Non Stop Rabbit VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Non Stop Rabbit『三大欲求』

田口達也(Gt&Cho)、矢野晴人(Vo&Ba)、太我(Dr)

本当に好きなことをやっているときの気持ちは三大欲求に負けない、欲求が抑えられてしまう世の中だけど、できることはあるはず

Non Stop Rabbitのメジャー1stシングル『三大欲求』が5月19日にリリース。昨年12月にリリースしたアルバム『爆誕 -BAKUTAN-』に続く、メジャー2作目となる今作。聴いて驚くのは、シングルであるにも関わらず表題曲“三大欲求”に引けを取らない魅力が溢れたカップリング曲の数々だ。アルバムリリースからわずか4か月、YouTuberとしての活動も続けながら新たなフェーズに突入したNon Stop Rabbitの勢いを体現するような『三大欲求』はどのような思いで作られたのか。また、〈欲求〉を抑えざるを得ない現在の情勢になにを思うのか。3人にたっぷりと話を聞いた。

■メジャーデビューから半年弱経ちました。メジャーデビューしたての時は実感がないとインタビューでおっしゃっているのを拝見しましたが、時間が経った今、メジャーデビューしたことを実感することは増えましたか?

田口 少しだけですね。

■どういったところで感じますか?

田口 アニメのエンディングで楽曲が流れたり、自分たちの名前がクレジットに出てきた時には、「ああ、メジャーデビューしたな」と思います。

矢野 あとタワレコの看板ですね。それは結構反響がありました。友達が写真撮りに行ったりとか、声をかけてもらう機会も多くなったかなと思います。

■なるほど。タワーレコードの巨大看板にもなった今回のジャケットですが、そこで着用されている衣装も新曲と大きく関わっているとのことでしたが?

田口 衣装というより、ジャケット全体をものすごく考えて作っていて。食卓に並んでいる物は偽物を使っていないんです。本物を目指している人が偽物を使うのはおかしいよねって意味で、全部食べられるものを用意していて。あとテーブルクロスの柄は、実は性欲を表していて、モザイクがかかった裸の女の子なんです。それと、僕ら3人で1人ずつが性欲、睡眠欲、食欲を表しているんですけど、誰をどう思ってもらってもよくて。僕らの中には誰がどの欲だっていう答えはあるんですけど、あえて答え合わせはしないっていう。

■なるほど。それは好きなように思ってもらって構わないってことなんですね?

矢野 俺は9割方食欲だけどね。(笑) 肉持っちゃってるし。2人だけですね、考察されるのは。

田口 僕らのキャラクターと三大欲求という単語だけ聞くと、面白い曲なのかなと思うかもしれないんですけど、カーテンの奥に絵画があるじゃないですか。あれは芸術が奥にあるっていうのを表したくて置いてあるんですよ。

■なるほど。私もタイトルを見た時、面白い曲というかおふざけっぽい楽曲なんだと思っていました。聴いてみたらすごくカッコよくて、まずそれに驚いたんです。三大欲求をテーマにする発想はなにをきっかけに思いついたんですか?

田口 僕は役者を目指して上京してきたんですけど、向いてないって判断して音楽にいったんです。最近コロナの影響もあって、僕が上京した頃の仲間とオンラインで話しながら飲む機会が結構あって。それで話をしている時に、辞めちゃうっていうのも欲だなと思ったんですよ。僕が役者を目指すのを辞めて後悔しているかと言えば全然そんなことはないし、今やりたいことを全力でできている。じゃあそのやりたいことへの気持ちが三大欲求に負ける時があるのかと言われれば、好きなことをやっている時は三大欲求に負けることが無いんですよ。絶対にやりたいことをやっている時はお腹も空かないし、眠くもならない。そんなことを考えている時に、みんなにも多分あるんだろうなと思ったんです。今は欲を抑えるっていう世の中になっているけど、三大欲求に勝つくらい好きなものがあったりというのが。やりたいことがあるけど我慢しているっていう場合もあると思うんです。そういうものを表したいなと思っているうちに、サビがメロディと一緒に浮かびました。

■Bメロの「まだ若いなんて言葉で片付けてしまいたくはない」「もう遅いなんて言葉で片付けてしまいたくはない」が印象的でした。これは田口さん自身の気持ちの反映だったりするんですか?

田口 役者を目指していた時の後輩とか同期って、今もまだ頑張っているんですよ。でも結果が出ているかって言われれば、必ずしもそうじゃなくて。それでも僕らがメジャーデビューっていう結果を残した時に、一緒に喜んでくれる強さみたいなものを感じたんです。僕らだったら、そこまで結果が出なかったら続けられていないんですよ。なにがそんなに気持ちを動かしてるのかなって思った時に、みんな口をそろえて「まだ若いって言われるけどそんなものに負けたくない」とか、「27歳で遅いって言われるけどそんなことないと思ってる」っていう。でも本当にその通りだと思って。何が遅いとか何が早いとかってなくて。僕らもそれこそYouTubeを始めた時、遅いと思っていたんですよ。でも全然遅くなくて。僕らが遅いと思っていたけど、世の中は違ったりとか、そういう決めつけが多いなって思ったんですよ。このことは絶対に書きたいなと思っていました。僕は曲をつくる時、Bメロをめっちゃ大事にしているんです。なので、これをBメロにハメようっていうのはサビを作ってすぐ思いました。

■メジャーシングル一発目としての勢いも感じました。

田口 サウンド面は結構ポップで疾走感がある感じにしていて。歌っていることは人が悩む重たい話なんですけど、それをわざと疾走感に乗せています。明るい時に聴いても「よし頑張ろう」って思うけど、暗い時に聴いてもしっかりと刺さる。シチュエーションによって伝わり方が変わればいいなと思ってポップにしてみました。

■矢野さんは歌ってみていかがでしたか?

矢野 仮歌の段階で聴いた時から自分の中でしっくりくるものがあって、「メジャーファーストシングルはこれしかないな」と、その時に感じて気合が入りました。実際にレコーディングでも、説得力が大事になってくる曲だと思うので、より対比みたいなのを意識して歌いました。

■2曲目の“静かな風”は「ドラゴン、家を買う」のエンディングテーマですが、バラードになっています。

田口 原作の漫画を読んでから書いたんですけど、主人公のレティが弱いと言われるのって、弱いんじゃなくて優しいだけなんですよ。そういうところからバラードになりました。優しい人って俯瞰で見ている気がするんですよ。だから多くのことに気付きすぎて傷ついたり、気を遣ったりしてしまう。だけど本当は思ってることもいっぱいあって。僕はレティと性格が真逆なので、レティの視点になって書いていったという感じです。

■ここまでBPMが遅いのはかなり珍しいですよね。

田口 かなり遅いよね。

矢野 BPM3くらいだと思う。

全員 (笑)

この曲は歌ってみてどうでしたか?

矢野 バラード好きなので歌いやすかったですし、テンポが遅い分、気持ちも込めやすいというか、いろいろ考えながら歌えてよかったです。

■ドラムもシンプルですが存在感がありますね。

太我 最後だけシンバルをうるさく叩いているんですけど、それはドラゴンを意識しています。

■“是が非でも”は、今回収録された4曲の中でも一番ロックバンドっぽさがあるなと感じました。

田口 ノンラビを結成して一番最初に出したシングルの中に入っている、“私面想歌”という僕らを代表する曲があるんですけど、今回のメジャー1stシングルで、それが進化したような曲をやりたくて。“私面想歌”も頭サビで始まって、イントロから急にBPM上げて、ギターでリフを弾いて、とまったく同じことやっていて。「メジャーでやったらこうなるよ」っていうのがやってみたかったんです。(笑) だから、ほぼ3人の音で攻めるみたいなことをしました。

■歌詞は自分と向き合った上で「行くぞ!」と言っていて、覚悟のようなものを感じます。

田口 そこは僕らがメジャーに来たことによって変わったところかもしれないです。今まではそんなに「行くぞ!」って感じじゃなかったんですよ。「俺らは行くけど、ついてきてくれる?」とか、強いことを歌っていても、どこかちょっと弱かったんですよね。でも今は「俺らはなにがあっても行く!」みたいな方に変化したと思います。

■それはみなさんに自信がついたからだったりするんでしょうか?

田口 でもダサいですよね、メジャーに行ったのに「ついてきてくれるかな?」っていうのは。「俺ら大丈夫かな?」とか。(笑) ここのフィールドで戦うとなったら「もうやりきるしかない!」という気持ちが強いかもしれないです。

■4曲目“推しが尊いわ”ですが、MVの発案は誰なんですか?

田口 僕です。

■どうして女装を?

矢野 そういう癖が…。

全員 (笑)

田口 僕たちバンドだけをやっていたところから、途中でYouTubeの面も取り入れたので、バンドマンが途中でなにかを始める時に、いろんなことを言われる苦悩を知っていたわけです。「YouTuberに落ちた」って言われたりとか、会社を立てた時に「なんでバンドマンが起業するの?」とか言われたり。それで、バンドに対して推しって言うのをバンドのファンが嫌うってことがあるんですけど、それに通じるな、と。「推しってアイドルのものじゃないの?」みたいな。でもバンドマンもバンドマンで、それに対してなにも言ってあげないんですよ、論争が起きているのに。こういうお仕事をしている時点で僕らはみんなから推されるべきなんですよね。だから、バンドマン側の僕らが代表して「推しが尊い」って言っちゃおうと。でもかカッコよく演奏しているだけだと、バンドマンがバンドやってるってなっちゃうだけなので、だったら「ぴえん系」に変装しようっていうところからですね。