■作詞の時に大切にしていることはなんですか?
Nowlu 言葉を簡単にしすぎないということ。極限まで考えるタイプなんです。あえて含みを持たせたいんです。いろんな人にいろんな場面で聴いてほしいのですが、断定しちゃうと、その時のその感情だけになっちゃいますから。もうちょっと広げたり、あえて膨らませると、いろんな場面、いろんな年代で聴けるようになるから、あえて難しい言葉を入れたりもします。あと、古い日本語が好きなので、そういうのも歌詞に入れていますね。
■そういうのってタイアップにも合いますよね。多角的な解釈ができた方がタイアップには良いですもん。今作“在処”の作詞の上で参考にしたものはありますか?
Nowlu 参考にしたものは特にはなくて、でも目線がいつもと違う所にありました。いつもは主観的というか、感情をもうちょっと入れたりしていたんですが、今回は俯瞰というか、第三者の目線になっています。でもそれって結構難しくて、今までにない試みだったので、なんて言うか、物語を上から覗き見ているような感覚で書いたんですよ。だから、参考にしたというより、視点を変えた感じですね。
■今回の歌詞で「ここは上手い言い回しになったな」みたいなところや、気に入っているところはありますか?
Nowlu サビには特にメッセージ性が込められています。“在処”というタイトルは「誰かの心の居場所になれればいいな」と思ってつけたので、そのタイトルに合うようなサビになったと思っていて。聴き応えがあるんじゃないかなと思います。
■個人的には「夜が溶ける」という表現が好きでした。
Nowlu 「夜が明ける」という表現だと明るくなりすぎて、「朝が来た」というイメージに繋がってしまいますが、「夜が溶ける その前に」にすることで、まだ暗い中でも星たちが輝いているから、夜でも怖くないよ……というイメージになるかなと思って。日本語としてわかりやすいのは「夜が明ける」ですが、私が歌うなら「溶ける」だなと思いました。割合的に夜多めの方がいいのかなとも思ったので、この言葉を選びました。
■他のワードを選ぶ時もそういう感じで選ばれているんですか?
Nowlu そうですね。「私が歌うなら」とか、「どうやったらこの曲全体のイメージを濃くできるんだろう」とかで選んでいくことが多いです。自分では「ただ 明日を照らす 迷わないように 結んだ ほどけない愛の強さを知って」というワードにはすごくパワーが込められていると思います。サビ以外では「星が泣いた その目に 美しく咲いていた この世界が」のところです。ここで一気に切なく歌ってるんですけど、サビではちょっと明るくなったというか、未来が見え始めたみたいなイメージを持ってきています。
■ちなみに前作のタイトル“yoin”はローマ字でしたが、今作の“在処”は漢字なんですね。
Nowlu そうなんです。“yoin”の表記は漢字とどっちにするか迷ったんですけど、海外の人にも届けたいということで、ローマ字表記にしました。逆に“在処”は漢字の意味合いをしっかりつけたくて、海外の人にも「居場所」という意味をちゃんと知ってもらいたい気持ちもあったので、あえて漢字の表記にしました。
■やっぱりあえて漢字表記にしたんですね。歌う時に大切にしていることはありますか?
Nowlu やっぱり何回も聴いてほしいので、聴き心地がよく聴こえるように気をつけました。「自分がこう歌いたいんだ」というのも、もちろんあるんですが、それと同じぐらい「何回も聴きたい、なんかこの曲クセになるな」と思ってもらえるような歌い方をしたくて。自分で何回かボイスメモで歌声を録ったりして、「この曲はこういう歌い方の方がいいな」みたいなこともしました。私は結構テイクを重ねる方で、ディレクターの方とも相談しながらやっています。
■自分の歌声はどんなシチュエーションが似合うと思いますか?
Nowlu やっぱり夜ですね。きらびやかな夜と静かな夜、両方のイメージがあります。私、レコーディングの時は部屋を暗くしないと歌えなくて、明るいと気持ちが入らないんですよ。そういう意味では「静かな夜」の方が合うと思います。メッセージや言葉を聴きたい時は部屋に間接照明ひとつだけとか、夜に散歩をしている時だったりとか。自分の曲を自分で聴く時は、ひとりになりたい時が多いかもしれません。
■今回のヴォーカルとしての聴きどころはどんなところですか?
Nowlu 「星が泣いた その目に 美しく咲いていた この世界が」は切なく、苦しく歌って沈めて、そこからワッと広がるところは空間だったり、ボリューム感をめちゃくちゃ意識しました。あとは、「どうやったらちゃんとメッセージとして伝わるんだろうか?」とか、強すぎても押し付けになっちゃうので、「どうやったらスッと入っていくように歌えるんだろう?」と考えて、強くは歌っているけど、押しつけにならないように……と意識して歌いました。
■マニアックな注目ポイントなどはありますか?
Nowlu 息継ぎはかなり意識しています。というのも、自分は息継ぎまで含めて曲として聴くことが多いので。私は切ない曲を聴くのが好きなんですけど、切ない曲は息継ぎが映える曲が多いじゃないですか。だから、そこも含めて感情として捉えてもらいたいです。あと、いつも曲の頭と最後の終わり方にもめちゃくちゃ意識を強めに入れているんです。最後まで投げ出さずに、最後の喉の締め方までが歌だよ……って。
■それこそ身体芸術的な発想でもありますよね。アーティストとして自分が唯一無二だと思っている部分はなんですか?
Nowlu 「声」はひとつの武器です。いろんな方に「すごく良い声だね」と言ってもらえて、初めて自分の声を認めることができたので。それまでは自分の声があんまり好きじゃなかったんです。同世代の女の子と比べても低くて、自分だけテンションが低く見られることもあって、「楽しんでる?」とか、「怒ってる?」とか、「そんなに楽しくなさそうだね」と言われることも多くて……。「なんか空気を壊してごめんね」と思うし、嫌じゃないけど、苦しくなることがあって。でも、このお仕事をするようになってから「それが良い」と言ってもらえることが多くなって、自分の声がこの声で本当に良かったな、より良くしていきたいなと思えるようになりました。それと私の声にはハスキーさも入っているから、ハスキーをどうやったらもっとちゃんと入れられるかなとかも考えて。なので、一番の注目ポイントは「声」ですね。
■本当に「声」は唯一無二のところだと思います。そして今作はタイアップということもあり、これまでNowluさんのことを知らなかった方たちにも歌声が届くチャンスになると思いますが、どんな方に、どういうふうに入っていってほしいですか?
Nowlu やっぱりまずは「声」からですね。「声が良いな」、「落ち着く声だな」、「ずっと聴いていたい声だな」というコメントを見つけると嬉しくなります。「上手い」とか、「良い」とかは誰に対しても言えますが、「好き」というのは特定の人にしか出せないワードじゃないですか。なので、「声が好き」と言ってもらえたら、認めてもらえているような感じがして嬉しくなります。
■曲については、何から聴いていってもらいたいですか?
Nowlu そうですね。何から聴いても「声」はありますし……。でも歌い方は曲によって結構変えていて、“Stuck on you”や“Swallows”は柔らかめに歌っていたり、“在処”や“yoin”はもうちょっと柔らかく歌っていたりします。そういう歌い方の違いを聴くのが好きな方はそっちから入っていただいて。ちょっとメッセージ性が強い曲が好きな方は、“在処”や“yoin”から聴いていただきたいなって。
■今後はどんなアーティスト活動をしていきたいですか?
Nowlu まだ本格的なライブをしたことがないので、応援してくださっている方たちの顔も見たことがもどかしいんですが、ぜひ直接ライブを見て、聴いてもらいたいですし、「ありがとう」の気持ちをちゃんと込めて、生で届けたいというのが強いですね。
■最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。
Nowlu 長いことお待たせしちゃっているので、ぜひ今年こそはみなさんの顔を見て、ちゃんと歌声を直接届けたいと思っています。その時が来たら、ぜひ会いに来てください。
Interview & Text:安藤さやか
PROFILE
「Nowlu」という名前には、「Night(夜) ・Owl(フクロウ)・Luna(月)」という意味が込められており、真っ黒な透明感、と評されるミステリアスな深めの低音、ハスキーボイスが唯一の歌声を生み出している。2ndシングル『Stuck on you』は、その歌声が高く評価され、Spotifyを中心にアメリカでバイラル通算1000万回再生を記録、今もなお長く愛される楽曲になっている。
https://www.lantis.jp/artist/nowlu/
RELEASE
『在処』

配信デジタルシングル
https://bnml.lnk.to/QLG27iKf
Lantis/BANDAI NAMCO MUSIC LIVE
4月4日 ON SALE