてあったのが、「いろんなところへ旅をしたいな」という想い。そこから、「ドライブしながら聴きたい音楽」を作りたくなり、八王子Pさんにお願いをしました。
■“タイムリミット”の歌詞に、「27回目のおめでとう聴けなくても」と記しています。これはどういう意味なんだろう?とずっと気になっていたんですよ。
manaco この曲は、タイトル通り「生きられる期間が決まっている男の子」のお話です。彼は、27歳の誕生日の前には亡くなってしまう定めを持っています。自分でもそれを知っているからこそ、「決められた期間の中で、どういう風に自分は生きていこうか」と、考えていくんですね。終わりの日が見えているからこそ、新しいことへ挑戦するにも勇気がいる。むしろ、「期限が決まっているのなら、自分のやりたいことを定められた期間の中で全部やってしまおう」。そう決意をした男の子の物語です
■そういう設定があったんですね。“ふたりぼっち”も、相手は人間以外のようにも聞こえました。これは、どういうシチュエーションなんですか?
manaco この曲は、犬と飼い主の男の子のお話。朝起きたら、ワンちゃんと飼い主の男の子しかいない世界になっていた。犬はしゃべることも、人と同じように生きることも出来ないけど。でも、直接言葉として伝えられないだけで、お互いの想いはわかりあえている。だからこそ、何があってもずっと側にいて守ってあげるよという物語として書きました。