ましのみ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ましのみ『エスパーとスケルトン』

エレクトロと人間ながらの暖かさや生感の同居を目指した、ましのみの新曲

ましのみから新曲『エスパーとスケルトン』が到着した。今作はある意味、彼女がデビューより推し進めてきた、エレクトロならではの面白みと、近年芽生えてきた、出会ってくれた方々に向けての「みなさんに幸あれ」との想いが融合されたもの。加え、ここにきて現れた、エレクトロの無機質なサウンドイメージをどう有機的且つヒューマニックに伝えるか?面白い楽曲ながらスムーズにスッと意識を集中せずとも聴かせられるか?の課題を、今作のアレンジャーでもあるsasakure.UKと共に試行錯誤の末、見事クリアし両立させた楽曲でもある。
彼女ならではのユニークなモチーフやアプローチを、しっかりとしたメッセージの中に内包し、いい意味でサラッと聴ける同曲。そんな彼女が自身の理想が実現した今作のメカニズムについてを紐解いてくれた。

■今回の楽曲からは、「迷っているのなら、結果がどうであれ、とりあえず始めてみなよ。もしかしたら希望と違う成果かもしれないけど、何か違った喜びを得られるかもよ?」的なメッセージを受け取りました。

ましのみ そうなんです。「迂闊に恋せよ乙女」と何度も歌っているわりには、これはラブソングの枠だけでは捉えていなくて。もっと広義な範囲だったりするんです。いわゆる考え過ぎても先のことなんてどうなるか分からないし、運もあるから。だったら迂闊に何かをとりあえず始めちゃって、あとはもう祈るだけで、みんなに幸あれとの気持ちを込めて歌詞を書きました。いわゆる恋愛に関わらず生活に密接した形でみんなを励ませる、そんな背中をポンと押せる曲になれたらなと。

■確かに恋愛に関わらず、気になるならとりあえずそこに飛び込んでみなよ感がヒシヒシと伝わってきます。

ましのみ それをあえて押しつけがましくないようにとは心がけました。「応援するぞ!!」ってなると、ちょっと気構えた形になっちゃって、聴き手側も構えたり、トゥーマッチに感じる方もおられるかもしれないですから。自然にBGMのようにそこにあって、日々の背中を押せるような、余裕で力を抜いて聴いてもらえる、だけどノれる、そんな心地良くて面白い楽曲を目指したんです。

■ましのみさんの楽曲の中でも、ここまで分かりやすくストレートにメッセージを伝える曲も過去になかった気がします。どちらかというと、それを曖昧に伝え、聴き手に感じさせらたり発見してもらうのが特徴だった印象があったもので…。

ましのみ まさしく以前はそんな感じでした。でも今回は挑む段階から今までとは違っていて。「みんなに幸あれ!!」って気持ちの楽曲を作りたい想いが当初からあったんです。そういった点では今回は特に自分について書くつもりもなかったし、現に自分について歌ったわけでもないですから。私が日々いろいろな方とお会いしたり、お客さんや聴いてもらっている方を思い浮かべ、パッと出てきたものが今回の方向性だったんです。あとはとにかく頑張らなくても聴けるものにしたくて。

■頑張らなくても聴けるもの…ですか?

ましのみ そうなんです。いわゆる構えて曲と向き合わなくても伝わるものとでも言うか…。面白い曲ってけっこう頑張らないと聴けないし、集中しないと聴けないものって多いじゃないですか。聴いている最中に耳がどうしても「ここが凝っている」「このリズムの作りは面白い」「この歌詞ってこうともとれる」「言葉のレトリックが面白い」とか…。もちろん私自身も面白い曲は好きです。だけど反面、それらの曲ってBGMとして聴けずに、わりと向き合って聴かないとその面白みが伝わらなかったりする。それに対して、面白い要素はあるんだけど、心地よく聴ける曲を作りたくて。なので、歌詞についても、これまではいろいろと吟味したり推敲したり、いろいろな構成パターンを考えたりとやってきましたが、今回はパッと出てきたワードをパッと歌って、そこから変に頭を使わずにパッと出たものを本能的に届けてみたんです。で、「聴き手に自由な形で受け取ってもらおう」、そんな考え方に行き当たったんです。

■先程、「みなさんに幸あれ!!」との想いを込めて作ったとおっしゃっていましたが、その辺りもう少し詳しく。

ましのみ これまでは、「私という存在や曲をどうやったらもっと受け手に突き刺すことが出来るか?」そこばかりを考えて楽曲を作っていたんです。その「届ける」との意識に対して新しい考えが芽生えてきたというか。いわゆる、聴いてくれている方にはどうなって欲しいのか?とか真剣に考えました。

■あと、この楽曲のもう一つの重要な要素として、楽曲のそこかしこから溢れ出てくるワクワクドキドキ感もあるかなと。特に後半に向けてその辺りが強くなっていき、不思議なワンダー感を与えてくれるんです。

ましのみ 正直、とにかくやってみようよ的なメッセージよりかは、伝えたかったのはむしろそっちの方で。聴いている方にウキウキワクワクして欲しくて、私も歌っている中でウキウキワクワクしたかったですから。聴いている方がみんなそのような空間になり、それが結果的に背中を押すことになればいいなって。何も特別なことではなくて、日々生活していく中で、なんとなく聴いて、なんとなくスキップしたくなったり、なんとなく楽しくなってくれる、そんな歌になってくれたらなと。その辺りの聴き方の提示も、実はこの曲のMVには込められていたりもするんです。

■サウンドもとてもユニークですね。チップチューンのようでいてグリッチポップのようでもあったり。

ましのみ サウンドに関してもスクエアでツメツメではなくて横揺れな感じとか、テンポ感もちょっと考えたり、抜き差しをして風通しの良い部分を作ったり、余裕をもたらせるためにあえて歌うキーを落としたり等々。わりと引き算をして作っていきました。いかんせん今回は余裕観のあるものを作りたかったので。