May J. VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

May j.『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』

■この6年間で苦しんだり悩んだりした時期もあったんですか?

May J. 2014〜2015年がいちばん大変だったんですけど、そこから離れるにつれて、気が楽になっていった感じがします。「こうじゃなきゃいけなかったのかな」っていうのが、どんどんなくなりました。好きなことやればいいんだと。

■やっぱり結果が出てきたから、好きなことをやれるようになってきた部分もあるんですか?

May J. そうですね。あと、時代もありますよね。私がデビューした頃は、着信メロディーの10何秒で掴むことを狙って作るとか、時代に合わせて作り方が変わっていって。今はみんな自由に選べる時代になったから、何かに対してアピールするんじゃなくて、本当にいい曲、自分がいいと思う曲を作ることが求められていると思うんです。だから、今がいちばん楽しく作れる気がする。

■いろいろな活動を経てきて、ご自身の中でMay J.はどんな歌手だなと思っていますか?

May J. うーん……なんでもやってくれる人。(笑) なんか、なんでも柔軟にやりたいっていうのはあります。

■May J.ならこれを歌えるとか、自分を客観視している部分があるんですか?

May J. それは考えていないかも。どちらかというと、なんでも歌いたくなっちゃうみたいな。

■昔はもうちょっとR&Bとかにこだわっていましたよね。

May J. 昔は色も黒だけとか、ピンクだけとか、自分のイメージに固執していました。今はその反動が出たんだと思います。何かに固執しすぎると、世の中に響かなかった時に、それが原因だって答えが出ちゃうじゃないですか。だから、悔しかったですけどね。認められなかったのが。でも、それからはなんでもやろうと思いました。自分に合うものを探そうって。そういう結果ですよね。

■聴いてくれた人が喜んでくれた方が、やりがいがあるというか。

May J. そうなんですけど、今はまた違ってきていて、気にしなくなっちゃったかもしれない。もちろん喜んでもらえる方がいいんですけど、それよりも自分がどれだけ作品に対して熱意を持てるかが大事だなと思っていて。みんなが好きなものを無理やり自分がやるっていう時期もありましたけど、今は自分に合うものもわかってきたし、自分ができることで最大限のものを出そうっていう気持ちですね。

■自叙伝では正統派になりたいと書いていましたけど、その気持ちは今も変わらずですか?

May J. 普遍的な歌を歌い続けていきたいっていうのは今もあるんですけど、今回の“Garden (Lo-fi Edit)”(2009年発表の配信シングルを新エディットで収録)を聴いていただくと、次に何をやりたいのかがわかっていただけるんじゃないかな。

■ローファイなものを?

May J. 今回収録されたものは、歌は前のままなんですけど、必ずしも歌い上げるものが歌じゃないっていうか、自分の中で歌が変わってきているんです。それは世の中の流れもあるかもしれないですけど、歌を聴くんじゃなくて歌も音の一部として聴けるような曲も作りたいんです。

■それもR&Bに固執していた昔の反動なんですか?

May J. うーん、どうなんだろう。純粋にいろんな形で楽しみたいっていう気持ちがあるんだと思います。

■歌うことに飽きたりとかは今まで全然ないんですか?

May J. あー、レコーディングでハイトーンばっかりで飽きたから、低いので歌いたくなる時はあります。でも、それはその日の気分だから、やっぱりライブではガンガン歌いたいし。あと、ビブラートばっかりかけるのはもう嫌だなっていう気持ちもありますよ。もちろん曲によっては必要ですけど、軽く息を捨てるような感じの曲も歌いたいし。今までは一本だけで歌っている曲が多かったけど、ハーモニーやコーラスをいっぱい入れて、宇宙にいる感覚みたいな曲も作りたいし。

■要はいろんなことをやりたいわけですね。(笑)

May J. そうですね。やっぱり「次これやりたい」とかが常にあるから、やめられないっていうか。やめるつもりなんてないですけど、どんどんまだまだっていう気持ちはあるので。

■自分の目指す歌手像が100だとしたら、今はどのくらいですか?

May J. もうないんですよ。こうなりたいっていうのは。というのは、なれないのがわかっているから。その時のベストを出し続けて、その時の自分を好きになれたらいいなと思うんです。誰も理想になんかなれないから。

■それはどうかわからないですけど。

May J. 理想って、既に誰かがなっているものじゃないですか。それはその誰かのベストだから、自分がそこを目指しても絶対なれないと思う。そこを目指したいから、今の自分に何か足りないと思うのも悲しいことですよね。だって、今の自分が持っているものは自分にしかないものだから。それを大切にしてあげることがベストになると思う。……って今思った。(笑)

■既存の何かを目指すんじゃなくて、新しい自分を目指すというか?

May J. そうですね。その方が幸せになれると思う。

■自分の歌に満足するみたいな感覚はあるんですか?

May J. ないですね。それは。

■どういうところが満足しないんですか?

May J. 他人の曲を聴く時はすんなり聴けるじゃないですか。でも自分の曲を聴く時は、どんな気持ちで歌ってるのかがわかっているから、いろんなことを考えちゃう。いつか考えないでも「あぁ、いい曲だな」って聴けるようになりたい。その日が来るのかはわからないけど。

■じゃあ、今回のベストに入っている曲も、自分で聴いたら「あそこよくなかったな」とか思っちゃうんですか?

May J. 先生みたいな目で見ればそういうところもありますけど、「この時かわいかったな」って思うかな。「若かったな」みたいな。今回の曲は古くても6年前だから、そんなにはないんですけど、もちろん変化はあるので、「がんばってたな」「かわいいな」って思っちゃうんですよね。

■逆にこれは満足したなと思う曲はないんですか?

May J. それはやっぱり、いちばん最後に録った“Faith (Japanese Ver.)”ですよ。

■最新作がベストに?

May J. 常にそうですね。そうなっちゃう。

■その理論だと2021年はもっといい歌を届けられるのかなと思うんですけど、どんな予定を立てていますか?

May J. いろいろ考えてはいるんですけど、世の中がどうなるのか……。本当はツアーも周りたいし、このアルバムを引っさげたイベントもやりたいし、ピアノ弾き語りのライブもやりたいし。ちょっと約束はできないけど、コロナに負けたくない!今年はすごい振り回されたから、これを踏まえて、自分の軸をしっかりと持って、振り回されなくてもできることをしたいですね。

■ちなみに、僕は自叙伝を読んでイメージが変わったんですけど、May J.さん的にもっと知って欲しい部分はありますか?

May J. えー、なんだろう?あんまり無駄なこと話さないとか、笑わないとか思われているのかな?それは歌っている時の顔のイメージなんだろうと思うんですけど、歌う時は真剣だから仕方ないじゃないですか。あれは歌ってる時だけで、普段は違うので。そこはなかなか伝わらないですね。

■もうちょっとお茶目な部分を?

May J. 基本、なんか変なんですよ。変なところしかない。歌う時はがんばって変なところを出さないようにしているので。(笑)

■YouTubeにアップされていた「歌ってみた」で、NGシーンが入っていたじゃないですか。ああいうのをもっと見たいです。

May J. はははは。(笑) 普段はあんな感じです。

■いじられたりするのは大丈夫なんですか?

May J. 全然大丈夫。いじられた方が普段の感じが出ると思う。

■歌っている姿だけ見ていると、触れちゃいけないオーラみたいなのが出てるんですよね。

May J. そういう風に思われているから、あんまりいじられないんですよ〜。もっといじって欲しい。(笑)

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち、幼児期よりダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りをもこなす。圧倒的な歌唱力とパワフルかつ澄んだ繊細な歌声、そして前向きでポジティブなメッセージが共感を呼び、幅広い世代から支持を受けている。2006年ミニアルバム『ALL MY GIRLS』でメジャーデビュー。記録的な大ヒットで社会現象にもなった、2014年公開のディズニー映画「アナと雪の女王」の日本版主題歌(エンドソング)を担当。同年の第65回紅白歌合戦に初出場。2015年1月には自身初となる、日本武道館の単独公演を開催。
https://www.may-j.com/

RELEASE
『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』

May j.『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』

(2CD+2DVD)
RZCD-77220~1/B~C
¥6,050(tax in)

(2CD)
RZCD-77222~3
¥3,850(tax in)

May j.『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』

(2CD+4DVD+フォトブック)
RZZD-77218~9/B~E
¥22,000(tax in)

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1月1日 ON SALE