大原櫻子『Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」』ライブレポート@Zepp Haneda

10年間を網羅するセットリストで挑んだアニバーサリーイヤー幕開けのライブ。

10月12日、Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」の東京公演がZepp Hanedaにて行われた。今年俳優活動10周年を迎え、来年には歌手活動10周年を迎える大原櫻子の周年期間のスタートとして行われた本公演。先日リリースしたミニアルバム『スポットライト』の楽曲を織り交ぜながら、これまで活動してきた期間の集大成のようなライブを展開した。小さな照明がSEのリズムに合わせて柔らかに点滅を繰り返し、草刈浩司(Gt)、前田逸平(Ba)、髭白健(Dr)、小名川高弘(Key&Gt&Mani)というお馴染みのサポートメンバーが登場した後、ステージ奥よりギターを持った大原櫻子が姿を現わす。弾き語りからスタートしたのは“ちっぽけな愛のうた”だ。優しくも強かな歌声で紡がれる「キミ」への思いが描かれた歌詞は、10周年への感謝が込められているようでオープニングナンバーにぴったりである。

「みなさんこんばんは!楽しんでいくぞ!」と元気よくタオルを振ると、“Hello My Fave”へ。活動10周年イヤーの幕開けに際しリリースされたミニアルバム『スポットライト』収録曲のこの楽曲だが、ライブに足を運ぶファンの胸が高鳴る様子が描かれており、まさにライブにもってこいな1曲。大原とオーディエンス、そして楽曲の高揚感が呼応しあう。サポートバンドの織りなす温かな音色も、この日の穏やかな雰囲気に拍車をかけているように思える。どこか丸みのある、まろやかなヒューマニズムを感じさせるサウンドは、公演を通して楽曲のノリと体温のようなぬくもりを強調し、フィジカルな魅力を増幅させる。さらに“透ケルトン”のようなバンドセッションが映える楽曲では、特に一体感を発揮していた。MCを挟み、タンバリンを持った大原が軽快なサウンドに乗せて歌い出したのは“ポッピンラブ”。バンドメンバーが織りなす躍動感と優しさのあるサウンドの中心にある大原の歌声は、シンガーとしての魅力だけでなく、バンドを率いるフロントマンのような頼もしさがあった。ロングトーンの映える“ポッピンラブ”、落ち着いた歌声をじっくり聴かせた“マイフェイバリットジュエル”、冒頭からサビに向けたダイナミクスがドラマチックな“Grape”と、楽曲を追うごとに次々とアプローチを変えながら魅力を発揮していく。

とりわけ彼女の歌声の存在感を感じさせたのは“星の日”だ。草刈の演奏するアコースティックギターとともに歌った序盤の柔らかさ、バンドイン以降の抒情的な存在感。歌声にも演奏にも情緒が宿っており、続く“どうして”、“寂しいの色”も同様、演じることをテーマにしたミニアルバムらしく、オーディエンスを物語を見ているような没入感に誘った。この日はデビュー10周年イヤーの始まりを記念した公演ということで、彼女がこれまでリリースした楽曲を1年ごとに1曲ずつセレクトしたセットリストが組まれた。このツアーのために書き下ろされた新曲“I want CHU”は、これまで俳優活動で様々な恋愛役に出会ってきた大原が、10年の節目として描いたラブソング。華やかなラブソングはときに少女のような、ときに大人びた歌声で紡がれ、現在の彼女だからこその表現を感じさせた。更に大原はこの季節にぴったりな“オレンジのハッピーハロウィン”を披露し、コール&レスポンスも交えながらお祭りのような雰囲気に染め上げる。小名川のマニピュレーションが雰囲気を変えた“ツキアカリ”でギャップを見せると、スペシャルゲストとして埼玉西武ライオンズの公式パフォーマンスチームbluelegendsを呼び込む。ダンサーとともにステージを彩った“Carnival!”、会場が飛び跳ねて盛り上がった“JUMP”と、どんどん熱気を上げた後、最後は“My Way”でエネルギーを発散するように明るく楽しみ尽くした。

アンコールに導かれ再度登場した大原は、“bitter sweet cinéma”を披露。ライブ本編は10年を振り返るような構成だったが、「10年も20年も」という歌詞が描かれた楽曲で幕開けるアンコールは、この先の道筋を提示するようだ。「本当にこの10年、光と影のある10年でした。みなさんも山あり谷ありだったと思います。ファンの方同士で結婚されたり、お子様も産まれたり、SNSでもそういうお写真を拝見して心を掴まれています。その一方で不幸なことがあったり、大きな手術をしたり、そういうコメントも目にします。その方の気持ちを分かりたくても分かりきれないくらい、つらい日々を過ごしているのも感じています。そんな中で私は歌やお芝居をやらせていただいて、気持ちを込めたり、メッセージを込めたりしているんですけど、本当にそれがパワーになっているのかって不安になったりもするんです。でも『さくちゃんのライブを楽しみに頑張ろう』というコメントを見させていただくと、歌えて、お芝居ができて、この10年間頑張ってきて本当によかったなって思えます。本当にありがとうございます」。そう伝えた後、大原が最後に披露したのは“大好き”。丁寧に感謝と愛を伝えるように、じっくりとオーディエンスに届けられた。歌手活動10周年を目前にしたアーティストとしての矜持を感じると同時に、オーディエンスへの愛情を感じさせる、温かなライブであった。

Text:村上麗奈
Photo:ほりたよしか

https://oharasakurako.net/

『Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」』@Zepp Haneda セットリスト
01. ちっぽけな愛のうた
02. Hello My Fave
03. 透ケルトン
04. ポッピンラブ
05. マイフェイバリットジュエル
06. Grape
07. 星の日
08. どうして
09. 寂しいの色
10. I want CHU
11. オレンジのハッピーハロウィン
12. ツキノアカリ
13. Carnival!
14. JUMP
15. My Way

ENCORE
01. bitter sweet cinéma
02. 大好き

RELEASE
『スポットライト』

通常盤(CD)
VICL-65871
¥2,420(tax in)

Victor Entertainment
8月30日 ON SALE