May J. VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

May j.『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』

祝デビュー15周年!本当はお茶目な歌姫が、自然体でベストアルバムを語る

圧倒的な歌唱力でお茶の間を魅了してきたMay J.が、デビュー15周年イヤーを迎える2021年1月1日にベストアルバム『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』をリリースする。6年ぶりのベストアルバムとなる本作には、2015年以降に発表された作品の中から、オリジナル曲とカバー曲を各13曲、CD2枚組で収録。小室哲哉とつんく♂から提供を受けた“Have Dreams!”、八代亜紀とのデュエット曲“母と娘の10,000日”、グラミー賞ミュージシャンたちとアメリカ・ロサンゼルス(L.A.)でレコーディングした自身が作詞・作曲した楽曲、ウルトラマンやガンダムとのタイアップ曲など、書ききれないほど濃厚な6年間がぎっしりと詰まっている。ひとたび歌い始めれば近寄りがたいほどのオーラを放つ彼女に、「歌う時は出さないようにしている」というお茶目な面を出してもらいながら、自然体でインタビューに答えてもらった。

■ベストアルバムは2015年にもリリースされていますけど、そこからの6年間は、ご自身にとってどんな時間でしたか?

May J. 地道に歩んできた印象がありますね。一歩一歩、手探りしながら、自分の可能性を探して。まだまだ途中です。

■実際、今回のベストを聴いて、こんなにいろんなことをやっていたんだと驚きました。

May J. いろんなジャンルの音楽をやったし、コラボもたくさんやったし。特に小室哲哉さん(作曲)とつんく♂さん(作詞)に提供していただいた“Have Dreams!”(2016年発表シングル)は、自分の歌い方を変える転機になりました。

■どう変わったんですか?

May J. 今までは「みんなに!」みたいな壮大なイメージで歌っていたんです。でも、“Have Dreams!”はすごくパーソナルな曲だったから、あんまり壮大に歌おうとすると「届かないよ」って、つんく♂さんに言われて。それから一人の女の子として、どう歌ったらもっと近くの人たちに届けられるんだろうとか、歌い方について考えるきっかけになったんです。

■歌い方を変えて、届いている実感は?

May J. それは正直わからないんですよ。でも、違和感がなくなりました。「こういう曲はこういう風に届けるべきなんだな」って、曲のイメージと自分の歌のイメージが、しっくりくるようになったんです。それは今でも活かされていて。つぶやくように歌う曲も、こういう声色だと心地いいんだなとか。必ずしもビブラートをガーンとかけるものがいいわけじゃなくて、音色やトラックに合わせた静かな感じも、それはそれで聴き心地がいいなとか、曲に合わせて歌えるようになりました。

■コラボという部分では、“母と娘の10,000日 〜未来の扉〜”(2017年発表シングル)で演歌歌手の八代亜紀さんともデュエットされて、また全然違う経験だったんじゃないですか?

May J. そうですね。でも、この曲では八代さんが歩み寄ってくださった感じでした。「これって、ポップスの歌い方でしょ。できるよ」みたいな感じで、柔軟にしてくださったので。ただ、八代さんはあんまり自分の気持ちを入れ過ぎず、レコーディングの時は70〜80%くらいに抑えた方が、また聴きたくなる作品になるとおっしゃっていて。坂本冬美さんも同じことをおっしゃっていたんです。ガーンって感情を120%ぶつけたものはライブでいい。ライブは一度しか聴けないから、その時にしか出せないものを出し切る。確かにそうだなと思って。

■今日はMay J.さんの自叙伝(2016年発売『私のものじゃない、私の歌』)を読んできたんですけど、当時から演歌には興味があったんですよね?

May J. ありました。「演歌とオペラの人はすごい」と言っていたと思う。あの時はまだまだ遠い存在でしたけど。

■オペラも“Time To Say Goodbye”(2018年発表『Cinema Song Covers』収録)で挑戦していて、この6年で自叙伝に書いていたことを両方叶えて。

May J. やっぱりやりたいことは言うべきですね。(笑) “Time To Say Goodbye”も、森麻季さん(国内外で数々の受賞歴を持つソプラノ歌手)と番組でご一緒させていただいて、「教えてください」とお願いしたんです。それで彼女の家まで行って、レッスンしていただきました。それを受けてから「こんな声の出し方があるんだ!」っていう発見があって。だから音源と変わりました。音源の時はまだ全然できていなかったんですよ。今は響かせ方が全然違うんです。

■本当にいろんな音楽に挑戦されて。

May J. 好きなんです。ずっと追求していきたい。

■この6年で、他にもターニングポイントになった経験はありましたか?

May J. 『Futuristic』(2017年発表アルバム)の時に、L.A.でレコーディングしたこともターニングポイントかもしれないです。もう全部違うんですよ。まず「L.A.でやる」っていう期待感からして違って。1週間で6曲録って(本ベストには“My Star ~メッセージ~”、“HERO”、“SIDE BY SIDE”の3曲を収録)、MV2本、ジャケット、ブックレット、アーティスト写真、全部撮影して。

■だいぶ詰め込みましたね。(笑)

May J. でも、その中で工夫すればするほど、日本でレコーディングするよりもいい結果になって。事前に曲と歌詞を作って、現地のミュージシャンに演奏をお願いしたんですけど、すごい人たちが集まったんですよ。ピアノのショーン・マーティンは、何度もグラミー賞を獲っている人で、ベースのアレックス・アルも、マイケル・ジャクソンのツアーメンバーだった人で。

■めちゃくちゃすごい人たちじゃないですか!

May J. 私のライブでバンマスをやっている上條頌さんがコーディネートしてくれたんですけど、ミュージシャン同士のつながりだからか、すごい気さくに接してくれて。私が有名かどうかなんて関係なく、「この曲いいじゃん!」みたいなノリなんですよ。日本の慣れているスタジオで、慣れているスタッフさんとレコーディングするのも安心感があっていいんですけど、こっちは全部が挑戦みたいな感じでしたね。

■本当にこの6年だけでも、すごい経験をたくさんしているんですね。

May J. はい。地味〜に。

■全然地味じゃないです。(笑) 今回のベスト盤では、“Faith”(2015年発表シングル『ReBirth』収録)が日本語バージョンで収録されていることもトピックだと思うんですけど、どういう理由だったんですか?

May J. これは特別な曲なんです。10周年の時にやったリクエストライブで、ファン投票1位だったんですよ。もともとカップリング曲だったのでビックリして。その時からこの曲の見方が変わって、「やっぱいい曲だなー」みたいな。(笑)

■わかりやすい。(笑)

May J. でも、英語の歌詞だったので「英語なのに?」という気持ちもあって。自分で作詞した曲で、パーソナルなことを書いていたので、それが響いてくれたことは嬉しかったんですけど、より世界観を理解していただくために、新たに日本語の歌詞を作ったんです。

■日本語になっても意味は変わらず?

May J. 意味は忠実にしているんですけど、英語だとやわらかい表現があったりして、そのまま日本語にすると力強さが欠けてしまうので、ちょっと強めの言葉を使いました。

■これはご自身のことを歌っているんですか?

May J. もともとは『GOD EATER 2 RAGE BURST』というゲームのテーマソングだったんですけど、すごい自分と重なり合う部分があったというか。日々苦しんでいる中でも、きっと自分にはできる、絶対にできるっていう信念を誰にも壊させはしない。その気持ちを歌っているんです。それは自分だけじゃなくて、みんなそうなんじゃないかなって。

■日本語バージョンを録るにあたって、歌う時の気持ちの変化もありましたか?

May J. 昔は「負けたくない」みたいな、強がっている気持ちが勝っていたと思うんです。でも、今はちょっと違うなと感じていて。弱い自分と強い自分がいて、強い自分が弱い自分に対して「大丈夫だよ、できるよ」って言っている。だけど、弱い自分は「怖い」って言う。この2人の自分がずっと戦っているんです。もちろん強い自分が勝てばハッピーなんですけど、やっぱり弱いまま上手くいかない日もあって。でも、それはそれでその時のベストを出したはずだから、「また次の日からがんばればいいじゃん」と思えるようになったんです。そういう気持ちを踏まえて、もう一度歌ってみました。

■間を空けて録り直した意味があったんですね。

May J. そうですね。歌声も少し優しくなったと思います。力強さはもちろんあるんですけど、Aメロとかは語りかけるように歌ってみました。新しくMVも作ったんですけど、弱い自分と強い自分が対話しているような表現になっているんです。

■その気持ちの変化というのは、簡単な言葉にしちゃうと大人になったということなんですか?

May J. あー、そうだと思います。(笑) あと、心臓が飛び出そうな経験をしていくと、いろいろ怖くなるんですよ。私はテレビの生放送とか緊張しちゃうんです。「どう思われているんだろう?」とか、いらない情報が頭にある状態で歌うことが怖い。それに打ち勝った日もあれば、やっぱり今日もダメだったという日もあって。

■そういうところって結構誤解されていますよね。強そうに見られがちですけど、自叙伝の中では弱音も吐いていて。言い方は悪いですけど、「意外とかわいいところあるじゃん」と思ったんですよ。(笑)

May J. ははははは!(笑) もう今は弱音しか吐かなくなっちゃいました。(笑)

■そうなんですね。(笑) あと、オリジナル曲を収録したDISC-1の最後が“SIDE BY SIDE”になっていますけど、この曲を最後にしているのには意味があるのかなと思ったんです。

May J. 2020年がそうさせたんだと思います。本当は1曲目にしたかったんです。だけど、「またみんなで会えますように」っていうメッセージを最後に入れたかった。やっぱり今年はみんなに会える機会がほとんどなかったから。2021年はみんなと一緒に会える時間ができたらいいなっていう想いを込めて最後にしました。

■ファンの人たちのことを歌った曲だと思うんですけど、当時はどんな気持ちで作ったんですか?

May J. うーん、悩んでいたというか、気にしないようにしようと思って、気にしないよ気にしないよと思えば思うほど気にしていた時期。

■ネットのアンチとかですかね?

May J. どうにもならない時で。でも、やっぱりファンのみんなは私がどういう気持ちでいるのか、いちばんわかってくれているから。何も言わなくてもわかってくれるみんなに「ありがとう!」って言いたかった。ライブでも最後に歌う曲のつもりで書いたので、ライブの思い出も詰まっていると思うし、ファンのみんなにとっても特別な曲になってくれていたらいいなと思いますね。