■“生き辛い世の中だ”はコロナ禍でいろいろと思ったことを書いて？
千陽 そうですね。コロナだけではなく仕事にも追われていたので、その中で感じたことを書こうと思って。あと、周りのバンドがどんどん上に行くのに自分たちは同じように上がっていけない苦しさとか、それを含めて書きました。
美寿々 恋愛の曲だったりミドルやバラードが多い中で、こういう力強いハイな曲を持って来たので、聴いた時は心を打たれました。
ひな “生き辛い世の中だ”は、誰しもが感じていることだし、努力しても認めてもらえなかったりとか、いろんな状況があるけど、「それを自分たちの手で変えて行こう！」というメッセージ性の強い曲になったと思います。
■弱音を吐いて終わりじゃないですもんね。千陽さんとして負の感情を吐き出すことで、自分が浄化されるような気持ちになりますか？
千陽 そうですね。生きている中で不満が多い人間で、それを曲にして吐き出すことで、しんどいことがあっても良かったなと思えるというか。浄化もそうですし、自分の人生において不要なことはないし、プラス思考になれるんです。
■いい話ですね。「生き辛い私の居場所はきっと 音楽のあるこの場所だ」と歌詞で綴っていますが、これにはどんな思いを込めて？
千陽 さっきひなが言ったように、音楽で人は救えないけど、寄り添うことはできるんじゃないかと思って。この曲はライブでどういう風に受け取って欲しいのかも考えて……前半は不満を言うけど、後半はプラスの言葉を出して、聴いてくれた人の心を前向きにできたらいいなと。あと、「音楽のあるこの場所だ」の歌詞は「音楽」のところを「ライブハウス」にしようと最初考えたけど、もっと幅広く受け取ってもらえるように「音楽」という言葉を選びました。
■コロナ禍もあり、自宅で音楽を聴く人も多いでしょうからね。“生き辛い世の中だ”に限らず、他の楽曲でも自分の弱さやマイナスな感情を赤裸々に綴った歌詞が多くて。
千陽 昔の自分がめちゃくちゃ嫌いだったので、歳を重ねるにつれて自分を見直すようになったんです。人間って自分の口から出る言葉や考えで、これからの人生を豊かにできると思ったから。自分の弱さや嫌いな部分に目を向けるようになったんです。自分のように見つめ直せない人は世界にたくさんいるだろうし、その人が自分を見つめ直して、私と同じように変わるためには、変わった人が発言しなきゃいけないから。これから書く曲もウソ偽りなく自分が感じたことを出していきたいです。
■そして、作風としては1stアルバム『from ex』の頃は4分台の楽曲もありましたが、今作は3分台でまとめた楽曲ばかりで、曲調はコンパクトになりましたね。
千陽 1stアルバムの頃はいろんな言葉に縛られて曲を作っていたんです。邦ロックはA、B、サビ、Cメロ、ソロがあって、みたいな。それでひなが入って、コンパクトな曲を聴いてきたせいか「ここはいらないんじゃない？」って。
ひな はい。割りと短めの曲を聴いてきたので。
千陽 それで曲を短くする良さが分かり始めて。今回は無理をして作りたくない思いもあって、音楽って自由なものでA、B、サビとかも決まっていないし。自分が一番心地よく聴こえるように、心地よく歌えるようにやったら短くなりました。(笑)
■それで自然と耳に入ってくる歌声や演奏になっているんですね。“piece of”では、ツインヴォーカルの魅力が際立っていますよね。
千陽 初めからツインヴォーカルを考えながら作った曲はなくて、作りたいものを作ってみて、ツインヴォーカルを後で足した感じですね。Cメロはツインヴォーカルにしかできない掛け合いを考えたけど、曲優先で作りました。要所、要所でコーラスも3声にして、世界観を広げられたかなと。
■あと“大人になったら”は、歌詞の視点が面白いですよね。
千陽 今の年齢の私だと、会社に行くとか、車を運転するとかが普通なんですけど、高校の時の自分には、大人の世界がキラキラして見えたんです。当時好きだった年上の人が、より好きに思えたけど……自分が同じ歳になると、何でもないことだったんだなと感じて。(笑)
■確かにそれは自分が大人にならないと書けないテーマですね。今作のラストを飾る“結び目”は、美寿々さんの作詞・作曲ですよね？
美寿々 自分も1曲作りたいなと思い、千陽ちゃんと同じような曲を作っても広がらないから。それに今作はコロムビアに所属して１枚目になるので。私の意味的には、nolalaが一旦終わりそうな時期があり……それを周りにいてくれた人が結び目を作ってくれて、延命させてくれたんですよね。だから、メンバーや事務所、お客さんのことだったり、周りの人のことを書きたいなと思って。
■歌詞を読むと、バンドメンバーに向けた意味合いも強いのかなと感じました。
美寿々 はい。千陽ちゃんは心が弱いイメージで……私とひなっちで支えていかなあかんなと。バンドを続けることを選んでくれた感謝の気持ちもあり、こっちに向けた曲でもありますね。
千陽 これ「もしかして私の曲？」と思ったけど、違ったら恥ずかしいから、今日の今日まで知らんふりしていたんですが……。(笑)
■事実を知った今の気持ちは？
千陽 私は人の言葉をすぐに信用できなくて、いい言葉こそ疑ってかかるタイプなんです。曲にして世に出すということはウソではないんだなと。(笑)
美寿々 ウソやったらヤバイよな。(笑)
ひな 曲的には今作の中で唯一3拍子なんです。美寿々さんの思いも聞いていたので、作りやすかったけど、めちゃくちゃ難しいことを言ってくるやんって。
全員 はははははは。
■今作を引っ提げて12月からレコ発ツアーも始まります。どんな気持ちで周ろうと思っていますか？
千陽 大々的に辞めると言ったわけじゃないし、知らない人もいるかもしれないけど、待ってくれている人がいる中で、そういう気持ちを選ぼうとしていたから、しっかり気持ちを返していきたいなと思います。改めて「ありがとう」を伝えられたらいいですね。あと、今作で各々が成長したと思うので、今まで以上に強いライブをしたいです。
美寿々 家で音楽を聴いてくれるのも嬉しいけど、ライブに遊びに来て欲しくて。ツアーでいろんな人たちに会えるのも嬉しいので、「また来たい！」と思ってくれるライブをしたいです。全カ所、みんなの気持ちを掴みに行こうと思っています。
ひな 全国12カ所回るんですけど、初めて行く場所もあるし(北海道・香川)、前回のツアーが前半はコロナの影響でなくなったので、今回はその場所にも再び行くんです。「お待たせ！」という気持ちもありつつ、自信を持ってライブをやりたいです。
Interview & Text：荒金良介
PROFILE
2016年結成、京都発ツインボーカルの絡みと耳に残るハイトーンメロディが印象的なスリーピースガールズバンド。千陽（Gt.Vo.）の「私は別れた彼氏を全員曲にするタイプです」というたった20 文字のツイートと20秒のMVが日本中の少年少女の心を揺さぶった。ツイート共に投稿された“グッバイライアー”のMVはセルフプロデュースながら15万回再生を突破。自主制作CDにも注文が殺到し、発売からわずか5ヶ月で完売。再販するも一週間で360枚を完売し、手売りのみで合計900枚を完売させると言う結果を残した。
https://nolala.jp/
RELEASE
『sequence』
NCJD-10008
￥1,650（tax in）
FAMILYPACK RECORDS
12月15日 ON SALE
