22/7 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

2/27『11という名の永遠の素数』

集大成の初アルバムが完成。デジタル声優アイドルが歌とセリフに込めた気持ち

2016年の結成以来、7枚のシングルをリリースしてきた22/7が、初のアルバムとなる『11という名の永遠の素数』を完成させた。「デジタル声優アイドル」として、11人のキャラクターと、それを演じるリアルメンバーが、バーチャルとリアルを交差させながら、幅広い領域で活動している彼女たち。本作ではこれまでの全シングル曲はもちろん、キャラクターソング、ユニットソング、カップリングベストを収録した形態も発売され、これからナナニジを知る人への入門編に最適な事実上のベストアルバムになっている。メンバーの中から丸山あかね役の白沢かなえ、立川絢香役の宮瀬玲奈、斎藤ニコル役の河瀬詩の3人に、本作について、そして3人のユニット「蛍光灯再生計画」について語ってもらった。

■3形態揃えると39曲、これまでのナナニジの楽曲がほぼ網羅されたアルバムになりますけど、みなさんにとってどんな作品になりましたか?

白沢 私たちの歴史だけじゃなくて、ファンのみなさんとの思い出なども詰まっているアルバムになったと思います。ナナニジは表題曲だけじゃなくて、カップリングにも人気曲があったり、声優アイドルなのでキャラクターソングだったり、ユニットソングもあって、そのすべてがこのアルバムに入っているんです。そのくらいナナニジのことがわかる作品なので、ナナニジを知っている方はもちろん、知らない方にもぜひ手に取っていただきたいです。

河瀬 個人的にはナナニジっぽい曲って、表題曲でいうと“理解者”とか“何もしてあげられない”とか、どちらかというと暗い心情とか、ちょっと後ろ向きな気持ちもあるけど、それを隠さずにバッと突きつけるような曲だと思っているんです。でも、そうじゃないカップリング曲やユニット曲は、ただ明るい曲とか、かわいらしさに振った曲とかもあって、本当にいろんな面を見せられるアルバムになっているので、絶対にお気に入りの「推し曲」を見つけられると思います。あと、私は途中から加入した身ですけど、初期の曲と今の曲を比べると、歌声が全然違くて。みんなで歌っているユニゾンの部分でも、声の厚みがガラッと変わったなと思うので、そういう変化も楽しんで欲しいです。

宮瀬 このアルバムはメンバーみんな「これまでの集大成」と言っているんですけど、まさしくそうだなと私も思っていて。ナナニジの曲は歌詞がいいなって、いつも歌いながら感じているんですけど、誰にでも明るくなれない時があるじゃないですか。そんな時に聴いたら、自分も「まだ何かできるんじゃないか」と思いますし、私は聴くだけで涙が出る曲もあるんです。それ以外にも、明るい曲も、楽しい曲も、セクシーな曲もあって。(笑) ぜひ一度、お耳を貸していただけたらなと思います。

■涙が出ちゃう曲とは?

宮瀬 “ムズイ”と“僕が持ってるものなら”は、昨日もダンスを踊りながら涙が出てきて。“未来があるから”もパフォーマンス中に泣いてしまったことがあります。あと、“やさしい記憶”も大好きです。

白沢 “やさしい記憶”は入ってないよ。(笑)

宮瀬 すみません。入っていませんでした。『シャンプーの匂いがした』のカップリング曲です!

■それくらい22/7にはいい曲が多いということですね。(笑)

宮瀬 はい。(笑) どの曲にもいろいろな感情があって。やっぱり聴いていると、当時のことを思い出すんです。いろんな過去があったなって。これまでの経験がすべて入ったアルバムです。

■全形態共通のDisc1には、今までのシングル表題曲が全部入っていますけど、振り返って感じることはありますか?

河瀬 やっぱり披露する回数や聴く回数が多いこともあって、どの曲もすごく印象に残っています。もう文字面を見るだけでも、「22/7って、こういうグループだったな」と感じるんです。それに、“シャンプーの匂いがした”なら明るくて爽やかな曲とか、“僕が持ってるものなら”はゆったりしたワルツのバラード曲とか、表題曲だけでもレパートリーがたくさんあって。そこに新曲の“ヒヤシンス”が加わったことが、また新しい面が増えた気がして私は嬉しいんです。

■どういう意味ですか?

河瀬 “ヒヤシンス”はすごく綺麗で爽やかな曲なんですけど、歌詞は切ないんですよ。暗いとか明るいとか楽しいとか、パッとひとつの気持ちでは言い表せないくらい複雑な曲なんですけど、そういう曲を私たちが表現できるようになったということが嬉しいんです。これからももっと難しい曲に挑戦していきたいなと思いますし、この先どういうシングルが続いていくのか、それを想像することも楽しみになる並びだなと感じています。

■その“ヒヤシンス”はめちゃくちゃドラマチックな展開の曲ですけど、どんな解釈で歌ったんですか?

白沢 これは私の個人的な解釈ですけど、昔の恋人との思い出、その時わからなかったことや、理解してあげられなかったことを、春になってから、やっと自分が大人になって理解できるようになった話だと思っていて。その時は戻ってこないけど、自分も相手も経験したことを糧に、それぞれの道を進んでいこうっていう前向きな曲だなと思いました。

河瀬 恋愛の曲ではあると思うんですけど、私は恋愛よりも今までの22/7の歴史みたいなものを感じていて。グループができた時から今までって、その時は気づかなかったけど、今振り返ると「ここは変わった」「ここは前と違うよね」みたいなことがたくさんあるんです。“ヒヤシンス”はその変化を悲しむのではなく、より良く変えていくにはどうしたらいいかなって、前向きな気持ちになれる曲なので、パフォーマンスしていてもすごく楽しくて。切ないけど明るい気持ちになれるというか、どこかプラスな面も自分の中に入ってくるんです。複雑な心境が混ざった曲ですけど、未来は明るいと思わせてくれて、歌っていて救われた気持ちになります。

宮瀬 この曲は大切な人を思い続ける愛を、冬の寒さに耐えて、春先に咲くヒヤシンスになぞらえた曲なんですけど、ファーストシングルの“僕は存在していなかった”には「色を持たない花」という歌詞があって、この“ヒヤシンス”では最後に「僕たちにとっては 特別な花」と歌っているんです。それはファーストシングルからの伏線というか、つながりを感じて、謎が解けたような感覚になりました。あと、お花を題材にしていることも個人的には嬉しくて。私自身、お花が大好きなので、「Flower」と歌いながら踊れるのが幸せです。

■本当に素敵な歌詞ですよね。曲を聴いて思わずヒヤシンスという花について調べちゃいました。

宮瀬 私も調べました! 花言葉とかも素敵で。

■「悲しみを超えた愛」ですよね。色によっても違うらしいですけど。この曲はセリフ部分も印象的ですけど、それぞれどこを担当しているんですか?

白沢 私は1番が「大人にならなきゃ理解しない」。

河瀬 私は「君とか僕のせいにしない」でした。

宮瀬 私は「どんな季節も永遠じゃない」です。あと、最後のほうはユニゾンになっています。

■「愛は絶対枯れはしない」のところですよね。

宮瀬 2番は私が「日常がいいってふと気づく」を言っていて。

河瀬 私がその次の「愛されたってふと気づく」。

白沢 私は「今なら素直になれるだろう」です。

■1番と2番で順番が違うんですね。

白沢 ナナニジはセリフのある曲が多いんですけど、その人に合ったものを振り分けてくださっているらしくて。たぶん“ヒヤシンス”もそうなのかなって、勝手に思っています。

宮瀬 「大人にならなきゃ理解しない」とか、大人っぽいイメージがあるので、私の中では(白沢のセリフで)すごく納得しました。

■もうひとつの新曲として、“空を飛んでみよう”も収録されていますけど、とても面白い世界観の歌ですよね。翼はないけど、やってみたら飛べるかもしれないって。

白沢 最初に聴いた時は、正直「無理じゃん」と思っちゃったんですけど、そう思ってしまった時点で、その領域にはたどり着けていないのかなと思って。例えば、あそこでライブしたいとか、この作品に出たいとか、「今の君じゃ無理だよ」と思われるようなことでも、「やっぱり無理」って諦めるんじゃなくて、挑戦してみることが大事というか。だから「こんなこと言ったらバカにされるかな」とか、「夢見すぎだよ」って言われるようなことでも、目指していかなきゃいけないのかなって。背中を押されるというよりは、「がんばりなさい、やりなさい」って言われているような気がして、もうちょっとがんばってみようかなって思える曲だなって思いました。

■誰しも似たような経験をしたことはあると思うんです。みなさんがナナニジのオーディションに応募したこともそうかもしれないですし。

河瀬 私もこの世界に興味はあったけど、それを周りには言えなかったんです。「いや無理でしょ」と言われるだろうなって思って、家族にしか言えなかったので。でも、一歩踏み出したからこそ、今ここにいることができて、そういうちょっとの勇気が積み重なって今があると思うので、すごく自分にも重なる部分があるなと思いました。