藤木直人『Naohito Fujiki Live Tour ver3.0~L-fifty~』ライブレポート@中野サンプラザホール 7月19日(火)

50歳の誕生日をファンと共に祝う。ラテン数字の50になぞらえてファンへの“LOVE!”を歌に乗せて送った。

2022年7月19日、中野サンプラザホールにてミニアルバム『L -fifty-』を提げたツアー『Naohito Fujiki Live Tour ver13.0~L-fifty~』の東京公演が開催された。この日は藤木直人の50歳の誕生日で会場は満員御礼。たった一度の記念日を祝う豪華サプライズも用意。藤木の半生をなぞるように、これまでリリースしてきた名曲を振り返る記念的なライブとなった。藤木は自分を祝いに来てくれたファンとの掛け合いを楽しみながらライブを盛り上げてくれた。

オープニングは藤木直人の半生を振り返ることができるフォトムービーからスタート。ステージいっぱいに藤木の歴史が映し出された。観客たちは思い思いの色に輝かせたペンライトを持って映像を見つめていた。映像のさなかで誕生日おめでとうの音楽が流れると、会場のファンからは自然と手拍子がおこり、終わるとともにゆっくりと幕が開き、光に照らされた藤木直人とバックバンドがステージに登場した。

開幕1曲目に歌うのは“ミライ”。藤木直人の爽やかな歌声が楽曲の雰囲気にぴったりだ。背中を押してくれるような優しい言葉たち。観客は自然と立ち上がり、一体となって藤木の歌声に合わせ体を揺らしていた。続いて陽気なステップとともに始まったのは“コズミックライダー”。思わず体が揺れるご機嫌なサウンドに藤木の爽やかな歌声が調和する。藤木がスポットライトに照らされるとオーディエンスは一際楽しそうに飛び跳ねる。“タイムトラベル”は無邪気で楽しいことに一生懸命で真っ直ぐな歌詞が眩しい。それまでの大人っぽい藤木とのギャップがまた魅力的だ。時おり見せるいたずらっぽい笑顔からは、彼のあどけなさや無邪気さがうかがえる。

MCでは藤木が「誕生日おめでとう俺!ハッピーバースデートゥーミー!」と叫び、会場の笑いを誘う。続けて「自分で自分のことをお祝いしたので、サプライズとかいらないですからね」と叫んだ。さらに、藤木は「2DAYSやるからには同じじゃもったいないよなと思って、昨日の僕とちょっと違うんだけどわかる?」と続ける。何が違うのかと会場が考え込んでいると、「髭剃ってきました!」と藤木が無邪気に叫ぶ。観客からは思わずこらえきれない微笑みがもれた。会場からは髭がない方が好きという意見がちらほら見られるも、本人は髭が気に入っていた様子。「髭があってもなくても好きっていう人!」と挙手を求めると、観客はこぞって手をあげ、藤木が照れ笑いする場面もあった。

続いて““A””を披露。藤木の男としての色気が存分に発揮される一曲だ。とろけるような甘い声で囁くように歌う藤木の声に、心臓がきゅっとするような感覚を何度でも味わえる必聴の一曲だ。6曲目に登場したのは“涙のいろ”。切なげな歌詞ながら、明るく希望に溢れた爽やかなサウンドが印象的だ。辛いと感じる心に寄り添い励ます歌詞に、思わず目頭が熱くなる。「時にはくじけそうになっても ただひたすら走って行く」。彼が努力家として認められるその人柄が素直に現れた一曲に思えた。

今日のライブは同事務所に所属する後輩のwacciとのコラボパフォーマンスも用意されていた。誕生日をテーマにして、wacciの橋口が楽曲を提供してくれたと話す藤木。「wacciの橋口くんに“Birthday”っていう曲を作ってもらいました。一緒にいてくれるあなたに向けてハッピーバースデーとお祝いする曲なんですけど、今日は僕の誕生日なんで、ハッピーバースデートゥーミーって歌ってもいいかな?」と会場に聞くと、会場は大喜び。「そこは喜ぶんじゃなくてダメっていうところじゃない?」と苦笑しつつ、「ここは僕だけで決められないので、橋口くんに聞こうかな?」と言い出して、藤木直人が橋口とwacciのメンバーをステージに呼び出した。橋口は「すごくおめでたいことですけども…ダメです!」と悩みながらもしっかり「No」と答えた。「だって、「照れ臭さの合間で ありがとうとこぼす 僕に捧ぐ Happy birthday to me」ってなんだか変じゃないですか!」と説得。藤木も観客も思わず笑いをこぼし、今回は歌詞を変えずに歌うこととなった。さっきまでの賑やかな雰囲気から一転。メロディアスなピアノ演奏にベースの音が重なり、エモーショナルなサウンドが流れる。“Birthday”のメロディーと藤木の切なげな声で歌われる言葉ひとつひとつが胸に沁みる。“Birthday”を聴きながら、観客たちは心の中でこの曲を歌い、藤木に心からの感謝の気持ちを送っていたに違いない。

中野サンプラザホールは来年、設立50年を持って取り壊しになるという。その話を受けて藤木は「僕の方が1年先輩なんだよね」と続け、謎のマウントに会場には思わず笑い声が溢れた。和やかな空気の中で、アコースティックギターに持ち替えた藤木が次に歌うのは“生きなくちゃ”。ドラムとキーボード、ギターが小気味良いリズムでポップなメロディーを奏でる。明るいサウンドを背景に歌われる言葉はどこか重たく、けれど寄り添うような優しさを携えている。辛いことも悲しいことも笑顔でいれば乗り越えられる。どこか救われるような優しい歌詞だ。ライブで恒例になりつつあるメドレーが今年も披露された。今年は夏仕様にアレンジされたメドレーをお披露目。どこかノスタルジックなメロディーが耳に心地よい。元気な夏というより、夕焼けの美しい海の情景が浮かぶような落ち着いたサウンドが印象的だった。

ライブも折り返し地点。藤木がエレキギターを持ってステージのど真ん中に立つと、出演したドラマのエンディングテーマにもなっているインスト曲“Black Swan”での激しいギターテクニックで会場のファンを魅了する。藤木がステージを去った後も不穏なサウンドはまだ鳴り止まず、ステージではスポットライトを浴びたダンサーが苦しげにもがくように踊り続ける。激しいギターのサウンドと叩きつけるようなピアノの音色が心臓を穿つように響いた。不穏な気配を打ち消すように、ピアノの優しく温かい音色が響く。満を持して登場したのは“50”。ピアノを演奏するのは藤木だ。彼の声も聴く人の心を優しく包み込むような温かさを携えている。藤木は「ピアノ弾けないんだけど頑張ろうと思って」と人知れず練習を重ねていたことを明かす。「僕の曲の中で一番大人っぽい曲」と評する“ゆりかご”を歌いながら、その努力の結果を披露。会場からは拍手喝采。以前のライブでもピアノを演奏していたが、その時はコードを弾くだけだったという。「今回は坂さんに譜面を起こしてもらったので、当時より難しいことに挑戦してるんですよ。(笑)」と藤木が必死に観客へアピール。会場からはまたも大きな拍手が送られた。

続けて“This Is My Life”もピアノで演奏することに。しかし緊張からか、イントロでミスしてしまい、「ごめん!」ともう一度やり直して笑いを誘う場面もあった。そんなふうに慌ただしく始まるのも“This Is My Life”らしいかもしれない。賑やかなサウンドに負けじと藤木が歌い、叫ぶ。続けて“Speed★Star”でさらにオーディエンスのテンションを引き上げていく。疾走感のあるメロディにオーディエンスが負けじとペンライトを振ってその昂りを表現する。ご機嫌なパフォーマンスはまだまだ終わらない。“恋のROCK’N”ROLL! DRIVE!“で会場を試すようにさらにボルテージを上げていく。ファンは藤木の声に応えるように会場を揺らすほど激しく踊り続けた。ギターソロシーンでは会場のファンに見せつけるように卓越したテクニックを披露。無邪気にライブを楽しんでいる藤木が印象的だった。

ここで藤木直人が“ナイスなミドル!”の振り付け講座を開講。観客が即時に振り付けを覚えると、藤木から「さすが昨日も来てくれただけあるね」と茶化される場面も。観客に負けじと藤木直人もダンサーたちと息を合わせてダンスパフォーマンスを披露して魅せる。続けて息をつく間もなく“SUMURAI FUNK!”を披露。ここでもまた藤木がダンサーと肩を並べてダンスパフォーマンスを観客に見せつけた。曲中では50才ということでNiziU(ニジュウ)ならぬGoziU(ゴジュウ)ということで“縄跳びダンス”ではなく実際に縄跳びを使ったパフォーマンスのダブルダッチにも挑戦。見事成功し、会場からは歓声があがった。一度失敗してしまったのはご愛嬌だ。最後には激しいダンスを披露してみせた。年齢の重なりをコミカルな歌詞とダンスで表現した“湿布”ではバックバンドも含めて全員でダンスを披露。背景ではメンバーが楽しくバーベキューをしたり、遊具で遊ぶMVが映像で流れ、楽曲提供の岡崎体育も登場し、会場に笑い声が響いた笑顔をもたらした。

「50歳になっても僕のこと愛してくれる?」というセリフの後に流れだしたのは“愛のテーマ”。「ずっとずっと君をI Love You Baby」とささやきながら会場を見渡す藤木に、会場のテンションも上がっていく。ノンストップで続く“HEY!FRIENDS“でもダンスを披露。最後にバズーカを飛ばして2階席に丸めたサイン入りツアーTシャツをプレゼントした。ライブの最後を飾るのは“LOVE!”。50歳を迎える藤木はラテン数字で50を「L」と表記することを知り、「こうやって全部つながっていくんだなと、あらためて面白いなと感じました」と語る。ファンへの感謝の気持ちと愛を歌に乗せて、まっすぐに伝えようとしていた。明るく爽やかな笑顔から藤木が今幸せを噛み締めていることが読み取れる。

ライブはここで終わりのはずだが、アンコールの手拍子が鳴り止まず、真っ暗だったステージが明るく照らされると、ライブTシャツに着替えた藤木が再登場。アンコールで披露されたのは“陽のあたる場所”。明るく照らし出されたステージの上で藤木の声が優しく響く。キラキラ輝く藤木の歌声に自然と元気付けられていく。観客が、ライブの終わりを名残惜しく感じているなか、本当に最後の曲となる“OH!BROTHER“を歌おうと藤木が叫ぶ。しかし、演奏が妙なところで途切れてしまう。藤木が戸惑っていると、“ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー“のメロディが流れ始めた。呆れながらも思わず笑みが溢れる藤木直人の元にサプライズで用意されたバースデーケーキが運び込まれる。さらに、50歳という記念の誕生日ということで、今回はさらなるサプライズも準備されていた。ギターを始めるきっかけになった憧れのギタリスト布袋寅泰からのビデオメッセージが映し出された。布袋からは「50歳という年は、アーティストにとって、これまで積み重ねてきたものが形になるような、そんな年です。君は僕に影響を受けてギターを始めたと聞いています。いつか一緒にギターを弾けるといいね!」との祝いの言葉が投げかけられる。藤木は予想外のサプライズに「マジっすか!」と困惑しながらも、抑えきれない笑みを浮かべていた。

サプライズが続いた幸せいっぱいのライブステージもいよいよ最後を迎える。藤木は“OH!BROTHER!“でその幸せと愛をファンに伝えようと精一杯に歌っていた。会場も一体となって藤木をお祝いするように一生懸命に踊っていた。最後に「とっても楽しかったです!ありがとうございます!」と叫んだ藤木。最初から最後まで最高にハッピーな気分で幕を閉じた東京公演だった。

Text:高橋未瑠来
Photo:宮脇進

https://fujiki.ponycanyon.co.jp/50th/

『Naohito Fujiki Live Tour ver3.0~L-fifty~』東京公演セットリスト
01. ミライ
02. コズミックライダー
03. アイネ・クライネ・ナハト・ミュージック
04. タイムトラベル
05. “A”
06. 涙のいろ
07. Birthday
08. 生きなくちゃ
09. summer 2022 medley
10. シュクメイ
11. Black Swan
12. 50
13. ゆりかご
14. This Is My Life
15. Speed★Star
16. 恋のROCK’N’ROLL! DRIVE!
17. ナイスなミドル
18. SAMURAI FUNK
19. 湿布
20. 愛のテーマ
21. HEY! FRIENDS
22. LOVE!

ENCORE
01. 陽のあたる場所
02. OH!BROTHER!

Release
50th Anniversary Mini Album
『L -fifty-』

PCCA-06139
¥1,980円(tax in)
https://lnk.to/L_fifty

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