May J. VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Dark Popを経て「ポジティブなMay J.」の幕開けを飾る、7ヵ月ぶりの新曲“Spread Love”

May J.が約7ヵ月ぶりの新曲“Spread Love”を8月27日に配信リリース。2000年代のR&Bを彷彿とさせる明るく爽やかなサウンドを持つ今作で、May J.は本格的なラップにも挑戦。プロデューサーには数々のヒット曲をプロデュースしてきた今井了介を迎え、夏にぴったりな楽曲に仕上がった。インタビューでは作曲の経緯からリリースの空いた7ヵ月間の話まで、“Spread Love”を掘り下げる。

■『アナと雪の女王』がヒットして、May J.さんの歌声がたくさんテレビから流れてきていた時、私は高校生でした。デビューから17年が経ちましたが、長かったですか?短かったですか?

May J. 長かったですよ~。(笑)

■でも「生まれてから17年」と考えると、まだお酒も飲めない歳でもありますよね。

May J. そうなんですよね。だから考えてみるとまだ子供かもしれません。長いんですけど、成人もしていないから、まだまだなんだなって気持ちもあります。ここ4、5年は「May J.さん、大御所っぽいね」みたいなことを言われることがあるんですけど、実際はね、まだまだですね。(笑)

■いやいや。(笑) YouTubeも積極的に活用されていますよね。持ち物チェックで帽子の中からシュークリームが出て来た時は笑いが止まりませんでした。

May J. あれはイチオシです。意外とあまり見られていないんですけど、ああいう面をぜひ見て欲しいなって思います。(笑) 私、実は甘い物が好きなんです。もうお菓子はね、非常食ですよ。帽子の中にシュークリームを入れるようなことは気にせずやっちゃう。O型だし、気にしません。(笑)

■私は神経質なので羨ましいです。カバー動画も公開されていて、当たり前なんですが、歌の上手さに改めて驚きました。どういったトレーニングをすれば、May J.さんみたいに歌が上手になれますか?

May J. やっぱり毎日歌うことだと思います。私も最初の頃は全然歌えなくて、「100回歌ってやっと声が出てきた」みたいな時期もあったし、何回も録り直しさせられたし。でも、そういう時期を経て、自分を守る術を見つけていくようになるんです。もうなんか「注意されるのも嫌だ」みたいな悔しさからなんだろうね。(笑) 毎日練習するようになって、ライブや経験を積み重ねて、やっと今の自分の歌声になったんじゃないかなと思います。

■お手軽に上手くなる手段は無いってことですね……。

May J. でもね、最近の人はみんな上手いですからね、ほんと。幼い頃から上手い人の歌を聴くことって、すごく良いトレーニングだし、真似する対象が上手い人だから、今の若い子たちは本当にレベルが上がっていて……見ていてヒヤヒヤします。

■歌声について、年齢を重ねるとともに変化してきたところはありますか?

May J. やっぱり昔の音源を聴くとすごく声が若いし、ツヤツヤしているんですけど、昔はガサガサ声が出ないのがコンプレックスでした。だって、ザラっとした感じってカッコいいじゃないですか。そういう歌い方ができないから、「イイ子ちゃんの声……嫌だな」って思う時はありましたね。最近は嫌でもガサってなったりして……。(笑) でも年齢とともに声が変わるのも面白いし、飽きないし、その時にしか歌えない歌もあると思います。

■「落ちた」時期はありましたか?

May J. 私は常に歌っていないと喉の筋肉が使えなくなっちゃうんですが、コロナ禍ではステージが無くなって、急に歌えなくなり、すごく落ち込みました。ひとりで歌うのももちろん大事なんですけど、やっぱり誰かに聴いてもらって、その反応を見て感じるものがあるじゃないですか。そこから学ぶことってありますよね。

■バンドやオーケストラなど、様々な形態でのステージで歌われていますが、まだやったことがないスタイルはありますか?

May J. なんだろう……?今までいろんなことやってきたし……あ、宙ぶらりんで歌いたいです!ワイヤーで吊られて歌ったことがないんですよね。なんか逆さまになって歌ってみたい。(笑) 飛んでみたいです。

■ではぜひいつか……。(笑) 最近の音楽で「変わって来たな」と思うところはありますか?

May J. 最近の曲は「早口」ですよね。もちろんそうじゃない曲もあるけど、YouTubeで歌う曲はすごく歌詞が長くなっています。昔の歌謡曲って、一つの音に一つの歌詞だからすぐに歌えたんですけど、今はもう100回聴いても歌えないことも多いです。歌い方的には、ビブラートを使わないんですよね。がっつりビブラートで最後を伸ばす曲が少ないと思います。ビブラートを使うと2000年っぽくなるので、今は使わないのが旬なのかも。

■あー、2000年感はわかる気がします。10年後になったらまた流行が巡って戻ってくるかもしれませんね。

May J. 巡る巡る。だから常にいろんな時代に合わせた歌声に変えていかなきゃいけないと思います。

■K-POPをよく聴かれるとのことですが、K-POPから吸収することはありますか?

May J. 悔しいくらいあります。上手く洋楽とのミックスをされていて、「こういうのがやりたかったんだよな」っていうのを体現してくれています。しかも、それがすごくヒットしているっていう。日本だとK-POPは「K-POPという文化」として聴かれているから盛り上がっているけど、日本人が同じことをしても売れるかどうかは別ですよね。日本ではやっぱりJ-POPの王道なメロディを持つ曲とか、転調が多いものとか、コードが複雑だったりするものとかが売れますから。でも、それはJ-POPの特徴なので、いろいろ上手くできたらいいなってずっと思っています。

■ちょうどいい所を見つけるのは難しいですよね。さて、今回の新曲“Spread Love”ですが、夏っぽい爽やかさがとても良い曲でした。

May J. もうね、なんか元気になれる曲にしたかったんです、今回は。元気だったり、ポジティブになれる曲。

■シャンパンの泡が弾けているみたいなサウンド感が良いですよね。歌詞の中で印象に残ったところなのですが、長く歌手をやっていると、やっぱり「こうした方がいい」、「ああした方がいい」って言われるものなのでしょうか?

May J. そりゃもう言われますよ~!(笑) で、やっぱり気になっちゃうんです。すごく図星だなって思っちゃうこともあるし、「そうじゃないんだよな……」っていうこともあるし。でもやっぱり自分は「みんなに喜んでもらいたい!」っていうエンターテイナーだから、全ての人に好かれることなんて絶対に無理だけど、自分のベストを見せたいっていう気持ちはあるんです。

■「私ってそんなイメージがあるの?!」ってびっくりしたことはありますか?

May J. よく言われるのは「フランス料理ばっかり食べてそう」とか。(笑) あとは「夜に出歩いていそう」とか、「クラブ好きそう」とか、「お酒が強そう」とかも言われます。でもイントドアで、お酒も全然飲めないので、全然違いますね。(笑)

■個人的にはそんなイメージは無いですね……。今作は今井了介さんプロデュースの楽曲ですが、どういった経緯で制作されたのでしょうか?

May J. 今井さんはデビュー当時から曲を作ってくれている方で、私のことをすごく知ってくれているんですけど、5年ほど前に一緒にジャネット・ジャクソンのライブを観に行った帰りに、今井さんが「僕、Mayちゃんはこういう曲をやったら絶対にいいと思うんだよね」みたいなViewを語ってくれたんですよ。私もちょうどそういうのがやりたかったから、その頃から今井さんとの心のコネクションができ始めていて。そしてコロナ禍に入って、全部自分で作詞・作曲したダークなアルバムができたんですけど、それがあったからこそ、今こうやってすっごくポジティブな自分になれたというのがあります。時代の流れとしても「2000年代の音楽の雰囲気をもう1度」という感じが現れてきているから……。

■「出すタイミングが来た」という所もありそうですね。

May J. 私が1番音楽に影響を受けた時期って2000年代のR&Bだったので、音楽的にアップデートしたR&Bをやったら、すごく良いんじゃないかなと思いました。気持ちもポジティブだし、エンパワーメントできるような、そういう楽曲を作りたいと思って。もうこれは絶対に今井さんだなって思って、そういう流れでお願いしました。

■ちなみに前回のリリースからは7ヵ月が空きましたが、この7ヵ月間には何がありましたか?

May J. 今年1月にリリースした楽曲は、徐々に光が見えてくるような曲だったので、「ダークな所から現在への架け橋」みたいな所に向かって、気持ちを整理する時期だったと思います。「私は今、ポジティブなものを作りたい!」と今井さんと話し合いをして、まず最初に今の自分の状況をいろいろと伝えました。

■何をお伝えしたんですか?

May J. なんか恥ずかしい……。(笑) 「最近ポジティブモードになった」とか、「くよくよするのはもうヤダ」みたいな。ダークなものは全部吐き出したから、「私は傷ついた、みたいなものはもういいや」って感じでした。

■ダーク路線の曲が続いた時にはちょっと「May J.さん大丈夫かな?」と思っていました。

May J. その時はちょうど世の中も暗かったし。だから、あれはあれであの時期にしか出せなかったものだと今改めて思います。