夜を飛ぶメロウな歌声の“在処”「誰かの心の居場所になれればいいな」。
Nowluのニューシングル『在処』が4月4日にリリース。2022年のデビュー以降、積極的なメディア露出をせず、低く深い歌声で繊細な詩を歌うミステリアスなシンガー・Nowlu。今作は人気ゲームシリーズ『GUILTY GEAR』初のアニメ化作品『GUILTY GEAR STRIVE: DUAL RULERS』のEDテーマに決定しており、アニメの登場人物・ユニカに寄り添って作品を俯瞰する壮大な作品に仕上がった。インタビューではNowluのルーツに迫りながら、彼女の持つ音楽性や「歌うこと」についての想い、今作の制作について深掘りする。
■新曲“在処”はアニメ『GUILTY GEAR』のEDのタイアップということで、このゲームを知っている身としてはNowluさんとお話できることがとても嬉しいです。Nowluさんは世代的に何で育った世代になるんですか?
Nowlu 小さい頃にダンスを習っていたので、ダンスミュージックで育っています。音楽としてはR&Bだったり、メジャーな洋楽のポップス寄りのものだったり。母がR&B好きだったので、車の中とかで誰の何という曲とは知らずに聴いていた曲が多かったです。
■巷で流れている音楽には興味がなかったタイプですか?
Nowlu 正直言うとあんまり興味がなくて……。(笑) 日本語の歌詞の曲に馴染みが薄くて、ドラマやテレビで流れているものが自然と耳に入るだけでしか知りませんでした。小さい頃はダンス一筋みたいな感じだったので、「音楽だけを聴く」という習慣があまり無かったんですよね。
■それでは、どんなことをきっかけに「音楽だけを聴く」ことを始めたのでしょうか?
Nowlu 音楽を聴くきっかけになったのは、ジャスティン・ビーバーでした。アーティストとしてはマイリー・サイラスが先なんですけど、その後にジャスティンをラジオで聴いて、「なんだこの声は?!」と思ったんです。最初は女性だと思ったんですよ。若い頃はかわいらしい声でしたから。(笑) その時はすごく明るい曲が流れていたんですけど、それを聴いて、上手いし、凄いしで涙が出て来ちゃって。英語だからメロディしかわからないのに、それでも伝わるのってすごいですよね。その時に初めてダンス以外で「言葉じゃなくても伝えられるもの」がある、と感動したことを覚えています。
■音楽を聴く時には何を重視されますか?
Nowlu 声ですね。「声がいいな」と思ったらその曲を調べてみたり、関連曲を聴いて気になったら歌詞を調べてみたりします。元々ちょっとハスキーな声が好きなのですが、ハスキーな中に芯があることも大事で、それがちょうど同じ比率くらいに混ざっている声に惹かれます。そしてちょっと「人の優しさ」が入っている声が好きですね。
■まさに今のNowluさんの声がそんな感じですよね。でも、ダンスをやっていた子が「声」を重視されるのって不思議な感じもします。感覚を切り分けているんでしょうか?
Nowlu そうかもしれないです。初めは「聴く音楽」と「踊る音楽」として聴いていたので。そして自分が歌いたいと思う曲は、また全然違っていたりもして……。
■歌い始めたきっかけというのは何になるんですか?
Nowlu ありがちなんですけど、友達に薦められたんですよ。小さい頃はダンスをしながら自分の武器を探していたんです。最初はダンスで食べていきたいと思っていたのですが、それだけじゃ弱いなと漠然と思っていて、何かもうひとつ社会と戦うための武器が欲しくて。そんな時に友達とカラオケに行って、「歌が上手いからいいんじゃない?」と言われ、そこで自信がついて、その自信のまま高校の三者面談の時に、担任の先生に「私、歌やります!」と言って、隣のお母さんを驚かせました。(笑) そこで断言したのをきっかけにボイストレーニングにも通ったり、路上でライブをしてみたりしました。
■その時はお母様には反対されませんでしたか?
Nowlu 母はどちらかというと「やりたい気持ちがある限りやりたいことをやれ!」みたいな感じなんです。その三者面談での宣言の後、私がちょっと怯んで「やっぱり大学に行こうかな……」と言った時には、「何を言うてんの!歌をやるって決めたやろ!」と言われてしまって。私以上に夢とかやりたいことに対しての熱量がすごくて、そこで覚悟を決めました。
■お母様は何かされていらっしゃるのでしょうか?
Nowlu 母はいろんな職種を経て会社員をしていたのですが、私の祖母、母からしたら自分の母が亡くなった時に、「やりたいことをやらなくちゃ!」と思ったそうで、体を動かす仕事が好きだったからと、今はヨガの先生をしています。そういうこともあって、「やりたいことをやってほしい」とずっと言われていたので、母が仕事をする姿を見て憧れた部分もありますね。
■それ以外で、これまでに1番衝撃を受けたものはなんですか?
Nowlu K-POPが出てきた時は衝撃的でしたね。それまでのアイドル観というか、アイドルのイメージを覆されました。「歌って踊れる」のレベルがすごく高いというか、あれだけ踊れるのにすごく歌も上手かったので、すごい衝撃でしたよ。しかもユニット全員がハイレベルで、「人間ってここまでできるんだ」と驚きました。
■ビジュアル面もそうですが、スタイルまでそろえて来ますもんね。全く話は変わるのですが、Nowluさんはなぜお名前を「夜(Night)・フクロウ(Owl)・月(Luna)」から取って「Nowlu」としたのでしょうか?
Nowlu 自分の声を形容しています。「声からどういう感じの名前がいいかな?」となって考え始め、低くてちょっとハスキーな歌声や、喋り声の印象から、「夜」のイメージにしようかなと。そこから夜といえば「フクロウ」、「月」と派生していって、いろんなワードを組み合わせていった時に、響きだったり「私は〇〇です」と名乗った時の感じが一番いいなと思ったのが、最終的に「Nowlu」だったんです。
■この3つのモチーフは、ご自身の中でどんな意味を持っているのでしょうか?
Nowlu 「夜」はそのまんまですが、世界に向けて羽ばたくイメージとして鳥の要素を入れたくて、夜の鳥といえば「フクロウ」かなと。そして「月」に関しては、自分の本名から連想したところもあります。
■デビュー以前には、どんな音楽活動をしていましたか?
Nowlu 大阪で2年ほど路上ライブをやっていました。始めの頃はやっぱり去っていく人の中で歌うのが怖くて辛かったんですけど、それにも慣れていって、「聴いてくれる人にちゃんと届けよう」とか、「どうすれば届くんだろう?」とか、音楽の届け方を学びました。ライブハウスでも歌ってはいたのですが、最初はお客さんが5人くらいだったんです。しかも関係者を含めて5人なので、純粋なお客さんは2人くらいだったんじゃないかな?(笑) だから、ある意味お客さんが少ないことに対しては怖くはないです。
■その時はギターなどの楽器は弾かずに歌一本だけで?
Nowlu はい、歌一本でした。人の目を引くためにダンスをしたりもしましたが、当時は周囲にも歌っている人たちがたくさんいたので、何か違うことをしないといけないなと思って、1曲まるまるしゃがんで歌ったりもして。そうすると「何してんねん」と、覗きに来てくれる人もいるんですよね。(笑)
■歌っていたのはJ-POPでしたか?
Nowlu J-POPでバラード系の曲が多かったですね。オリジナルも何曲か作って、曲がたまったらオリジナルだけでやったりもしました。あとCDを自分で焼いて、路上ライブで売ったりもしていました。
■そこで見つけた「路上ライブのコツ」みたいなものってありますか?
Nowlu その当時は周囲に洋楽を歌っている人があんまりいなかったのですが、ちょうど海外からの観光客の方たちが多い時期だったので、洋楽を歌うことで海外の方にも足を止めてもらおうと、1曲目を洋楽にするとか、あえてマイクを使わずアカペラで歌い出したりも、足を止めてもらうためにしていましたね。まずは足を止めてもらえないと意味がないですし。あとは曲の間にお客さんに近づいてチラシを配ったりもしていました。
■それはチラシを受け取っちゃいますね。市場調査と工夫の塊だと思います。さて、ニューシングルのお話も聞いていきたいのですが、今作はNowluさんが作詞をされていいますが、Nowluさんは作詞をする時、「さぁ書くぞ!」という感じで机に向かって書くタイプですか?
Nowlu どちらかというとそうですね。普段からワード集めをして、カフェで聴こえてくる会話から妄想を広げたり、小説から言葉を拾ったり、それらを組み合わせたりしています。歌いながら作る作業は家でやったり、カラオケBOXに行ったり、スタジオに行ったり。でも歌詞を書くとなったら机に向かって一気に書き上げるタイプです。1回書いて、一晩寝かせてから見てみて、やっぱり違うなと思ったら書き直して。今回の曲はメロディを先にいただいていたので、ワードを集めて、気に入らなかったら全部考え直したりしていました。
■ワード集めは割合として、どこから来ることが多いのでしょうか?
Nowlu 最近は映画や小説からで、そのままのワードよりも、そこから妄想したことや、「この人だったらどう考えるんだろう?」ということから作ります。映像で見たフィクションと、自分の感情をミックスする感じですね。
■どんな小説がお好きなんですか?
Nowlu いろいろと読むんですが、官能小説には面白い言葉や表現が多いんです。(笑) あとは、恋愛モノを読んだりします。作家では村田沙耶香さんの言葉選びがすごく面白いので、よく読んでいます。大きな括りでは恋愛系のものが多いです。