NIALL HORAN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

人生はショーなんだ!そこには感動も興奮もあふれている!

8000万枚以上のレコードを売り上げ、ワン・ダイレクションの一員として何度も世界中をツアーしたナイル・ホーランが、人として、ミュージシャンとして、ソングライターとして、自身がいる場所を反映した、約3年振りとなる3rdアルバム『The Show(ザ・ショー)』をリリース。今作には「全力で今を楽しむこと」がテーマのシングル『Heaven(ヘヴン)』も収録される。今夏はサマーソニック 2023への出演も決定した彼に、今作のアルバムについて話を訊いた。

■前作『ハートブレイク・ウェザー』の発売から3年、あの当時はパンデミックが始まった時期になってしまいました。それから3年の時間はあなたにとってどんなものでしたか?

NIALL 変わったね。コロナによって僕たちは閉じ込められ、人生経験が少なくなりました。それから、コロナ後は幸せな場所にいて、そこから良いものが生まれて、より幸せな曲を書くことができるようになったと思います。僕は戻ってきて、違った視点から世界を見ることができることを、とても楽しみにしています。またツアーに戻るのがもう待ちきれないです。

■今作のアルバム『The Show(ザ・ショー)』ですが、なぜこの言葉をタイトルにしたのですか?タイトルトラックも収録されていますが、この楽曲に込めた想いも教えてください。

NIALL タイトルの“ザ・ショー”は、特にどこからも来ていないです。物事を書いてみて、そこから何が出てくるかという感じなんです。私はよく、出掛けた時や、通りを歩いていたりした時に、どこかで見たり、またはどこかで書いてあったこと、そこで考えていたことなんかをランダムに書きためているんです。そして、そこからタイトルや物事を曲やコンセプトにしています。コロナ渦で人生が『トゥルーマン・ショー』(映画)的であることに気がつきました。現実でも不思議なことがあり、それを掘り下げ、何が見つかるかを見てみたいと思いました。3ヵ月も5時のニュースを見続けていたら、そんな気分になりました。そして“ザ・ショー”は、人生の様々な感情を表すメタファーになりましたし、コロナ前の人生に感謝することでもありました。だから、“ザ・ショー”はそこから生まれたのだと思います。ただ座って「もし全てが簡単で、何も壊れなかったのなら、私たちがどれだけ良いものを持っていたのか、どうやって知ることができるだろう?」とコーラスを歌いました。この曲はそこから生まれたもので、言ってみれば私の子供のような存在です。今まで書いた曲の中でも最も好きな曲の一つとなりました。だから、この曲をみんなに聴いてもらうのがとても楽しみです。

■今回のアルバムは、主にL.A.のEastWest Studiosでレコーディングされたのですか?そこはビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』が制作された場所だそうですが、そこでのレコーディングはいかがでしたか?

NIALL 実はアルバムの最初の曲もザ・ビーチ・ボーイズが『ペット・サウンズ』を制作した、このイーストウェスト(EastWest Studios)で制作しました。“ヘヴン”制作時のヴォーカルレコーディングの際に、彼らが使ったプレートリバーブも使いました。ジョンがそこにいて、ある日プレートを使ったのがきっかけでした。ただ、家で制作することも多くて、ロサンゼルスのカラバサスにあるジョンのスタジオや、ローレル・キャニオンにあるジョエルのスタジオでやることも多かったです。残りはほとんどジョシュア・ツリーで借りたエアビーアンドビーでやりました。実は今度、ジョンのスタジオで何曲かライブで披露するコンテンツをリリースする予定なんです。イーストウェストのスタジオに足を踏み入れる前からこの場所は知ってはいましたが、『ペット・サウンズ』が生まれたところにいるというのは、本当にすごい経験でした。音楽的に素晴らしいことが沢山起こった魔法のような場所で、数ヵ月の間、そこを家と呼ぶことができたのはとても幸運でした。

■今回のアルバムにも収録される2ndシングル“メルトダウン”は、80年代のシンセ・ポップをモダンにアレンジしたポップな楽曲ですね。また歌詞に関しては「人生どんなことが起こったとしても、最終的には上手くいく」というポジティブなメッセージが込められているそうですね。この楽曲で伝えたかった想いとは?

NIALL それがこのアルバムの全体的なコンセプトだと思います。僕の悲しい曲にはいつもポジティブな部分とネガティブな部分があるんです。僕はいつも曲の中で緊張と解放を繰り返すのが好きです。ある曲を聴いたと思ったら、実はその逆だったということもあります。“メルトダウン”は、そんな不安な気持ちと、それがどんな感じだったのかを生々しく表現しています。また、誰かが不安な気持ちになっているのを見て、「どうしたんだ、落ち着いてよ」と思うのは簡単です。でも、自分がその気持ちになると恐ろしい場所かもしれませんが、心の奥では「きっと大丈夫!」と思っている気持ちを、どの曲でも表現するようにしています。“メルトダウン”を録り始めた頃は、1.50くらいの一緒に歌うようなテンポで、『ヘヴン』のテンポからすると約2倍にしているような感じだったと思います。だから、このテンポで緊張感を出すことが重要でした。リラックスした感じではなく、最初は1.50で歌って、そして1.65にした時に、これでは僕たちが言っていることが表せていないと思ったので、テンポを早くしてその気持ちが伝わるようにしました。また、みなさんも一緒にちょっとしたダンスや歌ったりできるようになっています。

■アルバムは前半がポップな楽曲が多く揃っていて、後半に入るとドリーミーな展開の楽曲が目立つような気がしましたが、全体の構成にストーリーがあるのでしょうか?またアルバム全体を通じて、感じて欲しいことや共有したい景色などはありますか?

NIALL 後半の曲については、親近感が書く時に大きなポイントになったと思います。出身地や職業などは関係なく、普遍的なテーマだと思うので、みなさんには何らかの形で曲に愛着を持っていただきたいと思います。僕たちはみんな相対的にそれを経験しますし、僕はいつも「相対的」と言いますが、それは自分だけのことではなくて、他のみなさんも経験しているということを知ることが重要だと思うからです。そして、前半の部分なのですが、実はそこについてはあまり考えたことがなかったです。最初の数曲は確かに強いポップですが、アルバムが長くなるにつれて、何を聴いているのかわからなくなるような曲が沢山あります。“オン・ア・ナイト・ライク・トゥナイト”のような曲は、1曲で2曲を描くというのが僕の考えでした。1つのものが出来上がると思っていたら、実は違う曲だったということがあります。シンガーソングライターのような雰囲気から始まり、最後は90年代のUKロックみたいな感じになって終わります。だから発展していくのだと思います。僕はリスナーをジェットコースターのようなものに連れて行こうとしているんです。なぜならリスナーは10曲もバラードが連続したり、4〜5曲のアップテンポな楽曲が続くのを望んでいないからです。ちょっとしたアップダウンが必要なんだと思います。そして今回のこのアルバムは10曲あるので、きっと最初からまた聴きたくなるような気がしています。

■今回はギターではなく、ピアノをメインに使って制作していたそうですね。なぜそうしようと思ったのでしょうか?また、その影響で響く音に違いなどはありましたか?その他にも今回のアルバムで初トライしたことなどがあれば教えてください。

NIALL 初めてハーモニカを吹いてみましたが、それは良かったです。まさか曲の中で演奏するとは思いませんでしたが、とても素敵でした。コロナの影響でピアノが多かったんです。私のギターは全て実現しなかったツアーのためにしまい込んでありました。ロックダウンになる2週間前のことだったので、おそらくツアーのスタート地点に向かう途中だったのでしょう。だから、リビングにあったアップライトピアノが大きな役割を果たすことになりました。僕はピアノの弾き方を知っているわけではなくて、音楽について知っていることを、どんな楽器でも試してみることにしています。でも、ピアノは子守唄や童謡のメロディーを作るのにとても適しているなと思いました。高音域でメロディーを弾くこともでき、そうしてメロディーを思いつくこともありました。でも、長年使ってきたギターと同じで、手に取って演奏すると、違う音や違う雰囲気が出てきて、普段では歌わないようなメロディーを歌ってしまうこともありました。ピアノの場合でも、座っていると無意識のうちに違う歌い方をさせられてしまうんです。でも後から考えると、明らかに違う音や楽器だからこそ、そうなるんだろうなと思います。 “オン・ア・ナイト・ライク・トゥナイト”、“ヘヴン”、“サイエンス”、“マスト・ビー・ラヴ”など、最初はピアノで演奏していたのに、時にはギター主体の曲になってしまったものも沢山あります。でもそれはそれでいいと思いました。